ジブンが〈飛翔〉を使った瞬間、世界が揺れて頭から何かをへし折る感触がした。
パキッパキッという音がして、その途中にボキッ!という、さらに固い何かを折った感触がすると、飛ぶ勢いが弱まりジブンの体は地面に向かって落ち始めた。
その瞬間、思ったよ・・・。
「空を飛ぶ練習をしようと」
「やらせんぞ」
現在、蚊の姿が消えた16階層を歩いている。
これまで巨大な蚊はおろか、他のモンスターにも1度だって遭遇していない。
「でも、いつかは使えた方がいい」
「天規のあのザマを見た後だから遠慮したいけど・・・やっぱり、空を飛べるって戦いでは結構なアドバンテージになるからなぁ」
「だから、機会見つけて練習しよ」
「・・・わかった。それは帰ってから考えようか」
そんなことを話しながら歩いていると、あっさりと17階層へと繋がる階段を見つけることができた。
蚊がいなければ、これ程簡単に見つけることができるんだなぁ・・・。
「それじゃ、降りるか」
「次の階層では、蚊以外の新しいモンスターが見つかるといいね」
ジブンもそう思う。
・
・
・
2人で蚊が出ないことを祈りながら階段を下りていき、17階層へと辿り着いた。
・・・その後、念のために近くにある木を登って周囲の確認をする。
「「・・・」」
そこには、階層の中を少しずつだが移動している黒い柱が・・・。
数10分後。
「角度は・・・よし!弾頭天規、発射!」
「りょ―――」
ジブンは、17階層の空高くへと再び打ち上がっていた。
視界に映った見覚えのある光景を目撃したジブン達は、もう帰ろうかな・・・、なんて思ってしまった。
だが、持ち込んだ時計を確認すると、探索時間は予定の半分しか経っておらず、まだまだ帰るには早いのでは?と判断。
15階層へと戻ってもよかったのだが、せっかく蚊の群れを討伐できたのだから行けるとこまで行きたい。
そんな思いもあって、今度は蚊に見つからないように進んでいた。
結果、あっさりと見つかった。
先程のように大量の蚊と追いかけっこを繰り広げることになり、進路上に飛び出してきたトレントを筆頭とした多種様々なモンスターを押しのけたが、逃げ切れないと悟ったことでジブン達はこれまた先程のように迎撃を選択した。
その結果、16階層の時と同じ方法で蚊の群れを倒すことになったのだ。
「・・・まさか、このバカみたいな戦法で女王の蚊をあっさり倒せるなんて」
「目が、回る・・・」
ちなみに、〈飛翔〉スキルを使用したらどうなるかはわかっていたので、今度は「死人の鉞」を持って回転しながら打ち上がるという芸当もできた。
そうすると、発射の軌道が少しズレていたにも拘らず、鉞の刃が女王個体に当たって見事に討伐を成功させた。
どうやらビックモスキートクイーンは、無限と言える程の眷属召喚能力を持つ代わりに、本体も眷属同様に「耐久」が低いようだ。
「よし、さっさと先へ進もう」
「・・・待って・・・酔った、気持ち悪い・・・」
ジブン達は、少し休憩を取った後、できるだけ先へと進むことにした。
・
・
・
その後、ジブン達は2日間かけて「森林層」の後半を攻略していった。
その時にジブン達が遭遇した新モンスターは、蚊やトレントを除くと、この5体だった。
1体目は、「ビックバタフライ」。
大きな羽を合わせて、成人男性くらいの大きさをした蝶。
羽の色や模様が個体によって違うようで、紫色や黄色、黒色に虎柄の模様をしたものまでいた。
さらに、羽からは麻痺効果のある鱗粉が出ているようで、その鱗粉をまき散らして敵を状態異常にする。
このモンスターの周囲に、大量の蚊が麻痺して動けずに山詰みになっていた。
ドロップアイテムは、麻痺効果のある鱗粉の入った瓶。
2体目は、「ビックカブトムシ」。
大型犬くらいの巨大なカブトムシで、この階層で1,2を争う程の「敏捷」と「耐久」を持っているようだ。
また、このモンスター最大の脅威である突進力は、突進によって進路上にあった木を薙ぎ倒すレベル。
18階層では、このカブトムシが蚊の女王個体と交戦しており、カブトムシの突進によって進路上の蚊が殲滅されていた。
結局、スタミナ切れで動きが止まった後、蚊に集られていたが・・・。
しかし、スペックではこのカブトムシが「森林層」の通常モンスターの中では、トップクラスの実力であると思われる。
ドロップアイテムは、角や甲殻、「ビートルランス」だった。
――――――――――
「ビートルランス」 武器種:槍
森の覇者にして、昆虫の王者と呼ばれる巨大カブトムシの力を秘めた騎槍。
王者の象徴たる巨大な角の槍は、敵の防御など容易く破壊するだろう。
所持スキル
〈カブト・チャージ〉・・・カブトの突進力と破壊力を秘めた突撃攻撃を放つ。
スキル発動時、数秒間の溜めを必要とする。
〈兜割〉・・・対象の「耐久」を1段階下げる効果を持つ一撃を放つ。
この効果は重複しない。
――――――――――
3体目は、「マタンゴ」。
歩くキノコのモンスターで、常時、頭の傘部分から麻痺効果のある胞子をばらまいている。
目がつぶらで少し可愛い外見をしているが、柄の部分にある口を開けると、鋭い牙が鮫みたいにびっしりと生え揃っていたのでちょっと怖い
ドロップアイテムは、毒性のある胞子が入った袋。
4体目は、「歩くラフレシア」。
歩くラフレシア。
臭い匂いを出しながらダンジョンを練り歩いており、1種の公害といえるだろう。
すごく臭いため、獣人の人が匂いを嗅いだら失神するのではないだろうか?
蚊の討伐前では、たくさんの蚊に集られていたのをよく見る。
ドロップアイテムは、臭い花の花弁のようなもの。
5体目は、「イービルアルラウネ」
上半身が人型で、下半身が赤い巨大な花のモンスター。
ただ、上半身の人型はファンタジーでよくあるような可愛らしい女の子や綺麗な女性の姿ではなく、緑色の肌をしたゾンビに近くて、パッと見グロイ外見をしている。
下半身から生えた蔓で攻撃してきたり、毒の霧を吹きかけてくる。
人型の部分に攻撃してもあまり手応えはなく、下半身の花の中に心臓のようなものがあり、そこを攻撃するとあっさり倒せた。
この階層では、数のジャイアントモスキートクイーン、力のカブトムシと、状態異常のアルラウネ、という印象を持った。
ドロップアイテムは、下級のポーションとポーションの材料になる薬草
それと、追加でわかったことだが、植物系モンスターは蚊には襲われない。
詳しい理由はわからないが、多分だが植物系のモンスターに血が流れてないから狙わないんじゃないかと思う。
その他のモンスターはどこを探しても見つからなかったため、「森林層」の出現モンスターは恐らく、これで全種発見できたのだろう。
また、この階層から状態異常を使う敵も出現し始めた。
何度かデカい蝶に遭遇した時には、蒼規が鱗粉に触れてしまい、麻痺の状態異常にかかったような症状が出た。
まぁ、症状と言っても、身体が少し痺れただけらしいが・・・。
そのデカい蝶を倒した後にステータスを確認してみたら、麻痺(小)の状態異常を受けていると表示されており、このことからジブン達は軽度の状態異常に対しての耐性を持っているとわかった。
そんなこんなで、2日目にして19階層まで辿り着くことができた。
2日目の探索では何故か、16と17階層では蚊の姿を見ることなく順調に進むことができた。
もしかして、あの蚊の女王個体は1度しか出てこないこない個体だったりするのか?
そんな疑問を抱えながら、ジブン達は18階層に踏み入れた。
案の定、蚊の大群がいた。
そんな訳で、昨日と同じ対処法をしようと思ったのだが、18階層では蚊の群れがカブトムシ相手に集中しているところを蒼規の〈剛弓〉で吹き飛ばして討伐。
続いて19階層に下りると、普通サイズ(ダンジョンでの)よりもさらに大きなサイズの蝶がおり、その個体が階層中に麻痺鱗粉を振りまいていたため、蚊の群れはみんな麻痺状態になったいた。
そのお陰で、昨日と比べて大量の蚊に苦しめられることはなかった。
だが、その変わり19階層では蚊よりも蝶の大群が発生していた。
空気中を蝶の鱗粉が飛び交い、植物型モンスターがヒャッハー!しる階層で、麻痺への耐性はあるにはあるが完全には無効化できていなかったため、いつもよりも動かし辛い体で何とか頑張って戦ったのだ。
マタンゴが、ウザイ・・・!
こうして、ジブン達は20階層に繋がる階段へと辿り着いたのだが、これまでの道中でのモンスターとの戦いが原因で、この身体になって初めて明確な疲労を感じていた。
主な原因は大量の巨大な蚊とか、空中で踊るように飛ぶデカい蝶とか、密集したマタンゴ達とか・・・。
まぁそんな訳で、20階層にいるであろう「森林層」のボスとの戦は、明日に持ち越すことにした。
・・・さて、帰るか。
状態異常は厄介な印象アリ。
特に〇ケ〇ンとかの毒とか氷の状態異常は、現実でなったら生命の危機に陥ると思う。