双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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VS 20階層ボス

 今日は、20階層に挑む日だ。

 昨日の探索を通して、この階層のモンスターの強さはジブン達にとってはもう脅威にならないと判断した。

 蚊の女王個体の対処方法は確立済みだし、カブトムシやイービルアルラウネに関しても、中鬼を単独で倒せる人物ならば対処は簡単だという印象を持つ。

 カブトムシは、突進を良ければ甲殻の隙間を攻撃すればすぐ倒せるし、イービルアルラウネは、能力は高いのだが、コアを攻撃すればすぐに倒せるので対処は容易だ。

 他のモンスターに対しても、既にジブン達なりの対処方法を確立しているか、戦闘能力が低かったりで、ジブン達の相手にはならないだろう。

 だから、20階層へと挑んでも問題ない・・・ハズ。

 

 20階層にいるモンスターは、先の10階層で待ち構えていた中鬼のようなボスモンスターのようなモノだと推測できる。

 中鬼との戦い前に準備を怠ったことで、武器を折るという失敗してしまったため、今回は入念に準備をしてから挑もう。

 そのために、昨日の探索の成果と「森林層」の情報を売って得た金を使って、回復薬に状態異常の回復薬(酔い覚まし用に売っていた物)等を買って、ついでに投げナイフや予備の武器等を買った。

 これで準備は万全なハズだ。 

 こうして準備を終えたジブン達は、10階層のポータルにワープして「森林層」を駆け抜け、目的の場所である20階層へと向かう。

 

「「・・・」」

 

 その道中、薄々予感していたが16~19階層での蚊の女王個体らしき姿をあまり見なかった。

 唯一発見できたのは、50匹程の群れをカブトムシに蹴散らされて飛び回る、蚊の女王個体の姿が・・・。

 これは嬉しい誤算であると思い、蚊の駆除に務めてくれているカブトムシに敬礼を送ってからその場を後にした。

 ・・・やっぱり、蚊の群れが昨日よりも圧倒的に少ないな。

 女王個体の蚊は、あの規模の群れを常に生み出せると思っていたが、もしかしたらそうでもないのか?

 後日、改めてビックモスキートクイーンについて、調査する必要があるかもしれない。

 19階層では、蝶も大量発生しておらず、植物モンスターへの対処は比較的余裕だった。

 マタンゴの輪切りじゃーーー!!

 

 こうして、昨日までの苦労は何だったんだ!?と叫びたくなるくらい、順調に20階層へと辿り着いた。

 ・・・まぁ、楽できる事に越したことはない、か。

 

「天規、準備はいい?今更だけど、その武器は何とも無い?」

「問題ない。変な感じはしない」

「・・・そっか、それはよかった」

 

 これまで、ずっと外見と能力が明らかに呪いの武器である「死人の鉞」を使ってきたが、血を吸って切れ味を回復する以外は何ともない。

 創作では、こういう武器は使用者が血に飢えそうな要素がてんこ盛りだが、そんなに警戒する必要はないかもしれない。

 これまで使っていても、未だに嫌な予感もしないし。

 

 ・・・さて、今回のボス戦の作戦なのだが、ザコ敵がいるならばジブンが薙ぎ払い、蒼規がボスの足止めを行う。

 もしボス個体が単体ならば、2人がかりで戦う。

 結構雑な作戦だが、相手がどんなものかわからないため、現状で緻密な作戦を組んでもあまり意味がないのではと考えた。

 なので、モンスターからの逃走方法以外は大雑把でいいだろう。

 なにせ、これから挑むボスの情報なんてゼロだもの。

 

「それじゃあ、準備はいいね?」

「大丈夫」

「よし、それでは」

「「行こう!」」

 

 ジブン達は扉を開き、「森林層」のボスがいるであろう部屋へと踏み入った。

 

 ・

 ・

 ・

 

 扉を開けた先には、ボス部屋の中央にある小さな丘と、丘の上にそびえ立つ大きな樹木があった。その周囲には他の木々の姿は確認できない。

 そのため、その大樹がポツリと立っているだけの、開けた空間が出来上がっていた。

 ただ、小さな丘を囲うようにして流れる小さな川があり、川の付近は湿って泥になっている。そこだけ足場がぬかるんでいるため、歩く時は気を付けた方がいいだろう。

 

 肝心のボスらしきモンスターは、あっさりと見つかった。

 そのモンスターは、自身の長い体を大樹の幹に絡みついている、人を丸呑みできそうな程の巨大な体躯を持った大蛇。

 確実に20m以上はありそうなその姿は、アマゾンにいるアナコンダを彷彿とさせるが、明らかにサイズが桁違いだ。

〈鑑定〉

 

(タイラントスネーク)

 

 

「タイラントって、どういう意味だっけ?」

「“君主”だった気がする」

 

 昔はタイラントという言葉の意味を巨大って意味の英語だと思っていたが、最近になって違うのだと知った。

 ・・・そういえば、最近はダンジョン探索中心の生活だったから、学校の課題をしてなかった。

 しかも、中には今日提出の物があったような・・・。

 

「・・・ジブンが応戦する。アオは支援よろしく」

「わかった。できるだけ弓矢で支援するけど無理はしないように」

 

 大蛇には悪いが、出来るだけ早く倒させて貰おう。

 まずは様子見として、蚊への対策として、協会本部で買っておいた投げナイフ(5本セットで24000円)を5本投げる。

 ナイフの内の2本は避けられたが、残りの3本がタイラントスネークの巨体に突き刺さった。

 

「シャアアアアアーッ!!」

「だけど、効果は薄いか・・・?」

 

 胴体にナイフを刺された痛みからなのか、タイラントスネークが耳を突き刺すような鳴き声を上げて威嚇してくる。

 だが、その体には傷ができる程のダメージは与えられていない。

 やっぱりボス個体は、これまでのモンスターと一味違う!

 

 侵入者であるジブン達から出合い頭に不意打ちを喰らい、怒りの籠った眼でジブン達を貫くタイラントスネーク。

 すると、自身の長い尻尾を大きく振り上げてから地面に叩きつけ———っ!大蛇の巨体が飛び上がった!?

 

「ヤバイ、回避」

 

 飛び上がった大蛇は、ジブン達のいる場所へと落下している。

 大蛇は敵対者を押し潰そうとしているのだと悟ったジブン達は、 急いでその場から離れる。

 その一瞬後に、大蛇の尻尾がジブンのさっきまでいた場所に叩きつけられた。

 その衝撃で地面が激しく揺れてヒビ割れが発生し、大量の土煙が上がる。

 

「わぁ、凄い攻撃・・・」

 

 足元の揺れで体勢を崩さないように気を付けながら、「死人の鉞」を抜いていつでも接近戦ができるように構える。

 すると、大蛇は先程と同じように巨体に見合わぬ素早い動きで、ジブンへと向かって飛び掛かってきた。

 その攻撃を、大蛇の懐に潜り込むようにして回避する。

 そのまま巻き込まれない鉞で、大蛇の腹を斬りつける。

 ・・・どうやら、「死人の鉞」の刃は通るようだ。

 

「シャァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!?」

「ごめんけど、もう何回か追撃っ!」

 

 痛みに絶叫を上げる大蛇に対して、追撃として胴体を容赦なく斬り続ける。

 すると大蛇は、自身の体を傷つけるジブンを引き剥がすために、その巨体をくねらせて暴れ始めた。

 流石に20mの巨体にぶつかれば、ジブンでもタダじゃ済まないだろう。

 なので、巻き込まれないように距離を取る。

 

「〈剛弓〉!」

「―――ァ゛、ジャア゛ア゛ア“ア゛ァ゛ァ゛ァーッ!?」

 

 その瞬間、蒼規の放った矢が大蛇の顔面に突き刺さった。

 しかも、スキルの補正込みで威力が増したカブトムシの硬い甲殻を貫通する程の強力な一撃だ。

 流石の大蛇もこれには堪らず、今日1番の悲鳴を上げた。

 

「・・・どう?」

「見た感じだと、遠距離攻撃は持ってないかな?毒は・・・ありそうか」

「毒は、毒消しのポーションで治すから」

「なら問題ないか。そういうことで、天規は引き続きに囮に・・・」

 

 岩が飛んで来た。

 蒼規は―――気が付いていない!!

 

「―――避けろっ!!」

「えっ?―――ぐふぁっ!?」

 

 ジブンは咄嗟に、横にいる蒼規を抱えて岩を回避した。

 その際、蒼規の横っ腹にラリアットを決めたみたいになったが、岩に潰されなかっただけでも感謝して欲しい。

 

「そういう訳なので、許せ」

「許さない!・・・というか、あの岩ってどこから・・・」

 

 蒼規が、ある一点を見た途端、呆けた表情になった。

 ジブンもつられて見てみると、あの大蛇が口の前で人1人分よりも大きな丸い岩を生み出している姿が・・・!

 

「魔法使えたんだ!?〈剛弓〉!」

 

 蒼規が咄嗟に、「中鬼の朱弓」が保有するスキルを放つ。

 放たれた矢は、蒼規の矢よりも一拍早く大蛇が放った岩と衝突し・・・粉砕!

 ご自慢の魔法を正面から撃ち砕かれた大蛇は、驚愕によって硬直した。

 ただ、蒼規の放った矢も岩を砕いた衝撃で砕けてしまう。

 

 ―――だが、問題ない。

 

「ジブンが決めるから」

 

 動きを止めた大蛇の首の横、そこには「死人の鉞」を振り上げるジブンの姿があった。

 蒼規のお陰で大蛇の意識はジブンから外れ、こうやって懐?へと潜り込むことができた。

 そして、大蛇がジブンに気が付く前に倒すつもりで・・・。

 ―――薪を割るように、鉞を振り落とす。

 

 手元から、ザシュッ!という音と共に、硬い鱗、肉を断ち切る感触がした。

 そんな感触が途切れると、ボトリ・・・と大蛇の首が落ちる。

 ギロチンによって首を落とされた様な有り様の大蛇は、その身をビクリと震わせた後、全身が灰となって崩れていった。

 それと同時に出現する魔石と、中央にある大樹の前に豪華な宝箱が現れた。

 

「「・・・勝った~~!」」

 

 ジブン達は歓喜の声を上げた。

 これまで幾度とモンスターとの戦いを経験したが、1個体でここまで強いモンスターは初めてだ・・・。

だからこそ、倒せたことがとても嬉しく感じた。

 

 ジブンがそんな達成感に浸る中、蒼規は落ちてる魔石を拾い、宝箱のある場所へと向かっていく。

 ジブンもその後に続く。

 

「宝箱、何でるかな」

「レア物が出てほしいけど・・・できれば特別な剣が欲しい。天規の(なた)より不吉じゃなくて優秀なヤツ」

(まさかり)だよ」

 

 ジブン達は、ワクワクしながら宝箱を開けた。

 

「「・・・」」

 

 ――――――――――

 報酬

 ・銅コイン×15枚

 ・君主蛇(タイラントスネーク)皮鎧(かわよろい)

 ――――――――――

 ――――――――――

君主蛇(タイラントスネーク)皮鎧(かわよろい)」 装備種:全身鎧・皮

 君主蛇の皮で作られた上下一式の鎧。

 その強度は、皮で作られているにも拘わらず、下手な鉱石で作られた金属鎧も硬く頑丈でああり、皮鎧としての軽量さも兼ねている。

 また、君主蛇の皮をそのまま使っているため、君主蛇が生来持っていた耐性等をそのまま有している。

 

 所持スキル

〈水耐性・小〉・・・水属性の神秘への耐性を獲得する。

〈毒耐性・小〉・・・毒への耐性を得る。

〈悪路走行・微〉・・・足場の悪い場所でも動きやすくなる。

 ――――――――――

 

 宝箱から出てきたのは、とても性能の良い皮鎧だった。

 耐性スキルというモノがいくつもあるし、手で触れてみた感じだと、鉄よりも硬そうな感触がしたことから、説明文には偽りは無さそうだ。

 この説明文通りだとすると、ジブンは鉄より硬い物を斬ったことになるが・・・ひとまずは置いておこう。

 

 これまでのジブン達は、地上で買った鎖帷子と運動服という、ダンジョンを舐め腐った格好をしていた。

 一応、普通の服よりも頑丈な物を選んだが、この辺りのモンスターにとっては誤差の範囲だろう。

 それならば金属製の鎧を着ればいのでは?と思うだろうが、一度だけ着てみた時、動き辛かったので辞めた。

 だから、ここでジブン達が求めていた「身軽かつ頑丈な装備」を手に入れられるのはとてもありがたい。

 とても、ありがたいのだが・・・。

 

 1つだけ、致命的な問題がある。

 

 

 それは、この皮鎧が、女物だということだ!!

 

 胸元や肩等の急所はしっかりと皮部分で覆われて守られているが、下半身の部分がタイツのように肌に張り付いく材質となっている。

 オマケに腰部分には、ヒラヒラとした膝辺りまでの長さのスカートもセットでついており、明らかに女性向けに意識して作られ装備だった。

 

「君主蛇の皮鎧(女物)」は、まさかの上下セットの装備だったのだ。

 

 しかも、この装備の全体像は、まるでどっかのファンタジー作品で登場する駆け出し女冒険者が着ている装備のよう・・・。

 

「・・・コインは2人で分けるとして」

「この装備をどちらが着るか、だよね」

 

 そう、確かにジブン達の今の体は女だ。

 だが、少し前までは普通の男子高校生だったジブン達は、こういう服を着るのは抵抗がある。

 心はまだ男なのである!

 だけど、性能は現状の装備と比べて圧倒的に優秀なわけで・・・。

 

「「・・・」」

 

 その後、ジブン達は報酬品を回収し、ボス部屋を抜けた先にあるポータルに触れ、転移先を登録してから帰還した。

 ちなみに、「君主蛇の皮鎧(女物)」は話し合いの結果、ジブンが着ることになった。

 何故そうなったのかというと、後衛である蒼規よりも、前衛で斬り込む担当のジブンの防具をしっかり整えるべきだ、という真っ当な理由から。

 

 そういう訳で次の探索から、ジブンが女装することが決定したのであった。

 

 ・・・流石にタイツは恥ずかしいから、上から履けるズボン探そう。

 




  女物の服の描写、難しい・・・!!
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