双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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虎のお姉さん(上)

 ポータルで0.5階層に転移してから、地上へと帰還した。

 そして、いつも通り本日の戦利品を換金するため、買取窓口へと向かう・・・

 

「天規、今日からこっち」

「あぁ、そうだった」

 

 ことはなく、買取窓口の数部屋隣にある部屋へと向かった。

 その部屋の前に着くと、中にいるであろう人に入室許可を得るため、扉を数回ノックする。

 

「どうぞ~」

「「失礼します」」

 

 扉越しから許可する声が聞こえたので、2人で入室する。

 

「探索おつかれさまです、御2人共。お怪我はありませんか?」

 

 部屋の中には、1人の職員である女性がいた。

 スーツをしっかりと着こなしており、仕事のできる雰囲気を感じる人。

 だけど、その人の髪は白と黒の、頭には虎のような獣耳。

 外見は「清楚系の大人しそうな美人さん」といった感じだ。

 

「問題ないです」

「大丈夫でした」

「それはよかったです!ところで、今日はどこまで潜ったんですか?」

「「20階層です」」

「20ですね。・・・へっ?にっ、20階層ゥ!?もうそんな所まで行ったんですか!?」

「「は、はい・・・」」

 

 こ、これは想定以上の・・・、と呟く白黒虎ケモミミ職員さん。

 彼女こそ、今日からジブン達の専属職員となった、足利(あしかが)寧々(ねね)さんだ。

 

 何故、ジブン達は足利さんのいる部屋に来たのか。

 それは、昨日の朝、ジブン達がダンジョンに行く前、探索者協会の本部で丘山さんから貰った資料が関係する。

 

 その資料の見出しには、「専属職員制度」と簡潔なお題。

 内容は、「15階層へと到達した探索者は、自身の専属となる職員がつく」というものだった。

 専属職員制度についての説明もされており、その内容をジブンなりにまとめると、担当の探索者の秘密を守ります、意見を尊重します、的なことが記載されていた。

 また、世間にジブン達の攻略進度を知らせないようにして貰うことも可能。

 さらに、ジブン達の専属職員は、ジブン達で決めることができるらしい。

 ただ、探索者側が職員に横暴な態度をとった場合は、その職員は厳重な調査の下に担当探索者を訴えることができるそうだ。

 その逆もしかり、だそうだ。

 

 そんな注意事項もあるが、専属職員を決めるということは、ジブン達の今後のビジネスパートナーを決めるということ。

 探索者の悩みを解決したり、秘密を共有したりする間柄であるので、己との相性が悪い相手だと今後の探索者生活がよくない物になる可能性がある。

 だから、ここは真剣に決めておきたいのだが・・・。

 

「なんか、お見合い写真みたいだな」

「顔を把握する必要があるとはいえ・・・」

 

 ジブンの手元には、説明とか規約とかいろいろ記載された資料とは別に、職員の情報が記載された資料があった。

 資料には主に、その職員の名前や顔写真、ザックリとした経歴等の簡単なプロフィールから、性格や好きな物事まで、様々な情報が手元の1枚の資料に収められている。

 それが複数枚。

 この資料を見ていると、どことなくお見合い写真みたいだな、と思えてくる。

 

「全部見たけど・・・どう?」

「僕は別に、この人がいい!っていう人はいなかった。なんか、みんな顔がいいから気が引ける」

 

 写真に写る人物の多くが、イケメン?だったりカワイイ?容貌だったり、なんというか、異性にモテそうな外見をしていた。

 多分だが、色仕掛けとまではいかないが、そういう目的も入ってるんだろうなとは思う。

 ・・・男が3分の2を占めていたのは偶然だと思いたい。

 

 その後2人で話し合った結果、「優しい人なら誰でもいい」という希望だけ書いて出すことにした。

 別に誰かを指名せずとも希望の特徴だけ書けば、その希望通りの人選を探索者協会側がしてくれると専属職員の説明資料にあったので、あちら側に任せることにした。

 その場合、美形の人が来るとは限らないとあったけど、正直言ってどうでもいい。

 

 そして、今日の朝に資料を提出した。

 そしたら、次の日にはジブン達の専属に選ばれた職員と顔合わせすることになった、

 相変わらず、仕事が早い。

 どうやらジブン達が指名しなかった場合のことを想定して、事前に選出候補となる人を決めていたらしい。

 そして、事前に決められていた通り、足利さんがジブン達の専属職員に就任となったそうな。

 

「えぇっと・・・、もう1度言ってくれませんか?」

「あ、はい。・・・20階層のボス部屋には、20mくらいの大蛇がいました」

「結構素早いです」

「印象としては、くねくねと暴れる電車って感じですね。大きさ的にはそれくらいありそうでしたし」

「変な例えだけど、本当です」

「あっ、はい。そうですか・・・」

 

 ジブン達の今日の報告を聞いた足利さんは、遠い目をしながらも手はちゃんと動かしている。

 これができる大人か、すごいな。

 ちなみに、専属職員の利点として、職員の人が探索報告レポートを探索者の代わりに書いてくれるというものもあった。

 なので、その制度に甘えて足利さんに頑張ってもらっている。

 ありがたい。

 

「20階層でそんな怪物が・・・?萌ちゃんは難易度設定オカシイって言ったけど、あながち間違いじゃない?・・・すみません、それで、御2人はその大蛇を倒したんですよね。その大蛇のドロップアイテムとかは、見せて貰えませんか・・・?」

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます。・・・女物?」

「・・・男物は出なかったので」

「な、なるほど~。で、でも、この装備を着ても似合う思いますよ!だって、どちらもカワイイ顔してますから!」

「「・・・」」

 

 それはそれで複雑です。

 

 この後は、またもや探索者ランクの昇格する話やら、これからの探索について話をしてから、お互いの理解をそれなりに深め合った後、解散した。

 

 ・

 ・

 ・

 

  私が双子達のことを知ったのは、つい先日のことだった。

 

「寧々ちゃん。明日の会議、寧々ちゃんも参加することになったよー」

「へ?」

 

 ある日突然、幼馴染であり同じ職場の同僚の女の子、茂木(もえぎ)萌(もえ)ちゃんにそんなことを言われた。

 萌ちゃんの種族はエルフだ。

 しかも、普通のエルフよりも「位階」というモノが高いらしく、レベルが低い時から優秀なステータスやスキルを保持したいたため、現在は同時期に協会へと就いた私よりも重要な仕事を任されているエリートだ。

 そんな彼女は、昔と変わらない調子で私と接してくれている。

 けれど私は、萌ちゃんの元から整っていた顔がエルフになって更に美しくなったこともあって、萌ちゃんは自分とは遠い存在になってしまったなぁ、と思う時がたまにある。

 せっかく萌ちゃんが私に話しかけてくれているのに、こんな下らない事を思っているなんて失礼だから、誰にもバレないように心の内にしまっているけど、萌ちゃんに対して申し訳ない気持ちが溢れて・・・。

 

 ・・・っと、そうだった!今はそんな事どうでもよくて、それよりも、下っ端である私が会議にってどういうこと!?

 

「な、なんでそんな急に・・・」

「うーんとね、何か想定外の事が起こったらしいよ」

「想定外?」

「うん、想定外」

 

 そう話ながら、萌ちゃんは私の第3,4の耳である獣耳をニギニギと遠慮なく触って来る。

 昔から萌ちゃんは、私に対してのスキンシップが些か過激だ。

 今日はマシな方だが、高校時代では胸とか太ももを揉まれるという、セクハラ紛いなことをされてきた。

 今も、たまに触られる。

 確かに思春期の頃は恥ずかしかったけど、今ではもう慣れっこで、この程度のセクハラなら顔色1つ変えずに流すことができるようになった。

 慣れって恐ろしい。

 

「探索者にね、すっごく強い2人が現れたんだって。で、その2人はもう11階層に足を踏み入れたから早期の内にこの2人への対策を話し合うらしいよ」

「えっと・・・その2人への対策ってどういうこと?」

 

 萌ちゃんの、2人への対策を話し合う、という言葉に疑問を持った。

 その言い方だと、まるで・・・

 

「その2人って、問題のある人なの?」

「“今は“問題ないよ。だけど、これから危険になるかもしれないから一応備えるんだって~」

 

 今は?これから危険になる?どういうこと?

 私が萌ちゃんの言った意味をあまり理解できずにいると、萌ちゃんがニヤァとした笑みを浮かべて言う。

 

「幼馴染のよしみで、寧々ちゃんにだけ教えちゃいまーす!実はその2人はね、種族の位階が「おい、茂木」ピッ!?」

 

 萌ちゃんが何か言おうとしたその時、萌ちゃんの背後から先輩上司である丘山さんの威圧感のある声が響いた。

 丘山さんがいつ来たのか気づかなかったし、萌ちゃんに至っては驚きと恐怖で顔が気の毒な程に青くなっている。

 ・・・そういえば、萌ちゃんって前に、探索者試験の受験者相手にやらかしてから丘山さんに再教育させられてるって聞いたことが・・・。

 

「せ、先ぱぁい、どうしたんですか、そんなに怖い顔してぇ・・・」

「あんたが機密事項を放そうとしたからでしょうが。これは再教育が必要そうね?」

「ひぇぇ~~~!?」

 

 萌ちゃんの顔が、青を通り越して白になった。

 教育って一体、どんなコトをされたんだ・・・?

 

「それと、足利さん」

「は、はい!」

「急で申し訳ないけれど、明日の会議は貴女も出席してくれないあしら?それと、持ち物はいらないから、明日の11時に会議室まで来てくださいね。それじゃ、よろしくね」

 

 丘山さんはそう言うと、ジタバタ藻掻く萌ちゃんを引きずって去って行った。

 

「明日の会議って、どんなモノなんだろう・・・」

 

 流石に入社1年も経っていない私が、お偉いさん達がたくさん来る場所になんて呼ばれないよね?

 もっと、気楽なモノだよね・・・?

 そう思い直して明日の会議への不安を和らげた私は、今やっている仕事に再び取り組むのだった。

 




 丘山さん(赤帽子)とかの役職の高い人は、基本的に自衛隊とかの国家運営組織から協会へと配属された人ですが、茂木さん(エルフの人)や足利さん(白虎獣人)は元々一般人の身で協会へと就職しています。
 そのため、丘山さんも足利さんも就任時期は大体同じなのですが、そういった違いが現在の役職に関係しています。
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