双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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見落としていた・・・

20階層を攻略した次の日、ジブン達はCランクの証を得ると同時に、協会側から依頼を受けた。

 曰く、この先の階層は未知の階層だから階層の特徴を教えてね、とのことらしい。

 後略中の階層の情報提供は、ジブン達がこれまでやってきた事と変わらないので承諾した。

 そんな訳で、勇んで21階層に足を踏み入れたのだが・・・。

 

「おぉ・・・!」

「これは凄い」

 

 扉を開いた先は、所謂、岩山の山脈と呼べる場所だった。

 空に浮かぶ雲を貫くように高くそびえる山脈群は、自然の雄大さを感じさせる。

 ここ、ダンジョンなんだけどね。

 

「新しい階層だけど・・・ここは〈飛翔〉の練習もできそうだね」

 

 確かに、この広さなら障害物も少ないし〈飛翔〉の練習にもってこいだ。

 唯一の懸念点は、ここから落下したらどこに行くかだけど・・・。

 

「さっそく先に進もう」

 

 ジブン達は、ゴツゴツとした岩肌の道を進んでいく。

 足場がゴツゴツしているので若干足場が不安定だが、この体のスペックのおかげで体幹がしっかりととれている。

 それに、ジブンはこの服の補正もあるからな。

 それはともかく、この調子ならばこの足場でも、ジブン達なら十分に戦うことができるだろう。

 

 そんなことを考えていると、空に鳥のような影が複数見え始め、それが段々と大きくなっている。

 その影をジッと目を凝らして見てみると、やっぱり飛行系モンスターがいた。

 外見は大型犬ほどの大きさの翼竜で、鼻の部分がノコギリザメのノコギリのようになっている。

 

 ・・・あの翼竜型モンスターの外見は「ローペン」というUMAに似ているから、そう呼称すべきなのだろうけど、ジブンの場合、あの姿形を見ていると昔見た映画に登場する翼竜の怪物を思い出す。

 その映画では、そいつが攫った人の四肢を何らかの方法で切断していたことから、当時のジブンは「切り裂きクソバード」と呼んでいた。

 つまりこのモンスターは、どことなーく昔見た「切り裂きクソバード」を連想させるのだ。

 

「へぇ~、翼竜型モンスターかぁ。これはローペンって呼ぶべきか」

「切り裂きクソバードがいる」

「・・・なんて?」

 

 だって、アイツらの姿を見てると、昔の映画に登場した翼竜を思い出すし。

 何故か蒼規はピンと来てない様だけど。

 ・・・そういえばその時、蒼規は流行病にかかっていたから例の映画を見れなかったんだった。

 なので、蒼規にジブンの思ったことを伝える。

 

「あの映画にそんなヤツいたんだ・・・。でも、アレはどっからどう見てもローペンでしょ」

「確かにそうだけど・・・」

「ギャーッ!ギャアァーーッ!!」

「あっ、来るよ」

 

 ジブン達の会話に反応したのか、空を飛んでいた推定ローペンが一気に高度を下げてきた。

 

「構えて」

「わかってる。試しに僕が弓で撃ち落としてみるから、もし外したらカバー頼んだ」

「わかった、お願い」

 

 蒼は、推定ローペンに向かって矢を放つ。

 それに対して推定ローペンは、その矢を難なく避けると、飛行速度をグンッ!加速させ、こちらに突っ込んで来る。

 

「避けてっ!」

「―――っ!?あっぶない!」

 

 ジブンの声に反応した蒼規は、咄嗟に右へと転がって回避する。

 推定ローペンは、勢いを殺さずに蒼規が元いた場所へと勢いよく突っ込み、その勢いを保ったままジブン達の後方にあった岩にぶつかった。

 

 ・・・生物が衝突したにも拘わらず、悲鳴も衝突音もなかった。

 ただその代わりに、勢いよく衝突によって強い衝撃を受けて死に体となった推定ローペンと、真っ二つになった岩が地面に横たわっており・・・。

 

「「・・・」」

「これ、僕が知っているローペンじゃない・・・」

「これはまさしく、切り裂きクソバード」

 

 凶悪度は明らかに増してるけど。

 そんな言葉がジブンの口から零れる中、何やら周囲が騒がしくなってきたことに気がつく。

 恐らく、推定ローペンが蒼規へと体当たりをする前に上げた、鳴き声が仲間を呼んだのだろう。

 何やら嫌な予感がする。

 

 そんなジブンの予感を肯定するように、上空から復数の黒い雲が近づいてくるのが見えた。

 それはどんどん大きくなり、黒い雲が16階層辺りにいた蚊の群れの様に、たくさんの推定ローペンで構成されていることに気が付いた。

 そんな、蚊の大群を彷彿させる、その数は・・・ざっと100体を超えてる・・・!

 

「撤退撤退!!」

「こんなの無理!?」

 

 それを認識したジブン達は、すぐさまその場から逃げ出した。

 後ろからクソバード達の神風突攻を気配で感じながらも、脇目も振らずに逃走を続ける。

 しかし、推定ローペン・・・いや、クソバード達の「俊敏」は高く、ジブン達の速さについてきていた。

 それに、時折空から降って来るクソバードの体当たりを避けるために、常にクソバードの群れの方に注意を払わなければならず、走ることだけに集中できないから走るスピードも遅れている。

 

 だが、少しずつ距離を離せている。

 

 どうやらクソバードよりもジブン達の「敏捷」の方が高いらしく、走りに集中せずとも逃げ切るための十分な速度を維持できている。

 なので、迫り来るクソバードの体当たりも、ジブン達には掠りもせずに地面や岩に衝突するだけだった。

 今のところは順調、この調子で行けば逃げ切れる。そう確信できる状況だ。

 それに、ジブン達は覚醒者になる前から走ることは比較的得意だった。

 何故なら、ジブン達は元々陸上部だったから!

 ジブン達のこれまでの陸上人生で培った経験、練習の積み重ねを注ぎ込んだこの走りならば、余裕で逃げれる!!

 

 そんな事を考えながら走っていると、不意に足元に変な感触を感じた。

 先程まで感じていた岩の感触とは違う、グニッとした柔らかい感触。

 

「ん?」

 

 なん―――

 

 カッ―――ドッカァーーン!!

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁ~~~・・・!?」

「はっ?あ、天規ぃぃぃーーー!?」

 

 突然、ジブンの体が21階層の空高くへと打ち上げられた。

 何が起こったのかがわからないし、何故か足が痛い。

 というか・・・この状況ヤバイのでは!?

 

 そう思って周りを見ると、こちらに向かってトップスピードで突っ込んでくるクソバードの群れが・・・。

 

 そういえば、〈鑑定〉使ってなかったな・・・。

〈鑑定〉

 

(切り裂きクソバード)

(追記:その名前、面白いから採用。(注:この追記は認識阻害がかかっているので、現在は見ることができません。レベル50くらいでなら見れるようになるかもしれませんね))

 

 ・

 ・

 ・

 

「ということで、死にかけました」

「こちらがその報告書です」

「何やってるの!?」

 

 現在、ジブン達は命懸けで21階層から撤退した後、このままでは気が収まらないと感じ、19階層で暴れてからポータルで帰還。

 そして、ダンジョン協会で足利さんに、今日の探索について報告した。

 そしたら、足利さんに怒られた。

 クソバードの話の時はドン引きしていたのに、打ち上げ花火になったことを言ったら急に慌てだした。

 面目ない・・・。

 

「足が爆発したって言ってたけど、本当に大丈夫なの?」

「足じゃなくて足の下ですよ?」

「それは僕も確認しましたが、何とも無さそうでしたよ」

 

 ジブンと蒼がそう言うと、それでも心配だということで、ガチャから出てきたサンダル(パンダ柄)を履いた傷一つない足を足利さんに見せた。

 謎の爆発によって、これまで探索を共にしてきた運動靴が逝ったため、サンダルで地上まで戻ってきたのだ。

 

「えっ、太もも、意外と太いんだ・・・。———っじゃなくて!・・・確かに、どこにも傷は無いように見える。・・・この足、なんで私よりも白いんだろう・・・。ヤバイ、柔らかいしすべすべだし、一生触り続けられる。・・・あっ、いい匂いがする!萌ちゃんの気持ちがわかってきた・・・」

「あのー、もういいですか?」

「へ、へへへ・・・はっ!?そ、そうね!もう大丈夫だから、ありがとね!」

 

 足利さんがジブンの足を解放する。

 今の足利さん、前会ったエルフの人みたいになってたけど・・・追及しないであげよう。

 

「足利さんってもしかして疲れてます?休まないとだめですよ」

「え?いや、そんなことは・・・うん、疲れてるね。だから蒼ちゃんの足も触らせて」

「ダメです」

 

 蒼にバッサリと断られて、Orz状態になった足利さん。

 何だか、エルフの人に似てきたな、とは思うが、その後すぐに何か気が付いたような顔をして立ち上がる。

 

「そういえば・・・天規ちゃんって、足元で爆発を食らったのよね?なんで足は大丈夫だったの?」

「足にちょっとした火傷を負ってましたが、天規が自分でポーションをかけてたので治ったんですよ」

「後遺症もないので無事です」

「うん、火傷は無事には入らないけど・・・とにかく治ってよかったね」

 

 確かに痛かったが、ポーションで治せる範囲内だったのが幸いだった。

 そのお陰で、ジブンの足は綺麗なままだ。

 ・・・なんか、改めて自分の足を見ていると、覚醒前後の変化がすさまじくて、凄い違和感を感じるな。 

 

「と、とりあえず、二人とも気を付けてよ。幼馴染の言葉が言うには、美少女の死は人類の損失らしいんだから」

「「美少女じゃないです男です」」

「はいはい、男男」

 

 聞き流さないで。

 ジブン達にとっては大事なことだから。

 

「それにしても、切り裂きクソバードだっけ?・・・その妙に長い名前の鳥はそんなに強いの?」

「強さでいえばカブトムシより下です」

「カブトムシを倒せるなら対処可能っていう印象がありますね。後、あの切れ味は厄介だけど、速さはカブトムシくらいだし、基本的に攻撃手段が神風突攻だから避けることができれば勝手に気絶するだろうから、むしろカブトムシより楽な感じはする」

「ただ、一番厄介なのは」

「そいつが同時に100体くらい湧くこと」

「地獄じゃん」

 

 多分、普通の人があのクソバードの体当たりを喰らったら、1発で致命傷になる。

 そんな攻撃が、空から無数に降ってくるのは、流石にヤバイの一言に尽きるだろう。

 対処法としては、1体にでも会敵したら静かにかつ速やかにで倒すか、魔法か何かで一掃するかだろう。

 ・・・だが、今のジブン達には、どの方法も実現するのは難しい。

 

「・・・21階層の難易度も鬼畜過ぎない?」

「16階層あたりの蚊もそのくらいいましたが、そこら辺の階層で1番強いカブトムシと同じくらいのヤツがたくさん出てくるので」

「ジブンを打ち上げた爆発も気になります」

「アレはびっくりした。だって、天規が逃走中に突然、爆発して吹っ飛んだんだから」

「アレはマジで死ぬかと思った」

 

 あの後、ジブンは空中で〈飛翔〉を使って、ロケットのように階段まで飛んで行ったから何とかなったが、それが無ければ空中でクソバードの突攻を喰らって死んでただろう。

 ちなみに、爆発で打ち上げられた際にジブン、何体かのクソバードを頭突きで倒してたっぽい。

 

「それって罠の可能性もあるけど、天規ちゃんが言うには、踏んだ時の感触がおかしかったのよね?」

「はい、グニッとした柔らかい感触でし」

 

 言葉が途切れた。

 やはり文字数制限の呪いは厄介だ。

 

「・・・た。後、ちゃん付けは止めてください」

「そうなると、未知のモンスターの可能性も捨てきれないし・・・。とりあえず、今日2人が集めてきた新層の情報は上に提出しておくから、あそこの階層はなんて呼ぶことにする?」

「「岩山層」でいいんじゃない?」

「「山脈層」でもいいかもしれないけど、やっぱり岩山のほうが印象強いからね」

「それじゃあ岩山階層で提出するわ。報告ありがとね二人とも」

「こちらこそ、報告の整理ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 

 足利さんは、ジブン達の報告をまとめた後、書類を持って面会室から退出した。

 ・・・そして、また入ってきた。

 

「忘れてた!?2人の探索のアドバイスしなきゃならないんだった!」

「「アドバイス?」」

「そう!専属職員は、担当の探索者のダンジョン探索が停滞していたり、苦戦していたりした場合、探索者に攻略の助言を送ることになってるの。つまり、私は2人の探索の手助けをする義務があるということ」

「「ふーん」」

 

 そういえば、そんなことが書いてあったような気がする。

 さっきも相談してたような気がするけど、いい機会だからもっと相談してみるか。

 

「それじゃあ、僕の弓矢の練習したいんだけど、どこかいい練習場所ってないですか?」

「〈飛翔〉スキルも鍛えたいです」

 

 ジブン達は、遠慮なく足利さんに質問させて貰った。

 今のジブン達に足りないのは技術だ。

 いくらジブン達の身体のスペックが優れていようが、所詮は中身がずぶの素人。

 剣や斧の使い方も雑だし、蒼の弓矢に至っては5割くらいしか命中しないため、ほぼ牽制として使う程度になっている。

〈飛翔〉スキルに関しては問題外で、もはや〈ロケット頭突き〉スキルみたいになっている。

 今日の探索や16~18階層での探索で、どれか1つでもうまく使いこなせていれば、もっと順調に進めていただろう。

 そのため、そろそろ本格的に特訓したい。

 

「えーっと・・・そういえば、覚醒者専用の訓練場を協会の地下で建設中していたはずよ。そこは結構広く作られる予定だからそこで練習できると思う。・・・でも、完成が3週間後だったから、それまで待たないといけないけど・・・」

 

 やっぱり、そううまくはいかないか・・・ 

 覚醒者は普通の人より身体能力が高いから、普通の訓練場使ったらすぐにボロボロになってしまう。

 なので、魔法やら何やらを使って、頑丈な訓練場を作っているそうだ。

 だけど、完成まで時間がかかるそうだ。

 それなら、しばらくはダンジョンで特訓するしかないのか・・・。

 

()()()()()を持っている人は、最初のほうは練習してもあまり成果を得られないって言われてるけど、しばらく頑張っていれば・・・」

「「待って」」

「え?」

「今・・・()()()()()って言いました?」

「い、言ったけど・・・どうかした?」

「武器スキルって、何です?」

「えっ」

 

 足利さんの話を聞いてみると、武器スキルとはラノベでよくある、初心者でも武器をうまく扱えるようにあるスキルのことらしい。

 ・・・マジか。

 

「蒼規は・・・知ってた?」

「知らなかったけど・・・スキルなんてものがあるなら、そっち系のスキルがあるって考えはするべきだったのに・・・」

「「思いつきもしなかった・・・!」」

「2人共!?なんだか溶けてるように突っ伏してどうしたの!?・・・カ、カワイイ」

 

 ジブンのあまりにもな情報収集能力の欠如に気力が抜けて、机にぐた~とうつ伏せに突っ伏す。

 蒼の方も同様で、白髮の羽根つき美少女が机に突っ伏しているという絵面となっている。

 なんか、足利さんのいる方向からパシャパシャという音が聞こえるが無視しよう。

 

「はぁはぁ・・・はっ!?・・・え、えーっと・・・とにかく御2人のこれからの方針は決まったということで良かったですか?」

「あ〜・・・はい、アドバイスありがとうございました」

「さっそく試してきます」

「うん、頑張れ!」

 

 ジブン達はそう言うと、お辞儀をしてから退室したのだった。

 

 ・・・何か、お礼に贈り物しなきゃならないな。

 

 

 

 




 何事も、事前の情報収集は大事。
 
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