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種族:フギン 個体名:北豊 蒼規 性別:女(男)
レベル:1 属性:光
筋力:D+ 耐久:C 敏捷:A
器用:B 神秘:B+
スキル
〈鑑定〉 〈聴覚強化・中〉 〈忘却耐性〉
〈飛翔〉 〈疲労軽減・中〉 〈スタミナ上昇・中〉 〈神獣〉
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これが 蒼規のステータスらしい。
見事にジブンと似通ったステータスだが、筋力と耐久の部分が逆になっている。
それに、ジブンの属性は闇だが、蒼規の属性は光だった。
スキルを実際に使うことができるか試そうと思い〈鑑定〉を使ってみたら、案外あっさりと出来てしまった。
お互いのステータスを〈鑑定〉しあい、スキルの効果を確かめてみたが、スキルの内容は〈神獣〉以外がスキル名から予想できるもので、実際に効果も予想と同じだった。
唯一、パッと見で解らなかった〈神獣〉の効果はこうだ。
〈神獣〉・・・伝説の解釈により成長方向が変化する。
こんな感じだった。
それにしても、伝説の解釈か・・・。
意味深だけど、コレに関しては後で考えよう。
現在我が家では、生まれて初めての家族会議を行われている。
記念すべき最初のお題はジブン達の変化についてだ。
「ステータスに種族か・・・えーっと、とりあえず2人は体に違和感はないのか」
「「あるに決まってんじゃん、女体化したから」」
「そうか・・・」
お父さんが身体のことを気にしてくれる。
するとお母さんが、ジブン達の説明に疑問を持った部分について質問してきた。
「フギンとムニンって何?」
「北欧神話で出てくるカラスのこと。オーディンっていう主神の肩に乗ってるって伝えられてる使い魔みたいなもの。調べた結果、フギンが記憶でムニンが思考っていう意味らしい」
「へえ、そうなの」
「あれ?そうだったっけ・・・」
蒼規の説明に、ジブンは疑問を覚えた。
確か、フギンとムニンは逆だったような気がするが・・・。
だけど、実際にジブンが〈思考加速〉で、蒼規が〈忘却耐性〉のスキルを取得しているので、間違ってはいないのだろう。
・・・多分。
そんな感じで、家族会議はジブン達双子を中心に行われていった。
それを知ったのは、ただの偶然のことだった。
お父さんが会議の最中に、世間の様子も確認しようということで、テレビの電源を入れた。
そのチャンネルでは、緊急速報としてニュースが流れていた。
そして、画面には遠くから撮影されているであろう大穴の様子が映し出されていた。
『たった今、自衛隊から調査隊が編成され、大穴の調査に派遣されたもようです!専門家の話では・・・』
「「大穴?」」
「2人は知らなかった?長野県の市役所付近にでっかい穴が開いたんだって」
「ふーん」
「そうなんだ・・・」
ニュースでは、突然空いたらしい大穴の映像と、大穴の正体を推測するような内容が流れていた。
専門家達が、各々が崩落や地震の前触れ等の様々な推測をしている中、1人だけ面白い事を言った人がいる。
『それにしても・・・、人々の突然の変異や大穴の出現やらは、息子が読んでいたライトノベルって本に書いてありそうな設定ですね。あの大穴はダンジョンで、中にはたくさんのモンスターがいたりしてね』
そんな発言に、他の人は馬鹿げた話だと笑い、本人もさすがにコレはないかという様子で微笑していた。
だけど、
「ダンジョン?ダンジョン・・・」
ジブンは、その発言にワクワクした。
ファンタジー作品でよく登場するダンジョン。
中には恐ろしいモンスターと、巨万の富が待ち受けているかもしれない夢の場所。
もし、あの大穴がダンジョンならば・・・。
・・・行ってみたいな。
「アオ」
「・・・ん?どした?」
「もしダンジョンだったら、行きたい?」
「もちろん行きたい。けど、行くとしてもしっかりと準備しなきゃな」
「そうか、なら準備しよう」
「おう」
「いや、行かせないから。2人共しばらくの間、家から出ないで。病院に連絡して検査してもらうから、人が落ち着いた辺りに行くけどいい?」
・・・マジですか。
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ジブン達の体が変異してから一週間が経った。
相変わらず原因がわからないが、病院では異形となった人達が溢れかえり、検診を受けているそうだ。
だが、日本人の適応力は相変わらずのようで、次第に多くの人がこの状況に慣れていった。
例として挙げるとしたら、猫獣人みたいな人達がアイドルとしてデビューしたことだろうか。
なお、猫獣人の人達の顔はそこらのアイドルに劣らぬ程の美少女であったため、そこに本物の猫耳が追加されたことに歓喜して、デビュー数日で早くもファンもたくさん獲得しているらしい。
他にも会社の同僚がリザードマンになったとか、頭が燃えている人とかいろいろな例があるが、変異した人達に対してほとんどの人が差別発言をせず、むしろ動画投稿者になってバズったり、人気者になったりしている。
後、変異した人達は身体能力が高くなっていたり、何らかの特殊能力を得ているらしい。
自分達の〈鑑定〉のように、相手の個人情報を見ただけで知ることができたり、手から火や水等を出すことができるようになった者がいるそうだ。
他にも、植物の声を聞くことができるようになったり、物を宙に浮かしたり、地面を泳いで溺れる者まで出始めたとか。
そして、ジブン達が最も興味を惹かれた話題はと言うと・・・。
「まさか、本当にあの大穴がダンジョンとはね・・・」
「ここに来て、世界が一気にファンタジーになってきた。・・・今更か」
目の前で英語の宿題をしている蒼規は、今のジブン達の姿を見て、もう既に日常がファンタジーに影響されていることを再認識したようだ。
自衛隊から選抜された調査隊が大穴を調査したところ、中には生命体が発見された。
その生命体は地上の既存の生物と似通った姿をしていたが、サイズや身体能力があまりにも違った。
幸いにも銃は効いたが、それでも怪我を負わせる程度。
そんな生命体が何体も沸き、襲いかかってくる場所に自衛隊は苦戦。
さらに、暗く狭い場所であるため銃火器などが使えず苦戦しているそうだ。
その情報を聞いた日本国民は、ダンジョンだモンスターだと騒ぎ、民間への解放を求めているらしい。
・・・ニュースで、そんな裁判をやってるって言ってた。
なんだか、ラノベでよくわる展開になってるが、絶え間なく襲い掛かるという文面に、ちょっと不安が込み上げてきた。
このダンジョンって、攻略できる代物なの?
当分潜れそうにないどころか、そもそも一般人は立ち入ることができるのかという根本的問題に思い至ったジブン達は、とりあえずは自分自身の変化を調べることにした。
「・・・身体能力が上がったって言ってるけど、どのくらい上がった?」
「知らない。まだ調べてないから」
「ジブンも。・・・でも、日常生活には支障が無いからそこまで上がってないんじゃない?」
「無意識にセーブしてる可能性もある」
「・・・そういえば、そっか。その可能性があった」
ジブン達は、あの日から引きこもりとなっていた。
ジブン達の体の変化はあまりにも大きく、自身の新しい体に慣れるのにはかなりの時間がかかった。
例えば、翼が邪魔で椅子に座れなかったり、体が女性になっているため特定の部位の操作に慣れなかったり、とある部位を壁にぶつけて悶絶したり・・・。
そんな、様々な問題が発生し、2人で四苦八苦したりして過ごしていた。
それらの問題の解決には、姉のアドバイスが参考になった。
元々女性だった姉の話はとてもありがたく、ジブン達に女性の身だしなみという、男時代だったら絶対に興味を示さないようなことを教えてくれた。
女物の下着を買うジブンと兄の構図は、とても奇妙というか忌避感があったので、男物に近い物を選んでもらったりして、ある程度は変異前と同じ感じで過ごすことができている。
体の使い方も、1週間あればさすがに慣れる。
・・・嘘つきました。
椅子に満足に座れないのはさすがにキツイ。
また、ジブン限定での問題も見つかった。
「いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつね」
「・・・何故、そこで口パクに移る」
「これ以上話せなかった」
調べた結果、ジブンは21文字以上の言葉を話せなくなっていた。
元々は問題なく話せていたのに、この姿になってからは一度に21文字目をしゃべろうとすると、途中で声が出なくなってしまう。
まさか、こんな変化があるなんて・・・。
後の変化は、異性への興味が薄れたことと、トイレに行かなくてもよくなったくらいか。
ジブンの身体が別物になったと嫌でも実感した。
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「身体計測に行くわよ!運動着に着替えなさい!」
我が姉が突然、運動推進派となった。
いきなりどうした。
「・・・燈子、なんでいきなり身体計測?」
蒼規もジブンと同様、そんな疑問に思ったようで燈子に質問する。
それと、運動しに行くにしてもどこに行くというのだ。
ジブン達の姿を見ろ、このザマだぞ。
「病院は満員だからせめて自分達でできることはやってくれという方針で、身体能力の変化の調査のために健康診断を行って欲しいそうよ」
「うん。大体わかった」
ジブンもわかった。
とりあえず、身体計測をやればいいということは。
「というか、なんで燈子がそんなことを言う?場所は?」
「お母さんは仕事があるから頼まれた。そして、場所は近所の校庭借りれたからそこでやるわ」
燈子はそう言うと、ジブン達に着替えて来るように言う。
ジブン達には断る気は無いので、陸上をする時に着る運動着に着替えるのだった。
・・・。
何度も思うけど、ジブンの肌、随分と綺麗になったなぁ・・・。
背中の翼が邪魔で着替えに苦戦しながらも、何とか着替えて校庭に向かう。
徒歩5分という近所にある学校の校庭まで、誰とも会わなかったので、ジブン達以外に変化した人がいるかどうかは確認出来なかった。
この学校の校庭には、ナイター塔と呼ばれるらしい野球場とかで見るデカいライトが付いている高い建築物がある。
小学生の頃はなんかデカいのあるなーって思うだけで気にもかけなかったが、この校庭の設備にどれくらい金がかかったんだろうかと思うようになった
これが成長か・・・。
「それじゃ、始めるわよ」
「「その前に、準備運動させて」」
「そうだったわね。私は陸上について詳しくないから、2人でやっておいて」
「「了解」」
燈子から許可を取ったジブン達は、脚を曲げ伸ばしたり屈伸したりして、簡単に準備運動をする。
その際に、自分の体の一部に重りがついたような感覚を覚えるが、取り外しができないのがもどかしい。
その後は、身体を慣らすためにジョギングで校庭を1周する。
前までならば、体力が他の人よりも無かったジブン達は軽く息が乱れていたはずなのに、今はまったくと言っていい程に疲れを感じていない。
もしかして、ステータスにあった〈疲労軽減・中〉、〈スタミナ上昇・中〉が仕事をしている?
準備運動を終わらせ、ようやく走る準備ができた。
陸上部としては、今のジブンの本気を確かめたいが、まずは変化後の身体能力を確かめるために、軽く“流す“ことにする。
ちなみに、陸上競技での“流す“とは、7,8割の力でサラっと走るとか、力を抜いて軽く走ることだ。
「何回“流す”?」
「3回くらいでいいんじゃない?最近は家に引きこもってたから、準備運動したけどまだまだ体は鈍ってると思うから」
「了。合図はいる?」
「・・・一応やろうか」
「なら、ジブンが手を叩くから、それで」
「わかった」
蒼規とパパっと打ち合わせした後、スタンディングスタートの姿勢をとる。
その数秒後、ジブンはスタートの合図として、手をパンッと叩いた。
ジブン達の体は、音が鳴った瞬間にグンッ!と走り出す。
いつも通り反射的に音に反応して走り出すのは、ジブン達がこの姿になる前と変わらない。
だが、今日はいつもとは違った奇妙な感覚がした。
ジブンの中で、カチリとスイッチが入るような感覚。
今までにない感覚を前に、ジブンのこの身体に感じた違和感は、。
力のセーブが、できない!?
「「やべっ!」」
ジブン達の体は、恐ろしい勢いで加速した。
知覚した時点で既に50ⅿなんて過ぎ去っており、100ⅿまで足1歩分までの地点にいた。
それでも、勢いは衰えるどころか加速する。
ジブン達は、さすがにマズイと思い、慌てて止まろうとする。
だが、いつもの癖で急には止まらなかった。
短距離走の選手は、100ⅿを走った後もすぐには止まらず、少しだけ走り続ける。
これは、トップスピードから無理やり止まると足を痛めるからで、そうならないために減速するために走り続けるのだ。
だが、今思えばその判断は間違いであった。
ドッゴーン!!!バキッ ドカーン!!!
「・・・えっ」
ジブン達の減速は間に合わず、200ⅿ先の進路上にあったナイター塔へ衝突してしまった。
後で聞いた話なのだが、目の前から消えた羽つき双子と、工事現場でも滅多に聞かないような大きな音がするという突然の事態に直面した姉は、すぐには何が起こっていたのかを理解できず、呆然としていたらしい。
そんな姉が、数秒後に我に返った後、慌てて音の発生元へと見た。
―――そこには、へし折れて倒れたナイター塔と、その根本で目を回すジブン達の姿があったのだという。