双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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そもそも「位階」って、何?

 現在、ジブン達は予定よりも圧倒的に早く、25階層へと辿り着いた。

 あの後、クソバードの群れを撃退したことで自身を身に付けたジブン達は、「岩山層」を順調に進むことができた。

 その際に判明した事なのだが、あのクソバードは基本的に群れを構成しており、今のところ発見できたはぐれの個体は、最初の21階層の探索で遭遇した個体だけ。

 また、クソバードの群れを半分くらい倒すと撤退していき、1度でも群れを撃退すると、しばらくの間はその階層ではクソバードの群れに襲われないことがわかった。

 もし、こちらを発見したとしても、すぐに逃げていくため、次の階層へと繋がる階段はあっさりと見つけることができたのだ。

 その後、初めに遭遇した群れと同じくらいの規模になって襲いかかってきたが・・・。

 

 どうやらクソバードは、群れの数が元の数に戻るまでは襲いかかってこないようだ。

 当たり前だが、階層を移動すると普通に襲ってくるため、この「岩山層」は階層ごとでクソバードの群れに対処しながら進むことを前提としているらしい。

 

 それに、クソバードは小鬼並の低耐久だったので、小鬼を1撃で倒せるジブン達にとっては、苦戦する相手ではないという認識を持った。

 その分、経験値も小鬼並みのようで、経験値稼ぎには適していないみたい。

 

 そのことが判明した今、クソバードはアイテム集めの面ではものすごく美味しい相手に早変わりした。

 ここでレベリングをすれば、一々ダンジョン中を駆け回って獲物を探さずに済むし、塵も積もれば山となるといったように、効率的にレベルを上がることだろう。

 さらに、群れを1度撃退すると、「銅のコイン」を5,6枚落とすため、これからは積極的に狩った方がいいのではないか?と思ったくらいだ。

 

 ちなみに、クソバードのドロップアイテムは、鼻上のノコギリのような部位、翼膜、尻尾、「銅コイン」だった。

 

 ・・・それと、最初の交戦以来、戦闘時に笑わないように気を付けた。

 流石に、家族にキモイって言われるのは心にくるものがあったので、以降は気を付けようと思う。

 とはいっても、クソバード達との戦いはもはや、作業のように淡々とこなすようになったため、最初のように気持ちが高揚することは無かった。

 

 

 この〈洞窟層〉で発見した、クソバード以外の新モンスターは全部で3種類。

 

 1体目は、「地雷ガエル」。

 あの爆発は、こいつが原因だった!!

 こいつの体色が、完全に周囲の岩山と同じ色であり、普段は周囲の岩肌に擬態しているようだ。

 よく観察しないと見分けることができず、うっかりと踏んでしまうことがそれなりにある。

 そしてこのカエル、背中に強い衝撃を感じると、自身の身体を爆発させて踏んだ者を打ち上げるという、生きた地雷の如き生態を持っていた!

 爆発の威力自体はそこまでないが、鉄の装備がボロボロになる他、爆音でクソバードを引き寄せるという厄介者。

 こいつの存在が、この階層の難易度を上げていると過言ではない。

 なお戦闘能力は無いらしく、矢を放てば爆発させずに簡単に倒せた。

 ドロップアイテムは、小さな爆発を起こす石。

 

 2体目は、「電気ヤギ」。

 捻じれた角が生えている1.5~2mほどのヤギで、外見は普通の牡山羊だが、角の間からそこそこのスピードのある雷の球を生み出して放つ。

 その雷の球を受けるのは怖かったので、当たらないように回避したのだが、雷球が直撃した岩が焼け焦げた。これを金属装備を着た状態で受けるのはマズイ。

 しかし、雷球の出現には5秒ほどの溜めが必要のようだ。なので、雷球を放つ前にさっさと倒した方がいいだろう。

 また、クソバードとは協力関係にないどころか、むしろ仲が悪いようで、23階層ではクソバードの群れとヤギの群れの抗争が勃発していた。

 ドロップアイテムは、ヤギの角と「銅のコイン」。

 

 3体目は、「ゴーレム」。

 岩に擬態していた、ファンタジー作品でお馴染みのモンスター。

 このゴーレムは、大きな岩に複数の岩が手足のようにくっついた雑な人型をしているタイプだ。大きさは2mで、岩を投げたりして攻撃してくる。

 動きが遅く、胸のあたりに弱点と思われる核のようなものがあったため、それを破壊するとあっさり倒せた。岩山層の最弱モンスターはゴーレムかもしれない。

 ドロップアイテムは、壊れたゴーレムの核、魔力が籠められた手の平サイズの石、「銅コイン」。

 

 以上だ。

 

「岩山層」のモンスターは、想像以上に殺意がマシマシだという印象をうけたが、これがまだ「洞窟層」の前半だという事実に驚きを隠せない。

 一体、この先はどんな厳しい環境になっているのか、考えるだけで不安になる。

 

 しかし、ジブン達はまだ未熟。

 なので、26階層に行くのは先延ばしにして、まずは「岩山層」に慣れるために、2日間くらい探索してから向かうことにした。

 この先に、何が待ち受けていても問題なく戦えるように・・・。

 

 ・

 ・

 ・

 

「・・・ねぇ2人共。ちょっと、攻略速度が速すぎるんじゃないかな?」

 

 ジブン達が今日の探索の成果を報告すると、足利さんにそんなことを言われた。

 

「「・・・そうですか?」」

「うん、そう。そもそも21階層って前回、2人が撤退を余儀なくされた場所だよね?それなのに、何でそこから一気に25階層まで進出してるの?それに、他の探索者の人達は、初見の階層の踏破は1日以上がかかるのにこんなに早いのって・・・本当に無茶してないの?」

「ジブン達、無茶は・・・してませんよ?」

「これが僕達にはちょういいペースなんですよ。足利さんの助言のお陰で探索の安定性も上がりましたし、そもそも僕達の肉体スペックが優れてるんで、今の階層でも余裕で通用できます。・・・それと、この前の助言のお礼です、どうぞ。中身はケーキです」

「ご家族と一緒に食べてください」

「えっ、ありがとう!両親と今は別居中だから、私1人で楽しむね。・・・じゃなくて!2人の報告はありがたいんだけど、本当に大丈夫なんだよね?油断してこの前みたいにピンチにならないでよ・・・?」

 

 そんなことを言われても、ジブン達が挑んでいる場所は、何が起こるかわからない未知の世界であるダンジョンだ。

 出来るだけ気を付けているが、いつ予想外な事態が起こるかがわからない場所なので、申し訳ないが、その約束は確約はできない。

 

「これでも慎重に進んでる方ですよ。天規が打ち上げられた時はどうなることかと思いましたが」

「それは忘れて」

 

 だけど、「岩山層」で〈飛翔〉の練習をできるようになったり、あの爆発ガエルの見分け方も見つけたので、あの階層での探索は安定してできるだろう。

 今後は、あの階層を良い稼ぎ場所として利用していこうと考えている。

 

 ちなみに、爆発ガエルの判別方法とは、あのカエルの臭いだ。

 爆発ガエルの体からは、強い火薬の臭いがするため、それに気が付けば対処は簡単にできた。

 なので、臭いに気を配る余裕のない乱戦時でなければ、誤って踏んでしまうことはないだろう。

 

「しばらくは25階層の探索を中心にやるので多分ですが、あんまり珍しい報告はできないと思います」

「それでも十分だよ。25階層って、世界でも1番の進捗って自覚ある?他国ではやっと一般の探索者が18階層の攻略を開始した!って、大きなニュースになってるのに・・・」

「・・・そうなんですか?」

「天規は知らなかったの?今朝のネットニュースで話題になってるよ」

 

 知ってたんなら言ってくれよ。

 ジブンは探索の準備で忙しいから、ニュースを見る暇なんて無いんだから。

 

「ニュースは見たほうがいいよ。特に2人は「神話級」で上層部からも注目されているし・・・」

「「?」」

「・・・あれ?これって、言っていい内容だったっけ・・・」

 

 足利さんが、やってまった・・・、というに冷や汗をかいたが、数秒後には何でもないように、元の表情に戻った。

 今の反応は多分、思考放棄したな。

 

「・・・まぁ、それはいいとして、2人は覚醒者の位階って知ってるよね?」

「「知りません」」

「えっ、嘘でしょ・・・!?」

 

 テレビや「進化の宝玉」で出てくる、その“○○級”がどういう基準なのかがよくわかってない。

 だって、そういう情報がまだ明確にわかってないのだから。

 ジブン達は神話級とあり、肉体スペックも高いから強い方だとは思うが、正確な格とかはわからないし、今までも気にしてこなかった。

 

「本当に知らないの!?・・・その表情から察するに知らなそうだね。なら説明するよ。まずは・・・」

 

 足利さんが言うに、今のところ判明している位階はこのようになっているらしい。

 

普通級(ノーマル)

 覚醒者の半数以上を占める、最下位の位階。人並外れたステータスを持つ。

 例:獣人、エルフ、リザードマン

 

希少級(レア)

「普通級」の1つ上の位階。「普通級」よりも強力なスキルを保有する。

 例:属性持ちの獣人、ハイエルフ、ドラゴニュート

 

逸話級(アネクドート)

 種族名に都市伝説や怪談等に登場する存在の名を冠するようになる、「希少級」の1つ下の位階。特異なスキルを複数保有する。1つの国に100人程度。

 例:花子さん、レッドキャップ、河童

 

童話級(フェアリーテール)

 種族名に童話の登場人物の名を冠するようになる、「逸話級」の1つ上の位階。特異なスキルを複数保有する。1つの国に50人程度。

 例:桃太郎、裸の王様、赤ずきんのオオカミ

 

伝説級(レジェンド)

 種族名に伝承に登場する怪物や神々等の名を冠するようになる、「童話級」の1つ上の位階。特異なスキルを複数保有する。1つの国に1人いるかどうか。

 例:ヘラクレス、サンダーバード、ヘファイストス

 

神話級(ミソロジー)

 種族名に神話に登場する神、神獣等の名を冠するようになる、「伝説級」の1つ上の位階。「伝説級」との違いがよくわかってない。

 また、現在世界中で確認されているのは10人にも満たないらしい。

 例:フギン、ムニン、ゼウス、アヌビス

 

 以上だ。

 

 なんと、神話級が1番上の位階だった。

 しかも、ジブン達の位階が希少な方だということにも驚きである。

 

 ・・・そうなると何故、ジブン達は神話級になれたのかが気になる。

 多分それは、現状でいくら考えても答えは見つからないだろう。

 だから考察は一旦保留にするとして・・・

 

「もしかして、丘山さんは「レッドキャップ」?」

「そうだよ、丘山さんは「レットキャップ」っていう逸話級の種族なんだって。よく知ってるね」

 

 レットキャップとは、確かスコットランド辺りの残虐な妖精のことだったはず。

 どこかの丘で待ち伏せし、通りかかった旅人を殺す邪悪な妖精で、被害者の返り血によって被っている帽子が真っ赤に染められていることから、そう呼ばれるようになったらしい。

 成程・・・「逸話級」とは、都市伝説だけじゃなくて、そういう昔の伝承も含まれるのか。

 まぁ、妖怪が「逸話級」な時点で今更か。

 

 それにしても、丘山さんはいつも赤い帽子を被っているので、薄々そうなんじゃないかと思っていたが、やっぱり予想は当たっていたか。

 もしかして、丘山さんは能力的に暗殺者(アサシン)タイプのステータスをしてるのかな?

 

「丘山さんって、協会に来る前はどこかの市役所で働いていたらしいんだけど、「逸話級」の覚醒者だったこともあって、国の役員の方がそこから引き抜いたんだって」

「「なるほど」」

 

 その後、足利さんから詳しい話を聞くと、どうやら協会側は、公務員や国家職員の中から「逸話級」以上の覚醒者となった者達を集めたらしい。

 その人達は上のポジションで雇って、部下となる人達を当時の足利さんのような就活生から募ったそう。

 こうして、今の探索者協会ができたのだという。

 急ごしらえで創られた組織なので、運営をするにあたっての課題を複数抱えているらしいが。

 

「ええっと、何の話だったっけ?・・・そうだった!2人は今でもいろんな人から注目されてるから、しばらくは大人しくした方がいいって伝えようとしたんだった」

「・・・それって、政治関係の面倒事ですか?」

「ま、まぁ、今の2人の進捗が世間に知られたら、今以上の注目が集まると思うよ。マスコミから取材を受けたり、他国から勧誘があったり・・・そんな感じのいろんな面倒事が押し寄せてくるから心に留めておいてね」

 

 ジブンとしてはあまり実感を感じられないが、賢い足利さんが言うのならその通りなのだろう。

 ジブン達のダンジョン探索の猶予は、残り2カ月と6日。

 それ以降は地元に帰るので、余計な事に時間を費やしたくない。

 それに、取材とか受けたら緊張で噛みまくるに決まってる。

 陸上競技を通して緊張を押し殺す術を身に付けているが、人前に出た時の緊張は別物だと思っているので、絶対に耐えられないだろう。

 

「それに、この先の階層へ挑みたいなら準備が必要だと思うよ。ほら、2人共21階層では準備不足と油断で痛い目に遭ってたでしょ?」

「「うっ・・・」」

「だからまずは、今いる階層に向き合って、地道に力を付けるのがいいよ。ジブンと向き合うことで、また新しい発見があるかもだし」

「・・・はい、わかりました」

「そうします」

「うん、よろしい!それじゃあ私は報告しに向かうから、困った事があったら何でも言ってね」

 

 足利さんは、ご機嫌な様子で立ち上がり、机の上の書類をまとめて退室しようとする。

 

 ・・・そして、動きが止まった。

 

「・・・ね、ねぇ、お願いがあるのだけど・・・いいかな?」

「どうしました?」

「ジブン達に出来ることなら、ある程度ならやりますが」

 

 足利さんは、おずおずといった様子で振り向くと、申し訳なさそうな表情を浮かべ、ジブン達に頼み込む。

 それを了承したジブン達へと、少しだけモジモジしながらも、ニコリと笑みを浮かる。

 

「そ、そのぉ・・・2人の翼、少しだけ触らせてくれないかな?前回触った時から、触った時の感触がクセになっちゃって・・・」

「「・・・」」

 

 そう言った時の足利さんは、ハァハァと息を荒げて、少しだけ頬を上気させていた。

 ・・・・・・。

 その後、足利さんはジブン達の翼を数分程ワシャワシャしてから退室した。

 




 Q なんで双子は、探索者の癖に「位階」についてを知らなかったの? 
 A 現段階での「位階」についての情報は、世間一般では詳しく知られてません。なので、双子に限らず多くの人が知りません。
 
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