双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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 投稿ペースを遅くしたら、生活に余裕ができました。
 やっぱり、自分にとって毎日投稿は難易度が高かったんだなと痛感し、毎日投稿している&評価の良い他の人がどれ程凄いのかを思い知りました・・・。
 
 とりあえず、今は読者の方々に楽しんでもらえるような作品を作れるように頑張ります。


ブルーライトが照らす洞窟

 苦戦、かぁ・・・。

 

 足利さんに、無茶をしてないか聞かれた時から数日後、ジブンは、自身が窮地に陥った時、どうするのかを思い悩んでいた。

 ラノベでも主人公達は、ジブンより圧倒的に強い敵相手や困難に直面した時、自身の持つすべてを駆使して戦い、見事打破していった。

 

 だが、それは創作だけの話だ。

 現実に同じことがあったとしたら、ジブン達はすぐさま撤退するだろう。

 両親に、ダンジョン探索で無理をしないと約束しているし、何より、ジブン達が死ぬかもしれない事態に陥りたく無い。

 その時、ジブンは咄嗟に動けるかわからないし、死ぬのは嫌だ。

 なお、昨日のクソバード戦でのハッチャケはノーカンとする。

 

 だから、ジブン達はいままでのように安定した探索をしていればいい。

 それで十分に借金も、ジブン達の資金も、心も満たせているのだから。

 

 だか、ジブン達はこのダンジョンの踏破するため、歩みを止める事は無いだろう。

 何故ならば・・・

 

「どうした、天規?そんなボーッとして」

「・・・えっ、あ〜、なんでもない。考え事だから」

「気をつけてよ。この階層の探索は今のところ順調だけど、油断したらすぐ大惨事だから」

「わかってる」

 

 今回の探索の目的は、26階層の先見だ。

 本格的な探索は行わないが、蚊の時みたいに階層内の難易度が一変するかもしれないので、対策を練るために行うことにした。

 

「クソバードの群れが復活する前に向かうよ」

「今行く。―――っ!?アオ、後ろ!!」

 

 蒼規の背後には、離れた場所から蒼規に向かって角を構える、数匹の電気ヤギがいた。

 ヤギ達の角には既に雷の球が生み出されており、いつでも発射が可能な段階だ。

 

「えっ」

 

 蒼規が後ろを振り向きが、既にヤギは雷弾を放った後だった。

 

「〈闇の手〉!」

 

 ジブンは、〈闇の手〉のスキルを発動。

 ジブンの体から伸びた巨大な闇色の手は、蒼規に迫る雷弾をギリギリのところで撃ち落とした。

 

「あ、ありがとう」

「魔法お願い。その後突っ込む」

「わかった、〈ライトボール〉×6!」

 

 蒼規が光の魔法を放つ。

 放たれた複数の光球が、ヤギ達へと炸裂し爆発を起こす。

 その際に土煙が発生し、それが晴れると、生き残ったヤギ達は再び雷の球を放とうとする姿が見えた。

 ―――けれど

 

「ごめん、やらせない」

 

 ヤギ達の背後には、既にジブンが後ろに回っていた。

 そのままヤギ達の首を落とし、不意に始まった戦闘はあっさりと終了した。

 

「あ、危なかった・・・」

「気をつけてよ」

「今回ばかりは気付けなかったから助かった、ありがと・・・あ、角ぉーーー!!」

「いきなりどうした!?」

 

 蒼規は突然叫び声を上げると、近くにあった巨大な岩の裂け目に向かってスライディングし、何かを掴もうとしていた。

 そして、ガクリッと肩を落とした。

 何があったんだ?

 

「ドロップアイテムが・・・落下した」

「ドロップアイテム?」

 

 そういえば、最初に倒したモンスターが、角のドロップアイテムを落としていたような・・・。

 なるほど、先程の戦いの余波で転がって落ちたのか。

 

「・・・で、どうするの?」

「取りに行ってもいい?」

 

 ・・・まぁ、クソバードはしばらく襲ってこないし、〈飛翔〉も自動車60kmくらいの速度なら制御できるようになったから、落下の心配は少ないか。

 この岩山の裂け目も、人が何10人も入れる程のスペースがあるし、岩壁にぶつかることもないだろう。

 雲に隠れて底が見えないのが不安だけど・・・。

 

「・・・いいと思う」

「行ってきます!!」

「ちょ、待って、ジブンも行く!」

 

 ジブン達は、ドロップアイテムを回収するため、岩山の裂け目へ飛び込むのだった。

 

 ・

 ・

 ・

 

 裂け目は思ったより浅く、雲を抜ければすぐに底が見えた。

 もしかしたら未確認のモンスターがいるかもと思ったが、岩肌にゴーレムやヤギが張り付いているだけで、新たな発見とかは特に無かった。

 

「どう、あった?」

 

 先に裂け目の底へ降り立った蒼規に、落ちたドロップアイテムがあったかを聞く。

 すると、ワナワナと震えた手で、ボロボロになった何かの破片を握りながら口を開く・・・。

 

「こ、壊れてる・・・!?」

「あ、あー・・・」

 

 どうやら、落下の衝撃で割れてしまったらしい。

 結局“骨折り損“になったが、裂け目の下の調査ができたと思って割り切ろう。

 

「しょうがないか、戻ろう。・・・ん?んんんんん??」

「どうした?芦屋さんみたいな声出して」

「誰が芦屋だ。・・・そうじゃなくて、なんか綺麗な洞窟を見つけた」

「キレイな洞窟?」

 

 蒼規が指差す方向を見てみると、そこには薄らと青色に輝く洞窟の入口があった。

 だけど、本当に薄らと見える程度だったので、よく気が付いたなと素直に賞賛する。

 

「どうする?ああいう場所は大抵良いものがあるよ。それに、新しいモンスターもいるかも知れないし、調査の一環として行ってみない?」

 

 蒼規の言い分も理解できるが、今のジブン達の装備は暗くて狭い場所の探索を想定した物ではない。

 それに、洞窟の中はそれなりに明るそうだが視界は悪そうだ。

 そもそもお前、狭い場所での弓で戦う練習して無いだろ。

 

「ダメ、圧倒的に準備が不足」

「準備ならしてるよ。ほら」

 

 蒼規が取り出したのは、懐かしのLEDライト付きヘルメット。

 現在のジブン達が探索する階層は明るい場所ばかりで、「洞窟層」を潜る機会も無かったため使われなくなった。

 だから、アイテムボックスのスペース確保をするため、ホテルに置いていくのが常だったのだが・・・

 それを・・・どうして持ってる。

 

「アイテムボックスが進化したお陰で、容量が増えて良かったよ」

「・・・アイテムボックスって進化するの!?」

「そうだけど・・・言ってなかった?」

 

 聞いてないんだけど。

 

「アイテムボックスって、魔石を一定量与えると少し成長する物らしいよ。今では前の5倍くらいの容量があるっぽい」

「へぇ〜、そうなんだ・・・」

 

 ・・・ん?魔石を与えると?

 

「・・・魔石を?」

「そう、魔石」

「・・・」

 

 やったな、コイツ。

 

 

 

 

 蒼規が魔石をちょろまかしていた事実が発覚した。

 なので、その罰として、今日のガチャの取り分をすべてジブンが頂くことが決定した。

 必要ならば言ってくれればよかったのに、黙ってるじゃねぇーよ!

 と、そんなことを思いながらも、アイテムボックスの容量が大きくなったのは純粋に嬉しかったため、この程度の罰に収めてあげた。

 

「次は、絶対、報告、する。OK?」

「わ、わかったよ。ごめんて・・・」

 

 次からは報連相をしっかりするよう約束をした後、洞窟探索のための準備をする。

 準備と言っても、頭にLEDライト付きヘルメットを被っただけなのだが。

 

「それじゃ、準備できたし行くか」

「行こ行こ」

 

 ジブン達は洞窟の中へと入る。

 洞窟の中は、奥から漏れ出ている青色の光に照らされていたお陰で、普通の洞窟よりは前方がよく見えた。

 これはまるで、海の傍にある、海水によって洞窟が青く見える洞窟みたいだと思える程に青一色。

 これくらいなら、ライト付きヘルメットも必要なかったのではないかと思う。

 それにしても・・・。

 

「この青色の光って、何の光?」

「こういう場合は何らかの魔法の鉱石かクリスタルか、もしくはモンスターが放つ光というパターンもあるね」

 

 蒼規と話しながら洞窟を進むと、前方からより強い青色の光が見えた。

 恐らく、この先に光源があるのだろう。

 ジブン達は、何が来てもいいように警戒しながら進み、その先の光景を恐る恐る覗き込んだ。

 

「「おぉ~!」」

 

 そこは、辺り一面が淡い青に染まった、とても広い空間だった。

 青色の輝きを持つクリスタルが地面や壁をビッシリと埋め尽くす。

 そして、空間の奥には、巨大なクリスタルがまるで剣山のように鎮座しており、放たれた淡い光が空間を青に染め上げ、幻想的な光景を生み出していた。

 

「これは・・・」

「洞窟を照らす青色の光・・・ここに生えているクリスタルの光だったのか」

 

 そんな幻想的な光景に圧倒されていたが、自分が気を緩めていたことを自覚し、再び気を引き締める。

 ここは未知の場所で、モンスターが襲ってくる危険のあるダンジョンの中。

 もしかしたら、今もジブン達を襲おうと身を潜めているモンスターがいるかもしれない。

 だからまずは、この空間の調査をしよう。

 もちろん、周囲を警戒しながら。

 

「ジブン、クリスタルを〈鑑定〉するから」

「じゃあ僕は周囲を警戒するね」

「頼んだ、〈鑑定〉」

 

 ――――――――――

「魔水晶」

 魔力を内包する水晶。

 内包する魔力量によって色が濃くなっていく。

 主に、装備へのスキル付与や魔道具の原料として使われる。

 ――――――――――

 ――――――――――

「レッサーオリハルコン」

 鉄より硬く、そして軽い、青色に輝く魔法鉱石。

 しかし、本物のオリハルコンと違って内包する魔力量が圧倒的に少なく、硬度も本家には到底敵わない。

 しかし、腕の良い職人がこの鉱石を鍛錬すれば、武器は魔法の力を宿すだろう。

 ――――――――――

 

 伝説級の鉱石があった。

 レッサーが付いてるが、それでも説明文を読む限り、圧倒的に鉄よりも優れたファンタジー鉱石!

 しかも、この鉱石の特性である”軽い”という1文。

 もしかしたら、この鉱石でできた装備なら、動きを阻害せずに十分な防御を得ることができるか・・・?

 それが実現すれば、これからの探索が安定するな。

 

 そう思い至ったジブンは、先程の警戒心とか何やらをすべて放り投げて、ここで採掘することに決めた。

 

「よし、この鉱石掘りまくろう」

「いきなりどうした・・・」

「〈鑑定〉すればわかる」

「・・・?〈鑑定〉」

 

 こうしてジブン達は、ツルハシ(ガチャのC(コモン)で出た)を振るって採掘を始めた。

 

 ・

 ・

 ・

 

 30分後、ジブン達は採掘作業を終了した。

 本当はもっと採取したかったが、蒼規曰く、これ以上はアイテムボックスに入らないとのことらしい。

 今、アイテムボックスの中に入っている魔石を消費して容量を増やしているが、それでも追いつかないとのことだ。

 何さらっと戦利品を勝手に消費してるんだよ、と言いたかったが、採掘中にジブンへと確認をして了承を貰ったらしい。

 ・・・どうやらジブンは、作業に夢中で聞き流していたようだ。

 次からは、作業中でも周りに気を配ろうと反省する。

 

「今日は終わりで、続きは明日にする?」

「あ~っと、そのことなんだけど・・・コレって、どこで手に入れたか聞かれるのでは?」

 

 ・・・確かに。

 

「・・・じゃあ、これどうする?」

「・・・ひとまずは報告すればいいんじゃないかな。だけど、ここまで来れる探索者がどれだけいるかわからないけど、独占みたいなことは出来そうにないと思う。利権とか政治とか、そういう感じの面倒事もありそうだし」

「そっか・・・じゃあ、金儲けは延期」

「そうしよ。無理に欲張って、何らかの面倒事に巻き込まれたくないし」

 

 大儲けは、アイテムボックスの容量をもっと増やしてからにするか。

 そんなことを考えながら、最後にこの美しい光景の見納めをしようと顔を上げる。

 

 ・・・違和感を覚えた。

 

「・・・入口が消えてる」

「えっ」

 

 ジブン達が入ってきたハズの入り口が見当たらないのだ。

 ジブン達は、何が起きてもすぐに撤退できるように入り口近くで採掘していたのにも関わらずだ。

 それに、蒼規の話を聞いていなかったが、何が起きてもいいように入り口の確認は怠らなかった。

 体感、10分おきに確認していたから、約10分前までは入り口は確かに存在していた。

 

 これは明らかにおかしい。

 バカでもそう確信できる異変に、ジブン達は今更ながらに警戒を強め、慌てて周囲を見渡した。

 

 だが、周囲には青色の鉱石群が広がるばかりで、異変は見つからない。

 

 ・・・なら、何故入り口は消えた?

 まるで、洞窟自体が意思をもって閉じたように・・・。

 そう思った瞬間だった。

 

 ゴゴゴゴゴォ・・・ッ!

「「!?」」

 

 洞窟全体が地鳴りを響かせ、振動し始めた。

 

「何が起こってる!?」

「とりあえず、すぐに戦えるように構えて!!」

 

 洞窟の震動とともに、広間の奥にあった水晶や鉱石の山が崩れていく。

 そして・・・巨大な存在がその姿を現した。

 

 ―――青く輝く水晶で構成された巨体。

 20m以上はありそうな人型の巨像。

 両肩には巨大水晶が、背中からも背ビレのような水晶群が棘のように生え、頭部と思わしき箇所には、単眼のように赤い輝きを放つ球体。

 その姿は、伝説上の怪物―――サイクロプスを連想させた。

 

 口無き相貌がこちらへと向けられ、赤い眼光を模した球体がジブン達へと向けられた。

 その姿を見て、ジブン達は察した。

 

 

 ―――こいつは、これまで出会ってきたモンスターの中で一番強い、と。

 

 




 
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