試験終了から1時間後、受験者の合否が発表された。
「K15と16ある?」
「待って、今探してるから。・・・・・あった、あったよ!15番と16番!2人共ばっちり合格してる!」
「「よっしゃー」」
なんと、2人とも合格していたのだ。
これには喜びのあまり、思わず蒼規とハイタッチをした。
正直、ジブンは実技試験で失敗した蒼規は合格できないと思っていた。
だけど、合格できたってことは・・・アレか?あの選んだ武器の練習時間も評価対象だったのか?
それならば、あの時間を真面目に取り組んでいた蒼規が合格になるのは納得できるな。
その後は、探索者になるにあたってのルールや、ダンジョン、ダンジョン関連グッズの情報をまとめた本を渡される。
それと、蒼規だけは武器の扱い方の教本を買うようにと言われていた。
流石に、武器の扱い方に関しては見逃されなかったようだ。
そして最後に、資格取得の証である探索者の免許証を受け取った。
・・・ジブンの手元には、探索者の証である迷宮探索免許証がある。
そこに貼られた写真を見ると、写っているのは数カ月前とはまるで違う姿のジブン。
それを見て、ジブンの姿は本当に変わってしまったのだと思い知った。
・・・うん。だから、ここからは新しいジブンのスタートダッシュだ。
新しい肉体と手に入れた力で、ジブン達はこれからの人生を充実したモノにできる・・・と思う。
だから、今までよりも自信を持っていこう。
なにせ、ジブン達は晴れて探索者になれたのだから。
ないはともあれ、とりあえずは・・・
「よし、ホテルに帰ろう」
「うん、そうしよう」
今日はいろいろあって疲れたので、さっさとホテルに帰った。
ダンジョンの開放日までに数日あるので、その間は出された課題を消化する時間にしよう。
他には、ダンジョンを潜る準備をすべきか。
とりあえず、今日は明日に備えて早めに寝よう。
おやすみ・・・zzz
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あれから数日後、とうとう待ちに待ったダンジョンの一般への開放日となった。
一般開放と言っても、迷宮探索免許が無ければダンジョンに入ることはできないのだが、それでも日本中が祭りのように盛り上がっている。
そんなダンジョン解放の初日。
「・・・品揃えがいい」
「明らかに品揃えが昨日よりも充実してるな・・・」
ジブン達は、初めてのダンジョン攻略に向けて入念な準備をしていた。
ダンジョンでは、多分だが想定外なことが起こる可能性があるだろうし、どんな場合でも対応できるように備えなければならない。
なので、これまでの人生で貯めた金額、2人で合計40万円に親からの借金最高40万円を使って必要そうなものを買うために、探索者協会へと来ていた。
「・・・改めて思う」
「何が?」
「日本で剣売ってるって、すごいな」
「今更でしょ。・・・天規はどの武器にする?」
「とりあえず片手斧で」
「やっぱり、それにするんだ?」
「そう。それより、こっちにレアな剣売ってるよ」
「レアな剣って何?それはそうと、今行くから待ってて」
本当は日用品ショップでサバイバルナイフやナタとかを調達しようと思っていたが、試験合格後に貰ったダンジョン関連ショップ紹介に、協会本部内の店舗が紹介されていたのを見つけた。
なので、試しに行ってみると日用品ショップはおろか、他の店舗では絶対に売っていないであろう様々な武器が売っていた。
初めて見た時は、ますます、ファンタジー小説で出てくる場所みたいになってきたな、と思ったものだ。
ジブン達は、昨日の時点でこの店に来て武器を買おうとしたが、まだ品揃えが不十分なので明日に再び来るように言われたのだが・・・。
「み、見たことがない武器がある・・・!」
「ソードブレイカーって名前らしい」
「何?なんでこんなクシみたいな形状してるの?」
「名前的に、刀身を折るため?」
「な、なるほど?」
本当に、昨日とは品揃えが大違いだった。
ゲーム等が要因で知名度のある「レイピア」や「メイス」のような武器の他にも、たった今、蒼規が眺めている「ソードブレイカー」とか「フランベルジュ」のような、知名度が低い武器まで売られていた。
中には、時代劇での役人が「御用だ!御用だ!」と言って携えていた「十手」とかいう物まであった。
とはいえ、どれも癖が強そうな武器だったのと金が少ないので、最小限の使える武器を購入することにした。
「剣はどんなのがいいと思う?」
「狭い場所でも振り回せるヤツ」
「だよね」
双子でいろいろと相談しながら武器や道具を選んでいく。
ジブンが片手斧(5万)を選び、蒼規が鉄製の剣(5万)を選んだ。
ついでに、何かあった時の予備として互いに木刀(5000円)を2つずつ買っておく。
防具に関しては、鎖帷子(10万円)を買った。
鉄製の鎧とかあったが、装備が重すぎるのは逆にマイナスになりそうだったので、選ばなかった。
他にも、ゼリー飲料などの簡単に食べられる食料に、ティッシュや防犯ブザーなどの小物を買ってダンジョンへと向かった。
費用は合計40万円。
買ったものは、互いの背中に背負ったリュックサックに詰めて出発する。
ダンジョンの大穴は、探索者協会から徒歩5分の場所にあるらしい。
なんでそんな近いのかというと、探索者が通いやすいようにするために近場に協会本部を立てたらしい。
他にも、中からモンスターが溢れた時には、協会本部に常駐している自衛隊や戦闘が可能な職員を速やかに派遣できるようにするためだそうだ。
理由はどうあれ、ダンジョンへの移動時間が短くすむことに感謝だ。
「そういえば・・・ダンジョンでの戦い方は?」
「戦い方をどうするか?・・・2人で背中合わせで戦えばいいんじゃない?それで一度だけ戦ってから問題があれば変更する方針で」
「わかった」
そんなことを話していると、ダンジョンの入口があるという場所へとあっと言う間に着いた。
「「・・・祭り?」」
・・・人が多い。
ジブン達の目の前には、たくさんの屋台が出店しており、多くの人が闊歩している祭りのような光景が広がっていた。
・・・もしかして、場所を間違えた?
そんなことを思って2人で調べたが、現在地は間違いなくダンジョンの大穴近くになっていた。
「・・・とりあえず、行ってみる?」
「えっ。・・・わかった」
出店群に近づいてみると、出店ではベビーカステラやドライフルーツ、携帯食の射的・・・この店の店主、アイデアと思い切りが凄いな。
そんな、様々な出店と冷やかしか買い物客がたくさんいる、お祭り景色。
だけど、出店の内容が少し変?
物持ちの言い食べ物や、登山用のリュックサックに、医療用品がちらほら見受けられる。
「・・・何これ?」
「・・・わからないけど、今はダンジョン探索しに来たんだから気にせず行こう」
「わかった」
蒼規の言葉に従い、ジブン達は祭りのように賑わい集まっていた人々を避け、ダンジョンの入口がある場所へと向かった。
移動中に思い至ったのだが、恐らくは周りの出店群は探索者を狙った商売なのだろう。
探索者なら金をたくさん持っていると思ってるんだろうな〜。
潜り始めたばかりなので実際はそんなに儲かってないと思うし、気が早いような気がする。
何と言うか、商売魂が凄まじい。
「ねぇ、そこのお嬢さん2人。もしかして、これからダンジョンに入る感じ?」
「それなら2人は危ないって。だから俺達と一緒にダンジョンにいかねぇ?」
「そうそう、俺ら覚醒者だし結構強いからさ」
「・・・色んな店があるな。ブルーベリー携帯食ってのもある」
「・・・それ、ダンジョン帰りに買う」
「「「おい、無視してんじゃねぇぞ!!」」」
なんか騒がしい人たちがいるな。
ナンパは別のところでやってほしい。
「速歩きで」
「わかった」
ジブン達は、騒動に巻き込まれないように歩く速度を速めてその場を後にした。
「おい無視すんな!!ってえぇ、ちょおい、待っ!?」
「あの2人、早すぎんだろ!?クソッ、追いつけねぇ!」
先程までジブン達がいた場所から、荒々しい声が聞こえてきた。
近頃は物騒な人がいるんだな~。
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ナンパ集団に近寄らないように速めに現場から離れたおかげで、道中はトラブルに巻き込まれずに済んだ。
これから外出時は速歩きしようかな・・・。
そんなことを思っていると、出店群を抜けて、ダンジョンへの入り口がある場所へと到着した。
ダンジョンの大穴は、倉庫みたいな施設で覆われていた。
施設に入ると受付があり、探索者はそこで手続きをしてからダンジョンに入るという気相らしい。
また、迷宮の穴から右の部屋には買取センターなるものがあるらしく、協会本部と変わらない金額で換金できるそうだ。
これから、ジブン達がお世話になりそうな場所である。
周囲には他の人の姿は職員以外には見えず、現在ここにいる探索者はジブン達だけのようだ。
なので、早速2人で受付に名前を記入して、ダンジョンの大穴へと足を踏み入れることにした。
「蒼規、覚悟はいい?」
「もちろん、武器持った時から覚悟はできてる」
「武器、壊さないでよ」
「流石にもう壊さないよ。あの後、ちゃんと力加減できるようになったから」
「ならよし、行こう」
「おー」
こうしてジブン達は、人生最初のダンジョン探索に挑戦するのだった。
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ダンジョンの1階層に繋がる階段を降りていく。
ダンジョンの大穴には、下へと階段が最初からあったらしく、そこをそのまま利用できるそうだ。
途中に存在した階段の踊り場のような場所を通り過ぎ、どんどん階段を降りていくと、周囲はどんどん薄暗くなっていき、1階層についた時には少し先がぼんやりとしか見えないほどになっていた。
それと同時に、地上とは違った張り詰めた空気を感じる。
ジブン達は、頭に被っていた「LED付きヘルメット(5000円)」の明かりを点けて進んでいく。
ここからは、いままでの人生で感じたことのない危険と隣り合わせの領域、死地だ。
初めの頃はきっと苦戦するだろう。
命を奪うことに罪悪感を持つだろう。
それでも、2人ならば乗り越えられるはずだ。
「行こう」
「了」
数分後・・・。
「よっせい!」
「「「「「チュウア!?」」」」」
「・・・」
覚悟を決めてダンジョンに入ってから数分後、最初に遭遇した敵は「ビックラット」と呼ばれるモンスターだった。
講習では、ビックラットは中型犬くらいの大きさとスペックを持ち、鋭い歯で噛まれたら肉が抉れる上、集団行動してくるから注意せよ、と念押しされていた。
そんなビックラットの群れが5匹くらい現れた結果、我が兄が無双している。
どうやら、この肉体のスペックは想像以上に優れているらしく、剣を振るうだけでネズミ共は倒せるらしい。
ジブンは、敵のあまりのあっけなさに肩透かしを食らった気分だ。
「蒼規、気分は大丈夫?」
「ん?・・・どゆこと?」
「生き物殺して、気分悪くなってない?」
ジブンが蒼規の体調を心配した理由。それは、覚醒前の蒼規は生物の死体を見るのが苦手だったからだ。
ジブンはスプラッタな光景を見てもある程度は耐えられるが、蒼規の場合は漫画の絵でも気持ち悪くなるくらい。
だから蒼規は、生き物の死体を見るのが苦手だったのだが・・・。
もしかして、ダンジョンのモンスターは大丈夫なのか?
確かに、ダンジョンモンスターも血を流したりするが、息絶えると灰になって崩れるので生身の生き物を殺すよりも精神的苦痛は薄いはず。
だから、大丈夫・・・だったのか?
「大丈夫だよ。動物型なら倒すのに忌避感は少ないから」
蒼規はそう言うと、ネズミ達がいた場所に落ちている5つの魔石とドロップアイテムであるネズミの尻尾を拾う。
「生物の無駄な殺傷は好まないけど、必要な殺傷は許容できるよ。遊び半分で虫を潰したり、他人の飼い犬に向かって石を投げたりするなんて絶対やらない。だって、それは生きていく上で必要のないことだから」
兄は話を区切ると、前に向かって走っていき剣を振り下ろす。
兄が斬ったのは、角が生えたウサギ、「ホーンラビット」だった。
「だけど、魚を釣ったり家畜を殺したりするのは食料とするため。それは人間の生命活動を支える上で必要なことだから無駄な殺傷に含まれない。また、人里に降りた熊やイノシシを狩ったりするのは人間が襲われないようにするため。蚊取り線香やゴキブリホイホイとかも、人間が快適に過ごすために必要なことだと思っているから、自分的には許容できる」
続いて、3匹の単眼のコウモリ、「一つ目コウモリ」が上から奇襲して来たが、その3匹とも剣の一薙ぎで吹き飛ばされて、ダンジョンの壁にぶつかり灰となる。
「この世は弱肉強食で、どうせ自然界では動物は死ぬ。だから、僕が重要視しているのは「その殺傷で何を得たか」だよ。その生き物の死を無駄にしないことこそが大事だと思っている」
自分が倒したモンスターからドロップしたものを拾い集める兄。
ジブンもその作業を手伝う。
「ありがと。・・・話の続きだけど、モンスターは倒せばレベルを上げるための経験値に
なるし、魔石を拾えば僕たちの生活の役立てることができる。そして金になる。・・・モンスターの命を無駄にしないためにドロップアイテムを残さず集めるんだよ。それが僕の考え」
・・・なるほど?
兄は昔から無駄な殺傷を好まなかったが、モンスターを倒すと資源になるから狩れるからグロに耐えられるという理屈か。
・・・そういえば数カ月前にテレビでイノシシを見た時においしそうだと言ってたな。
なんというか色々と身勝手な考えだ。
でも納得できるし、ジブンもその考え方がしっくりくるんだよな・・・。
そんなことを考えていると、兄がまた言葉を紡ぐ。
「もし、それでも殺しに躊躇するのならば、こういう考えを持っておいて」
兄はこちらを向いて言った。
「襲ってくるモンスターは資源。自分達は人でなし。そう思えば、気分はあまり悪くはならないよ」
「・・・」
その後、3匹のビックラットの群れに遭遇したが、自分の斧であっという間に倒せた。
その時に、蒼規の言った考え方を意識したら、気持ち悪さが薄れた。
マル。
・・・・・・。
・
・
・
そんな感じで、モンスターの討伐に躊躇わなくなったジブン達は、順調に先へと進んでいた。
現在地は、ダンジョンの5階層の次の階層への階段付近。
これまでに「小鬼」や角の生えた狼、「ホーンウルフ」、ファンタジーの大御所である「スライム」が出現するようになった。
だが、小鬼や狼は首を切れば倒せるし、スライムは踏みつぶせば簡単に倒せた。
もちろん、ドロップアイテムは残さず拾った。
道中には宝箱なんかも設置してあり、石を投げてミミックの類じゃないかの確認をしたり、罠の有無を〈鑑定〉して確認した。
何気に、ダンジョンで初めてスキルを使った瞬間である。
これまで見つけた宝箱は3つ。
宝箱の中身は、1つ目と2つ目が「下級ポーション」で、3つ目が銀製の剣だった。
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「下級ポーション」
触れた者、飲んだ者をたちまち癒す不思議な液体。
患部に浴びせるとその部位を治療し、飲むと疲れや体内の悪しき状態を改善する。
擦り傷や火傷等の軽度の負傷を治すことができる。
――――――――――
――――――――――
「銀の剣」
微かに聖なる力を秘めた銀製の剣。
この剣で邪悪な存在に攻撃すると、ダメージを与えることができる。
所持スキル
〈アンデット特攻・微〉・・・悪魔、アンデット系統へのダメージが上昇する。
――――――――――
あのファンタジー定番、「ポーション」が出てきたのである!
これで、軽い怪我ならばすぐに直すことができるようになった。
それに、鑑定結果に下級と記されていたため、この先に上級のポーションなんかも出てくるだろう。
効果は恐らく、骨折や四肢欠損を治すくらいはありそうだし、いつか入手する時が楽しみだ。
「銀の剣」については、「悪魔」や「アンデット」という単語が出てきたのでいつかは使うんだろうなとは思う。
だけど、今は現在使っている武器で何とかなっているので、蒼規の予備の剣とすることにした。
その後は、6階層に降りるか考えたが、今日は様子見ということでここから先へ行くことは止めた。
なので、5階層をぶらぶらしながら、モンスターを討伐することにした。
今も、出くわしたホーンラビット×10を蹴散らしていく。
「こっちのウサギは全部倒したけどそっちは?」
「こっきも肉、じゃなくて、角ウサギなら全部倒したよ」
「肉?」
「言い間違えただけだから気にしないで」
こいつ、とうとう動物型のモンスターを肉って呼び始めたぞ。
そのうちイノシシをジビエ(野生鳥獣の生肉の名前)と言うようになるんじゃないだろうか・・・。
「さっさとドロップアイテム拾うよ」
「わかったよ。・・・そういえば今何時?」
「・・・どうだろ、わからん」
「もうそろそろ、帰ったほうがいいのでは?」
「体幹時間ではそんなに経ってないけど、・・・初めての探索だし早めに帰るか」
蒼規は、ジブンの質問に対して答えながら、近くにあるドロップアイテムを集めていく。
「ウサギのドロップアイテムは角か。・・・チッ、肉じゃないのか」
「蒼規、食い意地張ってきた」
「タダで肉が食べれるかもしれないんだから。そりゃあ肉を落とさないか期待するでしょ」
・・・確かに。
「肉類は何もないな。・・・ウサギの歯だの牙だの角だのと、何に使えばいいか分からない物ばかり・・・何これ?」
「どうした?」
「これ、なんか落ちてた」
ドロップ品を回収していた兄が何かを拾ったようだ。
そんな兄が持っていたのは、銅でできた1枚のコインだった。
「コイン?なんでこんなところに」
「モンスターの魔石と一緒に落ちてたから、多分ドロップアイテムだと思うけど・・・」
「「・・・」」
「「とりあえず〈鑑定〉」」
――――――――――
「銅コイン」
使用者に、輝かしい未来を掴み取るチャンスを与える銅色の硬貨。
運命はアナタの運次第。
簡単に言うと、「ダンジョンガチャマシーン」で使える最低ランクのコイン。
――――――――――
「「ガチャコイン!?」」
ガチャです