双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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ダンジョンの運試し

 ジブン達は、ガチャコインを手に入れたのはいいものの、そもそもそのガチャコインがどこで使えるのかがわからないことに気が付いた。

 それに、時計を確認するとそろそろ午後の15時となりそうだ。

 早いかもしれないが、昼をとっくに過ぎていたため、昼食を食べるために一旦は帰還しておいた方がいいだろう。

 

「そういえば、僕達以外の人の姿ってまったく見なかったね」

「本当だ。なんでだろ?」

 

 蒼規に言われてから初めて気が付いたが、1、2層ではチラホラ見かけた探索者が、5層目辺りではまったくと言っていい程に見なくなっていた。

 ・・・ちょっと不安になってきた。

 

「もしかして、階層を降りるの許可制?」

「・・・いや、さすがにそんなことはないでしょ。探索者のルールみたいなものにもそんなこと書いてなかったし・・・」

「だとしたら、何でだと思う?」

「初めての探索だからみんな慎重に行動しているだけじゃない?」

「「・・・」」

「「じゃあ自分(ジブン)等、無謀なバカじゃん!」」

 

 次からはもっと慎重に進もう・・・。

 

 

 なんか嫌な予感がしたので、急いで帰ることにした。

 道中にエンカウントしたモンスターは、Aを誇る自慢の俊足を全力の60%くらいの速さで通り過ぎることで、時間のロスを減らす。

 ジブン達の変化後の体は、全力で走るのはいろいろと危険なため滅多にできないが、速度を調整することは簡単にできた。

 これは器用Bが関わっているのかもしれない。

 周囲に人や建物が無い広い場所で練習した結果、最初は制御できなかったが、何度か走っているとスピードを制御できるようになったのだ。

 何事も練習が大事である。

 

 それでも、足を止めなければならない状況にも陥った。

 宝箱である!

 せっかく見つけた宝箱を放置するのはあまりにも愚策。

 宝箱から銀の剣みたいな良い武器が手に入るかもしれないのだ。

 素通りするのはありえない。

 

 ちなみに帰りに見つけた宝箱から手に入れたアイテムは下級ポーション×1、「鉄の籠手」(左右)×1、「銅コイン」×2枚だった。

 

 それから、ジブン達が1階層に戻ってくるのに、時間はかからなかった。

 これは、一度攻略したジブン達よりも圧倒的に弱い敵ばかりだからこそできたのであって、これから先はこんな簡単に帰還することはできないだろう。

 なぜなら、この階層は恐らくチュートリアル。

 戦闘慣れしていない自分達でもこんな簡単に進むことができる難易度だ。

 アニメとかでは、ここをい抜けた先はさらに難易度が上がることだろう。

 

 ・・・それを想定できるにも拘らず、何も考えずに突き進んだジブン達は一体・・・。

 次回からは、もっと緻密に計画を練ってからダンジョンに潜るようにしよう。

 

「道ってあってる?」

「大丈夫、大丈夫。しっかり覚えてるから」

「・・・もしかして、〈忘却耐性〉か!」

「正解!」

 

 蒼規は、元々記憶力が悪く、3歩歩けば忘れるくらいだった

 それなのに、記憶力がいいのはスキルのお陰か。

 ・・・もしかしたら、覚醒者の覚醒先って本人に足りない力に当てはまるように決められてる?

 ジブンも思考は遅いから、ムニンになって〈思考加速〉を手に入れたのかも。

 なら、ジブン達を覚醒者にしてくれた神性存在に感謝だ。

 

 ジブン達が走っていると、遠くに明かりがある部屋と巨大な石造りの階段が見えてきた。

 多分、ダンジョンの入り口。

 

「見えた、出口!」

「減速開始!」

「了解!」

 

 ジブン達は、今更な気がするが、周りに人がいないかを気を付けながら減速した。

 速度を落とす練習は何度もやったので、それなりに上達しているつもりだ。

 だけど、ジブン達が走ってきた距離もあってか、なかなかスピードが落ちず、階段に着くまで止まれなさそうだ。

 だから、階段を通り過ぎた先の壁にぶつかって止まる。

 そう決めたジブン達は、階段を通り過ぎていき、壁へとぶつかって止まる、

 

 バキッ!

「「えっ―――はぶっ!?」

 ズザザーーーッ。

 

 ことはなく、何かを突き破って倒れこんだ。

 

「痛ッ・・・!?は大丈夫?」

「だ、大丈夫。・・・あっ、でも鼻がものすごく痛い。・・・もしかして折れた?」

「ポーション、いる?」

「頂戴」

 

 2人で、今日の戦利品であるポーションを使った。

 すると、先ほどまでの痛みだけではなく、変化後からある肩のちょっとした疲れまでもが取れた。

 流石はポーションだ。

 

「ポーション凄いな!」

「次の探索でも手に入れよう。1ダース」

「1ダースはちょっと多くないか」

祖母(ばあ)ちゃんと(じい)ちゃんに送る」

「それなら少ないのでは?」

 

 1ダースでも少ないか?・・・少ないか。

 というか、ここってどこ?

 ・・・ん?

 

「蒼規、前見て」

「前?・・・あっ」

 

 蒼規が前を見ると、驚きのあまり固まった。

 無理もないだろう。そこには、立派なガチャマシーンがあったのだから。

 大きさで言えば大体高さ5mくらいの、カプセルが入っているところが丸くなっている台だ。

 

「マジであるんだ。ガチャマシーン」

「そうだな・・・ん?でもこれ試験の時もネットでも聞いたことないよ」

 

 そういやそうだ。

 そもそも、ダンジョンにガチャがあるなんてコイン拾ってから初めて知ったんだったな。

 

「・・・つまり、ジブン達が第一発見者」

「情報提供で報酬とか出るかもだけど、場合によっては報告書とか事情聴衆とかされそう。・・・それに、せっかく手に入れたコインも実験とか関連性を調べるとかで取られそうだよな」

「そうだな」

「「・・・」」

「「やるか、ガチャ!」」

 

 ガチャをすることにした。

 

 ・

 ・

 ・

 

 「あっ、いつのまにかドア直ってる!」

「・・・直るの早い」

 

 後ろを向くと、いつの間にかジブン達が突き破ったはずのドアが修復されていた。

 ・・・というか、ジブン達が突き破ったのってドアだったのか。

 ぱっと見た感じでは木製のドアだが、コンコン叩くと木よりも頑丈そうな感触がする。

 

「これって、帰りもドア使う?」

「そうなんじゃないの?他の出口なんて知らないし」

「・・・確かに」

 

 ジブンは、一応ドアが元いた場所と繋がっているかを調べた。

 ・・・うん、問題なさそう。

 一応は安全を確保できたので、調べるのをやめてガチャマシーンの前にいる蒼規の隣に立つ。

 

「よし、さっそくやるか」

「どちらが最初にやる?」

「・・・うん、コインは3つあるから、どちらかが2回やることになるし。・・・とりあえずじゃんけんで決めよう」

「わかった」

「「最初はグー!じゃんけんポン!!」」

「よし!」

「あ、ああぁ・・・」

 

 負け、た・・・!?

 

「じゃあ最初が僕で次が天規。そして、最後に僕の順番で」

「良いやつ当てろよー」

「そこで神仏にでも願っとけ」

「わかった」

 

 神様仏様、ついでに北欧の大神様、我らが身に幸運を与えたまえ。

 

「それじゃあやるぞ。そいっ!」

 

 ガチャマシーンに「銅コイン」を入れた が、思いっきりガチャマシ―ンの回すアレをガチャガチャと回す。

 

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガコッ

 

 ガチャマシーンから、銅で出来たカプセルが出てきた。

 もしカプセルが銅製だったら、この時点で当たりなのでは?

 というか、初めてだからこのカプセルのレアリティがわからな・・・。

 

「アオ、カプセルにSRって印ある」

「えっ、あ、ホントだ」

「SR って良いやつじゃ」

「ソシャゲしたことないけど、多分良いヤツだと思う」

「開けてみれば?」

「わかった」

 

 蒼規がカプセルを開けると、カプセルが消えて(もし銅製だったらもったいない)1枚のカードが出てきた。

 何だこれ?

 

「何そのカード?何か書いてある?」

「ちょっと待って。・・・アイテムボックス!?」

「は!?ちょっと見せて!」

 

 幸からカードを受け取ると、TCG形式の絵柄と説明文があるカードだった。

 ダンジョンは自分たちにTCGをやらせようとしているのだろうか・・・。

 

 だが、説明文を読んでみると、どことなく〈鑑定〉を使った時の説明文に似ている。

 ――――――――――

「アイテムボックス・ポシェット型(微)」

 外見から判断できない程の多くの物を収納できる魔法のカバン。

 物によっては、様々なオプションを併せ持つ物もあるとかないとか。

 

 ・容量は外見推定収納スペースの5倍。

 ――――――――――

 

 ・・・これ、カードからこの物品になるタイプだ。

 でも、具現化ってどうやるんだ?

 試しにこのカードを鑑定しよう。

 

「〈鑑定〉」

 

 ――――――――――

 「ガチャカード」

 ガチャの景品として出てくるカード。

 カードにはアイテムの外見、それに関する説明文がある。

 ステータス持ちがカードを手に持ちながら〈具現化〉と唱えれば絵柄に描いてあるアイテムを具現化することができる。

 なお、一度具現化したアイテムは再びカードかすることはできない。

 ――――――――――

 

 あっ、出てきた。

 やっぱり〈鑑定〉って便利だ。

 

「〈具現化〉って言えば出てくるらしいよ」

「分かった。〈具現化〉!」

 

 幸が唱えると、カードはポンッという音とともに小さなポシェットが現れた。

 うーん、ファンタジー。

 

「おー、本当に出てきた」

 

 青色のポシェットで、サイズは小さく、先ほどカードに書かれていた説明文からすると、だいたい登山用のリュックくらい物が収納できると想定しておいたほうがいいだろう。

 SRではこれくらいのものが出ると想定しておこう。

 

「よし次だ!次弾、アマ、行け!」

「了解!」

 

 次はジブンの番だ。

 何が出るかとても楽しみである。

 ジブンは、SR以上出ろ!出ろ!と念じながらガチャを回す。

 すると、先程と同じ銅色のカプセルが出てきた。

 カプセルにはSSRと刻まれており、先ほど幸が当てたランクより上のようだった。 

 

「私は勝利した」

「まさか、これがビギナーズラックというものか・・・!早く開けてくれ」

「・・・ほいっ」

 

 開けて出てきたのは、先程と同じく「ガチャカード」。

 それを手に取り、カードに記されている説明文を読む

 

 ――――――――――

「死人の鉞《しびとのまさかり》」 武器種:片手斧

 かつて存在した復讐者が死後、地獄に落ちた後も片手に携え、亡者を切り刻んだ鉞。

 やがて主人が名も知れぬ怪物になった後も、この鉞を振るい迫りくる亡者や獄卒達を切り刻んだ。

 その鉞は獲物を切り刻み、滴る血をすすり渇きを癒す。

 主が没した後もこの鉞は鮮血を欲している。

 

 専用武器・・・北豊 天規

 

 所持スキル

〈血狂い〉

 ■ ・・・レベル20で開放 

 ■ ・・・レベル40で開放 

 ■ ・・・レベル60で開放 

 ■ ・・・レベル80で開放 

 ■ ・・・レベル100で開放 

 ――――――――――

 

「「・・・」」

 

 血狂いの効果を見てみる。

 

〈血の刃〉・・・血を吸収するよ切れ味が回復する。

 

 ・・・なんか、想像以上に物騒なものが出てきた。

 

 「「何、この物騒な武器・・・」」

 

 思わず出た言葉がハモッた。

 ジブン、こういう系の武器知ってる。

 物語の黒幕が使う武器で、使い手を精神汚染させたり乗っ取ったりするやつだ。

 

「えーっと・・・どうする?それ、今後は使ったりするの?」

 

 蒼規の疑問はもっともで、説明文に復讐者だの地獄だの血だの、物騒な言葉がズラズラと並んでいる。

 正直言って、この武器使うの怖いから一生倉庫に放り込んでいたい。

 だけど・・・

 

「専用装備ってあるしなぁ・・・」

「え“、まさかこの武器使うつもり!?絶対にろくなことにならないから止めたほうがいいって」

「・・・でも、武器自体の効果にはいい・・・」

「今日ほど天規をバカだと思ったことはないよ」

 

 酷い言われようだ。

 こう見えて、ちゃんといろいろと考えてるのに。

 

「・・・まぁ、蒼規の懸念も確か」

「うんうん、だからそんな危ない物は仕舞って」

「予備の武器にする」

「・・・」

 

 今のところは店売りの斧で何とかなってるし、後半に使う武器の候補として持っておくのはいいだろう?

 ジブンはそう思ったが、蒼規が何か言いたげに口をモゴモゴしていた。

 なんだぁ?

 

「・・・まぁ、それならいいか」

「そうと決まれば、アイテムボックスで預かっ」

「はいはい、わかったわかった」

 

 蒼規は仕方ないなぁ、という風に、ジブンからガチャカード(in死人の鉞)を受け取って、アイテムボックスの中に入れようとした。

 だが、何故か入らなかった。

 

「?・・・あっ、専用武器」

「あぁ、だから入らなかったのか」

 

 仕方がないので、ジブンで持っておくことにした。

 なお、〈具現化〉はまだしない。

 やっぱり怖いし。

 

「なんか爆弾抱えた気分だけど・・・気を取り直して、最後の1回やるか!」

「頑張って専用武器当てろ~」

 

 蒼規が本日2回目のガチャをする。

 その結果、出てきたのはSRのカプセルだった。

 運がいいな。

 嬉々とした様子でそれを開けると、中からはビー玉のような物が出てきた。

 

「「何これ?」」

 

〈鑑定〉

 

 ――――――――――

「スキルオーブ(洗浄)」  属性:無

 神秘の力が秘められたオーブ。

 その力を取り込めば、新たな力を得ることができる。

 ただし、位階によって使用上限があるため、限界以上の力を取り込むと身体に悪影響を及ぼす可能性があるため注意するように。

 このスキルオーブには、〈洗浄〉スキルが内包されている。

 

 注:スキルオーブは、飲み込むことで使用できる。

 ――――――――――

 

「「スキルオーブ!」」

 

 これまたファンタジー作品でお馴染みの、使用するとスキルを覚えることができるアイテム!

 まさか、こんな物もあるなんて!

 いろいろと気になることがあるけど、それは一旦置いておこう。

 まずは〈洗浄〉スキルを確認してみる。

 

〈洗浄〉・・・汚れを落とす。

 

「・・・どっちが飲み込む?」

「蒼規が飲み込めば?光属性なんだし。そもそも蒼規が当てた物なんだから」

「・・・まあいっか。分かった」

 

 蒼規はそう言うと、水筒を取り出して躊躇いながらも水と一緒にスキルオーブを飲み込んだ。

 鑑定の説明で飲み込むことで使用できるとあったが、躊躇いも無く飲み込むなんて思い切りが良い。

 

「ごくっん。・・・うん、何だか、のど飴を飲み込んだみたい」

「ステータス見てみれば?」

「そうだな。・・・ステータスって、言葉で言わなくても念じるだけで出るんだ・・・」

 

 そうなんだ!

 

 ――――――――――

 種族:フギン  個体名:北豊 蒼規  性別:女(男)

 レベル:1   属性:光

 筋力:D+   耐久:C    敏捷:A

 器用:B    神秘:B+ 

 

 スキル

〈鑑定〉 〈聴覚強化・中〉 〈忘却耐性〉 

〈飛翔〉 〈疲労軽減・中〉 〈スタミナ上昇・中〉 〈神獣〉

 

 スロットスキル

〈洗浄〉NEW

 ――――――――――

 

「ちゃんと増えてた」

「1回試してみれば?」

「わかった。〈洗浄〉」

 

 蒼規は、さっきまで使っていた剣に向かって手をかざし、〈洗浄〉スキルを発動させた。

 すると、数多のモンスターを切ったことで汚れていた剣が、たちまち新品のような輝きを取り戻した。

 どうやら成功したらしい。

 

「これで、風呂いらずで長時間潜れる!」

「よくやった」

「「イエーイ」」

 

 ジブン達は、しばらくガチャの成功体験にテンションが上がっていた。

 だが、時間が経っていくうちに徐々に冷静さを取り戻して正気を取り戻していく。

 

「・・・なんか僕達って、たまにテンションがおかしくなることあるよね」

「いつものことでしょ」

「「・・・」」

「「帰るか」」

 

 帰ろう

 

 ・

 ・

 ・

 

「そこの御2人、無事だったのですね!?」

「「?」」

 

 地上に帰還すると、ダンジョンの入り口前に自衛隊みたいな恰好をした集団がいた。

 何事だと思っていると、その集団の中の1人がジブン達に近づいてきて、声をかけられた。

 この人って誰?という疑問が浮かんだが、頭に生えた角と声、金棒を背負っていることから、実技試験でジブン達の試験官を務めていた鬼人の宇良さんだとわかった。

 よく見ると、宇良さんの他にも見覚えのある人達がおり、その誰もが探索者協会の職員の人だった。

 この状況は一体、どういう・・・

 

「ダンジョンで事故が起きました?」

「・・・はい、そうです。今日の10時34分に、探索者の1団が3名の重傷者を伴ってダンジョンから帰還。その内の2人が現在も目を覚ましません」

「「マジですか」」

「マジです」

 

 それってつまり、あのデカいネズミや角ウサギ、コウモリにやられたってこと?

 あのネズ公共って思ったより強かったんだな・・・。

 

 ・・・そういえば、協会の人も危険って言ってたじゃん。

 ジブン達の場合はこの肉体のスペックで余裕だったけど、他の人にとっては脅威だったのか・・・。

 もしかして、ジブン達って覚醒者の中では強いほう?

 

「すみません、我々はこれからダンジョンにて行方不明者の捜索に当たりますので、これにて失礼します。全員、行くぞ!」

「「「「「了解!」」」」」

 

 協会職員の集団がダンジョンに入っていくと、今度は覚醒者じゃない職員の方が話しかけてきた。

 

「お手数をおかけしますが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「えっと、北豊蒼規です。ほらアマも」

「はい、北豊天規です」

「北豊さんですね。・・・はい、確認が取れました。それと、もしよろしければ、ダンジョン内で起こったことの報告をお願いします。もちろん強制ではありませんが、有益な情報があった場合は情報料が支払われます。ご協力お願いします」

 

 ・・・・・・。

 

「どこまで報告する?」

 

 ジブンは、職員の方に見えないようハンドサインを送る。

 

「・・・了。僕達のステータス以外はある程度報告する方針でいいんじゃない?」

 

 ・・・伝わった?

 大丈夫そうか。

 

「はい、わかりました。報告します」

「ご協力感謝します。それでは、別室にご案内しますね」

 

 職員の方に別室へと案内された後、ジブン達のダンジョン探索を大雑把に話したら驚かれた。

 やっぱり、種族によってダンジョンの攻略難易度って変わるものなんだな。

 

 また、ダンジョンでの死亡者についての情報も詳細を聞くことができた。

 なんでも、6人パーティがダンジョンの3層目へと潜ったら、デカネズミ×10の群れに遭遇してしまったらしく、覚醒者じゃないメンバーの1人が喉笛を噛まれて重傷を負う。

 それにより、パーティの1人が欠けたことで戦線が崩壊。

 パーティ内にいた覚醒者の2人が何とかネズミを追い返したが、追加で2人やられてしまったため、急いで地上へと撤退したそうだ。

 つまり、敵が多くて覚醒者がその他のメンバーのフォローに回ることができず、負傷者を出してしまったということらしい。

 

 ある程度は負傷者が出ると事前に想定していた協会側だったが、あまりに想定よりも早く負傷者が出たことで、急遽未帰還者の救助部隊を編成。

 さらに、追い打ちをかけるように負傷者を連れて帰還する探索者達が続出したことによってこのままではマズイと思った探索者協会の人達は、まずは探索者の安全のため、現在ダンジョンにいる探索者に対して帰還するようにと連絡した。

 だが、数時間経っても帰ってこないどころか、連絡すら取ることができない人達もいた。

 そう。

 ジブン達である。

 他にもいるらしいが、ジブン達もその一員なのには変わりない。

 

 未帰還者が何らかのトラブルで帰還できないと判断したダンジョン協会の支部長は、一般探索者のダンジョンへの侵入を規制し、救助へと向かわせたそうだ。

 そのタイミングでジブン達が帰還したそうだ。

 

 ・・・というか。

 

「探索者への連絡方法は何です?」

「それはメールを送信することで確認としました」

「・・・すみません。ダンジョン内に携帯持ってきていなかったり、電池が切れていた場合はどうなるんですか?」

「あっ」

 

 ・・・え?

 

 ・

 ・

 ・

 

 後日、ダンジョンで6名の探索者が死亡したと発表された。

 救助部隊が駆けつけた時には既に、6人全員が7階層の通路にて死体となっていたそうだ。

 また、その遺体は発見時、鋭い刃物で全身を切り刻まれ、ズタズタとなっていたのだという。




  「無属性」・・・汎用性は高いが、攻撃に使える程の火力は持ち合わせていない属性。掃除や料理等の家事雑用において活躍する機会が多く、属性関係なく誰でも取得できるという利点がある。  
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