オデッサの鬼、オデッサの死神と呼ばれた2人の兵士 作:ナイトメア・ゼロ
連続で任務を受けていたアトラス隊は、オデッサ基地で特別休暇を与えられた。マ・クベ司令が用意してくれた部屋で各々が休息をとっている中、ウルフとルミア技術少尉は、モビルスーツのシュミレーショントレーニングをしていた。
「す、すごいですね、ウルフ大尉!シュミレーションとはいえドムをこうも簡単に操るなんて!」
ウルフの操縦技術を見てルミア技術少尉は目を輝かせていたがウルフはイラついていた。
「何か、不満があるのですか?」
「不満だらけだ。ホバーを使ってるから機動力はあるけど重すぎる。俺のザクよりも運動性は悪いし格闘戦も流されやすい」
「そ、そうですか」
そう言いながらもシュミレーションの仮想敵は全て全滅させた。
「それにしてもウルフ大尉は、本当に凄いですね。シャア少佐もニュータイプじゃないかって噂でしたけどウルフ大尉も絶対にニュータイプですね!」
「・・・・・当然だ。元々、俺はグール隊にいたんだ。知らねーとか言わさねーぞ」
「へっ?あ、あの、それはどういう」
「お前が積極的に絡んでくるのはマ・クベの指示か?それともキシリアか?」
そう言った瞬間、ルミア技術少尉の顔は真っ青になった。
「当たりみたいだな」
「ち、ちょっと」
ウルフの手を掴みそのまま訓練場から離れると人気のない場所にウルフを連れ込んだ。
「・・・・・いつから気づいていたのですか?」
「初めて会った時からだ」
「そんなに早く!?な、なんで気づいたんですか!?グール隊に所属してるニュータイプは、人との共感能力を失っているはずなのに!」
「別にニュータイプとかだからじゃねーよ」
ウルフは腕を組んで壁にもたれた。
「俺は最初からアトラスもマ・クベもそしてお前も信用してなかったからだ」
「・・・・・なんだ。ただ、疑ってただけですか。もう、ボロ出しちゃったんで意味ありませんが」
「俺が信じてるのはヘリオスだけだ。この戦争もジオンが勝とうが負けようがどうでもいい。俺の望みはヘリオスが生きてくれることだからな」
「・・・・・・もう、監視員だとバレちゃったんで単刀直入に訊きますがウルフ大尉とヘリオス軍曹はどういうご関係なのですか?いくら、同じ施設で育ったとはいえ、お二人は友達や相棒って枠を超えてるような気がするんですが」
「・・・・・・そうだな。・・・・・・・強いて言うんだったら兄弟、いや、家族だな」
そう答えるとウルフはその場から立ち去った。
「よ、ヘリオス」
ウルフはヘリオスが休んでる部屋に入るとソファーで寝転がりながら歴史書を読んでいた。
「あ、ウルフ。シュミレーショントレーニングはもういいのか?」
ヘリオスがそう言うとウルフは、買ってきた缶コーヒーを投げ渡し。
「アァ。新型機のドムを試しに使ってみたんだが俺には合わなかった」
と、答えた。
「そりゃ、残念だ。ウルフが新型機を使えば戦闘能力とか格段に上がると思ったけどやっぱりそう簡単じゃないか」
「俺の高機動ザクでも十分に戦えてるからあんまり気にしてねーけど、お前はどうなんだ?」
「僕?」
缶コーヒーを飲みながらヘリオスは首を傾げた。
「いつまでも旧ザクじゃ厳しいだろ」
ウルフもコーラーを飲みながら訊ねた。
「まぁ、鉱山基地にいた時のままだったら厳しかったけど今じゃ狙撃仕様にカスタムされてるから今でも十分に現役だよ」
そうやって2人は適当に喋り続けていると。
「・・・・・なぁ、俺と初めて出会った時のこと覚えてるか?」
突然、ウルフはそんな事を言い出した。
「?どうしたんだよいきなり?」
「ルミアが俺との関係を訊いてきたんだ」
「そうなの?まぁ、覚えてるって言ったら覚えてるな。孤立してたウルフに唯一話しかけたのは僕だけだったからね。いつの間にか仲良くなって一緒にいるようになったけど」
「いつの間にかってなんだよ。そこは覚えててくれよヘリオス」
「そう言われても孤児院にいた時からウルフと一緒にいるのが当たり前になってたしそれに途中で里親が見つかって引き取られてたからな〜」
ヘリオスがそう言うとウルフは呆れたようにため息を吐いた。
「ウルフ、僕達ってどんな感じで仲良くなったんだっけ?」
ヘリオスが質問するが
「教えてやんねーよ」
と、言われた。
「なんでだよ!教えてくれたっていいじゃねーか!」
ヘリオスはウルフの背後に周りチョークスリーパーをしようとしたが。
「あれ?うまくきまらない?」
「素人がきめられるわけねーだろ」
ウルフはチョークスリーパーを破りヘリオスの顔面を掴んでアイアンクローをした。
「ギャァァァァァァッ!!!痛い痛い!!やめてやめてやめて!!」
「ったく、静かにしろよ。アトラスに怒られるぞ」
「その前に離してぇぇぇぇ!!」
ヘリオスと再会してからようやく思い出した。人の考えがなんとなく分かる俺は両親からも世間からも気味悪がられていた。両親も俺の顔を見るたびに怯えて『バケモノ』って呼ぶようになっていた。バケモノって呼ばれすぎたせいで今じゃファミリーネームを思い出せなくなった俺は孤児院に捨てられた。
この力のせいで孤児院に馴染むことができず孤児院の先生達からも気味悪がられるようになり俺はどんどん孤立した。あの時の俺は別に1人でいることが苦だと思ってなかったしはっきり言ってもうどうなってもよかった。そんなある日だった。俺に話しかけてきたバカがいた。そのバカは最初は興味本位で俺に近づいてきた。コイン当てゲームやトランプ当てゲームでたぶんこの力を見てみたかったんだろう。全問当ててやっていつものようにこのバカも気味悪がると思っていた。
【お前、すごいな!本当に全問正解した!お前って本当に僕の心が分かるのか!?】
だけど、あのバカは目を輝かせて俺を褒めてきやがった。俺はあのバカが気味悪くてその場から逃げ出した。あの日からだ。あのバカが俺に話しかけに来るようになったのは。
【なぁ、僕と友達になろうよ!】
【お前の名前はなんなんだ?】
【なぁ、お菓子一緒に食べようぜ!】
あのバカはしつこく俺に絡んできた。他の奴らが俺に関わらないように言ってたけどあのバカは無視してずっと俺に話しかけ続けた。そんなある日だった。俺はあのバカから逃げるように孤児院から脱走した。ジャンク置き場に逃げた俺はそこで1日中座っていた。
【やっと見つけた!】
ジャンク置き場に逃げてもあのバカは来た。
【孤児院にどこにもいなかったから心配したよ】
うるせー。なんなんだよお前。もう、関わってくんじゃねーよ。どうせお前も俺から離れるんだろ!俺の周りの奴らはいつもそうだ。こんなことになるならこんな力なんていらなかった!俺はいろんな感情が混ざり合ってそして吐き出してしまった。
【僕は離れないよ。だって僕は友達だろ?】
こんなバケモノが友達なのかよ。
【友達が嫌なら兄弟とかどうだ?お兄ちゃんはお前で僕が弟でもいいよ】
なんなんだよお前。なんでお前と一緒にいたら・・・・・スッゲェあったけーんだよ?訳わかんねーよお前。ウルフだ。俺の名前を教えてやったんだからお前のも教えろよ。
【僕?僕はヘリオス。ヘリオス・ユナイトだよ!よろしくねウルフ!】
(少し、懐かしいことを思い出したな。ヘリオスの野郎、完璧にあの時のこと忘れてるみてーだけどたぶん俺は一緒忘れねー。何百年、何千年、何光年、経とうと俺は絶対に忘れない。俺はお前に救われたから)