オデッサの鬼、オデッサの死神と呼ばれた2人の兵士 作:ナイトメア・ゼロ
アトラス隊は司令室に呼び出された。マ・クベ司令曰く、今から面白いものが放送されると言われヘリオスとルミア技術少尉、アトラス大佐とマ・クベ司令はソファーに座りウルフは壁にもたれ掛かりながらテレビを見ていた。
それは戦死したガルマ・ザビ大佐の国葬だった。
「我々は、1人の英雄を失った!しかし、これは敗北を意味するのか?・・・・・否!始まりなのだ!」
「でか!後ろの遺影写真でかいな!」
ヘリオスがどうでもいいところをつっこんだ。
「地球連邦に比べ、我がジオンの国力は30分の1以下である。にもかかわらず、今日まで戦いぬいてこれたのはなぜか!諸君!我がジオン公国戦争目的が正義だからだ!
これは諸君らが一番知っている。我々は地球を追われ宇宙移民者にさせられた!
そして一握りのエリートが、宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年!
宇宙に住む我々が自由を要求して、何度連邦に踏みにじられたか!ジオン公国の掲げる人類ひとりひとりの自由のための戦いを、神が見捨てるわけはない!
私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!!なぜだ!?」
「戦争してるからだろ?」
「静かにしたまえ」
ウルフの言葉にマ・クベが睨んだ。
「・・・新しい時代の覇権を我ら選ばれた国民が得るは歴史の必然である!ならば我らは襟を正しこの戦局を打開しなければならぬ!
我々は過酷な宇宙空間を生活の場としながらも、共に苦悩し、練磨して今日の文化を築き上げてきた。
かつてジオン・ダイクンは、人類の革新は宇宙の民たる我々から始まると言った。
しかしながら地球連邦のもぐらどもは、自分達が人類の支配権を有すると増長し我々に交戦をする!
諸君の父も子も、その連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!この悲しみも、怒りも、忘れてはならない!
それをガルマは、死をもって我々に示してくれた!我々は今、この怒りを結集し連邦に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができる!
この勝利こそ、戦死者全てへの最大のなぐさめとなる!国民よ、立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ国民よ!
我らジオン国国民こそ、選ばれた民であることを忘れないでほしいのだ!優良種たる我らこそが、人類を救いうるのである!」
「ジーク・ジオン!!」
テレビ中継からは何度も何度もジーク・ジオンという掛け声が響いた。
「・・・・・・狂ってる」
「?ヘリオス軍曹?」
ヘリオスの呟きにアトラス大佐が反応した。
「狂ってるよこいつら!!」
そう言って立ち上がった。
「家族が!!実の弟が死んだのにそれすらも戦争をするための口実にするなんてザビ家は頭がおかしいよ!!」
「ヘリオス軍曹!滅多なこと言うんじゃない!」
「けど、大佐!」
「ヘリオス」
珍しく興奮してるヘリオスの両肩にウルフが手を置いた。
「メシ行こうぜ。どうでもいい中継を見せられて腹へっちまったよ」
「・・・・・」
ヘリオスは頷いてマ・クベ司令に敬礼をしてから司令室を出て行った。
「・・・・・私達もこれで」
アトラス大佐とルミア技術少尉も出て行くがウルフだけは出て行かずマ・クベを睨みつけた。
「おい、マ・クベ」
ウルフは腰のホルスターにあるハンドガンを抜き銃口をマ・クベ司令に向けた。ウルフの行動を見たマ・クベの副官ウラガン少尉が止めようとしたがマ・クベ司令がそれを静止した。
「これは反逆行為と見なしてもよいのかな?」
「アンタの発言次第だ」
「フッ、心配するな。私とて同じ趣味を持つ友人を失うつもりはないのだよ」
「・・・・・・戦場でヘリオスが死んだらそれは俺のせいだ。アイツが死んだら、敵を全滅させてヘリオスの隣で俺も自殺する。だけど、もし、ジオンの領地内で味方に殺されるようなことがあったら・・・・俺はまず、お前を殺してそしてこの基地にいる全ての人間を殺す。もちろん、サビ家の人間も全員殺す」
ウルフは殺気がこもった目でマ・クベ司令を見下ろす。
「クククッ、恐ろしい男だ。なら、私はせいぜい君の手で首を狩られないようにするとしよう」
ウルフは司令室から出て行った。
「マ・クベ中将、よろしいのですか?あんな好き勝手言わせて」
「構わんよ。それより、少し面白いことを思いついた」
「面白いことですか?」
「そうだ。あの野蛮人がどのように苦しむか見ものだな」
そう言ってマ・クベは不敵な笑みを浮かべながら出て行った。
「ガルマ様の仇をとるぞ!!」
「ウォォォォォォォッ!!」
「総帥の言う通りだ!!悲しみを怒りに変えろ!!連邦を叩き潰せぇぇぇぇ!!」
「ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!」
食堂では兵士達が盛り上がっていた。ギレンの演説を聞いて士気が向上したようだ。
「チッ、なんであんな演説でみんなやる気出してるんだよ」
ヘリオスは食事をしながらそう言うと。
「いや、他の奴らみたいにバカ騒ぎしてない奴らもいるぞ。バカ騒ぎしてない奴らはほとんどがエースパイロットだな」
と、ウルフが答えた。
「・・・・僕には本当の家族がいない。両親は僕が幼い頃に亡くなったから僕は家族の愛情とかそんなのは分からない。だけど、家族が死んで悲しいことくらいなら僕でも分かる。なのに、ギレン総帥は・・・・」
「確かにな。お前の言う通りだヘリオス。ジオンは狂ってる。いや、もしかしたらジオンだけじゃなくて俺達(みんな)戦争でおかしくなっちまったんだろうな」
「だから、戦争も軍も嫌いなんだ。そもそも、僕は歴史研究家になりたかったんだ。奨学金まで借りてやっと大学に入れたのに大学を卒業する前に国家総動員令が発動して徴兵して戦争に巻き込むなんて酷すぎるよ」
「・・・・・・」
「ん?どうしたウルフ?」
「いや、この戦争が終わったらヘリオス博士の助手をやるのも悪くねーかなって思ってよ」
「ヘリオス博士って、いやだよ。ウルフが助手になったら貴重な資料とか汚すでしょ?孤児院時代に僕の本を汚したことまだ根に持ってるから」
「もう、昔の事だろ。忘れてくれよ」
2人はそうして笑っていると。
「!!」
「どうしたウルフ?」
「いや、今、首筋あたりがゾワっとしたような」
ウルフの言葉にヘリオスは首を傾げるのだった。
【とある、女ジオン兵side】
「フフフッ、ヘリ×ウルかしら?それとも、ウル×ヘリかしら?」
「ヒヒヒッ、アタシの妄想が捗るわ」
「軍に入ったら卒業って考えてたけど生で見ることができるなんて!」
「バカ、声が大きいわよ!」
「新情報!新情報よ!ウルフ大尉がもし、ヘリオス軍曹を守れなかったら敵を皆殺しにして自分も死ぬって!」
「「「キャァぁぁぁぁっ!!!」」」
「それってもしかして告白!?禁断の愛の告白!?」
「よし!みんな、この情報を頼りに書くわよ」
「「「はい!!編集隊長!!」」」
そう言って彼女達はよだれを垂らしグヘヘと笑いながら絵と文を書き始めるのだった。