オデッサの鬼、オデッサの死神と呼ばれた2人の兵士 作:ナイトメア・ゼロ
連邦軍の大規模反抗作戦の正体はオデッサの奪還。ジオンの生命線であるオデッサを失えば地上でのミリタリーバランスが崩れ戦いの主導権はジオンから一気に連邦に移ることになる。そうならない為にもマ・クベ司令は迎撃の準備を行いつつ各エースパイロット達に可能な限り連邦の戦力を削るように指令を出した。
そして現在、ヘリオスの小隊は、雪原地帯にいた。
「うぅ、さ、寒い」
ヘリオスは、ハァーと両手に吐息を当てて少しでも体を温めようとしていた。
「大丈夫か隊長?ウォッカでも飲むか?体があったまるぜ」
ゾルダ伍長はガッハッハッと、笑いながら言うと。
「申し訳ないゾルダさん。僕はアルコール弱いんですよ」
アルコールが弱いヘリオスはやんわりと断った。
「おいおい、隊長。俺のことは呼び捨てにしろって言ったろ。階級ではアンタの方が上なんだから俺に敬語を使うなよ」
「努力します」
「それよりも作戦行動中に酒を飲むな!支障をきたすだろゾルダ伍長!」
「いいんだよ!俺にとっちゃこいつは命の水なんだよ!」
「まぁ、歴史的観点から見ても戦闘前に酒を一杯までなら飲むのを許してた軍隊もあったし、この寒さだから問題ないでしょ」
不真面目なゾルダ伍長にキム軍曹は怒りヘリオスがなんとかフォローした。すると。
「!ちょっと待って!」
ヘリオスがいきなりストップをかけた。
「どうかしましたか隊長?」
ヤオ軍曹が訊ねると。
「分かりづらいけどレーダーがブレてる。ミノフスキー粒子が僅かに散布されてるんだ」
「!?ということは・・・・」
「周囲を警戒!待ち伏せかスナイパーがいるぞ!」
ヘリオスは膝をついてスコープを覗き偵察を始めた。
「・・・・・・」
「隊長、敵はどこに?」
「待てって・・・・・・・スナイパーと想定してこの地点で1番狙撃ポイントに相応しい場所は・・・・・・・・この三地点か」
ヘリオスはスコープを覗いて確認するが三地点ともスナイパーはいなかった。
「スナイパーはいない。キム軍曹、先頭に立って。僕を中心に扇の陣形で進軍する」
「了解」
そう言って、陣形を作り進軍を再開した。いつ、奇襲してくるのか分からない今の状況。ヘリオス達の心臓は早く鳴り生つばをゴクリと、飲みこんだ。すると。
「隊長、ミノフスキー粒子がさらに濃くなりました。もう、レーダーも通信も使い物になりません」
「了解、各機これからは声が届く範囲で行動するように待ち伏せされたら可能性がある以上、1人で行動するなよ」
そう言って進軍を続けていると。
「!隊長、あそこ」
「!連邦が待ち伏せしてたのか?」
ヤオ軍曹が何かを見つけたようだった。ヘリオスも確認をすると。
「あれは・・・・ミデアじゃないか。なんでこんなところに?」
輸送機ミデアが雪原地帯に着陸していた。
「何にしても、チャンスだ。ミノフスキー粒子はあのミデアから出てたに違いねぇ」
そう言ってゾルダ伍長が襲い掛かろうとするが。
「待って、様子がおかしい」
ヘリオスが止めた。スコープを覗き偵察を始めると。
「!エンブレムが2つある。ひとつは、三日月と星のエンブレムで、もうひとつは・・・・・赤十字!」
「ということは、病院船ですか?」
ヘリオスの報告にキム軍曹が驚くと。
「・・・・・ヤオ軍曹、僕のマゼラトップ砲をお願い」
「え?た、隊長!?」
ヘリオスはマゼラトップ砲を預け大きくジャンプをしてミデアの前に立った。それを見た連邦兵達は慌てふためき怯えていた。
「怖がらないでください!連邦軍の皆さんにお尋ねします。このミデアは病院船と考えてよろしいでしょうか?」
ヘリオスがそう訊くとミデアから地面に届きそうな長い金髪を非常に太い三つ編みにしている女性将兵が出てきた。
「おやめください!いくら、連邦とジオンは敵同士とはいえ病院船を襲うのは南極条約以前に国際法で禁じられているはずです!」
女性は両手を広げ守るようにそう言った。
ヘリオスは、誤解されてると思い両手を上げコックピットから出た。
「すいません、驚かせてしまいました。僕達はあなた達を襲うつもりはありません。ただ、こんなところで何をしているのかと思いまして」
ヘリオスが尋ねると。
「実は、前線で戦い負傷してしまった戦士達をジャブローへ送り届けようとしていたのです。応急処置をしてなんとか命を繋いでいますが不幸なことにミデアが壊れてしまいましてなんとか修理をしていたのです。ここも、ジオンの支配地域です。病院船ですから襲われることはないと思っていたのですが念の為にミノフスキー粒子を散布していたのです」
どうやらミデアが故障してしまったようだ。
「・・・・・なるほど・・・・・・一応、訊きますがそのミデアにモビルスーツを載せていませんよね?もし、載せていたとしたら僕はあなた達をここで攻撃する必要があります!」
「そんなもの乗せてなどおりません!ミデアに乗っているのは負傷兵だけです!」
「なら、確認してもいいですか?」
そう言ってヘリオスはコックピットに乗り旧ザクを使ってミデアの格納庫を確認した。
結果は、白だった。モビルスーツは載せておらず中にあったのは医療薬品や負傷兵、そして負傷兵を治療している連邦兵だけだった。
「確認しました。疑ってすいませんでした」
そう言ってハンドサインでキム軍曹達に来るように伝えるとキム軍曹達はヘリオスのもとに来た。
「ねぇ、この中で機械に強い人っている?」
ヘリオスが尋ねると。
「ちょっと待ってください!まさか、こいつらを助けようとしてるんですか!?」
キム軍曹は大声で訊いてきた。
「?何か問題あるの?」
「あるに決まってますよ!友軍ならともかく、こいつらは連邦兵なんですよ!!俺達が助ける義理なんてないじゃないですか!むしろ助けたら連邦軍の戦力回復の手伝いをすることになるんですよ!」
「それが?」
ヘリオスの答えにキム軍曹は唖然とした。
「たとえ、敵同士だったとしても負傷兵達を助けようとしてる彼女達を殺すことは僕にはできない。だから、甘ちゃんとか都合いい事言ってんじゃねぇとか言われるかもしれないけど助ける。こんな狂った戦争状態でも僕は狂人じゃなくて人でありたいから」
ヘリオスがそう言うとキム軍曹はため息を吐いた。
「ヘリオス軍曹、私なら修理できるかもしれません」
ヤオ軍曹がそう言った。
「本当?」
「はい、元々私は徴兵される前は宇宙船の整備員でした。モビルスーツの適正があったからパイロットになりましたが本職はこっちです」
「なら、決まりだ。すいません、うちのヤオ軍曹ならミデアを修理できるかもしれません」
「!?助けていただけるのですか?」
「ハイ!ですが万が一のことがあってはならないのでグフが2機見張りにつくことと僕が監視役としてミデアの修理を監督することが条件です」
ヘリオスの提案は受け入れられた。連邦兵達は、ヘリオス達を警戒していたが銃を構えるような素振りは見せなかった。
「提案を受け入れてくれてありがとうございます」
女性将兵がお礼を言って頭を下げた。
「いえ、私達も争うことは望みません」
ヘリオスもそう答えヤオ軍曹の方を向いた。
「それでどう?直りそう?」
「かなりイカれてますね。このミデアをかなり酷使したのですか?」
「はい、補給や負傷兵の輸送などで整備をしている暇がありませんでしたので」
ヤオ軍曹が地図を見ると。
「とりあえず、応急処置をします。応急処置をした状態での飛行なら少なくともここの連邦軍の基地まで飛ぶことはできるはずです」
指を指しながらそう言った時だった。
砲撃の衝撃がミデアを襲った。
「!?な、何事ですか!?」
「キム軍曹!ゾルダ伍長!なにがあったんですか!?」
ヘリオスが通信機で呼びかけると。
「隊長!敵です!連邦軍が俺達を攻撃してます!機体は、赤い奴が1機、タンクもどきが2機だ!」
キム軍曹が答えた。
ヘリオスは急いでミデアの外に出て旧ザクに乗りスコープで確認をするとそこにはガンキャノンが1機、ガンタンクが2機いたのだった。