オデッサの鬼、オデッサの死神と呼ばれた2人の兵士 作:ナイトメア・ゼロ
「ほ、砲撃を止めてください!私達は、連邦軍、【天空の女神】隊!私は隊長のフローラ・グラファン少将です!今すぐ攻撃を中止してください!彼らはジオンですが敵ではありません!彼らは国際法に従い故障したミデアを修理してくれてるだけなのです!」
フローラは、通信機でガンキャノン達に状況を伝えた。フローラはこう考えていた。ジオンが病院船を襲い負傷兵達を人質にしてると勘違いしている。勘違いを正さなければならないと。こう、考えていた。
しかし、現実は非常だった。
「もし、お前達が誇り高い連邦兵ならジオンに助けられる前に舌を噛んで自害しているはずだ」
「「ハァ?」」
意味がわからない返答に通信していたフローラも通信機越しで聞いていたヘリオスも言葉が出なかった。驚いているとか戸惑っているとかじゃない。本当にコイツは何を言っているんだ?と、思った。
「そこの連邦モビルスーツ!僕達は国際法に従って病院船を修理してるだけだ!今は、戦闘の意思はない!殺し合いをしたいならせめてミデアの修理が完了して飛び立ってからにしてくれ!」
ヘリオスがミデアの修理が完了するまで休戦の意思を示すが。
「ハッ!宇宙の害虫が何をほざいてやがる!?そこのミデア!貴様ら誇りを捨てて敵に寝返ったな!」
意味が分からない。なぜ、そんな訳のわからない答えになるのか。
「裏切り者もそこの害虫も全員地獄へ送ってやるよ!」
そう言って砲撃は激しさを増した。
「隊長!!これはやばい!!今すぐに撤退を!!」
キム軍曹はヘリオスに進言した。
(敵はミデアと僕達の周りを砲撃してる。はずれてるんじゃなくてわざとはずしてるんだ。となるとやることは・・・・・)
ヘリオスはキム軍曹を見ると。
「キム軍曹!シールドを前にして病院船の盾になって!ゾルダ伍長は、横に回り込んで!」
ヘリオスは指示しながらクラッカーを手にした。キム軍曹は、ミデアの前に立ちグフシールドを構えゾルダ伍長は、ブーストを吹かして大ジャンプをした。ヘリオスは、クラッカーをガンキャノン達に向けて投げた。
「バカめ!砲撃をして中距離を保ってる俺達にそんなものが効くかよ!」
たとえ届いたとしてもクラッカーの爆発程度で俺達がやられるわけがない。奴らはそう考えていた。
だが、クラッカーが爆発した瞬間、閃光が奴らの目を潰した。
「な、なんだ!?」
「ま、眩しい」
「閃光弾です!」
目潰しを躱し一早く目を回復させたガンタンクのパイロットは、砲撃を再び始めようとすると。
「な、なに!?」
いつの間にか奴らの周りは煙に囲まれ見えなくなっていた。
「あのクラッカーは閃光弾だけじゃなくスモークにもなっていたのか!?」
「落ち着け!害虫も裏切者もその場から動いているはずがない!このまま攻撃を続け」
その先は言えなかった。ガンタンクが突如、ヒートロッドで攻撃を受けショートしたのをガンキャノンのパイロットは見てしまったからだ。そしてスモークの中からゾルダ伍長が乗っているグフが飛び出しガンタンクを蹴り飛ばし横転させるとヒートソードを構え。
「くたばりやがれ!」
コックピットを突き刺した。
機体には返り血のようにガンタンクのオイルが付着した。ゾルダ伍長のグフはそのままガンキャノンに目を向けた。
「ひ、ヒィッ!」
ガンキャノンはビームライフルをグフに向けようとしたが。
「えっ?」
突然、外の映像が途切れた。
「おいおい、マジかよ。初めて見た時はただのガキだと思っていたが・・・・ったく、うちの隊長はどこまで見えてるんだ?」
ヘリオスがマゼラトップ砲でガンキャノンをヘッドショットしたのだ。
「高低差は見ての通り、こいつらの方が有利だし下からじゃ当てにくい土地だ。それを無視するとか・・・・・オデッサの死神は本当に恐ろしい。敵じゃなくてよかったよ」
いつの間にかキム軍曹が回り込んで背後からガンタンクをぶった斬っていた。ガンタンクは黒煙を出して動かなくなっていた。
「なぁ、隊長はどうやって当てたんだ?お前、見てたんだろ?」
「偶然だったけど、スモークが晴れた場所から見えた。隊長、マゼラトップ砲で曲射撃ちしたんだよ」
それを聞いてゾルダ伍長は耳を疑った。
「きょ、曲射撃ちって、確か一々めんどくせぇ計算をしながら撃つんだろ?隊長は、一瞬で計算したのか?いや、流石にコンピューターを使ったんだよな?」
「いや、たぶん使ってない。コンピューターを使ったならヘッドショットじゃなくて胴体・・・・いや、バックパックに当たってたはずだ。ズレたのか狙ったのかは知らないが少なくとも隊長は、勘で撃ったんだ」
ゾルダ伍長が口をパクパクさせていると。ガンキャノンからパイロットが脱出しようとしていた。
「動くな!」
キム軍曹がフィンガーバルカンをパイロットに向けた。
「ヒィッ!い、命だけは助けてくれ!こ、殺さないでくれ!」
あれだけのことを言っておきながらこのパイロットは体を震わせ怯えた顔で命乞いをした。
「・・・・・たしか、「誇り高い連邦兵ならジオンに助けられる前に舌を噛んで自害している」・・・・だっけ?」
「こいつ、あれだけの啖呵を張っといて自分の命が危険になったら命乞いかよ」
キム軍曹とゾルダ伍長は呆れていた。
「お、お願いします!助けてください!し、死にたくない!!シニタクナイィィィィィ!!!」
そう言ってパイロットは走り出した。ゾルダ伍長はフィンガーバルカンを構えると。
「よせ」
キム軍曹が止めた。
「あんな小物、殺す価値なんてないだろ。それに病院船を攻撃してるし敵前逃亡までしてる。ほっといても勝手に死ぬ」
そう言うとゾルダ伍長はフィンガーバルカンを下げた。
応急修理が終了し襲ってきたガンキャノンの部隊も追い払うとフローラ少将が前に出て頭を下げた。
「敵軍でありながら私達を助けていただきありがとうございます」
「頭を上げてください。僕達は当然のことをしただけですから」
フローラ少将は頭を上げるとヘリオスを見つめ。
「お名前を教えていただけますか?若きジオンの兵士様」
と、訊いた。
「ヘリオス・ユナイト。階級は、一応、曹長です」
「ヘリオス・ユナイト曹長。そうですか」
フローラ少将は、膝をつき、右手を額、胸、左肩、右肩に触れ十字を切ると手を組み祈るような動作を始めた。
「・・・・・何をやってるんだ?」
「さぁ・・・・」
キム軍曹達は彼女の動作に首を傾げた。
「それって・・・・確か祈りの動作でしたよね?ってことはあなたは宗教関係の人ですか?」
「幼い頃から小さな教会で育ち教会のシスターになる為に努力しましたが財政難で教会は潰れてしまいました」
「ジオンの大学で習いました。旧世紀の宗教は宇宙世紀に変わってから人心が少しずつ離れていき今では、信仰心を持っている人は僅かしかいにいと」
フローラ少将はクスリと笑い。
「ヘリオス様は博識なのですね」
と、言った。
「そんなことはありませんよ。これでも歴史研究家を目指していたのですが戦争のせいでその夢も叶えられるかどうか」
ヘリオスは少しだけ顔を曇らせた。
「・・・・そうですか。・・・・・神は全ての人達の行いを見ています。あなたもこの戦争で多くの罪を背負ってしまいました。ですが、神はきっと全てをお許しくださいます。先ほどの祈りはヘリオス様の武運を祈りました。きっと、神はあなたをお守りくださるでしょう」
フローラ少将がそう言うとミデアに戻ろうとした。
「あの、すいません。あなたの名前は?」
「私はフローラ・グラファン。連邦軍少将で補給部隊、天空の女神隊の隊長です」
そう言ってミデアに戻るとミデアが動き出し飛び立った。
「本当にいいのですか?いくら病院船とはいえ見逃して」
ヤオ軍曹が尋ねるとヘリオスは「当たり前だ」と、答えた。
「それよりも任務に戻ろう。今のでかなり時間をかけてしまった。急いで先行部隊と合流しよう」
「「「了解」」」
ヘリオスはそう言って歩き始めるのだった。