オデッサの鬼、オデッサの死神と呼ばれた2人の兵士 作:ナイトメア・ゼロ
基地からの撤退に成功したヘリオス達はジオンが制圧した空港にいた。滑走路にはジオンの戦闘機ドップやコムサイ、ファットアンクルがありヘリオス達のモビルスーツは、邪魔にならない場所で待機していた。
「あー、もう疲れた」
給料以上の仕事をしたせいでヘリオスは疲れきってしまい地面に溶けかけていた。
「最近、歴史書も読んでないしこの空港も警戒態勢に入っちゃったから全然休まらないし」
そうぐちぐち言ってると。
「おーい、ヘリオス。生きてるかー?」
ウルフが両手にコーヒーを持ってやって来た。
「あー、ウルフ」
ウルフを見つけるとヘリオスは両手を前に伸ばして手を振った。
「ほら、コーヒー持ってきたぞ」
そう言ってヘリオスの前にコーヒーを置きヘリオスの前に座った。
「ありがとう」
そう言ってヘリオスは両手でコーヒーが入った紙コップを持つとゆっくりと飲み始めた。そんな2人の姿を見て空港で働いている軍人達は目を丸くした。
「・・・・・なぁ、ウルフ。ここ来た時から思ってたんだけど、みんなあんな風に反応してるけどグール隊にいた時は本当に何してたんだ?」
ヘリオスが質問するとウルフはバツが悪そうな顔をして目を逸らした。
「教えたくないならいいけど・・・・・僕は信じてるから。ウルフは噂みたいなことしてないって」
「いや、知ってんのかよ!?そんな質問するから知らないと思ったのに」
「司令が言ってたんだ。まぁ、ウルフは絶対にやってないって言ってやったけどな!」
ヘリオスも起き上がり胡座をかいて能天気に笑った。そんなヘリオスを見てウルフの心は少し救われたような感覚と騙しているような罪悪感が現れた。
「ごめん。ちょっとしょんべんしたくなったからトイレ行ってくる」
「おう、いってらっしゃーい」
そう言ってウルフはトイレに駆け込むとウルフはトイレで思いっきり吐いた。
「ゲホッ!!・・・・・・カハッ!!!!」
この空港にきてからずっとそうだ。他の奴らがグール隊だったウルフに強い怨みや憎しみの感情を出していた。研究の際に共感する能力は失われたはずなのにヘリオスと出会ってから共感する能力が復活したような気がした。とにかくここにいる間は四六時中その負の感情をずっと感じていた。そして何よりもグール隊にいた時は感じなかったのに・・・・・いや、感じてたとしても気にしなかったのに今はちゃんと感じる。
自分のせいでヘリオスが傷つくかもしれないという恐怖を。ウルフのグール隊での戦闘記録がヘリオスにバレてヘリオスがウルフを嫌うかもしれないという恐怖を。
「ハァハァ、なに気持ち悪い感情出してんだよ。いいじゃねーか嫌われてよ。どうせ俺はグール隊に所属してたんだ。今更なことになにビビってんだよ」
トイレから出てヘリオスのところに戻ろうとすると。
「ん?」
ヘリオスの前には司令代理が座っていた。
「軍曹」
ヘリオスに声をかけたのは司令代理だった。
「あ、副官・・・・じゃなくて司令代理」
「あの基地を失ったからもう司令代理じゃない。普通にアトラス中佐って呼んでくれ」
「分かりました中佐」
「そうだ、軍曹。これを」
そう言ってヘリオスに渡したのはあの基地に置いてきたと思っていた2冊の歴史書だった。
「僕の歴史書!残りの本も回収してくれてたんですか!?」
「まーな。軍曹には色々と助けられたしこれくらいの特別扱いは許されるだろう」
ヘリオスは喜んで歴史書を受け取った。
「そう言えば司令はどうなったのでしょうか。まぁ、仲間を見捨てて自分だけ逃げ出すような奴はろくな死に方をしないと思いますけど」
「知らん。どうせ連邦軍に殺されたか捕虜にされたかのどちらかだろう。あんなクズはとっととくたばればいいんだ」
そう言ってアトラス中佐はヘリオスの前であぐらをかいた。
「軍曹、一つ訊いてもいいか?」
「?なんでしょうか?」
「グール隊のウルフ中尉と、言ったか?彼と君はどんな関係なんだ?ただの友人というような関係には見えないが」
アトラス中佐の質問にヘリオスは答えた。
「ウルフは、僕の親友というよりも兄弟や家族に近いと思っています」
「それは、どういう意味だ?」
「・・・・・中佐、ウルフの過去を誰にも言わないのでしたら答えますが」
「もちろんだ。正直、私もグール隊と、聞いて彼とはあまり関わらないようにしていたが君と話してる彼はまるで別人だ。私ももしかしたら彼は所属してただけで普通に仕事をしていただけじゃないのかと考えている。だからこそ、彼は何者なのか。君の口から聞いてみたかったんだ」
アトラス中佐がそう言うと答え始めた。
「まず、僕とウルフは同じ孤児院にいたんですよ」
「孤児院に?」
「はい。僕がまだ子供だった頃にウルフが孤児院にやって来たんですよ。なんでか分かんないんですけどウルフの実の両親は彼のことをバケモノって呼んで捨てて行ったんですよ。ウルフも両親に捨てられて落ち込んでたんですけどある日、ウルフが孤児院内でイジメを受けるようになってたんですよ。アイツら常にウルフの事をバケモノって呼んで先生達もウルフの事をバケモノって呼ぶようになってたんです」
「酷い話だな。それで君が助けたのか軍曹?」
「いや、それが僕も思い出せないんですよ。気がついたら僕とウルフは孤児院で一緒にいることが多くなって、よく遊ぶようになったんですよ。・・・・・・・・僕が本を読み聞かせてよく、寝られたっけ」
「・・・・・バケモノってどういうことなんだ?」
「いや、バケモノって言っても僕は全然バケモノじゃないと思ってますよ。ウルフは、ただ勘がいいだけなんですから」
「勘がいい?」
「はい、2人でかくれんぼした時も速攻で見つかりましたし何も言ってないのに僕が欲しかった本を持って来てくれたりしてたんですよ」
「・・・・・そうなのか?・・・・・・軍曹。もしかしてだが彼は」
「あ、ウルフだ」
ウルフが戻ってきたのを目にするとヘリオスはコーヒーを片手に立ち上がり。
「それじゃ、ウルフが戻ってきたので」
そう言ってウルフのもとに向かった。
「・・・・・・賭けてみるのも一興か」
寝静まった夜、アトラス中佐は報告書を書いていた。
「よし、できた」
完成した報告書は、オデッサ基地へ向けてメールで送られ送信が完了するとアトラス中佐は満足気な顔でパソコンの電源を消した。
「さてと、鬼が出るか蛇がでるか」
そう言って、眠りにつくのだった。