「なぁアクア、俺達ロンドンを出航したの11日前だよな?」
「あぁそうだな」
「俺は三角貿易をかれこれ4度も経験した事がある。この船よりも速度の出る軍艦に乗ってアフリカに進出したこともあった」
「それがどうしたんだ?」
「いや……嵐に1回巻き込まれたとは言え、速度が凄く出るわけでも無いグッドラック号で僅か11日でアフリカ中部まで来れるの普通じゃないからな。普通3週間くらいかかるからな」
「まぁ、俺達の船には幸運の男が乗ってるから」
「幸運の男?」
「そう、チャーリー料理長だよ」
アクアは大げさに発表する。
「チャーリーとは何度も漁船で一緒に乗った事があるが、毎回大漁で、チャーリーが船に乗った日には魚が釣れなかった日は無いんだ」
すると話を聞いていた船長のハンスもやって来て
「お、チャーリーの話か?」
「船長、チャーリー料理長が幸運の男ってアクアが言うんですけど、船長と前回同じ船に乗ってたんですよね? 実際どうなんです?」
「チャーリーは凄かったぞ……前回の航海マジで神がかってた」
チャーリー幸運伝説その1
釣りをすればほぼ毎回大漁……海の砂漠と言われる大海原の大西洋ど真ん中(小魚やプランクトンを食べる生き物がほぼ居なくなるため、マグロやカツオ等の大型の魚しか居なくなる海域)でもマグロやカツオを釣り上げ、嵐の日以外新鮮な魚を毎日食べることが出来た。
チャーリー幸運伝説その2
海賊に襲撃されたが、イギリスは襲わない私掠船だったために食料を少し譲って解放。
チャーリーはその海賊の船長と仲良くなる。
チャーリー幸運伝説その3
奴隷購入に普通数ヶ月沿岸部を行き来する必要があるが、前回は上陸した国にて、1発で予定の奴隷数に到達。
チャーリー幸運伝説その4
チャーリーが船内を綺麗にしていれば病気になりにくいと言うので奴隷を使って船内掃除をしていたおかげで元々弱っていた奴隷以外ほぼ病気無しで大西洋横断成功。
チャーリー幸運伝説その5
飲水が腐ってくると雨が降る……これが3回も起こった。
おかげで大西洋の行き帰りで飲水に困ることは無かった。
「こんな感じだな」
「滅茶苦茶幸運の男だなチャーリー料理長」
「今回の航海でもその幸運が生きてますよね……だって目的地もう見える位置にありますし」
「だな。俺も何度かアフリカには行き来した事があるが、こんなに早く到着するのは初めてだ」
「今回の航海もチャーリー料理長の幸運にあやかりたいものだぜ」
「まったくですね」
まぁアクアはご主人であるチャーリーの運は神からのご加護としか言いようが無いと思っているが……。
そんなこんなで最初の目的地ジョロフ王国(現ギニア)に到着するのだった。
「接舷完了〜っと」
アクアが船の錨を下ろし、ボートもコーラルと一緒に船から降ろしていく。
ボートを海に浮かべたら、ボートに船長達が王様に謁見するための貢物を用意して、船長達を陸に上げる。
「じゃあチャーリー、アクア、コーラルは奴隷購入をするためにイギリス商館に向かってくれ。あと食料や飲料の調達も頼むわ」
「船長わかりました!」
俺は事前に話し合ってアクアとコーラルを荷物持ちに連れていきたいとハンス船長に言って、船から降ろした。
そのまま俺達はイギリス商館に向かい、武器や弾薬、加工品の輸出の話し合いを任された。
まぁ経理をしているのが俺と言うのもあるが……。
イギリス商館のイメージをするなら長崎の出島を要塞化した物というのが一番わかりやすいかもしれない。
土壁の城壁に石造りの城、その周りに見張り塔や大砲を接地した場所があったりする。
俺はイギリスの南海会社の者ですとイギリス商館に訪ね、商館長と話し合う場を設けてもらった。
「まず言っておくが、奴隷貿易だともっと南の地域じゃないと販売してないぞ」
「ええ、大丈夫です。今回求めるのは奴隷では無く金や宝石類なので」
「おお、そうかそうか……いやぁ最近奴隷貿易が盛んだから奴隷を求めてこの地域に来る者があとを絶たなくてな。となると宝石類を買ったら本国に戻る感じか?」
「いえ、スペインの植民地でそれらを銀と交換して持ち帰るつもりです」
「あー、なるほどな。でも利益出るのか?」
「奴隷貿易よりは利益は出ませんが、人を運ぶより物の方が病気等を考えると……ねぇ……それに南海会社はスペインとの貿易が主な収益になってますので」
「ふーむ、まぁいい。でも経理を任されているのが君みたいな若者で大丈夫なのか?」
「今計算出来る者はなかなかカリブ海に行きたがりませんからね。海賊共和国なる国もあるんでしょ?」
「そうそう。全く嘆かわしい。本国も早く海賊退治に乗り出せば良い物を」
「とりあえずこれが売り物の武器や弾薬類に本国で作られた布や日用品ですね」
「ふむ……この量なら金と宝石はこれぐらいになるがどうだろう」
「そうですねぇ……宝石ですがルビーとダイヤモンドをこれくらいでどうです?」
「ふむ……ならもう少し支払える物は無いか?」
「うーん、でしたらスペインに売却予定だった火薬を上乗せしましょう」
「よし、交渉成立だ」
「あとロープを幾らか恵んでくださいませんか? 嵐にあって船の補強に使いたいのですが」
「あぁ、それくらいなら構わないよ。食料と水も私らのところで買うなら安くするが」
「ええ、じゃあお願いします。食料と水は……船員が50名なのでそれを3ヶ月分お願いします」
「わかった」
「チャーリーの嘘つきー」
「冷や冷やしましたよ」
商館から船に帰りながらアクアとコーラルに言われるが、俺は気にしない。
「とりあえず火薬や武器、日用品が2000ポンド分の金や宝石に化けた。で、船長にはこっちの紙を見せる」
それは俺が偽造した奴隷取引の決算書類である。
そこには奴隷の人数と男女や年齢のリストも含まれていた。
「しかもスペインに売却する予定の火薬なんて元から無いじゃないですか。交渉するのに嘘混ぜ過ぎですよ」
「取引自体が嘘にまみれてるんだから仕方がないだろ。ほら、あと180人分の食料と水を2ヶ月分用意しないといけないんだから街に行くぞ」
「エゲツねぇ」
「書類偽装、偽の積荷、嘘の契約……スリーアウトチェンジ!」
「アクア、この時代にはまだ野球はねーぞ」
「えへへ、そうでしたね」
俺は食料を街の商人から買い付けるのであった。
船に戻った俺は船長にこう言われた。
「チャーリー、やっぱりこの国では奴隷を扱ってないって言われたぞ」
「商館からもそう言われました……が、それは表向きの様です」
「表向き?」
「表向きは金や宝石を輸出しているそうですが、実際には他国の商館も奴隷を扱っているそうで……船長これを」
「これは……奴隷のリストか!」
「ええ、しかもだいぶ安いですし、200人売ってくれるそうですよ」
「ほ、本当か!」
「あと船長こっちを」
「これは……ん? 奴隷の値段がさっきの書類と違くないか?」
「奴隷の値段をかさ増ししてその分金や宝石を買う手はずを整えました。スペインとの国際貿易なので色々差額が出てきますし、本国に計上するのは一部にして……残りは船員で分け合って懐に入れてしまえば……」
「……チャーリー、お前結構悪い奴だな! でも改めて気に入ったぞ」
「コツは船員全員をグルにしてしまうことです。しかも宝石だからあんまり大きさもないので個人の袋に入れてしまえば分かりようが無いですからね」
「うわ、チャーリー悪い奴」
「でもちゃんと会社としては利益を出してますよ。それに船に乗っているので経費以外での購入にも出来ますしー」
「わかったわかった。奴隷は表向きやってないと言うと国に見つかるのはマズイ感じか」
「はい、なので闇夜に紛れて連れてきますので、船内で船医から病気のチェック等を受ける形で」
「わかった。宝石や金なんかはどうする?」
「奴隷に運ばせるんで大丈夫ですよ。とりあえず知っている奴を少なくしたいんで、アクアとコーラルと俺の3人と商館の人が奴隷を船まで運ぶんで、出航前日になったらボート降ろして待機をお願いします」
「おう」
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