ジョロフ王国で束の間の休日を噛み締めること1週間。
船員達は1ヶ月幾らという契約をしているため、本来は給料を日給計算に直した上で支払うことになるが、ボーナスから差し引く形で給料を前借りみたいな風にして、陸上で遊ぶ金を抽出した。
これをしないと船員達の不満が爆発してしまう可能性があるので仕方がない。
で、船員達が遊んでいる間に火薬や武器類の搬出を商館の社員の人に手伝って貰って運搬し、金や宝石を先に船に運搬してしまった。
船長には先に宝石類が届けられたと伝え、倉庫の中に金の延べ棒が入った袋や宝石が入った箱が次々に入れられていく。
「おいおい、なんか宝石多く無いか?」
「それだけ奴隷を安く買えたってことですよ。あと食糧庫に鶏や豚を搬入しておきますからね」
「おう」
長期航海をする時に、金がある船は家畜を生きたまま乗せる事がある。
これはどうしても長期航海をすると船の食料が劣化してしまうため、家畜を船に乗せることで新鮮な肉を供給出来るようにして、船員を健康的に過ごさせるのに役立てることが出来る。
ただ家畜の扱いに慣れている船員が居ないと、家畜も病気になって死んでしまったり、怪我をしてしまうので扱える船員も特別手当が支給される。
幸いうちの船はベテラン水夫が多いので、家畜の扱いに長けている者も多く、そこら辺は問題が少ないだろう。
宝石に食料を詰め込んで、残りはいよいよ奴隷だけとなり、俺は夕暮れと共にコーラルとアクアの2人に石炭の袋を持たせて移動し、日が暮れたのを確認して、石炭を人に変えていく。
「えっと成人男性120人、成人女性60人、子供20人……」
俺が石炭に念じると、次々に人に変わっていき、肌の色が黒光りした男女が現れていった。
イギリスの質の良い石炭を使ったおかげか、美男美女、美少年、美少女ばかりで、男は背が高く筋肉質、女性は胸や尻がでかい体形の奴らばっかりだった。
「石炭の質が良すぎてなんか凄いことになったな……これ女性陣船員に襲われないか?」
ちょっと心配であるが、俺が次々に石炭を人に変えていき、コーラルとアクアが生み出された奴隷達の腕を縄で縛っていく。
「よし、人数分完了。じゃあちゃっちゃと船に戻りますか」
奴隷達(石炭人間)を船に連れていくと、船員達が待っていてくれていた。
船員達が網を伝っておりていき、桟橋から奴隷達を船に詰め込んでいく。
船の中では船医が奴隷達の健康状態を確認していく。
「これで最後だ。網を外すぞ」
桟橋から網を外し、ボートも格納して出航準備を整える。
船医の確認も終わったみたいでハンス船長に
「全員傷一つ無く健康そのもの。大当たり引きましたな」
と太鼓判を押した。
船長に俺が偽装した奴隷の契約書類を渡し、朝には出航という流れになるのだった。
翌朝、日の出と共に港を出航し、大西洋横断が始まる。
次の目的地はスペイン植民地のキューバ、奴隷の売れ残りが出るようならばメキシコまで向かう。
そこで砂糖、タバコ、コーヒー、カカオ、銀等を載せてイギリスに帰るというルートである。
ちなみに相場はイギリス植民地よりもスペイン植民地の方が安かったりする。
なぜかというと、イギリスの植民地はスペインやポルトガルに出遅れた為に小さな島々か北アメリカ大陸の植民地しか無い。
そのアメリカ植民地は綿栽培は盛んだが、砂糖やタバコ等はどうしても広大なメキシコだったり、島にしては広く、気候が良いキューバの方が生産力があるのは当たり前で、生産力が高いということは奴隷が高く売れて物資を安く買うことが出来るのである。
イギリスの植民地は残念ながら購入する物資も高いのである。
あと南海会社がスペイン政府から許可を貰って交易することが許されている……というのもある。
普通イギリス商船は割高でもイギリス植民地、もしくは同盟関係のあるポルトガル植民地でしか商売は出来ないのだ。
そんな航海を初めて数日……甲板や船内では女奴隷達が次々に船員達に犯されていた。
奴隷達は基本与えられたエリアから出ていけないというのは前に言っていたが、女性陣や子供は日中は入室が禁止された場所以外自由に動くことが許されていた。
なので甲板に移動して船員達の手伝いをすることが多かった。
その為に奴隷達を好意的に感じる船員がでてくるのも当たり前で、胸や尻がでかいという欲情する部分がしっかりしていたのも性欲が高まる原因となり、あっちこっちで性行為をする船員が続出したのである。
天候が安定していたことや、船上でストレス発散するのが持ち込んだ本だったり、トランプだったり、それが飽きれば性行為に走るのは当たり前で、ヤバいヤツになると、積み込んだ豚や鶏に欲情するケモナーも現れた。
女奴隷はまだしも、皆の大切な食料に手を出した者は勿論罰則対象で、甲板を延々と走らせられたり、鞭打ちの刑に処させる事がある。
そんなヤバいヤツはとりあえず1人だけで、そいつはザワークラウトを残して壊血病になりかかって錯乱したのが原因だったので、オレンジジュースを飲ませてなるべく栄養あるのを食べさせたら回復していった。
あとは奴隷達が英語に堪能な事を船員達は驚き、特に従順な男の奴隷達に水夫の仕事の一部を手伝ってもらったり、誰かが持ち込んだキリスト教の聖書を音読するようになり、船内でミサが開かれるという事もあった。
俺は奴隷達が石炭人間というのを知っているが、知らない船員達は奴隷達が凄まじく従順かつ有能というのを不気味に思いながらも日が過ぎていった。
そんな事件もありながら、毎日ほぼ10ノットの速度で大西洋を爆走し、ロンドンを出航してから1ヶ月が経過し、給料が支給されることになった。
「はい、注目……えー、給料日と成りましたが、航海が順調過ぎるだけでなく奴隷を格安で買えたので特別ボーナスを支給します」
船長の言葉に船員達から歓声が上がる。
「補足ですが、会社からは支給する金が契約で決まっているので物品での支給になります」
俺がそう言うと支給についての説明が始まった。
今回支給するのは1ギニー金貨を全員に渡していった。
これはジョロフ王国で採れる金を加工した硬貨で、ギニアの金を使っているからギニーと呼ばれていた。
1ギニーは21シリングと同じ価値であり、ほぼ1ポンドである。
これを航海が順調にいけば帰りの船でももう1枚支給するとした。
船員達は喜びを爆発させて肩を組んで歌い出すが、給料に1ギニー硬貨が追加されて支給された。
これで帰りもボーナスを支払うとなれば船員達の離反を防ぐことにも繋がるからである。
で、これのみそは俺はボーナスを前貸ししている点であり、本来ボーナスとして1人2ギニーを支給し、これを前借り分と相殺するという計算をし、その分を俺と船長が偽装して懐に入れたのである。
これで俺は16ギニー……約16ポンドと16シリングも儲かってしまった。
これが次のボーナスでも同じ手法で横領することを船長と相談しており、約32ポンドほど横領することができそうである。
これに計上していない宝石類もあるので更に数百ポンドの横領が出来るかもしれない。
そんな事を考えながらもボーナスの支給が終わり、俺は何食わぬ顔で昼食を作るために厨房に戻るのだった。
「おいおい、早すぎるだろ」
「航海長! 島が見えた!」
甲板から見張りをしていた水夫達が叫ぶ。
航海長は早すぎるとして望遠鏡を使って島の形を見るが、イスパニョーラ島(未来のドミニカ共和国)であることが判明。
「イスパニョーラ島はスペインとフランスの植民地だが、揉めていると聞くから、このまま通過するよ。なに、ここまで来ればキューバまで数日だ……チャーリー料理長、飲水や食料はまだ持つかい?」
「あと1ヶ月は持ちますよ。今日はパーティーにしましょうか?」
「そうしてくれ」
こうして2回目の航海はなんと大西洋で嵐に遭うことも無く、大西洋を23日という短期間で渡りきってしまうのであった。