「正露丸作っておいてよかった……」
あろうことか俺が赤痢に苦しむ事になり、キューバまで残り数日というところ、ほぼ腹痛で過ごすことになってしまった。
ただ正露丸をつくっていたおかげで下痢による脱水症状で絶命という最悪な事態は免れ、料理も食材が比較的余っているお陰でコーラルとアクアに頑張ってもらって数日持たせてもらった。
ちなみにこの航海で判明したが、宝石人間達は宝石に戻ると体調がリセットされるらしく、アクアも体調不良を一時訴えたが、一度宝石に戻してから再び人間に戻すと体調が良くなっていた。
試しに石炭で作った女性陣(男性陣は鎖に繋がれているので外すと問題になるし、女性陣は性行為を凄まじくやっているので、性病の兆しが出ていたため)も一度石炭に戻してから人間にすると、処女膜まで再生した。
赤痢が治った俺は女奴隷達が妊娠してたり、性病に感染していると値下がりするため、女性陣を順番に体をリセットさせた。
ただそれで俺が女をとっかえひっかえしているのでは無いかという噂が流れてしまったが、船医に代わって女奴隷達が病気になっていないかの確認をしていたと言って誤魔化した。
俺の他にも赤痢の船員が出たが、そいつにも正露丸を紹介して飲ませると効果抜群で、下痢は俺と同じくキューバに到着する前に止まった。
ただ抗生剤を使ったわけではないので俺の体内からはまだ赤痢の菌を排出している状況なので正露丸は飲み続けなければならないし、アクアやコーラルの身体リセットは続けた。(食事を作っている2人が赤痢になるとパンデミックが発生する可能性が高いため)
とりあえず赤痢が大蔓延する前にキューバに到着し、俺の体調がまだ怪しいため、船長のハンスがキューバの総督府に向かい、奴隷輸出の交渉を行ってくれた。
奴隷市が開催される頃には俺の体調も回復し、今回は船上で奴隷の取引が行われるらしい。
やり方は奴隷ブローカー達が集まり、競売をしていく形式で行う。
ブローカー達が集まるまで2週間かかったのでそれまでは港町に出てどんちゃん騒ぎである。
流石に競売開始前に女奴隷に手を出す馬鹿はおらず、港町の売春宿に泊まり込んで発散しているようである。
食事も飯屋が陸上にあるので船番以外は陸の飯屋で食べてくるし、そのまま翌朝まで泊まってくることもしばしば。
体調が良くなった俺も港町に出ることがあり、医療品だったり次の航海に必要な食料を買っていった。
あと家畜の補充も……。
豚は屠殺してベーコンに加工し、皆の胃袋に収まったが、鶏はまだ10羽が毎日卵を産み続けてくれているし、元気なのでとりあえずメキシコまでは連れていくつもりである。
まぁメキシコに寄るためあんまり食料は買い込まなくても大丈夫であるが……。
「しっかし、やっぱりカリブ海のスペイン本拠地となると軍艦も多く滞在しているな」
キューバはスペインにとってカリブ海覇権の生命線であり、目ぼしい鉱物資源は取り尽くしてしまったが、大農園が幾つもあり、換金作物を大量生産することで本国に砂糖やタバコ等を輸出し続けていた。
ちなみに俺の記憶が正しければスペインと貿易出来るのはこの年までであり、来年からスペインはカリブ海のイギリス船を無差別に襲っても良いというスペイン王の命令が発表されて四国同盟戦争が勃発する。
まぁ1717年から1720で終結するため、その間はある程度貿易船からは離れておいた方が良いかもしれない。
なーんて事を思いながら、キューバの特産品やラム酒を買っていく。
ラム酒……それは白い砂糖を作る時に出る廃蜜(黒砂糖の黒い部分)を酒にしたもので、味は正直ビールやワインより劣る。
というのもこの時代のラム酒は本当に廃棄される蜜で酒が作れれば何でも良いと大量生産していたため品質はマジで悪い。
ただ大量に作られるし、度数が高いため腐りにくく、船乗り達にとっては貴重な長持ちする水分だった為に重宝されたのである。
あとラム酒はアフリカの貿易品にもなっており、アメリカから輸入したラム酒を水で薄めてかさ増しして、それをアフリカで奴隷と交換し、カリブ海で奴隷と大量のラム酒を交換するという悪魔的な錬金術ができたりもした。(実際にそれで儲けた商会がイギリスにあったらしい)
あとはコーヒー豆も買い込んでいく。
キューバのコーヒーはこの時代から高い品質を誇っており、ポルトガルのブラジルと品質で勝負していた。
イギリスが紅茶ガンギマリ民族になるのはもう少し先で、1730年から1740年頃の為、今は紅茶は上流階級の品であり、一般に普及するのはもう少し後である。
そんなイギリスで今大ブームなのはコーヒーであり、コーヒーハウスが乱立するほどコーヒーの需要が伸び続けていた為にアメリカ大陸のコーヒーは需要が馬鹿みたいにあった。
ロンドンなんかはコーヒーハウスが1つの街に最盛期は3000軒もあったというくらいコーヒー熱に浮かされており、今も多くの街にコーヒーハウスが建ち並んでいた。
なので今回積んでいく荷物はコーヒーと砂糖、それにタバコである。
「前回のジャマイカってやっぱり高いんだな……ジャマイカの8割の値段で砂糖が同量買えるし……」
そりゃ南海会社はスペインと貿易がしたいわけだと納得しながら、俺は食料を買って船に戻るのだった。
「さぁさぁブローカーの皆さん、イギリス商船だからあくどい事をすると思うかもしれませんが、質の良い奴隷を集めてきました! 今から20名ずつ奴隷を船内から出していきますので、10分間確認をしたら競売をかけていきますからね」
ハンス船長がそう声を張り上げる。
俺はブローカー達向けにスペイン語のわかる水夫に奴隷のリストを作ってもらい、それを看板に貼っておいた。
ブローカー達は50人くらい集まっており、甲板は結構人でギチギチになっている。
船内から奴隷を出していくと歓声が上がる。
見た感じ傷も無く、筋肉質だったり女性は胸や尻がデカくナイスバディをしているし、皆油を塗っていないのにテカっているので凄い質の良い奴隷を連れてきたぞとか、長年ブローカーをしているが過去一で質の良い奴隷かもしれない……と、ブローカー達から驚愕といった声が出ていた。
スペイン領なのでスペインの通貨で決算する必要があり、だいたい1ギニー金貨(21シリング 約3万3000円)と2.5エスクード(2エスクード金貨と0.5エスクード金貨1枚)が同等となっている。
「競売始めます。1番の男45エスクードから」
「50エスクード」
「55エスクード!」
「いやこんな良い奴隷もっと高く売れる62エスクード!」
「他いませんか……いませんね。緑の羽根つき帽子の方落札です」
こんな感じで入札が始まっていき、あっという間に最初の20人が売れた。
だいたい男の奴隷が60エスクードで、女の奴隷が56エスクードといった感じである。
子供とセット売りされた時は58エスクード前後で売れていた。
1日で100人売り切ったが、今日だけで総額5500エスクードであり、イギリスの金額に直すと2200ポンドにもなる。
まだ同じくらいの奴隷が100人いるのでおおよそ今回の利益は4400ポンドにもなると思われる。
これでコーヒー等を満載して帰れば約6000ポンドくらいの収益になり、初期投資が約2000ポンドなので3倍になった計算になるが、約2000ポンド分の金や宝石もあるので8000ポンドの最終収益になりそうである。
投資家達に配分して船員達にボーナスを与えても2000ポンド以上が会社の利益になりそうである。
これだけ稼いだら多少の横領は見逃して欲しいものである。
なおキューバの総督から奴隷の質があまりに良い為にメキシコ分の一部奴隷も売ってくれと頼まれ、急遽奴隷市2日目が開催され、前日よりも高値で奴隷が売却された。
50人子供奴隷も捌き切った上で1600ポンドも売り抜き、キューバだけで3800ポンドにもなった。
そしてコーヒーや砂糖、タバコを満載してメキシコに移動するのであった。