この時代の娼館にはある程度のルールが存在したが、まず娼館を建てる為には街の娼館のギルドに加入する必要がある。
一部の街ではこのギルドが機能していない場所もあるが、ギルドに加入しておいた方が問題は少ないのが事実である。
で、こういうギルドに加入する以上、娼館を経営する人物は商人となり、商館の業務の1つに娼館を扱うという経緯となる。
またギルドと言っても街で娼婦の値段の下限と上限が決まっている他に、キリスト教の教義もあり、妊婦が売春をしてはいけない、娼婦の最低賃金を守る、娼婦は金を貰った以上男性に抱かれなければならない、といった決まりごとも存在する。
他にも娼婦に貸せる借金の金額の上限だったり、雇い主は娼婦の金を盗んではいけない、質の悪い客はお金を返却する代わりに追い払っても良い等の基本的なルールが決められていた。
ただあくまで街だけでギルドは完結しており、国が公認の公娼制を制定するのは18世紀後半の産業革命頃の話になる。
なのでギルドと言っても私的な組合になるのである。
「天才と言われたチャーリーが、娼婦を働かせる商会から出発するのか……」
「組合のルールは守るからさ」
俺は娼婦を扱うドーバーの街の元締めの所を訪れていた。
「いやな、チャーリー、確かに貿易で稼いで来たとはいえ商会を運営するのは数百ポンドの資金が居るがそんな金はあるのか?」
「一応運転資金くらいはあります。出来れば広い宿を貸していただけると助かるのですが……」
「ふーむ。チャーリー、お前の目的はなんだ?」
「目的ですか?」
「あぁ、コーヒーハウスで働いていたり、親の漁船で必死に働いていた姿は同じ街に居たから見ていたし、何度か話し合ったが、娼婦をこき使うのがお前の目的ではないだろ?」
「ええ、俺は船を手に入れて貿易をしたいのです。しかし、船を買うには予算が居る。それを稼ぐ為に娼館を経営して一発当てたいと」
「ふーむ、なぜドーバーでやろうと?」
「ドーバーは港街……貿易船や漁船で稼いできた労働者が金を落とすには十分な土壌があります。それに知り合いも多いので、知り合い経由で客を呼び込みやすいってのもあります」
「勝算があっての娼館経営か……まぁ良いだろう。娼婦はどうする?」
「既に良さそうなのをロンドンで声掛けをしましたので、今度連れてきます」
「……まぁギルドとしては管理者だけ登録して、決まりを守ってくれればあとは自由にやって良い。金払いで揉めて売りに出された娼館があるがそこを買い取るでどうだ?」
「良いんですか?」
「まぁ娼館一本で食ってくって言うなら辞めとけって言うが、将来は貿易会社として食っていくってんなら文句は言えねぇよ」
「ありがとうございます」
「広告出しておけよ。代理店紹介しようか?」
「あ、それは大丈夫です。コーヒーハウスの知り合いが居るので」
「そうか」
というわけで叩き売りされていた50ポンドの宿を購入し、リフォームに20ポンドを追加で支払った。
それから備品等を購入すればあっという間に100ポンドが飛んでいった。
しかし、娼婦が1晩5シリングでも30日働いてくれれば150シリング……7.5ポンドになる。
10人働かせれば75ポンド、それが1年で900ポンドにもなる。
まぁこれは理論値なので、実際は半分くらいの450ポンドくらいになるだろうが、娼婦を宝石人間にすることで、毎日体のリセットをすれば病気にならないで働き続けてくれる女の子の誕生である。
これでとりあえず南海事件が起こるまでの約4年ほどお金を貯めるフェイズに移行したいと思う。
改築した宿はRPGに出てくるような2階建ての宿で、下の階に従業員の控室や調理場、食堂があり、2階は個室が6部屋ある感じだ。
2階が売春をするスペースで、1階は食堂として経営しようと思っていた。
食堂と一緒になっている娼館は珍しいが、田舎の娼館だとこの形態で昼は食堂、夜は宿として経営する所もあるので無くは無い仕組みである。
さて、準備が整ったので宝石達をどんどん女性に変えていく。
まずは5ギニー金貨を女性にしてみた。
金貨に触れるとみるみる人の形になっていき、170センチくらいで胸の大きな金髪で黄色い瞳をした優雅な女性が現れた。
髪はツインドリルに見える縦ロールになっていた。
「あら! ご主人初めまして、金ですわ! 石言葉は成功、繁栄、富、自信、希望と色々ありますわ! お金になることが多い為に計算も得意ですわ! よろしくあそばせ」
なんかお嬢様口調の女性が産まれた。
名前はゴールドの付く花のマリーゴールドをそのまま付けた。
女のときはマリー、男の時はゴールドを使い分ければ良いと説明する。
続いて5シリング銀貨を女性に変える。
「初めまして銀貨から産まれました。銀です。石言葉は純粋、曇りのない良心、智恵です。私も硬貨ですので計算を強みとしています。毒を見抜く為に薬学もある程度の知見があります」
銀から産まれた女性は銀色の長髪を銀の髪留めでまとめ、知的な印象がある。
デカい銀貨を使ったためか、こちらも胸が大きかったし、尻もデカい。
名前はシルバーリーフにし、女性の時はリーフ、男性の時はシルバーを使う。
どんどんいこう。
2カラットのルビーは赤い髪が綺麗な160センチくらいの女性であり、質の良いルビーだったからか顔もとても美人であった。
石言葉は情熱、愛情、勝利、勇気、自由、仁愛、威厳という燃え上がる様な情熱の女性で、名前はまんまルビーに決まった。
ダイヤモンドは美しい透き通るような白い肌が特徴的で、髪は意外にも金髪であった。
永遠の絆、純潔、清浄無垢、純愛、不変なので儚い少女という感じで、田舎から出てきた顔の素材は良い少女という感じであった。
名前は金剛石からとってコンゴウの名前が与えられた。
他にも4人ほど金銀宝石から女性を生み出し、8人の娼婦を揃えた。
皆に用意した服を着てもらい、準備を整えていく。
「マスターお久しぶり」
「おお、チャーリー、久しぶりだな……数ヶ月ぶりか?」
「ちょっと大西洋横断して稼いできたよ」
「そうかそうか、どうだったアメリカ大陸は」
「滅茶苦茶海賊がうようよしていたよ。まぁそれを避けて、嵐を乗り越えればなかなかの稼ぎになるね」
「なるほど……何か食べていくか?」
「そうだね。いや、コーヒーとパイを貰おうかな」
「はいよ」
俺はコーヒーハウスのマスターと話していく。
「マスター、俺商館持つことにしたわ」
「それは凄いな。流石天才チャーリーだな。何を売るんだ?」
「飯と売春」
「マジか……売春宿でも始めるのか?」
「あぁ、仲間と一緒にね」
「親御さん聞いたら卒倒しそうだな」
「親にはバレるから先に言っておいたよ。好きにしろってお墨付きもいただいた」
「呆れられてるんじゃねぇのか?」
「そうかもね〜、まぁ本命は自分の船を持つことだけど」
「売春宿開くのに貯金結構使ったんじゃねぇのか?」
「多少はね。ただ十分に元は採れると踏んでるよ」
「そう上手く行くかねー」
「マスターにこれ配って欲しいんだわ」
「チケット?」
「営業開始のサービス券。これ持ってきてくれたら半額でサービスを受けられるよ」
「値段は?」
「サービス券込みで2シリングと6ペンス。ただこれだと割高だから夕食と朝食、あと嬢に体を拭いてもらうサービス付きだ」
「なるほど……飯込みで2シリングと6ペンスで1泊出来るんなら安いな。利益出るのか? これ」
「出るんだなーこれが。マスターのところで配って良い?」
「これ目当てに人が集まりそうだから良いぞ」
「ありがとうマスター」
コーヒーハウスに来るような人達経由でまずは店の評判を上げていく作戦を展開するのだった。
ちなみに俺の会社名は宝石会社……ジュエリーカンパニーである。