ドーバーの港で漁師達が話をしていた。
「なぁジュエリーハウスっていう売春宿しってるか?」
「なんだ? 知らねぇが」
「お前損してるよ。すげぇサービス良いんだぞ」
「へぇ……どんなサービスがあるんだ?」
「まず近くのコーヒーハウスで1杯コーヒーを頼むと宿の半額チケットが手に入る。それで元値が5シリングのところ2シリングと6ペンスまで値段が下がる」
「2シリングと6ペンスなら俺達の稼ぎでも行けなくは無いな」
「その店は夕方から営業しているんだが、宿に泊まる料金で夕食と朝食が付いてくる。日替わりメニューだがこれが美味いんだわ」
「そんなにか?」
「店主はあのエドワーズさん所のチャーリーで、見ない期間があったろ? その時に貿易船に乗って大西洋を巡っていたらしい。そこで色々な料理を覚えて、店で出しているんだとか」
「へぇ、あのチャーリーか! 確かに才能豊かな子だったが……そうか、宿のオーナーになったのか」
「嬢の方もすげぇぞ。巨乳から貧乳までよりどりみどり、しかも全員顔が良いし、テクニックもやべえ。オススメはルビーちゃんだ。すっごいリードしてくれるから、なすがままにイカされるぞ」
「へぇ、嬢の質も良いのかよ……お金貯めて行ってみるかねぇ」
「そうしろそうしろ」
街でもチャーリーの宿は営業開始早々に噂になるのだった。
「ご主人、今日の計算が終わりましたわ」
「ありがとうマリーゴールド、シルバーリーフもね!」
「うん、普通の事をやったまで」
売春宿の経営は順調。
初めての客はコーヒーハウスから割引券を貰ってきて、サービスを受けた客にもリピーターになってもらうために割引券を渡していく。
そうすると次回も来てくれるって寸法だ。
中には嬢に直接貢ごうとしてくる人も居るが、だったらまた来て頂戴と嬢達は店に還元するようにしてくれているらしい。
ほぼ毎日6部屋は満室で、1日15シリングの収益が出ていた。
ここから食材の材料費などで5シリングを抜き、利益は10シリングくらい。
なので1ヶ月営業して15ポンドの利益となっていた。
あとは俺の料理が美味いからと夕食だけ食べたいという客も出てきており、サービスを始めるか検討をしていた。
まぁ狙いが船乗りや漁師なので、値段を高くして高級風俗店にジョブチェンジ出来ないのが悩ましいところである。
「ルビー凄いね、毎日入ってるじゃん」
「うん、やっぱり燃え上がる様なサービスがお客様には受けが良いっぽい」
「売上的にはマリーゴールドもだな。良家のお嬢様に相手して貰っているようで興奮するって言われていたよな」
俺がそう言うとマリーゴールドは得意げにフフンと鼻を鳴らした。
基本嬢8人で6部屋を回してもらっており、本人が希望すれば休みも取らせていた。
アクアとコーラルは宿の手伝いをしてもらいながら、コーラルは診療所の手伝いもして医療の勉強もし、アクアは定期的に漁船に乗って料理に使う魚を持ってきてもらったりしていた。
ただどうしても男手がアクアとコーラル2人だけだと足りないので、小さなルビーを使って人にした紅玉から名前を取ったコウという男も作っていた。
ルビーは勇敢という石言葉があるため、背丈は小さい(165センチ程度)ながら、どんな人物にも恐れずに立ち向かうため、嬢が外を出歩く時のボディガードの様な扱いをしていた。
夕方になると客の入ってない嬢にウエイトレスをやってもらい、男達は料理を作っていく。
夕食が終わると嬢がお客さんを2階に連れていくので、男達は食器を片付けたり、朝食の仕込みをして問題が置きた時の対応にアクア、コーラル、コウの3人の誰かが寝ずの番をして、俺は早々に眠りにつく。
日の出と共に起き、朝食を作り終えるとドアをノックして客に朝を伝える。
嬢と共に起きてきた客に朝食を振る舞ってお帰りとなる。
「チャーリー、コンゴウちゃんがチップ受け取らないからオーナー経由で渡しておいてくれ」
「はーい!」
「チャーリー、料理美味かったぞ! これチップだ」
「ありがとうございます!」
こんな感じでチップを貰う事もあり、皆出勤したり、家に帰っていく。
客が全員居なくなったら、俺は宿の仲間を集めて、体のリセットを行う。
これで性病や病気を予防していく。
「これでよしっと……各自休憩や買い物を頼む、俺はコーヒーハウスで情報収集と営業をしてくるから」
「「「はーい」」」
俺の日課はこの後にコーヒーハウスで数時間滞在することである。
「マスター今日の新聞見させて貰うぞ」
「チャーリー、稼いでいるんだから自分で新聞買えば良いのに」
「それやるとコーヒーハウスに来なくなるぞ……あとこれが半額チケット」
「はいはい、来た人には配っていくよ」
マスターに半額チケットを渡してから新聞を広げる。
するとグッドラック号とハンス船長の特集が組まれていた。
すると後ろから声をかけられた。
「ようチャーリー、元気そうだな」
「(ワイアット)船長! お久しぶりです」
「どっこらしょっと、チャーリー、ハンスの奴と随分と早く三角貿易をしてきたらしいな……ハンスのお陰じゃなくて、実際はチャーリー、お前のお陰だろ」
「いやいや、ハンスさんの手腕のお陰ですよ」
「まぁそういうことにしておいてやるよ……で、カリブ海なんか変わってたか?」
「海賊の数が凄まじい数になってましたよ。カリブ海出るまでに8回も遭遇して……何とか難を乗り越えましたが」
「そんなにか……やっぱり今はカリブ海に行くのは危ねえな」
「(ワイアット)船長は今何を?」
「軍から招集がかかったから軍人だよ」
「マジっすか」
「船長やってたりすると海軍から招集がかけられたりするんだよ」
イギリス海軍はまだ戦争が近くなると商船等を徴用して軍艦にする事があり、商船で船長をやっていた者が海軍士官の船長として活動する……なんてこともあった。
場合によっては商人→海賊→恩赦→海軍軍人なんてウルトラCをやってのける人物も居たりする。
ロビンソン・クルーソーのモデルになったアレキサンダー・セルカークという人物も私掠船の航海士から無人島で4年と4ヶ月生活、それから救助されて最終的には王室の船の船長補佐まで成り上がったりもしている。
1720年に改定される海賊の処分に関する法令によりこのウルトラCみたいな経歴も徐々に無くなっていくが……それでも18世紀後半まで元海賊から商船の船長になって一財産を築いたなんて成り上がり者が結構居た。
なのでワイアット船長のような経歴も何ら不思議では無いのである。
「スペインの王がイギリス船を無差別に拿捕する法令を通したから一気に関係性がきな臭くなってな。船乗りは徴兵され始めているが、チャーリーはまだ船乗りをしているのか?」
「今お金を貯めたので売春宿のオーナーをしていますよ」
「ワイアットやめておけ、チャーリーは今普通に稼げているからな」
「ちっ、料理長としてこき使いたかったんだけどな」
「まぁ船長、俺は金を貯めて船を買おうと思っているので、その時は船長も乗りません? 俺だと若すぎて威厳が無いので」
「普通の雇われ船長の1.2倍支払ってくれるんなら乗るわ」
「約束ですよ」
「ああ、まぁ生きていたらよろしく頼むわ」
その後も情報収集を続け、やはりというかスペインと取引をしていた貿易会社の株がどんどん下がっていた。
南海会社の株も今は40ポンドまで下落しており、俺は追加で2株ほど購入した。
これでコーラルとアクアが持っている株も合わせると8株ほど保有し、今の時価総額は320ポンド……これが売り時を間違えなければ25倍近く跳ね上がるのだから美味しいったらありゃしない。
造船業界では新技術の舵輪が開発されたとなっており、船の操縦が更に楽になるだろうと新聞に書かれていた。
あとは中古船市場で、小型船(奴隷を50人程度乗せられるサイズの船まで)が約100ポンドから300ポンド。
俺が最初に乗った中型でも小さめの、スクーナー型帆船(奴隷は約100人まで乗せられるサイズ)はだいたい400ポンドから600ポンド。
前回俺が乗ったブリッグ型帆船(奴隷は約200人乗せられる)は新しい船体なので600ポンドから800ポンドも中古市場でもした。
新造船だとこの10倍の値段になることもある。
例として海賊で有名なキャプテンキッドが新造船のアドベンチャー・ギャレー号(フリゲート艦 乗員は約100名ほど、大砲は34門も乗っていた)の購入費用は6000ポンドであり、武装したために値段が跳ね上がったりもしているが、船体だけでも3000ポンドはしてしまう。
大型商船を購入するのは夢のまた夢の話であった。
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