売春宿を始めて約1年が経過した。
宿の売れ行きが良いので宿を増築し、更に9部屋泊まれる場所と従業員部屋を増やし、宝石人間の人数もルビーを3人、ダイヤモンドを4人、アクアマリンを2人、金を1人追加し、嬢の人数は18人まで増やしていた。
お陰で毎日15部屋稼働することになり、半額サービス付きでも毎日1ポンド17シリング6ペンスが稼げるようになり、船の購入金額に大幅に近づいていくことになっていた。
あと6月には四国同盟戦争と呼ばれるスペインフルボッコ戦争が始まり、ヨーロッパ大陸やスペイン沿岸部で戦闘や海戦が勃発し、港で働いていた水夫達も海兵として徴兵されていってしまった。
まぁ水夫から海兵勤務に変わっただけで、休息日には街に来て癒しを求めるので、娼館は大賑わい。
戦争による景気の刺激でドーバーの港周辺は好景気に賑わっていた。
戦争の方はイギリス海軍が直ぐにスペイン艦隊を壊滅させて制海権を握ると、スペインの商船への通商破壊作戦を展開し、スペインの植民地経営に大打撃を与えることに成功する。
それとこの戦争でスペインとの取引が停止となった南海会社は貿易をイギリス植民地の奴隷貿易に切り替え、更に宝くじを発行。
この宝くじが大当たりし、一時期1株35ポンドの最安値だったが、半年かけてジワ伸びを続け、8月頃には70ポンドまで値段を回復させるのだった。
これで南海会社はその資金を元手に金融業界に進出していき、将来の南海泡沫事件の最初の一歩を踏み出したのだった。
それを新聞で読んでいた俺は遂に始まったかと思いながらも出来ることが少なかったので、売春宿を経営しながら中古船市場を眺めたり、趣味となっていた料理の研究を続ける。
この頃にコンゴウに言われてまとめた航海用のレシピ本を出版社に売り込みに行き、有用性を認識してくれたために僅かな原稿料を貰いながらも出版にこぎつけたりもした。
ちなみにこの頃の出来事として海賊黒ひげがアメリカのサウスカロライナの大都市チャールズタウンを襲撃する事件が発生していた。
チャールズタウンは人口3500人ほどのアメリカ植民地でも屈指の大都市(この人口は白人だけと思われ、奴隷を含めると約2万から5万人程度が生活していたと思われる)であり、イギリスのアメリカ植民地の南端に位置していたのである。
その為カリブ海と北部のアメリカ植民地を結ぶ重要な貿易港があり、非常に栄えていたのである。
なおこの大都市には普段は軍艦が沢山常駐していたのだが、スペインとの戦争が始まりそうだったので、軍艦のほとんどがヨーロッパに送られており、無防備に近かったのである。
そんな状態だと知ってか知らずか黒ひげの海賊艦隊がチャールズタウンに入るための入り江を海上封鎖し、商船を拿捕しまくってしまったのである。
で、一通り暴れた後、黒ひげの艦隊はノースカロライナに向かい、そこで略奪した品の一部をノースカロライナの総督に贈る事で恩赦を発行してもらい、あれだけ暴れたのに無罪となる。
しかも黒ひげはノースカロライナ総督と癒着を開始し、堂々と海賊船を修理したり、略奪した品をノースカロライナの街で売りさばき、なんなら近くを通ったフランス船を拿捕して港に持ってくるなどで海賊行為を全然辞めなかったのである。
ちなみにこの頃黒ひげはノースカロライナのお偉いさんの娘と結婚しており、その娘は海賊船に連れて行かれると船員達に輪姦されるという悪趣味な事をやったりしていた。
しかも10月には黒ひげだけでなく逃げ足のヴェインという大海賊も合流し、十数隻の海賊船がノースカロライナの港に停泊するという街の人からすると地獄の様な光景が広がってしまったのである。
それが1ヶ月も続いたのだから周辺海域は散々に荒らされてしまい、他の植民地がブチギレて、軍艦を派遣。
それを天性の勘で察知したヴェインは軍艦が派遣された頃にノースカロライナを脱出し、黒ひげだけがノースカロライナに取り残されることになる。
11月22日、黒ひげが酒盛りしている最中に軍艦が突入し、壮絶な乱戦となり、軍艦の船長と黒ひげが両者相対して銃撃戦を行う等のドラマが発生しながらも、黒ひげは5発の銃弾を浴び20箇所を斬られ、壮絶な最後を遂げると、黒ひげの死により艦隊は壊滅。
生き残った16名の船員のうち、たまたま乗船していた1人と司法取引をした1人を除いた14名が絞首刑となり、直ぐに縛首となり、最悪の海賊と言われた黒ひげは亡くなるのであった。
この情報は12月には本国にも情報が届き、コーヒーハウスで新聞を読んでいた俺も、あ、黒ひげ死んだんだと思うのであった。
ちなみに後日談であるが、ノースカロライナの総督は黒ひげと癒着した事で本国に送還され、裁判の途中で病死するという最悪な最後を迎えるのである。
で、まぁ黒ひげが暴れ回った事でアメリカやカリブ海の品が品薄になり、チョコレートやココアの製造が大きく遅延。
売上が振るわなかったとして特許使用料金もあんまり支払われずに終わるのだった。
「1年分の利益が確定しましたわ!」
「お、マリーゴールドどれぐらいになったか?」
「宿の拡張等もありましたから約350ポンド程になりましたわ。税金の支払いでここから50ポンドほど取られますが、300ポンドは残りますわよ」
「じゃあその金で南海会社の株を追加で購入するか……今80ポンドだっけか」
「一応100ポンドは残して欲しいので2株は買えますわね」
「2株買えば持ち株は10株になるし、上々かな。今年の1719年って何かあったっけか?」
「さぁ、私の記憶には何も入ってませんわよ」
「ふーん、まぁ今年には四カ国同盟戦争も実質終わりだし、畳む準備をしておかねーとな」
「予定では1721年から貿易船で航海をするんでしたっけ?」
「あぁ、まぁ宝石人間達のほとんどが水夫は素人だから徐々に慣らしていく必要があるがな」
「まぁイギリスで会社を維持するための人員も必要でしょうに」
「それは薬剤師と一緒に正露丸作ってるメンバーにお願いするよ。三角貿易何周すれば大金持ちに成れるかな〜」
「楽しい航海になると良いですわね」
というわけで、新しくアクアマリンの宝石を複数個買ってきて、宝石人間にした後、彼らを海軍に入隊させた。
金を稼ぐのはこっちでやっておくから、海軍で船の操作等を覚えてきて欲しかったからである。
ちなみにこの頃の軍艦は沈む監獄と言われており、沈まないだけ陸上の監獄の方が軍艦よりマシという有様であった。
仕事がない人がどうしてもという場合で行き着く場所であり、好んで入隊するのはよほどの物好きと言われるくらいである。
で爽やかな青年達の宝石人間であったが、半年ほど海軍でみっちりしごかれて街に戻ってきた時にはみっちり軍人になっていた。
「へい、チャーリー様! 鍛えて来たぜ!」
「お、マリンじゃんお疲れ様、海軍どうだった?」
「砲手を散々やらされたよ……お陰で腕がこんなになっちまった」
そう言われて出された腕は俺の太ももよりもゴツくなっていた。
「ヒュー、すっげぇな」
「だろ……滅茶苦茶疲れたわ」
「身体リセットするか? 疲れは取れるぞ」
「いや、それやるとせっかくの筋肉も直っちまうからな。このままでいいや」
「そうか……ほい、海鮮パスタ」
「うひょー美味そう。いただくぜ」
バクバクと食べていくマリンを見ながら、また戦いに行くのか聞く。
「あー、1ヶ月休んだらまた出航だよ。まぁもう少しでスペイン降伏させられるし、スペイン船はほぼ残って無いから楽なものよ」
「そうか、頑張れよ〜」
俺も着々と航海の為の準備を進めるのだった。