4回目の航海では生身の人間は俺だけになり、残りは宝石人間だけで固めて、船員は50人を乗せた。
で、宝石人間を作り出して色々傾向が分かってきた。
まず俺の手元にあるのは金、銀、銅、鉄、石炭、珊瑚、ルビー、アクアマリン、ダイヤモンド。
それぞれの特徴が金は計算が得意であり、商人的な価値観が強い。
銀は知的で医学、薬学、化学、料理が得意であり、知識階層に当てはまる。
銅は合金にすることで様々な性質に変化し、純粋な銅は手先が器用、青銅は大砲の扱いが上手、黄銅は工芸や大工が得意、白銅はストレスや病気への耐性が強い事が判明していた。
鉄は真面目で、剣術や銃を撃つのが上手。
農業の適性もある。
石炭は労働者気質で、力が強い。
珊瑚は泳ぎや釣りが得意で、漁師向き。
ルビーは情熱的で、感情豊かなので接客業に向く。
アクアマリンは船乗り。
海流や風の動きを読んだり、船乗りとして必要な事をよく覚えている。
ダイヤモンドは良妻の才能が強く、女性的である。
男性だと頑丈で戦闘では勇敢に進むという性質を持っていた。
個々によって個体差はあるが、石それぞれにある程度の傾向があり、その傾向に則って役割を今回は決めて4回目の航海に備えた。
今回は俺の秘密を知っている宝石人間で周りを固めたので、どれだけ1回の航海で稼げるかに焦点を当てようと思っている。
まず石炭は上質な物を5トンほど取り寄せる。
食料や医薬品も取り寄せて、今回はアフリカには寄らないで、ノースカロライナからどんどん南下していくつもりである。
ノースカロライナ、サウスカロライナ、メキシコ、パナマを経由して南米北部の沿岸沿いを渡っていき、ブラジルまで奴隷を売りつけて、北上。
今度はカリブの島々を巡り、ジャマイカ、キューバを巡ってイギリスに戻るというルートを決めた。
そして今回船員がマックスの50人なのは経験を積ませて、2番艦や3番艦の船員を育成していくためである。
それに今回は前々から行きたいと思っていた真珠が大量に取れるパナマや宝石が大量に産出するブラジルを巡るため、新しい宝石人間の材料も手に入れられそう。
というのも、宝石人間……良くも悪くも顔が似ているのである。
イメージは整形した韓流アイドルが似ている顔をしているように、1つの種類の宝石につき、数パターンの顔しか無いのである。
銀なんかは手に入れやすいのと、色々な知識が強いためによく宝石人間にしているが、同じ顔が複数人居て、微妙な身長と体格の違いでしか判別が出来ない双子みたいな人物も現れていた。
なので宝石人間のバリエーションを増やすためにも新しい宝石を欲していたのである。
(それにまだ試していないが、宝石人間も生殖機能がある故に、同じ宝石からは似通った遺伝子になっている可能性が高い。1世代2世代は良いが、遺伝子プールが同じ種類で染まれば、近親婚の様な遺伝子疾患が現れる可能性もある……そうならないためにも色々な宝石は確保しておきたい)
言ってしまえばコレクションでもある。
(現代の倫理観的には悪かもしれないが、この時代を生きる者として使える能力は全て利用させてもらう)
俺はそう強く思いながら、次の航海の準備を進めるのだった。
ジャパン号の修理も終わり、積荷も詰め込んで、1721年8月に出航した。
2番艦の建造の予約も入れて、準備出来る事は準備をしてイギリスを旅立った。
「どんよりと曇っているな……快晴の中航海したかったが……」
俺の言葉にコーラルが反応する。
「仕方がないですよ。イギリスは晴れている時の方が少ないですからね」
ドーバーではそれほどでも無いが、ロンドンなんかは霧の都と言われるくらい常に曇っていたり、小雨が降ることが多い場所であった。
「で、このままアメリカに直行ですかい」
「あぁ、風を操るけど、偏西風を逆行する影響で、いつもよりは速度が出ないと思う……だいだい2ヶ月は大西洋を航海だろうね」
雨は降ってないので、甲板で剣術の練習をしたり、釣りをしたりそれぞれのんびりと活動している。
俺は釣りを辞めて、船長室に移動する。
船長室はおおよそ5畳程度の広さで、テーブルと書類をまとめた棚、ベッドが置かれている。
椅子に座り、俺は持ってきた新聞を読み始める。
「何処もかしこも破産破産……バブルが弾けた余波で金融危機になってるな……俺は綺麗に売り抜いて、資産を貴金属に変えたし、貿易船に乗って移動しているから嗅ぎつけられてない……かな?」
俺は約3万ポンド勝ったが、個人で数万ポンド損した存在がゴロゴロ居る。
資本家達は損をした責任を政治家に擦り付けて、醜い法廷闘争に明け暮れている。
「今回は資本家達の余力が無かったから誘わなかったが、ある程度利益の分配をした方が良いかもしれねぇな。資本家達に目をつけられたら敵わん」
所詮資本家からしたら3万ポンド程度の資本しか持たない俺は、資本家でも末席……血統的にも成り上がり者でしかない。
「将来はアメリカで大農園を経営して、悠々自適に暮らすためにも、もう少しチートと金が居る……そうだな……30でリタイア出来る目標にしたいな……」
新聞を畳むと、俺は本棚から本を手に取り、読み始めるのであった。
「フィッシュパイですよ~」
料理長になったコウが船の食事を作っていく。
今回船には料理人が3人、料理が出来る者は6人乗っているので交代で作っていく。
俺も時々厨房に立つことがあるが、船長としての仕事があるので1週間でも2回ほどであるが……。
「ご主人様のレシピに載っていたメニューになります」
フィッシュパイ……イギリスの伝統的な料理で、白身魚にホワイトソースをかけて、マッシュポテトで包んだ料理であり、パイの名前は付いているがパイ生地は使わない。
パイ生地を使うのはロシア料理のピロークという料理になり、更に類似品としてニシンの頭が突き出た有名なスターゲイジーパイもあったりする。
そもそもパイ生地を使うのは小麦粉をパンより使う量を減らしたいというところからきており、アメリカでアップルパイが国民食になっているのも、元を辿れば小麦粉の使用量を減らす目的である。
話が逸れたが、フィッシュパイは漁師のパイとも呼ばれ、魚ではなく挽肉を使うとシェパーズパイという料理に変わる。
まぁ見た目はグラタンに近いと言っておこう。
メシマズで有名なイギリスだが、それは産業革命による料理の簡略化に起因するため、それよりも前の時代発祥の料理は旨い料理が結構あったりする。
ただ、イギリスの上流階級はフランス料理を嗜むのであるが……。
「腕を上げたなコウ」
「は! 銀の連中には負けないと自負しています」
「あまり銀だからとかの元の宝石を理由に突っかかるなよ。ただコウの料理への情熱はしっかり伝わっているんだから」
「ありがとうございます」
船内で料理を食べる場合、全員が一堂に集まって食べることはしない。
というか物理的に出来ない。
現代の船であれば、全員が集まれる場所が船内にあるが、近代の木造船だと、50人全員が食堂に集まれるほどの広さは無い。
そんなスペースがあれば食料を詰め込んでいる。
なので食事も前後の班に分けて食べられるのである。
ちなみに全員で食べる時は甲板を使ったりする。
「航海開始して10日が経過したが、食料は問題ないか? コウ」
「はい、奴隷を積むスペースも石炭を除けば食料を詰め込む事が出来たので4ヶ月は食料は持つ計算です」
「一応7ノットの速度では進めているからあと50日程度でアメリカには到着する予定だ。体調不良者が出ないような食事を頼むぞ」
「はい、どちらかと言えば積んでいる牛や鶏が病気にならないことの方が心配ですがね」
「確かにな」