船室のベッドにて寝っ転がっていたコンゴウはダイヤモンドの仲間のダイヤとモンドの3人で喋っていた。
話題は主人であるチャーリーについてである。
「うちらのご主人……だいぶイカれてると思うんだけど……普通自分が産み出した生命体を奴隷として売る? 娼婦にさせて不特定多数の男性と抱かせる?」
「チャーリー様、私達が都合の良いロボットかなんかに見ている節があるよね」
「私達ダイヤモンドは不変の愛とか言うけど……最初から愛が無ければ愛は発生しないんだよねー」
3人は不満点を口にしていた。
宝石から生命体にしてもらえた恩はあれど、同胞である石炭人間を奴隷として売り出す姿勢は正直悪感情を抱いている。
「しかも都合の良いように性別をコロコロ変えるから、性自認もごちゃごちゃになってるし……娼婦として生きていく覚悟が出来たら、今度は売春宿を畳んで男になって船に乗れって……」
「でも悲しいかな……私達宝石人間はご主人に対して絶対服従するように設定されてるからなぁ……」
「奴隷を売却するのを反対したところで止まるわけでも無いからなぁ……あぁ、陸上で生活したい……」
「肉体のリセットしてくれてるからリフレッシュ出来ているけど……これが別の船になってリフレッシュ出来なくなったら私発狂する自信がある……」
「ダイヤモンドだから頑丈と言っても、肉体的な問題で、精神的には来るものは来るんだよねー」
「料理が美味しいのだけが救いか……これも別の船に乗船することになったら苦痛になるんだろうな……」
はぁ……と3人はため息をつく。
「さて休憩も終わりだ。夜の見張りをしないと」
「夜はご主人が眠るから、意識が途絶えて風の操作が利かなくなるからね……帆を畳んだり、縦帆だけの操作をしないと……」
「ところで今大西洋の何処らへんなんだろう」
「地図だとアメリカとイギリスのちょうど真ん中らへんじゃないかな。少しズレてるかもしれないけど」
「これから毎回こんな航海するんだろうか……」
「ダイヤ不安?」
「不安だよ……運が悪ければ嵐に巻き込まれて沈むからね」
「だよね……まだ死にたくないな……私」
「海中に投げ出されたら人の体だと耐えられないからね……」
3人は甲板に移動して他の夜番のメンバーと一緒に帆の操作をしていく。
「夜食だー、順番に食いに来い」
今日出されたのはハンバーガーであった。
パンはフランスパンみたいに硬いパンであり、どちらかと言えばバスケットみたいな感じもする。
「ハムにザワークラウト、ピクルスにチーズの挟んだバーガーか」
「これはこれで美味しいけどね」
「早く陸地で美味しい料理を食べたいな」
「でも美味しい料理って言ってもご主人の作る料理が文字通り数世代先の料理だから美味しさも別格なのよね」
「前の航海で植民地で料理を食べたけど……あんまり美味しくなかったのよね」
「あー、やだやだ。結局私達はご主人に胃袋を掴まれているから逃げることは出来なさそうね」
3人は倫理的にはマズイことをやっていると自覚はあっても、刷り込まれた主従関係と、料理の美味しさで反抗する気力を奪われるのであった。
「ふぅ……現代の倫理観だと悪とわかっていても止められねぇよ……将来の安定を取るためには」
コンゴウ達が俺の悪口を言っているのを耳にした俺は船長室で宝石人間達にそう思われていたんだ……と軽くショックを受けたが、止めるつもりは無い。
「人造生命体を売っぱらって何が悪い! ……いや未来の倫理感じゃ悪いのはわかるが、ここは近代……命の重さが軽い時代だ。良いじゃん奴隷として売っぱらってもさ」
俺は開き直りながら、船長室を出る。
むしゃくしゃしたのでコンゴウを見つけてきて、自室に連れ込むと、女に性別を変更して、レイプしてしまった。
船での長旅でストレスがだいぶ溜まっていた故の犯行である。
「はぁ……気は済みましたかご主人」
「あぁ……ごめん。むしゃくしゃして当たってしまって……」
「まったく……なるべく早くこんな生活終わらせて陸地で過ごしましょうよ」
「まぁ稼いでからな。悪いがまだ止めるつもりはねぇから」
「はぁ……、分かりました! 付き合いますよ!」
他の人から見たら理解出来ない……レイプされたのに許していたり、それでいて信頼関係もあるという奇妙な関係がこの船では普通に成り立つのであった。
2ヶ月と5日かかってアメリカ大陸に到達し、現在地はバージニアのプリンセス・アンという街に停泊していた。
「いやぁ、奴隷商人はほとんどサウスカロライナやノースカロライナで奴隷を売却してしまうので、沢山の奴隷を売ってくれるのはありがたい」
「ええ、本当は私達の船も南で売る予定でしたが、船が流されてしまい……でも買い手が居るようで良かったです」
「何人くらい売ってくれるのか?」
「船内には300人ほどの奴隷が居ますので、買い手が付くなら多少安くても全員売りますが」
「ふむ……奴隷のリストはありますか?」
「こちらになります」
バージニアに到着して早々、俺は街のお偉いさんに挨拶をしに行き、奴隷の売却交渉を進めていた。
予定ではノースカロライナに流れ着くハズであったが、GPSなどが無いし、羅針盤を使っても誤差が多少は出てしまう。
こうして本来より北に流れてしまったが、バージニアでも奴隷の需要が高まっていたために売りさばく事ができそうである。
「奴隷市は来週にでも開催しよう。場所はこちらが用意するし、奴隷達を一時的に置いておく小屋も用意しよう」
「ありがとうございます。ちなみにバージニアでイギリス本国で売れそうな物って何がありますか?」
「そりゃあタバコだな。ここらへんはタバコと小麦を他の植民地に輸出しているが、本国の事を考えるとタバコが売れる品になるだろう」
「ふむ……じゃあタバコを積荷にしましょうか。あ、あとノースカロライナにも寄るので奴隷の代金は硬貨での支払いをお願いしたいのですが」
「あぁ、わかっているよ。信用取引の場合はこちらの商人に立て替えさせる」
「ありがとうございます」
俺は船に戻り、石炭から奴隷を産み出すと、待機していた船員が奴隷の腕を縄で縛り、船から次々に降ろしていった。
「リストの奴隷はこれで全部だ。船番以外は街で遊んできて良いが、娼館に寄った場合病気を考慮して一回リセットかけるからそのつもりでな。1人2ポンド渡すから使ってこい」
俺は船で頑張ってくれた宝石人間達に2ポンドを渡すと、宝石人間達は街に遊びに向かった。
俺は植民地新聞を購入して、植民地の情報を収集する。
「どこの州も西に向かって土地を拡張している最中か……バージニア以北は食料系の農園が広いのか……」
北に行くほど換金作物というより主食の小麦やジャガイモの栽培が盛んで、他には魚油の製造や造船なんかが盛んであり、どちらかと言うと製造業が盛んであった。
まぁ三角貿易の主流から外れてはいるが、金融機関や貿易業も盛んであるため、アメリカの物をイギリスに売り、イギリスからアメリカに製品を持ち込むという貿易も行われていた。
利率は奴隷貿易に比べると低いが……。
「広い土地が欲しいならサウスカロライナ。安定が欲しいならニューヨーク周辺って感じか? まぁどちらにせよもう少し稼がないと駄目だけど」
俺は仕入れたコーヒーを飲みながら新聞を読み進めていくのであった。