「ふう! 今日も気持ちの良い朝デース!」
「朝一でお前なにしてるの?」
船長室で眠っていた俺を叩き起こしたのは真珠の宝石人間のパルなのだが……下半身露出しながらやってきた。
「朝一で体のリセットかけてもらおうと飛び込んできました!」
「あーあー、股から精液ポタポタ垂らして……何人とやったんだ?」
「5人……いや? 6人ですかね? 夜番の人達と航海室で!」
「そういや航海士は俺が兼任しているから、航海室は倉庫になっていたもんな……食料が減って空き部屋になっていたか」
「はい、布を敷いてヤりまくりでした!」
「たく……どんだけお前はビッチなんだよ」
パルがこんな感じなので、他の宝石人間達も男じゃなくて女の方が良いと言う奴も現れ始め、船内の風紀は完全に乱れきっていた。
まぁ奴隷船あるあるではあるが……。
お陰で毎日身体リセットをかけなければならなくなっていた。
「おはようございますチャーリーご主人! 売上の集計が終わりましたよ!」
続いてマリーゴールドが部屋に入ってきて、パルが下半身露出しているのを見て
「あ、行為中でしたか?」
と、言われてしまった。
違うと誤解を解き、パルの身体をリセットさせて船長室から追い出すと、マリーゴールドが作ってくれた収支報告書を呼んでいく。
今回新大陸で売った石炭人間の数は3550人。
1人約20ポンドで売れたので7万1000ポンドの収入ということになる。
ただ宝石購入代金で約1万6000ポンドほど使用し、砂糖等の交易品の購入代金もあるので、手元に残ったのは4万5000ポンドほど。
ただ交易品を売っぱらえば再び7万ポンドくらいにはなるので、宝石購入代金くらいはペイ出来るだろう。
というか宝石も合わせれば10万ポンド近くの価値がある。
普通の黒字航海で一般的に8000ポンドから1万ポンドが利益となるので、1回の航海でその10倍を稼いだことになる。
それをおよそ半年で稼げるのだから笑いが止まらない。
現代日本円換算で10万ポンドは60億円相当……。
ちなみにであるが1回の航海でこれ以上稼いでいる船長もいたりする。
イギリスの国民的英雄のフランシス・ドレークとウッズ・ロジャーズの2人である。
ドレーク船長は約50万ポンドの収益を叩き出し、出資者だったイギリス王室は30万ポンドの臨時収入を得ることに繋がった。
そしてロジャーズ船長は17万ポンドを持ち帰ることに成功している。
どちらも私掠船でスペインからの略奪というのはあるが、俺より2人の方が稼いでいるのである。
「これで3隻目の船は大型船にすることが出来る!」
この時代の軍用船を除いた大型船といえばバーク帆船とシップ型帆船であり、全長が75メートルもある大型帆船である。
一応100メートル超えの大型船も無くは無いが、これは軍艦が多い。
あと50メートルを超えればこの時代だと大型船である。
バーク帆船は当てはまらない船と呼ばれることもあり、大型船といえばシップ型帆船を意味する。
特徴としては3本の横帆が目立つ船と言っておこう。
「ブリック帆船の2番艦は帰る頃には完成しているし、3隻目を母艦にすれば……ぐふふ」
俺は夢が広がりまくってニヤけるのであった。
「ほい、白身魚のチーズ焼き」
現在俺はアイルランド近海を航海していた。
俺の能力のお陰で魚や肉が腐ること無く、長期保存することが出来たために、快適な航海であった。
アイルランドが見えたために、残り航海日数も少ないので、甲板で豪華な食事が振る舞われていた。
先ほども言った白身魚のチーズ焼き、ボロネーゼ(挽肉と野菜を炒め、ワインで味付けしたパスタ)、ザワークラウト、ミートパイ、海亀のスープなんかが並べられていた。
「うん! 旨い! さすがご主人!」
「本国の料理もこれくらい美味しければ良いのに……」
そんな事を宝石人間達が話しており、俺も料理を食べていると、アクアがやって来た。
「ご主人、次の航海は何時ごろ行うんです?」
「そうだな……夏前には行きたいな」
現在季節は2月……偏西風のお陰で暖かい風が吹いているとはいえ、なかなかの寒さである。
皆で食べられるから外で食べているが、航海するんだったら4月頃に出航して10月頃に戻ってくるサイクルにしたい。
その方が暖かいし……。
「2ヶ月休んで、また出航ですかい。新造船の習熟訓練しないと行けないので、もう1ヶ月ほど時間取りません?」
「じゃあ5月頃にするか?」
「はい! ありがとうございます」
アクアにそう返事をしながら、誰かが歌を歌い出し、皆それを聞き入っている。
この時代の音楽の総称としてバロック音楽と呼ばれる時代であり、イギリスではオペラが盛んに聴かれていた。
他にもバッハが生きていた時代であるため、クラシック音楽も盛んに演奏されていた。
オペラの様な歌が終わり、拍手が巻き起こる。
そのまま誰かが船室から持ってきたハーモニカの演奏が始まり、音に合わせてダンスを始める。
男女の宝石人間が入り乱れて甲板の上でダンスをしていく。
現代でも有名なイギリスのフォークダンスの音楽であるヘンデルの水上の音楽も1717年に発表されたこの時代の新しい音楽であったりする。
「いい曲だな……」
「本当ですね」
「ん? パルは踊らないのか?」
いつの間にか横に座っていたパルに俺は聞くと
「宝石人間になったばかりで経験が無いので無理でーす! それとも踊りを教えてくれるのですか?」
「たく、しょうがないな」
俺はパルの手を引いて、踊りを踊っていく。
日が沈むまで船上の音楽会は続くのだった。
「到着〜!」
ドーバーの街に到着し、船を接舷させる。
そして積荷を降ろしていき、ドーバーの街で待っていた宝石人間達が走り回って積荷の売却先を取り付けていく。
やはりと言うか海運の混乱がまだ続いていたために運んできた品が飛ぶように売れていく。
宝石人間達に後処理を任せると、俺は実家に久しぶりに顔を出した。
「チャーリーお帰りなさい!」
「ただいまお袋、半年ぶりー」
お袋に顔のあちこちを触られたが、俺が元気そうだと分かると喜んでくれた。
「親父は?」
「……お父さん漁の最中に嵐に巻き込まれて……」
どうやらニシン漁に出かけている最中に嵐に巻き込まれてしまったらしい。
俺が呆然としていると扉が開いて、親父が普通に帰ってきた。
「ただいま……ってチャーリー帰ってたのか」
「お、お袋! 親父ピンピンしてるじゃねぇか!」
「ふふ、嵐に巻き込まれたのは本当よ。ただお父さん普通に帰ってきたけどね」
「普通にじゃねぇよ。スコットランドまで流されて、船は大破。陸路で死にそうになりながら帰ってきたんだから……」
「それはお疲れ様……」
「お陰で俺の持っていた漁船は無くなって、また日雇い船員に逆戻りよ……」
「なあ親父、お袋。俺だいぶ稼いでいるからもっと牧歌的な場所に住まねぇか? 新大陸で良かったらメイドも付けて屋敷も用意できるくらい金は貯まっているんだが……」
「悪いわよ……そもそも私達今の生活に満足しているし」
「そうだぞチャーリー、俺達は気にしないでくれ」
「そう言われても……なら、親父、新しい船俺が金出すからそれでいいだろ!」
「ん、大丈夫なのか?」
「今回の交易でだいぶ稼げたから漁船1隻買うくらいどうってこと無い! あと生活困らないだけの金は置いていくから絶対に無理しないでくれ! 数年後に一緒に新大陸行って優雅な生活しようぜ!」
「ふふ、わかったわ」
「悪いなチャーリー……」
「悪くない! 親父もお袋も頼むからゆっくり過ごしてくれ」
俺は金貨の入った袋を親父に押し付けるのだった。