実家で眠りに就くと、また神様の空間に意識が飛ばされた。
『やぁチャーリー、今回も随分と稼いだんじゃないか?』
「はい、まだ積荷が売り切る事が出来てないので現金が入ってくるのはまだですが、宝石を除いても約7万ポンド近くは稼げたかと」
『うむうむ、いい調子だね。次の航海はどうするつもりかな?』
「次の航海ではまたイギリスから大西洋を横断して、石炭人間をカリブ海で売ろうと思ってますが」
『うーむ、他の地域には行かないのかい?』
「行くとしたらインドと中国ですかね……インドの宝石も欲しいですし、今後茶葉の需要が上がっていくので中国で茶葉の購入もしたい」
『まぁ無理にとは言わないさ。いつもの慣れた航路の方が安全ちゃあ安全だからね』
「正直稼ぐだけなら今回の海路をぐるぐる回っていれば稼げますからね……っとそろそろチートを引いてもいいですか?」
『そうだね。さて前回ロックしたのが雨を降らせるだったね。今回は他に……』
〈蒸気機関の知識〉
〈農業の知識〉
「ん? この知識ってのはどういう事ですか?」
『さぁ当たってからのお楽しみだ。カードを引いてみなさい』
俺が引き当てたのは雨を降らせると書かれたカードだった。
『雨を降らせるは文字通り君の周囲に雨を降らせてくれるだろう。範囲は街1つと同じ程度かな。船旅で飲水に苦労するから良いんじゃないか?』
「そうですね。あとは降水量の調整も出来るとありがたいですが」
『それは出来ると思うぞ。今回はロックは必要かい?』
「2つともロックをお願いします。チートと言える知識なら覚える価値があるかと」
『なるほど……よし、じゃあ君の冒険が良い方向に向かうことを祈っているよ』
「ありがとうございます」
こうして意識は落ちていった。
積荷が競売をかけられている頃、ドーバーの街で建造されていた2番艦の進水が行われた。
ブリック型帆船2番艦ジパング……ジャパン号と対を成す存在と言えばこれである。
3番艦の名前が悩むことになるがとりあえず2隻ならこれでいいだろう。
港にて宝石人間達が習熟訓練を行っていく。
見慣れない姿の宝石人間も多く居た。
エメラルドだったりアメジストだったり……新しく購入した宝石を次々に宝石人間にしていき、働かせるのであった。
「よおアクア、2番艦の習熟訓練はどうだ?」
「ぼちぼちですね。1番艦に乗る新人達はコーラルが面倒を見ていますが、競わせているものの、3ヶ月後には間に合わせてみせますよ」
「頼もしいな」
「あとは海上で物資のやりとりを行う訓練もしませんとね」
「そうだな。俺の物を腐らせない効果は1隻しか効かないから、2番艦の食糧や水の管理は今まで以上に難しくなる」
「それに毎日の身体リセットが出来ませんからね」
「ああ、病気や怪我にも注意していく必要がある」
「それに今回の航海で宝石人間であれば死体になっても蘇生させることが可能というのが分かりましたからね」
「ああ」
今回の航海の後半。
見張り台にて見張りをしていた水夫の宝石人間が誤って転落死してしまう事故があった。
首が変な方向に曲がっており、死亡が確認されたが、ダメ元で宝石に戻してから再び人間にすると、記憶を引き継いだまま蘇生することに成功したのである。
つまり俺さえ生きていれば宝石人間は復活が可能。
更に俺の重要度が増し、俺に悪感情を持ったとしても宝石人間達は逆らえなくなってしまった。
まぁ俺も同じ船に乗る仲間は大切に扱いたいので、ストレスが溜まって暴走した時以外は、なるべく紳士的に扱うようにしているが……。
「次の航海は速度を重視していこうと思う」
「速度ですか?」
「何箇所にも寄港すればその分だけ売上は高くなるけど、今後の事を考えると金だけでなくてチートをいかに増やせるかにもなってくると思う。そうなった場合寄港する港を減らして、船が多くなった分だけ売って、速攻イギリスに帰ってくる……これをしたい」
「というか今の俺の能力で全力を出したらどれぐらいで帰ってこれるか試したい」
俺がそう言うと、アクアも賛成してくれた。
「良いですね。速攻行って帰ってきましょう。3ヶ月から4ヶ月で帰ってこれれば上々じゃないですかね」
俺はどれだけ早く帰ってこれるかの挑戦を行うのであった。
いつものマスターの所のコーヒーハウスで俺がコーヒーを飲んで居ると、マスターから愚痴を言われていた。
「チャーリーが娼館を畳んでからめっきり客足が少なくなったよ……時には娼館に通っていたお客さんが私から嬢の居場所を聞き出そうとしてね」
「すみませんね……」
「当時はなんであんなに繁盛している宿を畳むんだと思ったけど、貿易に業務を切り替えて大成功しているんだろ? 大きな船を2隻も保有してさ」
「噂になってます?」
「なってるなってる。凄まじく危険な大西洋航海を2回も成功させたのは皆噂しているよ」
「それはそれは……」
「あわよくば船員の募集があれば参加したいって船乗りも多いぞ」
「うーん、もう募集定員は埋まってしまって……」
「早くね? もう埋まったのか!?」
「2番艦の船員もね……」
「まぁ港で働く人間は船乗り達が金を落としてくれるから良いんだけど」
「マスター、また3ヶ月後には航海に出るよ」
「早くねぇか? 帰ってきたばっかりだろ」
「まぁそうなんですけど、会社を回すためにはもっと稼がないと」
「別にチャーリーが行く必要はないんじゃないのか? お前社長だろ?」
「社長ではあるけど船長でもあるんだよ」
俺はコーヒーの代金を置いて店を出るのであった。
「おーよしよしお前は可愛いなぁ」
俺は船に持ち込んだ猫達に餌をやっていた。
「ご主人でーす! こんなところで猫に餌やりですか!」
するとパルが俺に声をかけてきた。
「パルどうした?」
「んー、水夫の訓練受けてましたよ〜」
「お前また女性の状態で船に乗る気か?」
「良いじゃない。性欲の発散は必要よ。訓練をしている子達も性欲は溜まるし……」
「はぁ……売春宿の時真珠を嬢にするのが適任だったな……でも実際2番艦は船内で体のリセットもなかなか出来ないから性欲も高まるから数人女性を入れる必要があるか……」
「だったら私と同じ真珠にしましょうよ! ね!」
「考えておくよ」
「猫ちゃんおいで~」
パルがそう言うと、猫達がパルに寄ってきて顔を足に擦り付けている。
「んん! 可愛いなぁお前達は」
「こいつらは次の航海で活躍してもらうネズミハンター達だから今調教していたんだよ」
「えー? 可愛いからじゃれ合っていただけじゃないんですか?」
「……多少はある」
「ほらー」
猫達と戯れる俺とパルであった。
「ん、お前ら何処に行くんだ?」
「あ、ご主人、今日はジャパン号の船上でミサを開くんですよ。参加しません?」
「ミサ? キリスト教の聖歌でも歌うのか?」
そう思ってジャパン号に行くと、甲板で俺の絵が飾ってあってなんか崇められていた。
「なにしてるのお前ら」
「いや、私達もなにかを崇めたりしたいなって話になって、かといってキリスト教はなんか教えが違うなって……だからご主人を崇める会を開いたんですけど……」
「気持ち悪いな。やめろよ……それにキリスト教の人達に見つかったらマズイぞ」
「ですよね~なので実態は絵を飾ってプレゼント交換会をしているんですよ。皆持ち寄ったクッキーや小物を交換し合うんですよ」
「へぇ……せっかくだから俺も皆にプレゼントを作ろうか」
「何を作るんですか?」
「厨房借りるぞ」
俺は卵、砂糖、小麦粉、油を用意する。
まず卵白を泡立てながら砂糖を複数回に分けて入れていき、メレンゲを作る。
それに卵黄を入れながら再び混ぜ、油も混ぜていく。
最後に小麦粉を3分の1入れてかき混ぜ、残りの3分の2を混ぜて生地を作る。
それを型に入れてオーブンで焼いていき、それを切り分けたら完成である。
「テッテレー! カステラ!」
カステラはポルトガルのパウンドケーキが元になった料理であるが、鎖国中の日本が魔改造した料理である。
なのでこの時代のイギリスにカステラは未知の料理である。
ただ材料はあるので作ろうと思えば作れてしまうのだ。
「知識ではありますが……これがカステラ」
「美味しい〜」
「あま~い」
砂糖を使われているので大量に作ることは出来ないが、船員に1食配る程度には作れる。
「これ売りませんか?」
「うーん、まぁレシピ本に記載する程度かな~。売る気はあんまねぇな」
俺はカステラみたいな未来の料理を沢山作れる様な土地で隠居生活はしたいなーっと思うのだった。