1722年までに俺は2回程大西洋の三角貿易を成功させてきた。
なんで省略したかって?
特にイベントが無かったからである。
1番艦のジャパン号と2番艦のジパング号の2隻で、ジャパン号には食料を多めに、ジパング号には石炭や保存食を多めに乗せて航海を行い、バージニア、ノースカロライナとサウスカロライナの3箇所を巡って奴隷を売っぱらってタバコや綿花、砂糖、ラム酒を詰め込んで戻ってくる。
それぞれ1回の航海で4ヶ月もかからずに貿易を成功させて戻り、1回の航海で約6万ポンド程を稼がせてもらった。
ただ今回の航海は他の投資家に出資してもらったので、利益としては約3万ポンドである。
なぜ投資家に出資を募ったのかと言うと、俺が三角貿易を複数回成功させている凄腕船長という噂が流れ、それを聞きつけた投資家達の中にバブルで負った損失を回復させるために俺に目をつけた者が複数人居た……ただそれだけである。
ただ投資家達の政治力は馬鹿に出来ず、4回目の航海で売りさばくのに約2ヶ月かかった積荷を、スポンサーの付いた5回目と6回目の航海では半月程度で全てを売りさばく事が出来た。
他にも停泊しているジャパン号とジパング号の港の使用料金を政治力で値引きしてくれたり、税金に関して税務士を紹介してもらい、色々楽することが出来たりした。
一番は3番艦の新造船であるシップ型帆船の水星……マーキュリー号の徴用を止めてくれたというのがあった。
俺が約1万ポンドをかけて造って貰っていたマーキュリー号だが、それをイギリス海軍が目をつけて、フリゲート艦として買収しようとしているという情報が入ってきた。
この頃のイギリスでは商船を徴用することが可能であり、軍に徴用されてしまえば戻ってくることはほぼ無かった。
なのでなんとしても阻止したかったが、これに貿易で利益を出していた投資家達に相談と言う名の愚痴を言ったら、儲け話を潰されてはたまらないと海軍に圧力をかけて軍に徴用する動きを阻止してくれた。
これで俺は投資家達に大きな借りが出来てしまったが……とりあえず旗艦を一際大きいマーキュリー号に移し、ジャパン号とジパング号にそれぞれ俺の信頼度が高いコーラルとアクアを船長として据えた。
この航海の間に海を騒がせていた大海賊のバーソロミュー・ロバーツは戦死し、その部下達も多くが縛り首か強制労働の刑に処された。
この1722年をもって大海賊時代の終わりとする学者も居るくらい、このロバーツ海賊団の壊滅以降、海賊の被害はめっきり減っていく。
そして、これ以降約60年間奴隷貿易最盛期へと繋がっていくのである。
なおこの間にアフリカから新大陸に送られた奴隷の数は1200万人から1300万人と呼ばれ、世界人口が10億人に届いて居なかった時代で、江戸時代の日本の総人口が丸々奴隷として連れて行かれたと考えると、いかに奴隷が運ばれたか分かるだろう。
まぁ俺も石炭人間をかれこれ3000人近く奴隷として売っぱらっているので何も言う権利は無いが……。
「……これからは1箇所で1000人近く売っても不自然では無くなったか……」
ジャパン号とジパング号は詰め込めば400人奴隷が乗る構造をしているが、通常300人程度で、マーキュリー号は詰めれば500人乗せられる構造をしている。(通常は400人程度)
奴隷を一気に1000人近く持っていっても売り切れるか分からないが、仮に1人20ポンドで売られるとしたら、1回で2万ポンドも動くことになる。
収益は一気に跳ね上がる。
(50万ポンド……これだけ貯めれば一端の資産家だ。この金額を目標としよう)
現在会社には12万ポンドが貯まっている。
50万ポンドを目標額に決めた俺は貿易の旅を続けるのであった。
で、7回目の航海も無事に成功し、1723年……俺は22歳になっていた。
現在の俺のチートは
〈宝石人間を産み出す〉
〈風を操る〉
〈腐敗を防ぐ〉
〈窒素錬成〉
〈雨を降らせる〉
〈農業の知識〉
〈蒸気機関の知識〉
〈健康に過ごせる〉
という8つのチートを手に入れていた。
8つ目にして病気に怯えることなく生活出来るチートを手に入れ、現在8回目の航海中である。
乗船しているのはマーキュリー号。
シップ型帆船、全長75m、やや細型だが積載量は800トン。
500トンしか積載できなかったジャパン号とジパング号に比べると大容量の艦である。
船員数は最大70人、最低人数は30人でも動かすだけなら出来る。
そんな船には50人程の船員が乗っており、新人水夫こと新しい宝石人間の人数は15名。
アクアマリンが多いが、宝石珊瑚だったりアメジスト等の宝石人間の数も増えていた。
「ご主人様……体のリセットをお願いします」
「おや? マリンじゃないか。筋肉自慢の君がリセットとは珍しいな」
「体調が優れなくて……高熱で意識が飛びそうです」
「わかったわかった。今楽にしてやる」
俺はマリンの体に触れると、マリンは宝石に戻り、そして再び人間の姿に戻る。
「ありがとうございます……やっぱり痩せちゃったか……」
「こればっかりは仕方がない。身体のリセットしたら最初の体に戻ってしまうからな。年齢の老けとかもリセットかかるが」
「ご主人が生きている間は長生きできそうですね」
「不審に思われるから船の間しかやらねぇからな。陸地で暮らし始めたらリセットかけねぇぞ」
「病気にならない様に気をつけます……」
「自慢の筋肉なくなっちゃったけど自信喪失しない? 大丈夫?」
「今それ言いますか? 相変わらずご主人人の心無いですね」
「うぐ! 多少は心に来るんだよその言葉!」
「じゃあ人の心をもってくださいよ」
そんなやりとりをしながら船は進んでいく。
「いやぁ! チャーリー船長のところくらいですよ! こんな高頻度で高品質な奴隷を売ってくださるのは」
「いやいや、バージニアでも売る奴隷商人は居るでしょうに」
「そうなんだが奴隷の当たり外れが酷くてねぇ……チャーリー船長の奴隷は不思議なことに病気も無く、健康的かつ勤勉で力強い! まさに我々が求める奴隷だ! 何処でこんな良い奴隷を仕入れてくるのですか?」
「それは企業秘密だ。言うわけにはいかないよ」
バージニアの町長さんに俺はそう言う。
「しかし、1000人規模の良質な奴隷を売ってくれるのは本当に助かる。大抵ここに来るまでに奴隷達が弱ってしまっているからな」
「最初からバージニアを目指して航海しているからですかね。バージニアから奴隷を売るようにしていますし」
「そうしてくれると本当に助かる」
「ところで代金の方は大丈夫なのですか? 植民地で2万ポンドはなかなかの大金でしょうに」
今回……というより5回目の航海からであるが、バージニアでは奴隷商人が男20ポンド、女15ポンド、子供5ポンドの値段で買い取るという契約をしていた。
俺的には多少安くても全て売れるので助かっているが、奴隷商人やそれを支援している植民地政府側は大丈夫なのか心配であった。
「幸いバージニアではタバコと家畜が他の植民地に比べて高く売れるし、農業にも適している。本国への貿易もあるから奴隷での出費はあっても収支はトントンからやや赤字程度で抑えられているよ」
「それなら良いのですが……」
「逆にノースカロライナとサウスカロライナは植民地経営に失敗しているから本国からの援助無く成り立たないからな。奴隷の売れ行きも怪しいんじゃないか?」
「一応質の良い奴隷を仕入れて売るのを心掛けてますが、他の植民地だと売れても500人程度ですね。まぁバージニアでほとんど売っているのでうちの船はほぼ空っぽになるんですが」
一部嘘で、ノースカロライナは貧乏植民地なので奴隷を売るときもこちらが値引きしないと500人も売り切る事は出来ない。
サウスカロライナは1000人でも売れる需要はある。
サウスカロライナは西に広大な開拓地が残っているため使い潰せる奴隷を多く欲していたのである。
アメリカでは奴隷需要は高止まりしているが、ジャマイカは俺が奴隷を売りすぎて値崩れ起こしてしまっているので当分は行くつもりは無い。
「じゃあ今回もソーセージやハム、チーズの加工品にタバコを大量に買っていきますわ」
「まいどあり! 次はどれぐらいで来てくれるかね!」
「半年後くらいになるかもしれませんね」
「いやいや、助かる。待っているよチャーリー船長!」