老衰で死んだと思ったら、気がついたら懐かしい書庫の様な空間に佇んでいた。
肉体は若者に戻っているようで、体が軽くて動きやすい。
「……チャールズ・エドワーズの生涯についてか……はは、一生を書いた本が5冊も並んでるわ……そっか……俺の人生は本5冊分か……」
『成功の連続の人生はどうだったかな?』
「あ、神様久しぶりです」
『いやーチャーリーも久しかったね。最後の方に与えた性豪ってチート良かったでしょ』
「ええ、宝石人間達とヤりまくりましたよ。町長時代……300人くらい抱いた気がしますよ」
『ヤりまくったね……子供も何人居たのかな?』
「認知してない子を含めると1000人超えてそうですね。本当に一時期ヤりまくってましたので」
『娯楽の少ない時代だから仕方がないと言えばしょうがないね……でも本当によくここまで成り上がれたね』
「頑張りましたよ。でもあれですね、若いうちに軍艦に乗った経験があればもっと独立戦争で活躍できたかもしれないと思いましたが」
『十分じゃないか? 軍艦だったら病気で亡くなっていた可能性もあるからねぇ』
「おお、怖い……でも宝石人間のチートは凄かったですね。神様に与えられたチートでも群を抜いて使い勝手が良かったですよ」
『時代に適したチートだったろ?』
「はい」
神様は俺の人生の書かれた本を手に取り、ペラペラとページをめくる。
「神様、俺はまた転生ですか? それとも天国もしくは地獄行きでしょうか?」
『行き先としては地獄だけど、私をちゃんと楽しませてくれたから、私の天使として活動してもらうことになる』
「奴隷売りまくっていたので地獄行き確定だと思っていましたが」
『普通ならね〜、ただ英雄として歴史に名を残せれば神の使いとして昇格させることが出来る。良かったなチャーリー、歴史に名を残せて』
「まぁ、チートが無ければ歴史に名を残すことも出来なかったと思いますがね」
『なに、神話の時代なんかそんなのばっかりなんだから気にしなくて良いよ』
「そうですかね」
『そうそう』
神様がパチンと指を弾くと、テーブルと椅子が現れ、座るように指さされる。
俺が座るとテーブルの上にお菓子が現れ、自由に食って良いと言われた。
「俺の人生面白かったですか?」
『面白かったよ……だいぶ人の心無いね〜と思ったけど』
「あ、神様視点でもそうですか」
『だって自分の生み出した宝石人間や石炭人間を容赦なく売り飛ばしたり、娼婦にさせたり……普通の人間はしないと思うよ』
「そうですかね? 18世紀の人達ならやるんじゃないですか?」
『キリスト教的価値観だと異端者は売り飛ばそうが何しようが良いという価値観があるけど、それを現代日本出身なのに適応したのはだいぶヤバいと思うよ。まぁ適応出来る人間を選んだ私の目に狂いは無かったということになるけどね』
「ちなみに宝石人間は遺伝子的にどうなるんですか? ホモサピエンスになるんですか?」
『遺伝子的な特異点になるね。DNA解析で辿るとそこで途切れる。ホモサピエンスのようで実際は違う……不思議な存在だね。まぁ産まれた子供を宝石に戻せないように、人間として固定化されるから人間として生きていくことになるけどね』
「なるほど……やっぱり不思議な存在で落ち着くんですね……売った宝石人間達はどうなりましたか? できればチャーリータウンに残してきた宝石人間達の将来も知りたいですが」
『まずチャーリーの作った宝石人間の数は8万6986人、うち石炭人間が6万2127人……まずはカリブ海の石炭人間から……』
ジャマイカでは逃亡奴隷達が一部の自治区を作ることをしたが、石炭人間達はこの反乱には参加しなかった。
逆に従順な奴隷でいることで奴隷内部の地位を向上し、女性の石炭人間が農園幹部や主人と子供を作ることが多くなり、それに伴って農園に侵食を続けた。
通常7年が奴隷が健康的に生きられる年数の中、石炭人間達は20年以上活動を続け、奴隷の中で指導者的地位を確立。
こうなってくると世代交代をした主人側も折衝役になってくれる石炭人間達を粗雑に扱うことはしなくなり、後から入ってきた白人の幹部達に奴隷農園の仕事内容を教える立場となる。
こうなってくると立場は徐々に上がっていき、世帯持ちになる奴隷も増えていった。
ジャマイカで長年生き残る奴隷がほぼ石炭人間ばかりになり、血統の汚染が一番深刻になっていくことになる。
石炭人間の血縁者で世代が進んでいくことになり、オリンピックに参加するようになってジャマイカの選手がウエイトリフティングの競技を独占することになり、男女4大会連続金メダル獲得を独占したりすることになるらしい。
チャーリータウンに居た宝石人間達は様々な宝石が使われていたために、イケメン美女が多く、それでいて健康長寿の人が多かった。
俺が残した料理の数々により栄養バランスが良くなったのか、宝石人間の性質で頑丈だったからか……両方が原因か。
そんな両親を持つ子供もイケメンだったり美女に成長し、その人物達が工場の管理だったり農園の経営を引き継ぐ為、金持ちが急増した。
そんな子供達は独自のコミュニティを作っていき、どんどん金持ちになっていき、南部州でも有数の金持ちの町になっていった。
そして南北戦争では南部州の武器製造拠点として武器を製造することとなるが、戦争終結後は奴隷を解放しても、工業都市として成長を続け、繊維産業で莫大な利権を維持し続けることになる。
『とまぁこんな感じで、宝石人間達はしぶとく生きているよ……というより子孫達は今後アメリカの資本家に成り上がっていく人も結構出てくるよ! よかったね』
「凄いことになるんだな……」
『でもよかったのかい? 最終的にイギリスを裏切ることをして』
「まー、アメリカに根付いた年数の方が長くなってたし、本国の増税にはうんざりしていたので良いんですよ」
本国の増税はヨーロッパにおけるイギリスの戦争による戦費調達の意味合いが強いが、生活必需品にまで重税を課せば反発が生まれるは必須。
チャーリータウンではそんなヨーロッパで生産される生活必需品の大半が作れたが、いかんせん1地域で生産出来る量は限られていた。
南部地域はチャーリータウンの生産力で賄えていたが、北部地域は本国に依存していたのが大きかった為に重税のダメージも大きかった。
だからこそ独立戦争後、北部地域では生活必需品の量産を求めて工業化に邁進し、五大湖を中心とした工場地帯の建設に繋がっていくことになり、南部州はチャーリータウンの生産力があったので、旧来のプランテーション農園が幅を利かせることになる。
「歴史の積み重ねってやつか」
『歴史に大きな影響を与えたかというと微妙だね。装甲艦の早期建造や蒸気機関の発祥地がアメリカに移ったが、アメリカでは富の蓄財が上手くいっていなかったから、影響力もごく一部』
『一方で、富を蓄えていたイギリスは産業革命に成功して、アメリカに独立されても、世界帝国になっていく……』
「あくまで既存の歴史の中での英雄か」
『そうだね』
神様との話も終わりに近づく。
「俺の直系の子孫はどうなった?」
『えっと……パルという宝石人間と結婚して10人の子供を作っていたけど、商人として生き抜くことになるね』
神様の話によれば俺の直系は政治家ではなく商人の道を進むことになり、蒸気機関車を用いて鉄道王になり、それから自動車産業、航空機産業のトップシェアを熾烈に競争していくことになるらしい。
まぁ中には軍や政治の道に進んだ者も居たようであるが……。
『1人面白いのが居たよ。これだ』
そう言って神様は俺に1冊の本を渡してきた。
マイケル・エドワーズと書かれていた。
「読んでみても?」
『あぁ、良いとも』
それは俺の生まれ変わりと周りに言われた人物だったようで、第二次世界大戦中に海軍軍人として空母機動部隊を指揮した人生が書かれていた。
海軍きっての親日派であり、戦後はGHQとして日本に留まり、日本海軍再建計画を旧日本海軍の幹部と話し合って進め、1952年の海上警備隊の創設に深く関わったり、最終的に在日米軍総司令官として名を残していた。
「そうか……俺の子孫は俺が行けなかった日本に行ったのか」
『凄い人生だね。さてそろそろ時間だ。チャーリー次の仕事が始まるけど準備は良いかい?』
「はい、覚悟は出来ています」
『それじゃあ天使として働いていてもらうよ』
こうしてチャールズ・エドワーズの物語は幕を降ろすのであった。
「チャールズ·エドワーズ……18世紀で最も幸運な男……か」
「はい、私のご主人の話はいかがでしたか作家の先生」
「いや、まるでその当時を経験してきたかの様な話だったよ。でも君まだ20代だろ? チャールズ·エドワーズは6年前に亡くなった……ということは又聞きかい?」
「いえ、ちゃんと80年近く前に経験してきたことですよ。私はご主人の偉業の語り部として長生きする様に言われたのです」
「語り部……か、本当の歳は幾つなのかい?」
「そうですね……90は過ぎてますよ」
「そりゃあ驚いた。まるで魔女だな」
「ええ、魔女ですよ。宝石から産まれたね」
「じゃあ魔女さんはどんな宝石だったんだい?」
「私は宝石珊瑚から産まれました。名前をコーラル。今は女性です」
1801年、19世紀になった時にとある本が発売された。
その本は『宝石人間』という題名であった。