『船員さん、俺達は船に乗せられて数日経つが、何処に連れて行かれているんだ?』
「えっとコイツの言葉は……『これで伝わるか』」
『おお! 俺たちの言葉!』
『今から楽園に連れて行ってやるんだよ』
『楽園?』
『あぁ、食事は美味いし、綺麗な女性が沢山居る場所だ。っと掃除するから一回立ってくれるか』
『あぁ、悪い』
布で即席のマスクを作り、俺は暇な時間は奴隷達の船室の掃除を行っていた。
奴隷達は鎖に繋がれて動けなくなっているので立って貰って排泄物をモップを使って水洗いを続けていた。
「おーいチャーリー、飯の時間だぞ上がってこい」
「わかった今行く」
汚水等を海に捨てて、バケツ等を海水で洗い、手を海水で軽く洗ってから食事に着く。
「チャーリー、奴隷達の部屋の掃除を毎日やって飽きないのか?」
「やらないと病気が蔓延しますよ。俺嫌ですからね。赤痢が蔓延するの」
「まぁ奴隷達の部屋を綺麗にするんだったら別に良いが、他の仕事もちゃんと行えよ」
「わかってます。午後からは釣りしますんで夕食はもう少し豪華になるように努めますよ」
「お、楽しみだ」
この時代の医学は瘴気とかが普通に考えられている時代であり、部屋が汚いから病気が流行るというのは経験則でしか考えられていなかった。
というか本当は煮沸した水で手洗いうがいをしたいが、海水しか使える水が無いので仕方なく海水で手洗いうがいをしていた。
絶対俺がこの航海を生きて帰れたら石鹸とか煮沸出来る装置を作ってから航海しようと決め、病気にならないことを願いながら航海を続ける。
「しっかしチャーリー、黒人達の言葉わかるのか?」
「なんとなくですが、彼ら固まった地域から連れてこられたらしく、ある程度の意味がわかればカタコト程度であれば話せますよ」
これも神様から与えられた才能を伸ばすチートが生きているのだろう。
普通ならカタコトでもこんなに早くは話せないだろう。
「奴隷達の反乱が起これば商品が減るだけでなく、俺達の命も危ない。コミュニケーションを取ることによって反乱が防げるならそれはそれで良いからな」
奴隷船で何よりも恐れていたのが奴隷達の反乱である。
人数が少ない船員側は数を頼りに襲ってくる相手を倒さなければならない。
その為に俺は楽園に連れて行くと嘘を言って彼らを騙して抑えつけていた。
あと奴隷達の体を動かしたほうが健康維持に繋がるという発見がこの頃から広がっており、晴れた日には奴隷達を甲板に出して踊らせたりして体を動かさせた。
ちなみに今回女性の奴隷は居ない為に船員による強姦事件は起こってないが、船の中ではよくあることとして処理され、その代わりに女性奴隷は船内をある程度移動することが許されていたりした。
他にも従順だと認められた者は船員に混じって働くのを手伝い、他の奴隷より良い物を食べさせられたりもしている。
ちなみに奴隷反乱が一番多い時期はアフリカからアメリカ大陸に出発する時であり、アフリカ沿岸部を奴隷を定員まで集めるために行き来している間に奴隷達も船員の言葉を覚え始め、船員の言葉の意味が分かると故郷から離される事を恐れて反乱を発生させるのである。
まぁ成功率は極めて低く、だいたいチクリによって未然に防がれて、首謀者を拷問の末に殺してしまい、恐怖を奴隷に植え付けることをするのだとか……。
今のところ俺が楽園に連れて行くというのを信じ込ませているためか、奴隷達は比較的従順で海に身投げを行うという事も発生していなかった。
自暴自棄になった奴隷は枷が外された瞬間に海にダイブする者も現れるらしい。
大抵泳げないのでもがいているうちに網で回収されて、引き上げられて鞭打ちの刑となるらしい。
そんな事を考えていると食事が終わり、釣りの時間である。
従順な奴隷を引き連れて、甲板で釣りをしていく。
「沢山釣れたら食事が豪華になるからな〜頑張れよ」
釣りに参加出来る奴隷は奴隷の中では特権階級である。
大抵の奴隷はお粥みたいなのに色々な食材が混ぜられ、大して美味くない物を食べさせられ、コップ1杯の水しか与えられない。
しかも時間が経過していくと水も腐った水を提供されるので、体調を崩す奴隷が続出するのである。
なお釣りに参加出来る者はそんな食事ではなく、焼き魚が提供されるので、ちゃんと美味い。
その為俺に媚を売る奴隷が続出していたが、奴隷達の部屋を掃除させて良かった者を見張りの水夫が選び、その中から俺が釣りに連れて行く様にしていた。
「よいしょー!」
今回釣れたのは2メートルサイズのメバチマグロ。
それが入れ食い状態でじゃんじゃん釣れる。
「気をつけろ! 体持っていかれるから数人がかりで竿を引け!」
近づいてきたメバチを銛で突き殺して船に上げていく。
ビチビチと跳ねるメバチを直ぐにナイフで絞めて、息の根を止めると血抜きを行い、バケツに入れていく。
「良しお前らチャチャっと食べるぞ」
俺は奴隷達が釣り上げたメバチをナイフで捌いていくと身の部分を取り出して身を切り取ると沸騰したお湯に浸して身に熱が入ったら食べるようにしていった。
こうしないとアニサキスが怖いのだ。
奴隷達が食べている間に残った魚を料理長のところに届ける。
「今日も大漁です」
「本当チャーリーは幸運な男だな。新鮮な魚を毎日食べられるから幸運だわ」
今日は味噌みたいな調味料を使ったスープにパンが食べられるらしい。
ただこんな生活も長く続くわけも無く、嵐になれば皆必死に船が壊れないように補強していく。
「帆を畳め! 大砲が落ちない様にロープで補強!」
「イェッサー」
船長の指示に従って嵐の中、甲板を動き回る。
気をつけないと波にさらわれるために必死になって大砲を固定するロープを厳重にしていく。
ロープが切れて、百数十キロの大砲が甲板を転がり始めればそれだけで凶器であり、船体の至る所が破損してもおかしくは無い。
なので、ロープで厳重に固定する必要があったのである。
ロープで固定し終えれば、船内で水漏れが起こってないかの確認をしていく。
船が凄まじく揺れながら嵐が過ぎるのを祈るのだった。
長い嵐を抜けても小雨が降り続けてどんよりとした雲が続く。
陸地が見えない恐怖と連続した嵐で船員達の精神はすり減っていくが、俺は今日も元気に雨水を溜め込む。
波が比較的穏やかで、かつ雨のこういう時に飲水を調達しないと飲水がどんどん腐っていくからである。
「すげーなチャーリーは……どんな精神してるんだか」
「一回死ぬとなんか吹っ切れますよ」
「死ぬほど恐ろしい目に遭ったのか……そりゃ強くなるわな」
なお船員の中には宗教に目覚める者も出て、聖書を音読して気を紛らわせようとしている奴も出てくる。
正直音読して祈ってないで働いてほしいが、精神が参っている人物を働かせて錯乱でもされたら致命傷になりかねないので廊下に転がして安静にさせている。
ちなみに料理長がこの嵐で使い物にならなくなっていたので、俺が調理場を仕切っていた。
「水もだいぶ補充できたし、壊血病にかかりそうになっている奴らに柑橘類を食べさせた。少しでも病気を抑え込まないと」
ちなみに船医もぶっ倒れているので船医の面倒も俺が見ていた。
「こんな調子で本当に大西洋横断出来るんかねぇ……」
心配になるが、俺は転生させてくれた神様に無事に大西洋横断が出来ることを祈るのだった。
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