「海賊だ! 海賊が出たぞ!」
甲板で見張りをしていた人物がそう叫んだ。
「か、海賊だと! クソ! せっかく今まで海賊に見つからなかったのに」
船長はそう叫び、帽子を床に叩きつける。
「船長、相手撃ってきませんが」
「ただこっちも大砲6門しかねーからな……撃ち合いをしたら負けてしまう……」
とにかく何とか風に乗って逃げようとしたが、海賊船に回り込まれて、接近され、乗り込まれてしまう。
「おい! お前達の船は何処の国の船だ」
「い、イギリスだ!」
「あ、イギリスか、なら食料を少しわけてくれ。それだけで良いぞ」
となんか海賊は略奪すること無く解放してくれそうな雰囲気を漂わせる。
「あれ? 海賊さん、俺達の船襲わないんですか?」
「ちょ! チャーリー!」
「なんだ勇気ある水夫だな……名前は」
「チャールズ·エドワーズ! 皆からはチャーリーって言われてます!」
「そうか、俺はベンジャミン・ホーニゴールド! 海賊の船長をしているんだが、イギリスの船は襲わねぇって決めているんだ」
数分だけだが、話し合いを行った末に20人分の食料3日分で決着し、海賊のホーニゴールドは自分の船に帰っていった。
「船長……凄い海賊でしたね」
「あぁ、海賊に出会ったのは運が悪かったが、悪運は強かったらしい。食料もそこまで痛手では無いからこのまま航海を続けるぞ」
「はい!」
北大西洋海流と偏西風に乗ることが出来た為に1日7ノットの速度で大西洋を航行中。
ここまで来れば海賊も現れること無く比較的安全に航海することが出来た。
「(二等)航海士さん、この速度で進めばどれぐらいで着きますかね?」
「そうだな……この速度を維持できれば残りは1ヶ月もかからないだろう」
「おお! 航海の終わりも近いですね!」
「しっかしチャーリーのおかげで良い船旅だったよ……料理の知識は色々あるし、勉強熱心で仕事熱心……しかも経理も正確にしてくれるんだからありがたかったよ」
「褒められても何も出来ませんよ」
「なぁ、次に航海するとしたら俺船長をやるから、チャーリー乗ってくれないか?」
「条件によりますよ。でも知り合いとまた組めるなら賛成です。俺の役職はどうなりますか?」
「そりゃ勿論料理長だな。正直うちの料理長よりチャーリーの方が美味い飯作れるだろ」
「ま、まぁ……」
「チャーリー、次はドーバーよりもロンドンに行かないか? ロンドンならもっと条件の良い会社があるぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ、あとチャーリーの能力なら三等航海士としては推薦出来るから」
この時代まだ国家免許みたいなのは無く、唯一軍人になると航海士として決められることになるが、航海士は各町のギルドに所属することや、会社からこの人は二等航海士の能力がありますと保証されることで航海士の等級が決まっていた。
あとは船長の推薦があるとその人物を航海士として認めることもある。
なので今の航海士さんが新しい船長になった場合、船員の役職をある程度決めることも出来た。
だから医者の知り合いが居ると言うだけで船医になるような人物が出てきたりもする。
つまり船長の匙加減次第で幾らでもいじれるのである。
恐ろしい時代である。
「そうなると航海士兼料理長ですか?」
「そうなるな。いや~楽しみだな! いっぱい稼ごうな!」
そんな楽しい話もしながら旅は続いていくのだった。
それから20日後……定期的に小雨が降ってくれたおかげで飲水に苦労すること無く過ごすことができ、ヨーロッパ大陸へ到着することが出来た。
まぁイギリスに到着するにはあと数日必要だが、陸地が見えるだけで安心感が半端ない。
あと海岸沿いだと魚が釣れる釣れる。
「ん? 珊瑚が釣れた……綺麗だな……そう言えば珊瑚って宝石と言えば宝石だよな……ちょうど自分の持ち物もスペース空いてるし、持ち帰って実験してみるか……」
チートが使えるかどうか、陸に上がったら試してみることにするのだった。
「生きて帰ってこれたぁぁぁ!」
無事にイギリスに帰ってくることが出来た俺がやることは船長に決算報告書を確認してもらうことであった。
「うん、大丈夫だ。よし、荷降ろしにチャーリーも協力してくれ」
そう言われて荷降ろしをしていき、貿易会社が砂糖や綿を他の会社に売却していく。
最終的に3000ポンド以上の収益となり、俺の初めての航海は黒字航海となるのだった。
で、決算になるが、約半年の航海の為1ポンド6シリングの6倍で9ポンド6シリング、これに俺が投資していた5ポンドが配当で2.5倍になり、12ポンド5シリング……これに会社からのボーナスで9ポンドももらえ、合計30ポンド11シリングもの収益となった。
ホクホクである。
そのまま俺達は酒場に直行し、給料が高い船長が船員達に奢りで宴会を開く。
半年で普通の労働者が10ポンドの時代に3倍を稼ぎ出すことに成功したのである。
どんちゃん騒ぎの宴会の中、俺は最初から一緒に旅した仲間達にお礼を言いながら挨拶をし、船長と二等航海士の兄ちゃんには俺の実家とよく居るコーヒーハウスの場所を教えてから、実家に帰るのだった。
「ただいま」
「ちゃ、チャーリー!? チャーリーなの!?」
家に帰ると早々お袋に泣かれ、親父からはぶん殴られた。
「俺達がどれだけ心配したと思ってるんだ!」
「親父、お袋、ごめん……でも俺なりにやりたいことがあっての飛び出しだったんだ」
俺は30ポンド分の硬貨を見せる。
「半年で30ポンド稼いできたが、俺は自前の船を持ちたい。自分の船を持って大金を稼ぎたい! それで金持ちになって親父やお袋を楽させたいんだ!」
その為の計画を含めて説明していく。
今が16歳……なので25歳まで船乗りとして働いて自分の船を持てなかった時には諦めて親父の家業を継いで漁師になるが、それまでは自由にやらせてくれと頭を下げた。
「……俺もしたことが無い大航海を既にお前はしてきた……もう立派な海の男だ」
「親父……」
「母さん、もうチャーリーは立派な男になったんだ。男がやると言ったんだ。俺達は無事を祈って帰りを待とう」
「……そうね……チャーリー、次はいつ航海に行くの?」
「まだ決めてないけど数ヶ月は陸でゆっくりするよ。次の航海に向けての準備もあるし、親父やお袋の手伝いもしたいし」
「そうか……殴って悪かったな。チャーリー、半年の大冒険を聞かせてくれ」
「うん!」
俺は嬉しそうに親父とお袋に半年間の大冒険を説明するのだった。
夜、眠ると俺は再び書庫の様な部屋に来ていた。
『やぁ、今はチャーリーか。無事に1回目の航海を終えたみたいだね。いや~まさかチートを使わないで1回目の航海を無事に終えるとは思わなかったよ』
「こんばんは……で良いですかね神様」
『あぁ、こんばんはだねチャーリー君』
「神様が来たってことはチートの話ですか」
『あぁ、3枚のチートの名称が書かれたカードがある。その中から1枚引いて見ると良い』
「先にカードの内容は見ても?」
『あぁ、構わないよ』
そう言われてカードを3枚見せられる。
〈飲水を生み出す能力〉
〈頭の中に世界地図が浮かび上がる能力〉
〈風を操る能力〉
「うわ、どれも欲しい……」
『1つ取って、残りはキープというのも出来るけどね』
「じゃあそうします」
『よし! じゃあシャッフルしようか』
神様はカードを手に持つとシャッフルを始める。
選ぼうとしたけど目で追える速さではなかった。
『さぁチートを選び給え』
「じゃあこのカード!」
俺が引いたのは風を操る能力だった。
「神様、このチートの使い方は?」
『自身の周囲に風を吹かせる力だ。どちらかといえば風の向きを変える事が出来るかな』
「凄く便利じゃないですか!」
『まぁ使い方次第だ。よく考えて大航海時代を過ごすんだよ』
神様がそう言うと、俺の意識は途絶えるのだった。
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