新しくチートを貰った翌日、俺は両親が仕事で居なくなった家の中で、チートを試すことにした。
手に持っているのはフランス沖合で釣り上げた宝石珊瑚。
これを手に持って力を入れると光り出し、俺が慌てて手を離すと宝石珊瑚はどんどん人型に大きくなっていき、俺と同じくらいの青年に変わっていた。
「……言葉わかるか?」
「はい、ご主人」
英語でちゃんと返答することが出来た。
目の前の裸の男は珊瑚の紅い色をそのまま髪色にしており、少々……いや、結構目立つ。
しかも背が高い……2メートル近くありそうだ。
「神様から伝言です」
「神様から?」
「はい、宝石の大きさによって身長や肉付きが良くなり、綺麗さで顔の良さが変わるらしいです。あとちゃんと産み出した人に従うようになっているのと生殖機能もちゃんとついているとのことです」
「あと男女どちらが産まれるかは産み出すときに願えば変わるらしいです」
「宝石に戻す事は可能なのか?」
「可能ですよ。僕を戻してみますか?」
「あ、あぁ」
赤髪の男に触れて戻るように念じると、赤髪の男はみるみる珊瑚に戻ってしまった。
そして今度は女になるように念じて見ると、再び珊瑚が輝きだし、胸の大きな赤髪の女性へと姿が変わる。
「お、おお……」
「ね、簡単でしょ!」
声質も女性に変わっていた。
俺は女性も良いが、男の方が都合が良いと、男の姿に戻し、何が出来るか聞いてみた。
「宝石によって能力は変わってきます。例えば僕みたいな珊瑚だったら男だと長寿や知恵、女の場合だと安産という宝石言葉があるように僕は知恵が回ります。あ、あと幸運の言葉もあるので運も良いですよ」
「なるほどな……名前も付けてやらねぇと……珊瑚の別名のコーラルで良いか?」
「では僕はコーラルとお呼びくださいご主人様」
「良いよチャーリーで。泳げたりもするのか?」
「ええ、海中で育ったので泳ぐ事も出来ますよ。基本珊瑚くらいじゃないですかね最初から泳げる宝石人間は?」
「そうかそうか……うーん、色々実験してみたいな。とりあえずお前さんの服を用意しないとか……2メートル近くある服選びは大変そうだな」
俺は直ぐに服を買いに行き、安物のシャツとズボンを渡した。
「よいしょっと……これでいいですかね?」
「あぁ、これで全裸の不審者では無くなったな。よし、じゃあ他に良さそうな石言葉の宝石を探してみるか」
「となるとまずは図書館でしょうか」
「あぁ、そうだな。図書館に行ってみよう」
というわけで、俺とコーラルは2人で街の図書館に移動した。
昔の図書館は有料で、今回の場合入場料として1人5ペンスも取られてしまった。
一般労働者の日銭の半分を持っていかれたが、とりあえず司書に宝石の本について探していると聞くと持ってきてくれた。
「とりあえず力持ちな仲間が欲しいが、良いのいるかな?」
「そうなるとルビーですかね。情熱等の石言葉から力強さと結び付きます。船乗りならアクアマリンも良いと思いますよ。船乗りのお守りですし」
「ルビーは高いがアクアマリンなら比較的大きいのが安く手に入るかもしれねぇな」
英葡永久同盟の関係で、ポルトガル植民地のブラジルから産出される宝石類はイギリスでも比較的安く手に入れることが出来た。
あとこの時代はアクアマリンはルビーやエメラルドに比べて原石が大きいため、他の宝石より安い値段で手に入れることが出来た。
俺とコーラルは早速図書館を出て、宝石を求めて宝石商のところに向かった。
宝石商では俺達の格好が安物を着ていたのであんまり上客と思われなく、渋い顔をされたが、大西洋を1周してきて次の航海のお守りとしてアクアマリンの宝石が欲しいと言うと、納得され、予算は3ポンドまで出せると言うと、大きめのアクアマリンのネックレスなんかどうでしょうと言われた。
親指程度の大きさの綺麗なアクアマリンがぶら下がっており、2ポンドと4シリング(約13万円)で購入し、早速家に連れ帰ってネックレスを分解してアクアマリンを男にしてみた。
「んん! やっほーご主人様! アクアマリンですよ!」
爽やかはつらつな中性的な男性が現れた。
なお付いている一物はなかなかの大きさである。
身長は185センチくらいの爽やかな青年。
髪色はブロンドだが、瞳がアクアマリンと同じマリンブルーの様な色をしていた。
「お、これまた大きな男になったな」
「うん! 名前が欲しいんだけど駄目かな?」
「アクアマリンだから安直にアクアで良いだろ」
「アクアね! 覚えたよ!」
「アクア、服は明日買ってやるから今日はコーラルも石に戻ってくれ」
「「はーい」」
2人を石に戻すと、コーラルが着ていた服を畳んで石を含めてバックに入れる。
すると両親が帰ってくるので、料理を作って待つのだった。
アクアとコーラルは航海している時に仲良くなった水夫と親父に説明し、俺も含めて親父の船に乗り込んで漁の手伝いをするようになった。
すると体格が大きく力強く作業が出来るコーラルと船乗りのお守りとされるアクアマリンから生み出されたアクアは船の操作が抜群に上手く、しかもコーラルは幸運という石言葉があるので毎日ニシン漁は大漁の日が続いた。
親父も
「二人が来てから大漁ばっかりだ! 幸運だぜ!」
と大喜び。
漁の帰りにはよく家で宴会を開き、大漁の喜びを分かち合った。
親父の船に乗り込んで水夫としての能力も鍛えたおかげでメキメキと上達していき、これなら俺と一緒に次の航海も耐えられるだろうと思う様にまでなっていった。
ある日、石炭を見て、石言葉は無いが、石炭も黒いダイヤと言われたりするよなと思い、人化させてみると、イギリス人の顔の特徴を持つ肌が黒い男が誕生した。
俺はこれを見てニヤリと笑い、黒人奴隷を買わなくても、こうやって石炭で宝石人間を生み出せば黒人奴隷の代わりとして輸送して大儲け、しかも言葉が通じるし、俺に従順なので反乱起こされる心配無し……。
「うは! イージーモードキタコレ!」
俺はニヤける口を押さえながら、これなら目標金額以上も楽に貯められるかもしれないと喜ぶのであった。
約2ヶ月ほどドーバーの実家で過ごした俺は、二等航海士をやっていた友人の青年と合流して次の航海に向けて準備を始めようということが決まった。
「俺ついこの前ガールフレンドが出来て、その子に貢いだらあっという間にお金が消えてしまって……」
「そりゃ御愁傷様」
「チャーリー、ロンドン行って新しい船に乗るぞ!」
「ちょっと待った。俺の友人にコーラルとアクアという漁師が居るんだが、一緒に乗せてくれないか?」
「あ? 良いぞ! 一緒にロンドンに向かおうや!」
ということでコーラルとアクアを船長予定の青年に引き合わせると2人の誠実な態度にすっかり気に入り、4人でロンドンに向かった。
で、青年は前に航海した船長の紹介状を使い、直ぐに雇ってくれる会社を見つけると、俺を二等航海士兼料理長、コーラルとアクアを水夫として契約し、積荷と船員が集まり次第出航というのが決められた。
新しく船長になった青年は船員集めのために人材を紹介してくれる会社に向かい、俺は次の航海に向けた準備に取り掛かるのであった。
「これが、今回俺が乗る船か」
はい、今回乗る船は最新鋭のブリッグ(スループ)と呼ばれる帆船で、2本のマストが特徴的で、前回乗ったスクーナー型帆船よりも大型化していたが、縦帆メインだった前回の船に比べて今回は横帆で順風だとより速度が出るようになっていた。
具体的に言うと前回のスクーナー型帆船が巡航5から7ノットのところ、順風の場合今回のブリッグ帆船だと7から10ノットも速度が出る。
ちなみに1世紀先に出来る最速の帆船と呼ばれるティークリッパーは順風だと20ノットも出るので、まだ改良の余地が多いが、港の施設の影響でティークリッパーみたいな細い船は接舷が難しくて蒸気機関を搭載した小型ボートの登場を待たなければならない。
今回はちゃんと中型船の分類で、奴隷積載人数は200人、全長は45メートルにもなる。
今回の貿易会社は、戦争が終結し講和したスペイン領に向けた奴隷貿易を行う事を目的としており……その会社の名前は南海会社と呼ばれた。
そう今が1717年なのであと3年後に南海事件と呼ばれるイギリスで未曾有のバブルを引き起こすあの会社である。
「運が良いわ……怖いくらいに」
俺はこの幸運に感謝した。
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