龍神の息子として龍生を紡ぐ   作:ラン乱

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封魔の牙、解き放たれし咆哮【前編】

一方、バラムは一足先に結界が破られた場所へと降り立った。冷たい風が吹き抜ける岩場の奥に、異様な気配を放つ三つの影が佇んでいた。魔獣族だ。

 

「どうやって結界を破った」と、バラムは落ち着いた声で問う。

 

そのうちの一体がにやりと笑う。「アンタがバラムだな?王の聞いた通り、すぐに来るとはな」

 

「こちらが質問している。どうやったのだ」と再び尋ねるも、

 

「けっ!どうでもいいぜ。アンタを殺っちまえば、この地は我ら魔獣族の物なんだからな!」と、三体が声を合わせるように高笑いを上げた。

 

「まだそんな愚かな考えを持つとはな……私を甘く見ていると、後悔するぞ」

 

バラムが静かに魔力を解き放とうとしたその時だった。横にいた一体が言う。

 

「俺と戦うか?」

 

バラムは一瞬の間を置いて応じる。「それ以外に何がある」

 

「今、俺と会話したな?」

 

「だから何だ……!?」

 

突如、バラムの膝が崩れ、地面に手をつく。「……何だ、何をされた? 奴に動きはなかったはず……」

 

「教えてやろうか。この俺の獣の技『能力封魔』がお前を封じたんだよ」魔獣族の一体が得意げに話し出す。「発現条件は簡単さ。俺が敵と認識した相手にこの技を使い、会話が成立すると魔力だけじゃない、すべての能力を一時的に封じる」

 

「なんだと……!」

 

立とうにも力が入らない。バラムは地面に伏せたまま、無力感に打ちひしがれていた。

 

「さっき何て言ったかな? 後悔するって? 残念だが、後悔するのはアンタだったな」

 

(神力も出せないとは……この技はいったい……)

 

「神の力が使えない、そう思ってないか? 言っただろ、この技は“すべて”の能力を封じるってな」

 

「もうお喋りは止めて早く殺っちまおうぜ」

 

「そうだな。王の言った通り、簡単だったな」

 

絶望が迫るその時だった。

 

「父さん!」

 

上空から鋭い風を切って一人の龍人族が降り立つ。サクリアだった。

 

「サクリア?! あの拘束をどうやって!」

 

「今そんなこと言ってる場合!? こいつら、魔獣族だろ。なんで倒れてんの?」

 

魔獣族がサクリアに目を向ける。

 

「誰だこのガキ?」

 

「今さっき“父さん”とか言ってなかったか?」

 

「龍神の子供か。だが、王は言ってなかったぜ?」

 

「お前らか、父さんに何をした」

 

「何をしたかだって? 落ち着いて俺と話そうぜ?」

 

その瞬間――

 

「サクリア! 奴と会話しては駄目だ、能力を封じられるぞ!」

 

バラムの警告に、サクリアは寸前で声を飲み込んだ。

 

「ちっ、余計な事を……まあいい、封じずとも相手はただのガキだ。父親の目の前で殺れば、どんな表情すんだろうな?」

 

「お前ら、殺るぞ!」

 

魔獣族が一斉に襲いかかる。しかし――

 

「……見た目で判断すんなよ」

 

サクリアの足元から凄まじい龍気が立ち昇り、空間を震わせた。龍の技『天翔闘輝』が発現する。

 

「ぐあっ!? なんだこれは!」

 

魔獣族が怯んだ隙を突き、サクリアは瞬時に間合いを詰めると、剣を横に大きく振り抜いた。放たれた剣圧が三体を吹き飛ばし、彼らは岩盤に激突した。

 

「ただのガキじゃねえのか!?」

 

「早く王に知らせねえと……!」

 

逃げようとする魔獣族に、サクリアが剣を突き付ける。「逃がすと思うか?」

 

「ひっ!? た、頼む、殺さないでくれ!」

 

「父さんを殺そうとしてた奴の言うセリフじゃねえな……てか、誰が殺すかよ。取りあえず父さんを解放しろ」

 

「わ、分かった! おい、技を解除しろ!」

 

技が解除されると、バラムに力が戻った。

 

「なあ、解いたんだから見逃してくれよ……」

 

「見逃す? 何言ってんの」

 

サクリアが剣を振り上げると――

 

「な、殺さないんじゃなかったのかよ!」

 

「約束をした覚えはないね」

 

斬りかかろうとした刹那、バラムがその手を止める。

 

「離してよ!」

 

「サクリア、それだけは駄目だ」

 

「本当に見逃すの、こいつら?」

 

「そうは言っていない。拘束はする。あとのことは私に任せなさい」

 

「任せなさい? さっき倒れてた人が任せなさい?……ふざけんな!」

 

サクリアは体を震わせ、怒りを爆発させた。

 

「俺が来てなかったら父さんはどうなってた!? 死んでたかもしれないのによくそんなことが言えるな! 本当に呆れるよ!!」

 

「サクリア、落ち着きなさ――」

 

「落ち着け? 何が落ち着けだ!!」

 

その時、魔獣族の一体が隙を見て逃げ出す。

 

「逃がさない!」

 

サクリアが追いかけようとした瞬間、体内で何かが跳ね上がる感覚に襲われた。

 

口が勝手に動く。「妖の技――黒魔反転」

 

逃げた魔獣族が宙に浮いた。

 

「な、なんだこれ!?」

 

次の瞬間、上下が逆転し、魔獣族の体が大地にめり込むように激突した。原型を留めぬほどに潰れた姿を見て、サクリアは呆然とする。

 

「これ……俺がやったのか……うっ」

 

口に手を当て、吐き気に襲われた。

 

「サクリア! なんてことを!」

 

バラムの叫びが響く。サクリアはその場に立ち尽くしていた。

 

「龍神様!」

 

警備隊が現れ、現場の異変に気付く。

 

「魔獣族!?」

 

「良い所に来た。お前たちは残りの魔獣族を拘束してくれ」

 

「龍神様、地面が……これは?」

 

「……ついさっきまで魔獣族だったものだ」

 

「なっ!?」

 

「詳しい経緯は後で話す。結界の張り直しと周辺の後始末が終わったら、私も向かう。それと――誰か、サクリアを村まで運んでほしい」

 

「どうかなさったのですか?」

 

「……少し酔ってしまったらしい。頼むぞ」

 

「了解しました!」

 

警備隊の一人がサクリアを抱え、空へと飛び立っていった。

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