龍神の息子として龍生を紡ぐ   作:ラン乱

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もう一度、友達から

学校に通い始めてから3ヵ月が経過した。

 

一人一人が自分自身の特徴や個性を活かしながら、勉強だけでなく魔法にも磨きをかけてきた。サクリアも例外ではなく、龍の技『天翔闘輝』を使いこなせるようになっていた。

 

『天翔闘輝』が発動すると、彼の背には2対の翼が現れ、その形状はまるで天使の羽のように美しく輝いていた。その神々しい姿は、周囲の視線を自然と集めてしまう。かつては大人達に崇拝されるほどだったが、今では皆が慣れてしまったのか、特別な目で見られることはなくなっていた。

 

この日も、一日を通しての授業が終わり、帰ろうとしたその時だった。

 

「サクリア、ちょっといいかな」

 

教壇の前に立っていたレガル教師が手招きして呼び止める。

 

「近々、毎年行われるミルトリア学校との対抗戦があるんだ。サクリアには、1年代表として出て貰いたいんだ。」

 

「俺が出るの?てか他にも学校あったんだ」

 

サクリアは少し驚いたように返す。

 

「ここから結構遠い場所にあるんだ。飛んで行くとなると5時間は掛かるが、今回の開催場所はここだから行く必要はない。まあ、こういった行事は龍神様が魔法で一斉に運んでくれるが、私達にはそこまでの魔力がなくてね。そもそも龍神様にしか出来ない事だから、毎回お願いしているんだ。」

 

レガルは頭を掻きながら、少し申し訳なさそうに言う。

 

「出てくれるかい?」

 

「まあ、断る理由もないので良いですよ」

 

サクリアは軽く頷いて承諾する。

 

「ありがとう。対抗戦の詳細は明日改めて説明するよ。時間を取らせたね、気を付けて帰ってな」

 

そう言いながら、レガルは教室から退出していった。

 

サクリアは窓の外に広がる空を見上げ、小さく息を吐いた。

 

(対抗戦か……何が待ってるか分からないけど、今の自分がどこまで通用するのか、試すには良い機会かもしれない)

 

そう思いながら、静かに教室を後にした。

 

サクリアが校門を出たその時、メアリの姿がすぐ目に入った。いつものように明るく手を振ってくる彼女に、サクリアは自然と表情を緩めた。

 

「なんかあったの?」とメアリ。

 

「他の学校との対抗戦の代表として出てくれないかって、先生に言われたんだ。」

 

「そうなの!頑張ってね、サクリア!」

 

嬉しそうに微笑むメアリの声に、ほんの少し緊張していたサクリアの心も軽くなる。しかし、次の瞬間、どこからか落ち着いた声が響いた。

 

「あなたが代表になるなんてね、異論はないわ。」

 

声の主は、腕を組んで立っていたセレインだった。いつものように堂々とした姿勢で、しかしその瞳には、以前とは違う色が宿っていた。

 

「あなたのことだから、きっと優勝するんでしょうけど……気は抜かないことね。」

 

「どうした、最初と比べて随分変わったな。」

 

サクリアが少し驚いたように眉を上げると、セレインはわずかに頬を染め、目を逸らした。

 

「へ、変とは何よ!……あ、あの時は母様に言われてやった事だから……!」

 

少し顔を隠すように、セレインは声を落とした。

 

「……あの後は、爺様に叱られたの。爺様が言ってくれなかったら、私は本当に色んな意味で駄目になってたと思う。母様は厳しくて、欲深いところもあるの。だから……言わせて。あの時は、ごめんなさい。」

 

セレインは一歩、サクリアに近づき、そっと頭を下げた。

 

「これからは、同じ教室で学ぶ生徒として……あなたと話がしたい。」

 

その真っ直ぐな言葉に、サクリアはほんの少し目を細めた。

 

「……それだけじゃ駄目だ。」

 

セレインが驚いたように顔を上げる。

 

「今から友達として始めよう。別に怒ってないし、話相手は多い方が楽しいだろ?メアリも女友達が欲しかっただろ。」

 

サクリアがそう言うと、メアリは慌てたように頷いた。

 

「う、うん!セレインも友達になってくれたら嬉しい!」

 

「二人とも……本当に……ありがとう…!」

 

セレインの声はかすれていた。目尻には、ぽろりと涙がこぼれ落ちていた。普段の彼女からは想像もできないほど、素直で、あたたかい涙だった。

 

サクリアは、どこか安心したように空を見上げた。

 

この空の下で、少しずつだが、確実に何かが変わり始めている——そんな気がしていた。

 

対抗戦の話が広まり始めた頃、ガルピア学校の空気も徐々に高揚していた。各学年で代表が選ばれ、放課後にはあちこちで自主練に励む姿が見られるようになっていた。

 

 サクリアもその中の一人だった。天翔闘輝の制御は安定し、発動すれば二対の光翼が背に浮かび、柔らかな光を放っていた。その姿はまるで神話の生物――周囲がざわめくのも無理はなかった。

 

 「サクリアー! 一緒に組んで模擬戦やろうよ!」

 

 メアリが駆け寄ってくる。いつも元気で、誰にでも優しく接する彼女は、今ではサクリアにとってかけがえのない存在になっていた。

 

 二人は校庭の端に設けられた訓練場で向き合い、簡単な模擬戦を始めた。メアリの魔法は光属性を中心とした支援と攻撃のバランス型。派手さはないが、繊細で正確だった。

 

 「やっぱり動きが良くなってるな」

 

 「サクリアの天翔闘輝には驚かされるばかりだけど、私だって成長してるんだから!」

 

 互いに笑い合う中、校舎の影から一人の視線が注がれていた。

 

 「ふーん……天翔闘輝ってあれほどの力だったのね」

 

 セレインだった。以前は冷たく接していた彼女も、今ではサクリアたちと心を通わせ始めていた。しかし、まだどこか不器用なところが残っていた。

 

 「セレイン、見に来たのか?」

 

 サクリアが気付くと、彼女は少し顔を赤らめながらも歩み寄ってくる。

 

 「べ、別にアンタのために見に来たわけじゃないけど……その、興味があっただけよ!」

 

 「はいはい、ツンケンしてんなよ」

 

 「っ、うるさい!」

 

 そのやり取りにメアリがくすっと笑う。

 

 「ねぇ、セレインも一緒にやろ? せっかく友達になったんだし」

 

 「と、友達……そうね。うん、いいわよ。私も混ぜて!」

 

 その瞬間、訓練場には明るい笑い声が響き渡った。

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