忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ   作:亜面瞳頭

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ウォンテッド:シーカー・オブ・シンフルスポイル

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 時はA.D.2048。世界全土を電子ネットワークが覆い、サイバネティック技術が一般化した未来。宇宙殖民など夢のまた夢、人々は灰色のメガロシティで生き、サイバースペースへ日々逃避する。崩壊した国家に代わって全てを支配するのは強大なメガコーポ群。重金属酸性雨降りしきる空は、あらゆる罪と欲望渦巻く世界は、果てしなく重暗い闇の中にある。

 

「――安い!安い!実際安い!」「その場で借りて一晩天国!」「1人につき2人でサービス!カワイイなオニイサンもいます!」「両耳揃えて払えコラーッ!」「アイエエエ!やめてください!もう払ってます!」「その耳も寄こせアッコラーッ!」「アイエエエ……!」

 

 表通りから流れる合成音声の広告とキャッチの声、そしてボッタクリ・バーと結託した猟奇趣味のヤクザバウンサーの恫喝が、寂れた路地裏に虚しく響く。ゴミの散乱する道に点在する、地上に降りしきる重金属酸性雨や汚水が漏れ出た水溜まりは、虚飾で欺瞞された街の、歪で猥雑な有様を映す鏡めいていた。

 

 何たるマッポーぶりか、貪婪たる都の闇夜は、歓楽街の通りを一つ横に外れればその濃さを増し、ましてそれが非合法な地下街ともなれば、そこは地上よりも輪を掛けて欲望が渦巻く、まさにケオスの坩堝だった。

 

「ウェーヒック……」路地の一角から男が一人、赤ら顔で路上へ歩み出る。ミリタリー・パンクス・テクノジャケットをガラ悪く前開きで羽織る、あからさまなヨタモノだった。男が上機嫌のほろ酔いで道に出たところに、入れ替わるように黒ずくめの人影がすれ違い、その肩が当たった。

 

「アッテメコラ――アイエッ!」すれ違う人影の肩を掴み引き留めたヨタモノは、急速にその酔いを醒ました。振り向いた女の眼は淡い灰色で、そして蔑むように冷たい。真黒いフードの下に覗く表情は、端正で生白くも恐ろしく不愛想で、何より顔の右半分を覆う単眼のレッドデーモンめいたオニ・オメーン(注:鬼の面)がどこまでも威圧的だった。

 

「ドーモスミマセン!」女の肩を掴んでいた手を放し、男は表通りの雑踏に向かって駆けていく。読者諸氏はこのヨタモノを見せ掛けだけのニボシ野郎と蔑んでいることだろう。だが、もし彼が素面であったならば、瞬間的に彼女が発したアトモスフィアに中てられ、ある重篤なショック症状を引き起こしていた可能性もあるのだ。

 

 逃げ行くヨタモノに一瞥もくれず、女はヨタモノが出てきたドアを開け、寂れたバーへと入っていく。……ブンブズゥーン……ブンズズブンブズゥーン。ネオンの点滅する薄暗い店内、ジャンルも分からぬ退廃的BGMが流れていた。

 

「アー……いらっしゃい」現れた女の異様ないで立ち――ネオングリーンに爪光る首元のファーと腰下を覆う蝙蝠の翼めいた外套――に店主は一瞬たじろいだが、それ以上の反応は示さなかった。テック・パンクスやユーレイ・ゴス、ペケロッパ・カルト。中身どころか容姿ひとつとっても胡乱がひしめくこの街の、ましてさらに闇深いこの場所では、旧世紀UNIXゲームの盗賊あるいは狩人めいた恰好の客などさしたる問題ではないのだ。

 

「アー……ご注文は」「……水を」「あのねェ、ここ酒場」「……水」「アー……払うもんは払ってもらうからね」女がカウンターに素子を置くと、店主が渋々グラスを差し出した。「見ない顔だな姉ちゃん」そうしたやり取りを傍観しながらカウンターに座っていた客が、グラスに口を付ける2つ隣席の女に声を掛けた。

 

「わざわざこんなトコまで来て酒も頼まないなんて、アンタも相当何かあるね。ヤクザ絡み?」「……」話す男には目もくれず、女はグラスの中身を見つめる。「ンー沈黙……そういや姉ちゃん知ってるか?『罪宝狩り』がこの辺りに来てるって噂」「……『罪宝狩り』?」女が眉根を僅かにひそめた。

 

「ア、そもそも知らないか。いや、マジにブルシットな話なんだよ。まず、この世には旧時代の値打ちもんのUNIXデッキやフロッピーなんかに呪いが籠ってる、『罪宝』があって、それを専門に狙ってる盗賊みたいなのがいてさ、そいつが『罪宝狩り』とか呼ばれてんの。目的の為なら誰も彼もお構いなしにやるんだってよ。呆れたろ。科学の時代だぜ。呪いとか、『ニンジャ』くらい下らないだろ?」「……」再び女の目元が動いた。

 

「……詳しいな」「ヤクザクランに情報屋、傭兵、あとメガコーポ……この辺りの社会の裏で生きてる奴は皆知ってるよ。どういうわけかそいつ賞金首らしいし」「……」男の話を店主は聞き流している風だが、内心で驚いている様子もなく、公然の秘密として認知しているようだった。

 

「皆マジに信じてんのかねそんな話」「……『罪宝』を見たことは?」「まさか。そもそも俺は最初から信じてないって。そんなおっかないもんが本当にあったとして見たくもないね。だって呪いがあるんだぜ?へへ……ア、でも変な『眼』を見た奴がいるって話なら聞いたな」「『眼』……」「ン、この地下街をずっと南東に行ったとこに遺跡があってさ、そこで見たんだってさ」「……ドーモ」

 

「ア、もう行っちゃうの?」男のそれ以上の会話を打ち切るように、女は足早に酒場を出ると、再びケオスの喧騒渦巻く外へ出ていった。「不愛想な姉ちゃんだったな……ン」男のIRC端末が震えた。非合法ネットワークのバイブレーション通知。違法取引にヤクザ間の抗争、そして賞金首の情報。裏社会にまつわる情報――勿論この世の真の闇に関する情報は検閲されている――がカトゥーンに登場するディープウェブめいて詳細に手に入る。後ろ暗い世界で生きる者には必需品だ。

 

 噂をすれば例の『罪宝狩り』に関する情報の更新だった。賞金首IRCチャネル上でワイヤーフレームが動き、マッポの凶悪指名手配犯モンタージュめいた人物像を描画していく。「『罪宝狩りの悪魔』……大層な名前付いちゃって……アッ?」画像の読み込みが終われば、そこには男の隣に先ほどまで座っていた女の顔があった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「良く犬」「こちら高利貸し」「プーレク野実童」「おマミ」猥雑な地下街も外れまで行きつけばネオン看板のフレームばかりが残るのみ。再開発を免れた広大な地下空間には、放棄されたバラックと瓦礫の山、そして太古に切り出され積まれたのだろう巨石塊が侘しく鎮座する。現代と古代、二つの文明の遺構が融け合うこの空間には、どこか神秘的なアトモスフィアがあった。

 

 そうしたハカバめいた風景を独り進む人影あり。漆黒の装束に身を包む、『罪宝狩り』と呼ばれる女。遠方に見える遺跡を真正面に捉えるその眼に浮かぶのは、悔恨と復讐の心か。否。身近に潜む何者かへの敵愾心もあった。「イヤーッ!」罪宝狩りの斜め後方、地下に聳える4階立て鉄筋ビル跡屋上より、明確な敵意が叫び声と共に急襲!

 

「イヤーッ!」振り向きざまに罪宝狩りが同じく叫び、右手を振り上げる!金属塊同士が打ち合う鋭い音!彼女が腰から逆手に振り上げた大振りのダガー、それと激しく拮抗するは西洋戦士甲冑めいた風貌の存在!その手には異形の斧槍!「イヤーッ!」空中でコンマ数秒静止した甲冑に、罪宝狩りが反撃の左バックキック!だが甲冑は武器を打ち合った反動で後方に飛び退きこれを回避!

 

 空中に後方回転した甲冑がそのまま流れるように瓦礫の上へ降り立ち、ザンシンしたままアイサツした。「ドーモ、アイトーンです。その身のこなし、モータルの狂人だとばかり思っていたが。名乗るがいい『罪宝狩り』。貴様もニンジャだろう」

 

 精神状態に不安を覚えた読者は気を強く持っていただきたい!カラテを振るい人類史の陰で暗躍を続けてきた半神存在、ニンジャ!そのような荒唐無稽な陰謀論めいた言説が真実だというのか!アイトーンと名乗った甲冑は自身がそうだと言うのか!

 

「……ドーモ、アイトーン=サン――」

 

 果たして『罪宝狩り』はその表情を変えることなく、真っすぐに甲冑を睨んだまま、アイサツを返す。右眼を覆うオニ・オメーンの奥で、彼女の冷たい瞳が超自然の黄緑に光った。

 

「――ディアベルスターです」

 

「ウォンテッド:シーカー・オブ・シンフルスポイル」終わり

「ディアベルスター・ザ・ローグ・ウィッチ」に続く

 




 読んでいただきアリガトゴザイマスドスエ!

 「ガンスリンガー=サンのハンニャ・オメーンがあるのならディアベルスターのOMENってメンポとして解釈できるのでは?ボ訝」とラリったことが書こうと思った切っ掛けです。ちなみに私はノー・ドラッグです。
 今後は魂を隷属させる罪宝とニンジャソウルのあれこれや、忍殺世界に存在する「ローグ・ウィッチ」としてディアベルスターを解釈したものを上手く絡められたらと思っています。
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