忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ   作:亜面瞳頭

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これまでのあらすじ

 過去の贖い、復讐の為に独り悪魔の領域へ向かう『白魔女』ディアベルゼ。茨の軍勢との壮絶な前哨戦の末、彼女は恩人モルガナの成れ果てたるレジーナと死闘、不条理なる罪に虐げられし魂達と共に大魔女を罪禍から解放する。そして遂に魔女は怨敵のもとへ……決戦のイクサは近い。


フィリアス・ディアベル

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「――イヤーッ!」右拳!「イヤーッ!」杖刺突!「イヤーッ!」跳躍右膝蹴り!「イヤーッ!」慣性ままに旋回打擲!決断的シャウト伴う決死攻勢が茨生い茂る電子地下墓に轟く!贖いのカラテ振るうは原罪の復讐者――『白魔女』ディアベルゼ!対する敵手は、だが!

 

「イヤーッ!」「オット!」「イヤーッ!」「フォホ!」「イヤーッ!」「ガンバロ!」対する者は意に介さず!ディアベルゼの怨嗟の一撃が届く刹那にその姿はノイズ残して消失し、また眼前に現れる!繰り返し!白魔女の攻手は尽く無を打つ!

 

「拙き演武を続けるか?」仇敵――アザミナは白魔女の前方、嘲り交じりに笑んだ。「だが弟子の芽吹きを見定むも師の勤めか」その眼には明らかな嘲弄の意図が浮かぶ。「……それなら、これは!」KBAM!「どう!」白魔女は背後で光爆ぜて、急加速!「イヤァーッ!」空間に蒼白残像を焼き付かせながらアザミナのワンインチ距離へ縮地!

 

「イィ……!」KBAMN!引き絞った右肘先でダメ押しの死霊炸裂!その超速の右拳が放たれるより一瞬速くアザミナ消失!「つくづく児戯よの――」「……ヤァーッ!」白魔女の左斜め前方50フィート!冒涜者の再出現先、彼女は既にそこへ視線を向け!弓めいて放った右拳――否、サイドスローで投擲していた!

 

「――ム?」蒼白光の輝き纏う何か――フロッピーディスクが流星めいた軌跡を描き飛来!アザミナの左腕茨へ――「ヌゥッ!」突き刺さった!

 

「悪いけど、もう視えてるの!」ディアベルゼは双眼妖しく光らせ追撃疾走!アザミナが如何な力で異空へ消えども、茨の微動を、オヒガンの揺らぎを見通せば出現先は予測可能!この世ならざる領域と関わるジツを宿し、何より、他ならぬ悪魔の力の支配下にあった彼女にはそれが出来た!

 

「イヤーッ!」白魔女の邂逅時のセイシンテキ動揺も、今や怒りが塗りつぶす。心は燃やし、身体は冷徹に研ぎ澄まし復讐の刃と為せ!だが距離を詰める間にアザミナは再度空間転移――出来ない!「……ッ!」茨魔術師は煩わしく五体震わせる!これは!

 

 この贖罪薊プログラム薊贖罪薊私の生きた証であり私そのもの贖罪薊薊ス贖罪ベド薊贖罪薊ターそれが私だ薊贖罪薊この時わたしは薊贖罪薊世界そのものと贖罪薊薊を解き放つのが見知らぬ薊贖罪薊である事を嬉しく思う私は――。

 

 アザミナの邪悪なるニューロンへ侵襲する論理の支配者!先のフロッピー・スリケンを通してレリック級ウイルスプログラムが、無限増殖する製作者の意思が、その身を侵す!非サイバネ者に何故効くのか?悪魔の躯体はオヒガンより魂を蝕む茨であり、同時に01の世界を繋ぐLANケーブル。それは超自然領域の力宿すアザミナが、コトダマの電脳世界に精通するディアベルの肉体を奪い取ったことによる産物にして縺れ、意図せぬ精神のバックドアといえよう!ゆえにハック可能!

 

「貴女の言うお遊びも良く効くでしょう!?」贖罪私はベル薊カ・スケ贖罪薊私はあの日贖罪贖罪薊奇妙薊薊贖罪それが波によって流線型に贖罪贖罪薊された薊贖罪薊である事は薊だったが贖罪贖罪薊私は「――こんなものか」

 

「イヤァーッ……!」アザミナの胸元正中線を狙ったディアベルゼのボー刺突は――虚空を突く!「好奇ゆえ受けてみたが、まこと異な――否、不快也」「……ッ!」白魔女は咄嗟にスライディング滑走して距離を取り、低姿勢で後ろに向き直った。

 

(((DAMN)))振り向いた先、突き刺さった伝説的ウイルス素子を引き抜き握り潰すアザミナへ、彼女は毒づいた。元より相手は超越者、この程度の仕掛けは僅かな時間稼ぎの小細工にしかならないと踏んではいた。だがあまりにも――。(((――コイツ順応速すぎよ!)))なんたる現代文明社会を震撼させた電子の脅威すらも容易く呑み込む古代の底無しの悪意か!

 

「次を見せて見よ。ここには我らのみ、焦らずとも付き合うてやろう」アザミナは四肢の茨をざわめかせ、淡々としていた。超然とした、だが無慈悲さを孕んだ無情だった。「あら!私と逆ね!貴女にはさっさと死んで欲しいんだけど!」対する白魔女は笑みすら浮かべて激情を剥き出しにした。再度疾駆!

 

「忌まわしき裏切り者の愛しき童よ。母の恵みが足りぬか?」対するアザミナは黒々とした触腕の掌を水平に、互い違いにかざす。薊贖罪薊。その手の間で茨が芽吹き、圧縮された超自然の鉄条網はひと塊の凶器と化して――放たれた!薊!

 

 ディアベルゼへ向かって自転飛来する棘星、茨のスリケン!(((思ってたような速度じゃない!弾いて――)))「――ッ!イヤーッ!」コンマ1秒、白魔女は虫の知らせめいた死霊のざわめきに従い状況判断、スライディング回避!贖罪薊罪!冒涜の茨スリケンは彼女の頭上で分裂!急加速通過!KADOOM!茨連星が背後の壁材とUNIXサーバーを重たく砕き貫く!侮るなかれ!ときにスリケン巧者の投擲は、着弾地点で『星なき夜』と形容されるほどの破壊を生むのだ!

 

「今のを受けぬか。受け入れれば再び我が傀儡へ迎えてやったものを」「アハ!死んでもお断り!」ディアベルゼは危機的死合の中、なお不敵に笑み、駆けた。怒りが、アドレナリン分泌の高揚感がニューロンをブーストさせる。畢竟、イクサとは僅かなミスが即座の敗北に繋がる、危うい綱渡りめいたもの。その恐怖を乗りこなせる者だけが勝者たりえる。ゆえに彼女は後ろ暗い感情すらも内に呑み――「死ねると思っておるのか」

 

(((――ア……)))不意に大気が粘性帯びるように時間が凝る中、白魔女は浮遊感を感じた。逸る精神に肉体が追い付いていないような、乖離の感覚。何故?またも恐怖に二の足を踏んで?否。宿敵に自分の怨嗟は届いている。想定より克服が速かったとはいえ弱体化論理攻撃は入った。今ほどの相手の反撃も回避できた。勝てる。勝たねばならない。それでは何故?何故肉体は意思とは逆に離れ行く?何故――茨に縛られている?「――ア」冷めゆくニューロンに現実が、時が再び等速で流れ込んできた。

 

「――ンアーッ!」KRAAASH!ディアベルゼは背後から伸び来た茨に捕えられ、逆再生早回しめいて引き戻され壁面衝突!彼女を磔に縛る蔦が生じるは、先のスリケン着弾点!「――幾星霜経て変わらぬな。貴様ら定命共の想像力の欠如、ほとほと呆れる」「ウ……ウゥ……!」前方の果てしない闇から響く侮蔑の声は、白魔女が痛みに瞬く度近くに「のうリゼット」既に間近。「真っ当に付き合うとでも思ったか?貴様の如き童蒙の戯れに?」

 

「受け売りの力一つで我らと同格気取りとは、何たる増上慢。それを分からせてやったまでよ」白魔女の顎下を黒の触手が這いなぞる。「……ここまで本気じゃないって?負けた時に言い訳出来るものね――ンーッ……!」緊縛されてなお彼女は虚勢張った。「貴様こそ、このザマで本気でアダウチに来たとでも言うか?師もさぞ嘆いておろうて」悪魔は借り物の麗顔を邪悪な莞爾に歪ませた。「だが不肖のブザマは師のブザマ。ヨウマよ、貴様の愚かさもここに極まれり!フォホホホホ!」「バカハ……ドッチダー!」KBAMN!茨爆ぜ拘束突破!

 

「イヤァーッ!」ディアベルゼ、怨恨の光を更に強める!死霊の爆発的輝きを全身に纏い強襲!躊躇うな!出し惜しむな!燃やし続けろ!怒りを!怨みを!その身を!「無駄が理解できなんだか。我を貴様にかかずらせること、それ自体が罪と――」依然アザミナはオヒガン瞬間転移で回避。白魔女の恨撃は虚しく――掠めた。掠めた!茨を!「――何?」

 

「――イヤァーッ!」右拳!「イヤァーッ!」杖刺突!「イヤァーッ!」跳躍右膝蹴り!「イヤァーッ!」慣性ままに旋回打擲!決断的シャウト伴う決死攻勢が茨生い茂る電子地下墓に轟く!贖いのカラテ振るうは原罪の復讐者――『白魔女』ディアベルゼ!対する敵手は、果たして!

 

「イヤァーッ!」「ム……!」「イヤァーッ!」「グッ……!」「イヤァーッ!」「ヌゥーッ……!」依然アザミナは転移防御で意に介さず。だがハヤイ!白魔女がハヤイ!喰らい付いている!転移先を見切り、断続的瞬間加速を連ねて無理矢理に攻手を掠らせ――当てにいく!そしてその精度は――。「イヤァーッ!」――次第に高く!

 

 KBAM!KBAM!KBAM!「イヤアァーッ!」高機動戦闘機スラスターめいて怨霊を消費し、ディアベルゼは執拗に吶喊!今や並みのニンジャ動体視力では捉えられぬ速度で三次元にジグザグの軌跡を描き、ブンシンめいた多数の残光と共にアザミナを単独包囲!

 

「……成程。ジョルリが練り上げたものよ」白魔女の猛攻の最中、冒涜者は遂に彼女への認識を取るに足らぬ者から改め――。「イヤァーッ!」「グワーッ……!」――胸元へ復讐の右拳単打を受けた!

 

「……ハーッ……!」胸反らすアザミナを前に、ディアベルゼは静止し、ザンシンめいて深く息を吐いた。その眼に希望の光は無く、顔色は決死の表情に染まったままだった。此度の彼女のカラテは、確かに仇敵に届いた。大魔女の魂を載せた白魔女の一撃を、悪魔は受けた。――受けた。何かを確かめるように。

 

「……モルガナ」胸元に残るモーリアンの黒紫の打撃痕ノイズを撫でながら悪魔は口を開いた。「あるいはマトウ・ニンジャ――リゼット、貴様が殺した食えぬ女の名よ」「……!」またも悔恨を煽るような、だが淡々とした言に白魔女の精神は鋭く研ぎ澄まされていく。「あ奴は我が手に堕ちる最期に何を言っていた?恨み言か?奴も仇なす事を望んでいたか?」

 

「……教えるとでも思う?」「貴様を復讐へと動かす物は感傷だろう」アザミナはなお淡々と、同時に尊大に言った。「他者を鑑みる情。永遠を生きられぬ惰弱共の唾棄すべき情。心底理解できん。……ゆえに我はそれを踏みにじらねば気が済まん」冒涜者は、遂に白魔女への認識を取るに足らぬ者から改めた。否定すべき門弟の残滓に。自ら――古代より生きる半神への挑戦者に。

 

「……我が事の成就にはまだ幾ばくかの暇がある」広大な地下の闇深き『森』の中、アザミナは未だ無数に犇めく冒涜サーバー機器――ここまでのイクサ余波に巻き込まれてなお夥しい数が稼働続ける――を一瞥し、そして宙に足組み座るような姿勢で躯を無数の蔦で支え、冒涜的カラテを構えた。右触手を上に掲げ、左腕茨は下手に、どこか妖美さすら感じる尋常ならざる構えを。

 

「それまでの余興よ。望み通り相手をしてやろう」邪悪な冷笑に口の端歪める!「冗談!お前も!お前の企みも!私が全部終わらせる!イヤーッ!」ディアベルゼもまた凄絶な笑みと共に爆ぜ駆ける!復讐のイクサ、これよりメインフェイズ!

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 文明的喧噪と無縁の冷涼な荒野にて。「クラッシュ」「あの頃はもっと輝いていた」「リアリスト」無人の広大な大地で時折視界に現れるは錆びた看板、放棄されて猥雑グラフィティに塗れたあばら屋、ジャンクヤードの山。既に高く昇った陽の光がこうした過去の遺物を鈍く照らす。それらに加えて、どこかへ向けて尾を引く土煙もあった。

 

 土煙――四つ足で忙しなく地面蹴り駆ける巨獣、クレイジー・ビーストとその背に立つ主たち、悪鬼の名を冠するケモノアウトロー集団ゴブリンライダーズ。そして巨獣の後方、犬橇めいて引かれる亀甲羅の上にもうひとり。

 

「――黒魔女ォー……本当にこの先かァー……?」特攻隊長ダグが釘バットを肩に振り返った。巨獣を足に荒地駆ける彼らの視線の先、牽引される亀甲の上にはディアベルスター。「……ああ」微かに右目光らせる黒魔女は甲羅の上に片膝立ちで、どこか遠くを真正面に見ながら答えた。

 

「ここらは汚染物埋め立てだとかで何もねえ土地って話だろ?」そう話すクラッタは茨の兜フルメンポを被り、その手には斧槍。「ゲ!アンタなんてモン持ってんのよ!」ミアンダが顔をしかめた。「略奪成功したんでさ!ヤッター!」出発のドサクサに鎧異形エリュシクトーンより奪ってきたのだ!なんたるワル!「イハハー!ヤアー!アー!」

 

「……黙ってろ」対して黒魔女は、頭を抑えながらにべもなく返した。右目の映す他次元レイヤーの情報量に慣れていないのだ。「アッハイ」「イピピーッ!怒られてやんのォ!」「ダマラッシェー!」「グワーッ!」囃し立てたブーンにクラッタが飛び掛かる。「スゴイ・バカ2人!こんなトコでザケてんじゃないよ!」ミアンダが叱責!「「スンマセン!」」ガボンガとダグは特に何も言わない。この程度のやり取り、チャメシ・インシデントなのだろう。

 

「……騒がしい」ディアベルスターは前方の喧騒に眉根を寄せたが、やがてノスタルジックに耽った。(((……私達を見ているセンセイもこんな気分だったか)))その実、さほど不愉快には感じなかった。今となってはこうした感傷も、守り尊ぶべき物とも感じていた。

 

(((……リゼット)))黒魔女のメンポの下、右眼に投射されるUNIXホログラムめいた別次元のレイヤー。出発前に確認できたAz@minaIDのアドレス群は既に消失。Diabellze@WF及び贖罪神女のIPは健在。だが今や、両者は激しく衝突し、火花めいたノイズを拡張現実に散らす。

 

『別に貴女に用は無いのよね。でも、実際邪魔だから』

 

(((……あの嘘つきめ)))地下街での邂逅の折、双子の姉は――残された愛する家族は邪悪を装っていた。精神的動揺を超克した今ならそれが分かった。あれもまた感傷――怨敵への怒りを、そして愛する者への慈愛を押し殺す為の――罪をひとり抱え込む孤独な復讐者を人たらしめる最後のよすが。ひとりで全てを終わらせようと足掻き続けてきた、他ならぬ黒魔女自身も持つよすが。

 

(((センセイ……ルシア……シルヴィ……私が――私たちがきっと終わらせる)))なればその感傷を分かち合うことは?一歩踏み出す足元さえ不確かなマッポーの世、ふたりが同じ罪を背負うことは?それは決して弱さではない。ディアベルスターは確信し、決意した。

 

「――なあ」そんな折、巨獣の荒々しい足音をすり抜け、前方よりオヤブンが通る声で訊いてきた。口数少ない黒魔女と先ほどから、彼は途切れ途切れのやり取りを交わしていた。「……何だ」「ただの興味だけどよ、お前、他の土地に行ったことあるか。磁気嵐ッてのが晴れてからよ、マッポどころかクニも終わっちまってるトコだってあるらしいじゃねえか」「……月が割れて10年、だったか」「俺がこのナリになる前の時代だぜ。あの頃ぁ何も知らねえガキだった」「……私も割れる前の月を……星空を知らない。それから他の場所も」「ア?」「……どうでもいい話だ」

 

「――なあァー……」ガボンガに続けてダグも訊いた。「実際お前は悪党なのかァー……?噂通りの盗みとか暴力とかやるのかよォー……?」「……生きるためにな」黒魔女は目を閉じ述懐した。「……UNIX盗掘……メガデモ(注:プログラミングによる電子3D映像。一般的には電子ドラッグと同義)のコピープロテクト外し……ツジギリ狩り……地下闘技……何でもやった」

 

「エ、アンタそれマ?」ミアンダは訝しんだ。「それってよォー……」ダグは言い淀んだ。「……ハ……」我ながらせこい『悪魔』もあったものだ、黒魔女は内心で自嘲する。「……お前すげぇアウトローだぜ!」だがブーン喜色!「アネゴ!」クラッタが太鼓持つ!「やることやってんじゃねえか。見直したぜ!」オヤブンもオスミツキだ!「……そういうのやめろ」「「イピピーッ!」」

 

「なあ黒魔女」「……今度は何だ――」「お前死ぬ気だろ」恐れ知らずの悪党共が頭目は、にわかにシリアスを声に乗せた。乾いた向かい風が通り抜け、どこか気の抜けていたアトモスフィアは一転、冷涼な大地と同調する。「この先に何があんのか知らねえが、刺し違えてでもヤってやるって、ずっとそういう眼してるぜ」「……」「俺らも無意味にユウジョウごっこはしねえ。腹割ってくれるヤツにはマジに応えるって、そういう話だ」「……私は――」巨獣の背上、腕組み直立不動で自身を見るガボンガに、ディアベルスターは気後れ気味に見返した。

 

「――私は復讐の為に生きている。その為に何でもやった。……その終わりが行く先にある。死ぬつもりはない。死にたくもない。だが無事に勝てる保証も無い。だから私は、私たちは……死んででも終わらせて……償いが必要なんだ」「この先にあんのはそういう因縁な」「……お前たちには何の関係も無い……だから止めてくれるなよ」一瞬とは言えあの黒魔女が、ゴブリン達へ弱気を見せた瞬間だった。

 

「ア?俺らは止める気はねえぜェー……」「……ならどうしてあれこれ訊く」対する彼らは、どこまでも向こう見ずの誇りあるアウトローだった。「黒魔女サマがくたばっちまったら、どんなヤツだったか語り継ぐヤツが必要だろ?」「悪党ってのはどう生きるかよりどう生きたか、どう死んだかだ。アネゴのミーミー(注:ミーム。生物的に遺伝しない情報や意思、模倣子)を遺さねえと!」「勿論、アタシ達の名声に添えてね!」

 

「ハッハァー!ま、そういうワケだ。お前のここからの生きザマだろうが死にザマだろうが見届けさせてくれや。それとも永遠に生きる気か?」「……!」彼らの言葉に一切の欺瞞は無かった。刹那的に悪の高みを目指す命知らずたちだからこそ、彼らの誰もが、ある種のゼンめいたシビアな価値観を心から信じていた。「……ハ――」やがて黒魔女はどこか小気味良い諦観と共に冗談めかした。

 

「――この先私が死ねばお前らも死ぬぞ?」「エ?そりゃ困りますぜ!やっぱ――」贖罪薊薊贖罪贖罪薊!「――アイエッ!」背後よりおぞみの気配が急接近!「――アバババババーッ!」連動してクラッタが頭抑えて痙攣!「そのクソ兜だ!脱がせ!」「オラァー……!」ダグがバット振り抜く!「グワーッ!」衝撃にひしゃげた冒涜フルメンポが後方へ飛び行く!「アリガトゴザイマス……!」「……来るぞ!」背後を睨む黒魔女の右眼が映すはAz@mina:Erysichthonのアドレス!贖罪薊薊贖罪贖罪薊!

 

「――AARGHHHHH!」「……奴さんスピードアップしてねえか!?」ガボンガが振り返った先、彼らを追い続けて来た茨の首無し騎士――エリュシクトーンは凄まじい速度で足元の茨を分裂増殖させて迫り来る!異形の頭部に該当するだろう部位では、蔦が激しくのたうち、兜拾い再装着!

 

「ルオオォーーッ!」「コレデモクラエ!」脅威を背に加速する巨獣の上、クラッタが忌々し気に後方へ複数の投擲物をばら撒く!KABOOM!以前黒魔女へ差し向けた閃光弾でない、殺傷的爆発を置き去りに、彼らは大地走る!

 

「……ヤッタカ!?」「イディオット!滅多なコト言うんじゃないよ!」逸るブーンをミアンダが諫めた後ろ!「――AARGHHHHH!」爆風よりエリュシクトーン健在!贖罪薊薊贖罪贖罪薊!全身の茨伸ばして巨獣を捕らえんと追いすがる!「近付けさせるな!」

 

「……イヤーッ!」殿のディアベルスター、亀上でダガー振るって茨触手の大勢を迎え斬る!「除去……!除去……!AARGHHHHH!」斬り払った茨の末端は枯れず!切断面からすかさず再生して増殖繁茂!「イヤーッ!」再度断つも再生!黒魔女たちが目指す先――悪魔の根城と物理的距離が近付くことにより何かしらの強化恩恵を得ているか!?

 

「AARGHHHHH!」斬り漏らした茨が三傑亀を追い抜き生長!「――ア」ブーンのマフラーを絡め取る!「グワーッ!」「……チィッ!」救助しようとする黒魔女へ別の茨が妨害!「エイッ!」代わりにミアンダが後方へ引かれ飛ぶスピード狂悪鬼の片脚へムチ巻き付かせる!「でかした!そのままだ!」古事記のカブ抜き伝承めいて悪鬼たちは縦列で抵抗!「オー・エス!オー・エス!」ブーン、空中で固定!「グワーッ!オネエサンたち!ちぎれる!俺ちぎれる!」「辛抱しろォー……!」

 

「AARGHHHHH!」ジゴクの綱引きは次第に鎧オバケがイニシアチブ確立!「「「「グワーッ!」」」」ナムサン!このままでは諸共巨獣の背中から引きずり落とされ「――イヤーッ!」黒き矢が水平高速射出!茨の源へ隙を見出したディアベルスターが鋭くトビゲリ!「AARGHHHHH!」「イヤーッ!」エリュシクトーンが怯んだ隙、すかさずブーンへ伸びる捕縛茨を斬り落とし、自身も赤紫の鎖を亀に伸ばして復帰!

 

「イピピーッ!助かった――グワーッ!」一方向より引かれる力が立ち消えた反動で、ブーンは巨獣の進行方向目掛けて吹き飛ぶ!「ア!ヤベェ!」ここまでされる謂れは――おそらく無い!「ルオオオーッ!」彼の飛び行く先、クレイジービーストの角から生じる茨めいたオーラ!かつての追走劇の際にも発現した、エリュシクトーンのかつての魂に由来すると思しき『罪宝』の力が吹き飛ぶ彼をガッキと掴む!「ア!何だコレ!どうなってる!?」「なんかラッキーヤッター!」ようやく復帰!シマッテコーゼ!

 

「……無事か!」「黒魔女!まだか!いつまでもあいつとレースやってらんねえぞ!」オヤブンは黒魔女の背後でのたうつ茨に挑発的ケモノサイン掲げながらどやした。「……見えた。目の前だ」果たして荒野のライディング・イクサは一旦の終着を迎えようとしていた。

 

「……オイオイマジか!」「「アイエエーーッ!」」振り向いたガボンガの前方、フルスピードで走るクレイジー・ビーストの行く先は荒野に聳える丘陵部!仰角のきつい城壁めいた荒れ土の高斜面へ、巨獣は真正面から突っ込まんばかりに迫っていく!このままでは超質量衝突事故確実!停止!停止を!アブナイ!

 

「オイオイオイオイオイッ!」「「モウダメダー!」」「……やれ!」「ルオオオオオーーッ!」だがオヤブンたちの絶叫をかき消すように!手綱振るう黒魔女の決断的操獣は、咆哮上げる大饕獣を丘陵の横腹に突撃させた!KRAAAAAAASH!斜面大破崩落!「「アイエエエエエ――ア?エ?」」果たしてネギトロ事故起きず!巨獣は大空洞へ突入!

 

 油断無き洞察力、あるいは比類無きニンジャ動体視力持つ読者諸氏ならば、この刹那にきっと見えただろう。土塊の爆ぜた一瞬、露になって破砕されたコンクリート内壁に印されし、フジの山頂に聳えるトリイの意匠を。それが『白き森』の前身たる電子要塞の由緒だった。

 

「――アッ建物!?」「相変わらず無茶苦茶やりやがるゥー……!」「AARGHHHHH!」広大な搬入路らしきトンネル通路を響かせる巨獣の足音、そして追う茨の呪詛の声!「ところでアイツはどうするんでさ!」「このまま追わせとけ!」「……終わらせてみせる」遂に迫る罪の終わりを、因果の果てを間近に、黒魔女は内なるセイシンテキを、カラテを、そして師と姉たちの意思を巡らせた。

 

「……バカ共」

 

「「「「「ハイ!」」」」」

 

「……私たちを見届けてくれ」

 

「「「「「ヨロコンデー!」」」」」

 

 かつて世界を手中に収めんとした伝説的メガコーポが築いた伏魔殿へ、故郷へ、かくして黒魔女と悪鬼共は決断的エントリーを果たした。旧時代の陰謀も、現支配者たる茨の悪魔の描く絵図も、明日をも知れぬアウトロー達には関係無い。ただ貫くのみ。

 

「俺達バッド・アス!」

 

「「「「「「ゴブリンライダーズ」」」」」」!

 

 自らの意思を、復讐の意思を――己がエゴを貫き通すのみ!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 『白き森』の深部、遂に火蓋切られたディアベルゼとアザミナのイクサは既に超速応酬!かたやこの世ならざる茨を生やし!かたやモータルの無念を燃料に!世界から隔離されてきた暗黒空間にて、オヒガンのジツとカラテは激しく衝突する!

 

「イヤーッ!」右手輝かせるディアベルゼは身に宿すソウルをさらに燃やして超自然加速!蒼白の眩い残像が、黒紫の閃光が、相対する者の視界とニューロンに焼き付く!彼女のジツのリソースたる死霊が止め処なく溢れる、この贖罪の空間だからこそ可能な芸当!

 

 贖罪薊薊贖罪!対してアザミナ!転移回避に頼らずその身を構成する茨蔦を周囲360度に張り巡らす!繁茂する棘LANケーブルはさらに枝分かれ増殖を続け異常成長!常人がひとたび巻き込まれれば、魂を縛られ、永遠に茨の操り人形へと変えられる悍ましき隷属の鉄条網!

 

「DAMN!」ZZZZTT!紫光迸らせ白魔女が宙で躍る!茨の間をすり抜け、蔦が捉えるよりも速く、モーリアンの致命光を茨に逆流させてアザミナへ向ける!「イヤーッ!」アザミナは蔦を自切してニューロン焼く光をアース接地めいて分散!驚異的反射速度で白魔女のカウンターを更に触腕鞭打でカウンター迎撃!「ンアーッ!」

 

 KBAMN!「イヤーッ!」ディアベルゼは吹き飛びながら無理矢理に空中で姿勢制御、飛ばされた先のサーバーをトライアングル・リープで蹴り壊しながら再度加速急襲!「イヤーッ!」KBAMN!アザミナの迎撃を受ける直前で重ねて蒼白光エンハンス強めて死角へ回り込み、延髄をボー打撃!「グワーッ!」

 

「……フォホホホ……奸婦の童が、存外耐えおるわ」再度光纏い、仕切り直しに距離取った白魔女へ、アザミナは意外そうに吐き捨てた。これまでのカラテの応酬、身体には蒼白に光る傷が彼方此方に残る。ディアベルゼが刻みし、モータルの怨念の瑕疵。「だが芯に届いておらぬぞ」その光は刻一刻と弱まっていく。

 

「……あれだけセンセイの力で焼いてるのに……少しは堪えなさいよ!」再度身体から茨茂らせる悪魔へ、ディアベルゼは辟易としていた。ここまでの大敵との接近戦、全身は既に棘傷に塗れ、彼女の白装束に赤染みを作る。極限までジツで身体強化し、茨を掻い潜り続けてなお、本体への肝心のダメージは軽微。見かけ上は悪魔に喰らい付いている彼女だが、その実態はジリー・プアー(徐々に不利)。茨の犠牲となった人々の魂が彼女のジツへ力齎しているように、この『森』そのものが悪魔のパワーリソースとなっていることはもはや自明だった。

 

 キャバAAAARGHHHHHHHHン!施設全体で続けられている謎の演算も、新たな段階へ進んだことを冒涜的に告げる。(((これも放っておいたら絶対にマズい……!止める?ハックでもする?アハ……!サーバー1、2台壊したところで止まるワケ――そもそもコイツを無視できないし……コイツがそんなヒマくれるワケ無い!)))察するにこれら冒涜UNIXの稼働が最終盤まで進んだ時が『我が事の成就』とやらか。そうなれば確実にフーリンカザンは覆せず、敗北は必至。ニューロンの速度で彼女は覚悟した。

 

「つくづく無謀を好む娘御よ。力とな?その我がジツの歪みし様が力てか!フォホホホ!」アザミナは失望と怒りの混じった嘲笑を上げた。「やはりヨウマは無能者よ。悠久を恣にする、我が力をモータル共の次元に貶めおって。ゆえに貴様の如き綻びが起きるのだ」茨で指差す先、ディアベルゼの装束に生じる解れ。解れは広がり綻びに、そして罅に。

 

「分かるぞ。貴様は先より無茶を通している。その身……既に揺り戻しが深刻であろう」「……アハ!だから何?ハイそうですかって出し惜しみする理由になる?」白磁器瑕疵めいて装束から肉体の各所にまで侵食するひび割れの実在を確かに感じながら、白魔女は虚勢を啖呵切る。

 

 幾千の魂をその身に宿し使役するジツ。本来ヒト一人という器は、数多の本質情報を収めるにはあまりにも小さく、脆い。ましてそれらの魂全てが恨みや怒りという巨大で強大なる情念に駆られ続けているともなれば、そのフィードバックの甚大さ、到底推し量れぬ。

 

「……不毛ではないか。貴様がブザマな無駄死にを晒したところで、我が無欠なる薊には届くまいて」痛々しい白魔女の様相に、悪魔は憐憫すら漂わせて甘言をほざいた。「じきに砕け散るその身、再び我が手に委ねよ。さすれば斯様な欠けなど無縁の、永遠を生きられようぞ」「……イヤァーッ!」KBAMN!「ナ!メ!ル!ナ!」またも激情炎上!迸る光が暗き『森』を蒼白に染める!

 

「イヤーッ!」薊贖罪薊薊。宙を蹴り飛ぶディアベルゼの前方、茨の高密度攻性防壁が生長!「イヤーッ!」杖先にジツのエンハンス光集めて一閃!横薙ぎされた蔦が白々と燃え萎びる!ピシリ、身体のヒビは更に微細に枝分かれる!目に見える破滅への兆し!「……イヤーッ!」だが全ては過去から今!未来など……とうに捨てている!

 

「イヤーッ!」切り開いた先、アザミナは水平互い違いに掌かざし、罪の茨十字を解き放つ!薊薊薊!「イヤーッ!」KBAMN!白魔女は至近距離射出された地対空3WAY冒涜スリケンを、空中クイックブーストでアザミナの足元へ潜り込むように回避!ヒビ成長!

 

「DAMN!」大魔女宿る右腕、モーリアンで脚部茨を鷲掴む!ZZZTT!「グワーッ……イヤーッ!」黒紫光が中枢へ達する前にアザミナは脚部切り離し、新たな蔦を脚と為して前蹴る!「ンアーッ!……イヤーッ!」KBAMN!背面で死霊を爆発させ、吹き飛びを打ち消しながら右拳!「グワーッ!」肉体のヒビ、更に細かく!関せずワン・インチ応酬突入!

 

「イヤーッ!」「グワーッ……イヤーッ!」「ンアーッ!……イヤーッ!」「グワーッ……イヤーッ!」「ンアーッ!……イヤーッ!」「グワーッ……イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 蔦と拳!茨と杖!冒涜と怨嗟!カラテとカラテ!相容れぬ両者がぶつかる度にヒビ、ヒビ、ヒビ!アザミナへ蒼白の傷が撃ち込まれる度古傷が輝き失う一方、ディアベルゼの身体からは光が零れゆく!緩やかな自壊を喰いしばり応酬続行!

 

「イヤーッ!」「グワーッ……イヤーッ!」「ンアーッ!……DAMN!」「グワーッ……イヤーッ!」「ンアーッ!……イヤーッ!」「グワーッ……イヤーッ!」薊!「ンアーッ!」だが制するは――悪魔!

 

「ウ……ウァ……!」白魔女の背と両腕に聖痕めいて突き刺さる――茨の十字星!「……まこと見るに堪えぬ足掻きよ」先の対空茨スリケンは白魔女の背後空中で回転静止し続け、然る今、彼女へと襲い掛かった!「だがこれで再び捕らえた。我が茨の生半に外れぬことは、よう知っておろう」贖罪薊薊贖罪!「ウ……!ンーッ……!」背中から両腕に掛けて茨が芽吹き、生長した蔦は白魔女を磔に吊り上げる。

 

「改めて、貴様は殺さぬ。死ねると思うのかと、問うたであろう」宙に磔の白魔女を、悪魔は相変わらずの超越者然とした嘲りの眼で見上げた。「ヨウマよ。この身の深底に沈めし忌まわしき不肖よ。リゼットよ。愛しき我が傀儡よ。貴様等にはこれよりの行く末をつぶさに、永遠に見届けてもらう。それこそ我が復讐なれば」偏執!

 

「悪趣味……ンアーッ……!ア゛ァ……ア……!」贖罪薊贖罪。その身に刺さる棘蔦がさらに奥、魂縛ろうとニューロンへと伸び育つ!だが痛みのみ……今のところは。「……フン……相変わらずの守られようよ。ヨウマ、貴様のしぶとさと寵愛ぶりにもほとほと飽いた」白魔女のニューロン強固に守り続けるディアベル=センセイのジツと意思!その身悪魔に堕ちてなお、愛弟子を生へとしがみ付かせる!

 

「……だが肉の守りのウカツも相変わらずよの?」「……!」悪辣な笑みで仄めかす!意思宿したまま隷属を強いられしあの日々を、またも白魔女になぞらせる気か!「イヤ……ンアーッ!」贖罪薊贖罪!「オット。また抜け出されてはかなわん。煩わせるなよ」茨が絡みジツ行使不発!反面、反動のヒビ割れは更に深く!

 

「諦めよ。貴様一人でどうにもできんことを受け入れよ。定命共は隷僕の身の程を諦め受け入れておればよいのだ」贖罪薊贖罪贖罪薊薊贖罪。世よ!慈悲は無いのか!決死の抵抗も空しく、白魔女の心身はまたも罪の茨の中に――01罪01贖罪薊11薊贖110罪。

 

「……何?」訝しむアザミナの頭上、ディアベルゼの懐より抜け出る赤紫の何か。端緒不明の『罪宝』の化身、ポプルス。「……覚めるのが……遅いわよ……」宙に浮く謎めいた01存在は、その額の蛇眼で真っ直ぐに磔の魔女を見る。果たして白魔女も蛇眼を凝視し――その奥で止め処なくうねる夥しい01の怨嗟を焼き付けた。

 

「……アハ……やっぱり貴方達も憎いのね……いいわ……全部背負うわ……!」KBAMN!「だから全部……頂戴!」ディアベルゼは瞬間死霊発光!それに反応してか、蛇眼の化身の宝玉眼は赫々と輝き!やがて漏れ出た怨嗟の01は巨龍の幻影と化し!「ROARRRRRRR!」茨ごと喰らった!白魔女を!

 

「……ほう」悪魔がどこか含みある風に口角上げる眼前!01原罪101原罪11101原罪0101原罪0111。蒼白と黒紫!巡る『罪宝』の輝きは、白魔女を呑み込んだオヒガンと01の怨嗟は混ざり合って再構成し――。

 

「――DOOOOOOOOOOOOOM!」閉鎖空間の高天井を衝かんばかりの有翼の白蛇龍となって咆哮した!「……何とも。何とも――」巨龍の眼下、アザミナを捉える額の血赤蛇眼の輝き!これぞ白魔女の切り札!黒魔女より簒奪した古の『罪宝』を依り代に――否、自らが怨嗟の依り代となって罪を晴らす、自己犠牲的贖罪の龍ヘンゲ!

 

「DOOOOOOOOOOOOOM――!」ディアベルゼ――今や蛇眼の原罪龍――は咆哮と共に力溜めるように蜷局巻いて大翼で身を包み――!その身を満たす恨みの全てを罪の光に変え――!「――DAMNED!」ヒサツ・ワザを解き放った!キャバAAAARGHHHHHHHHン!

 

KBAMN!KBAMNKBAMNKBAMN!KRA-TOOOM!

 

 『森』にかつての白きを取り戻させるほどの凄まじき閃光爆発の嵐!嵐!嵐!罪の力のみを焼き消す反逆の重暗い情念の輝きが!周囲の全てを照らし満ちる!目視困難!

 

01原罪1100001原罪1110010111001原罪0101011101010010原罪011110010101011

 

「……」やがて暗がりに晴れた視界、光は深淵の如き闇の中へ消え、その中心――茨に貫かれた蛇龍の巨体は、ガラス細工めいて砕け散った。

 

「――何とも快なる哉」「――ア……アァ……」割れた大蛇の躯体からまろび出、床に伏して呻くは白魔女、ディアベルゼ。届かなかった?自身の渾身の策も悪魔の前には――?悪魔――そこに先ほどまでの仇敵の姿は無かった。

 

01贖罪1薊00贖罪薊原罪原罪贖罪薊贖罪薊薊贖罪薊薊贖罪贖罪贖罪薊贖罪薊薊薊贖罪贖罪薊薊薊

 

「フォホホホホ……フォホホホホホホホ!」それはマンダラから抜け出てきた聖人画めいて空中浮遊する――黄金の棘を茂らせる熟れた薊めいた深紅の大花から、黒緑の茨躯体を生じさせる異形――邪なる聖。

 

「ヨウマよ。貴様のくだらん手慰みも、我が身の助けとなったことには礼を言うぞ。あるべき姿にこれで近付いた」地に這いつくばる白魔女の周囲、サーバーから伸びるLAN茨は、繋がる本体の嘲りを代弁するようにざわめき生い茂った。額に生じた第三の眼を妖光に輝かせ、胸元の空洞に悍ましい果実を脈打たせる薊の化身の姿に、最早依り代たるディアベルの面影は無い。

 

「懐かしきはそこの獣もよ。見てくれこそ違うが、その内にいる惨めな虫共の嘆き、忘れもせん。それを貴様が引き合わせたとは、何とも因果よの」「ウ……!」縛られたディアベルゼの横倒しの視界、離れたところでまたも眠りにつくポプルスを見て、悪魔は懐古的愉悦に耽った。

 

「貴様の師も知らぬ遠き日よ。定命共を侍らせて守護気取りのつまらぬ長虫がおってな、彼奴の民草諸共、試しに我が薊で祝福してやったものよ。あの駄蛇――名など知らぬ、どうでもよい。奴め、庇護していた者共すら嬉々と喰ろうておったわ!フォホホホホ!」

 

 瞬間、縛られた白魔女の脳裏に茨の回想が幻燈めいて焼き付く!贖罪薊古代薊薊贖罪王国贖罪蛇眼薊贖罪炎龍薊贖罪!龍めいた大蛇と崇める人々!取り囲む黄金の茨!天より見下ろす幻想の魔眼!やがて伝染する殺戮と狂気……陥落……!

 

「……こんなマネしといて……お前は聖人気取り……!?笑えない……!」「いかにも我こそ聖也」当然だと言わんばかりの声色で悪魔は返した。「生くる者皆、業に塗れたソウルから生ずる罪人也。それを雪ぎて純な器とする我こそ貴き者よ」なんたる狂気!反聖人!ゆえに殆ど聖人!そう言わんばかりの狂気的欺瞞詭弁!

 

「貴女は……これから……何する気……!」「無論、過ぎ去りし千年を我が手の内に」息も絶え絶えの白魔女の問に、邪悪は喜色に声色弾ませた。「……我がこの地に目覚め十の年月が経つ。千年の忌わしき微睡より長き日々よ。だが今日よ。我をこの地に縛る忌々しき呪いを今日断ち切り、新たな地にて今一度我が聖を、生を全うする」聖を僭称する悪魔はどこか恍惚とした様子だった。

 

「我をつまらぬ深みに押し遣る暇、ヨウマはくだらぬ物見遊山に出ておった。この身が追憶しておるわ」再びディアベルゼのニューロンに混線する、茨が思い描く邪悪なる情景!同じく垣間見ることになる読者諸氏は覚悟を!

 

 薊ネオン贖罪贖罪薊ツェッペリン薊凄高(スゴイタカイ)摩天楼贖罪ジグラット贖罪薊贖罪!ここより遥か遠く極東の地、あらゆる欲望渦巻く現代文明の埼!そこに繁茂する茨蔦!黒緑の罪禍に蝕まれし人々!全てを見下ろす罪の聖人!「実に貪婪で罪に塗れた地ではないか。定命共が群れるほど雪ぐ罪も深い。ゆえに新しき千年、我が聖行の始まりはこの地とする。モータル共の甲斐甲斐しく築いた櫓も誂え向きの祭壇、我が君臨に相応しき神座よ!」

 

「……!」遂に明かされた悪魔の目論見に白魔女は絶句した。この悪魔は『森』を出る気だ。ここに飽き足らず、現代文明の織り成す混沌すらも、全てを永遠に呑み込んで支配する気だ。古代にこれと同等の邪悪が、また抗する者がどれほど存在していたかは知らぬ。同様に蘇っているやもしれぬ。それでも今!これを止めなくては!自らに起きた悲劇など比べ物にならない破局が確実にひとつ!世界に解き放たれる!

 

(((――DAMN……)))だが、ディアベルゼはもう動けなかった。身を縛る茨を振り切る力も、怒りを燃やす光も既にない。亀裂の広がり続ける身体からは、光と共に割れ陶器人形めいて欠片が零れるばかりだった。

 

「真なる我が身を取り戻した先、いずれ我は神をも超えた神へ、父祖すらも超越する。あまねく咎人共に千年の繁栄を、滅びなど無き永遠の隷属をくれてやる。貴様はその自我擦り切れるまで、我が聖行をさやかに刻むのだ。……その様子では生半には壊れぬだろうがな!ヨウマも良き玩具を遺しよる!フォホホホホ!」「……ア……アァ――」

 

「――アス……テーリャ……」果たして恐ろしき邪悪を前に、満身創痍の白魔女が縋る様に紡いだのは妹の名だった。「……ああ、つまらぬ木っ端はもう一匹いなんだか」果たして邪悪は、白魔女へ追い討つように悪辣な笑みを向けた。「あ奴には会わせてやったぞ。貴様の愛する姉弟子共をな」

 

「……ッ!外道……!この……!……ウゥ……!」「その後は知らぬがな。所詮奴ばらは骸、我に寄越せる眼も既に無いゆえに。……思えば、あれは何とも己の無き、情け弱き娘御だったな?我が解き放たれた所以も、貴様のウカツだけではあるまい?」饒舌な嘲りは白魔女をなお苛む。

 

「あるいはあの童は生き汚く殺したのやもしれぬぞ?再び……自らのウカツで死なせた姉共を再び!フォホ!フォホホ!フォホホホホ!」「……!ウ……ウゥ……!ウ……ァ……」怒り。悔恨。罪悪のどす黒い情念が再び肉体を再起させようと燃えど、跳ね起きるのは意識だけだった。最早ひとりでは何もできなかった。

 

「……さて。貴様のその眺めも飽いた折、我アザミナの名の下に、聖別を今一度くれてやろう」邪悪極まる嘲笑を浮かべ、聖アザミナはその触手を白魔女へ伸ばす。「貴様らも、そしてヨウマも、所詮はモータルのままよ。くだらぬ感傷などに囚われブザマに果てる――このようにな!」

 

(((……あぁ、ここで姉さん達と会わなくて良かったなんて思ってたのが情けない。あの子はどうしたんだろう。復讐なんて、責任なんてあの子に無いのに……アステーリャ……シルヴィ……ルシア……センセイ。あぁ――)))再び迫る自己の終わりに、永遠の冒涜の始まりに、ソーマトの揺り戻しめいて凝る時の中、ディアベルゼは――。(((――ナンデ)))家族、そして自らへ問うた。

 

(((ナンデ私は、結局果たせないのかな。誰も救えないのかな。償えないのかな。それとも償おうだなんて思うことが間違っていたのかな)))

 

 ――生き延びろ。今から私はお前達で、お前達は私だ。

 

(((ごめんなさいセンセイ。私はセンセイには成れなかったみたい)))

 

 魔女は地に伏せ、理不尽を呪った。不条理を嘆いた。そこへ終わりが「――イヤーッ!」――黒が来た。

 

「…………ナンデ」

 

 魔女は地に立ち、理不尽を斬った。不条理を叩いた。終わりを迎えんとしている白のもとへ来た。

 

「…………ナンデ来たのよ――」

 

 魔女は――白魔女は黒に包まれた。暖かな黒爪に、黒翼に、懐かしい抱擁に包まれた。

 

「――アステーリャ……!」

 

 魔女は――。

 

「――その名前で呼ぶな……」

 

 ――黒魔女は、もうひとりのディアベルは、友愛を胸に、姉の前に立った。

 

「貴様――」

 

「……ドーモ、アザミナ=サン――」

 

 ――黒魔女は、断罪の『罪宝狩り』は、怒りを復讐の刃に、怨敵の前に立ちはだかった。

 

「――ディアベルスターです」

 

「フィリアス・ディアベル」終わり

「ディアベルスター・ヴェンジェンス」に続く




読んでいただきアリガトゴザイマスドスエ!

 次回よりいよいよ始まる最終決戦、ガンバルゾー!ガンバルゾー!唐突に変な茨の標的にされたネオサイタマ、コトダマとかケモチャンとかシーライフとかのなんかに包まれてあれ……。でもカスミガセキジグラットの上でひかる贖罪神女は割と見てみたいかもしれない。
 そして気付けばマスターデュエルにもついに白き森追加がやって来て感無量です。黒魔女のメイトまで来ると思わなかった……カッコカワイイヤッター!
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