忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ 作:亜面瞳頭
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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
贖罪薊薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊薊贖罪贖罪贖罪薊贖罪薊贖罪薊薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪
「――ア……アァ」ひどく渇いた身体が、手足を動かそうとまた震えた。痛むのがどの傷か、もう分からない。うつ伏せに腹這う熱砂は、だが冷たく、細く血の轍に染まっていた。もう限界だった。……ナンデ?今にも潰えそうな命は、心底から自らを取り巻く世界の全てにそう問い続けた。
やがて眼の前には砂漠に似つかわしくない絢爛の花園。この世ならざる美しい風景――アノヨ?遂に苦しみから解放されたか?「――手間掛けさせてんじゃねえよクソが」「ガ……ッ」無論、未だ現実はそのままに、世界は残酷だった。
「綺麗なモン見ながらくたばろうってか、エエッ?」頭を踏む奴隷商が、彼女の世界の全てだった。肉親など……味方などおらず、ただ独り世界から逃れようとして……無力だった。「――ナンデ……」ナンデ。ナンデこんな目に遭っている?どうして生まれた時から蔑まれる?ナンデ生まれて――何のために生まれてきた?「……お前死ぬ為に生まれてきたんだよ」「ウ、ウゥ……」彼女の心中など知りもしない男の、だがこれ以上なく突き刺さる物言いに、ただ恐れ、打ち震えることしかできなかった。
「物乞いにもなれねえ。……穴も乾いてら、そのナリじゃ『使われる』こともねぇ。何もできねえ、誰も望んでねえ。砂の上で干からびるだけのクズ肉、それがお前」何も持ち得ず生まれ、何も得ぬまま死んでいく。そうした理不尽に何故を唱えたところで、世界はどこまでも渇いたまま。
「ナンデ……」それでも彼女は、不条理に何故を問わずにはいられなかった。こんな死の先に救いなどあるものか。生が――強く満ち溢れる生が欲しかった。生が――生きたかった。「ナンデ……!」ナンデ……ナンデ死なねばならない?「もう喋んな。在庫処分してやる」ナンデ――。
「――アバッ……」
砂地に響くはずだった断末魔は、だが彼女の頭上から聞こえた。自身の横にくずおれた屍から芽吹く超自然的美は、その醜さを存在定義から書き換えるかのように、花と咲いた。
「……例え儚き命なれど、我が園汚す虫に持ち合わせる慈悲は無い」「……!」「……愛しい萌芽よ。恐れる事はありません。望むならば、私の下で生きるのです」頭上からの声は、差し伸べられた手は、今の今まで自らを虐げていた者を物言わぬ花に変えた手は――理不尽を更にその下に敷く不可抗力は――慈愛に満ちて、強く、温かかった。……その生を、強さを、彼女は心から渇望した。
シンフルスポイル・サンクティフィケイション
「――ニンジャとは徒花のようなものです」
遥かなる砂漠の大河の畔、千々の花々咲き誇り、水場には奥ゆかしくも大輪の
「次代を遺せず、文明の栄華を極めど悠久には決して届かない。我らが生は華やかなれど、それは大地や星々の紡ぐ歴史から見れば一瞬の輝きでしょう。つまる畢竟、我々とて
無欠のウジャト。オヒガンの神秘に精通し、黄泉還りのジツすら宿すとまで噂された神代のニンジャ。時に神人とすら称された師は、そのような大仰な外聞とは裏腹に、超越者にしては幾分奥ゆかしくあった。言うも憚られる蔑みの忌み名――浅み名以外の何も持ちえず生まれた彼女すらも受け入れたように。
「……それにしても、あまねく花々の何たる愛しきこと……特に
「……わたしのような穢れには……似合いません」師より手折られた一輪を、だが彼女は厭わしく一瞥し、足元の棘草を見やった。「それは
忌み子と蔑まれ捨てられ、終ぞ奴隷にもなれず、渇き死にゆくだけの孤児を、師が拾い育てたのは気まぐれか、それとも如何な思惑あってか。兎も角、何も為せぬまま費えるはずだった生を上位者の愛の下に救われた彼女は、虐げられし過去を厭うようにウジャトへ師事した。そうして生半にはいかぬ必死の苦行の末、遂に門下に成った。
「――努々忘れぬことです。ニンジャたる我らが境地は決して極致などではありません。貴女という存在は今ここに始まるのです」カイデンの折、師は花と共に言葉を彼女へ贈った。それは彼女が成った証明、メンキョにして、いつかの自分との別離の証だった。それでも――。「――いつかは枯れてしまう……」「未来を恐れるはヒトの善き性でしょう」彼女が漏らした過去よりの諦観さえも、超越の神人は優しく併せ呑んだ。
「貴女の考えに間違いはありません。それでも、いずれ滅びることを、永遠ならぬことを嘆く必要はありませんよ。オヒガン――人々が言うところの冥界やアノヨとは、思われているほどの場所ではないのかもしれませんから。それに、たとえ実が成らずとも、花の美しきは受け継がれるものです。我々の意志もまた同じなのですよ。
「……」「恐れも迷いも、ずっと貴女と共にあるものでしょう。悪しきものと切り捨てるか、善き糧と捉えるか、全ては貴女次第ですよ」「……ハイ……センセイ……!」
思えば苦節に満ちた生を歩んできた。人智を超えた今、それも遠い過去となろうか。やがて師の下でジツの完全たるを極めた先、いずれ大いに強き生を全う出来ると思えば、心身は快い全能感に満たされた。師の言う、果て無くも儚い、輝ける生の道程を、そうして歩み始め薊贖罪薊薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊贖罪薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪薊薊贖罪薊贖罪贖罪薊
薊贖罪薊薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊薊贖罪薊薊贖罪薊贖罪贖罪薊「――貴様、名は何だったか……まあどうでもよい。我が王と貴様の師が結んだ約定ゆえ、貴様は生かされるのだ。せいぜい惨めな生を噛み締めよ。見届けしものを……我らが王に牙剥くこと、我らが神に弓引くことの愚かさ、愚かの末路を、努々忘れるな」
果たして歩んだ一歩先、不条理の闇が大口を開けていた。
「あ、あぁ……」
師だったものが砂漠の慈雨めいて赤々と降り注ぐ中、去り行く相手方の立会人の侮蔑が揺らぐニューロンに残響する中、砂上の桟敷は異様なまでに冷たく感じた。眼前、砂塵切り裂き立ち昇る大嵐の最中で、華と咲いた爆発四散は鮮烈に美しく、そして無常だった。
「あぁ……あァ……!センセイ――師……師よ……!師ッ……死ィ……!あ……あァ――」
王たる破壊の嵐は、絢爛の園を、そして師を、微塵すら残さず無に帰した。イクサの跡地、赤く染まった生温かな砂は、いくら掬えど両の手から無情に零れ落ちるばかりだった。
「――ああ゛あ゛ああああああァァァAAAAARGHHHHHHHHHHHHHH!」
とうに風凪ぎ、真赤に渇いた大地の只中で、慟哭はいつまでも続いた。真偽が何であれ、公に取り決められたイクサの正否を問うは、死した者の名誉すらも損なう冒涜的行い。それでも理不尽に叫ばずにはいられなかった。そして静まり返った砂漠の中では、それすらもしじまの向こうへ呑み込まれていくばかりだった。
師は――ウジャト・ニンジャは熱砂の中、原初の風塵へ散った。敗れ滅んだのだ。正当なるタチアイ・イクサの謀り――父祖神への大逆者を粛正せんとする
「――ナンデ……」
志半ばで見捨てられし者となった彼女を取り巻いたのは絶望、そして克服したはずの恐怖だった。自らを取り巻く世界の果てしない理不尽への畏れ。人智を超えし者へ成って尚、自らが不条理を敷く側へ回って尚、自身は更なる上位者の設ける、どこまでも長き鎖に繋がれ、どこまでも広き檻の中に囚われる。師を葬りしニンジャはそれを言外に思い知らせた。
ナンデ……ナンデ……ナンデ……ナンデ――。
やがて胸中を埋め尽くした不条理への猜疑と恐怖の言葉は、自らと、果たして誰に向けたものだったか。確かなことは、既に塵と消え去った師は、それに応えてなどくれなかった。気付けば立ち尽くす砂漠の夜は、腥風血雨の跡を見下ろす月は、どこまでも彼女に冷たく言葉無く、理不尽に呑まれるがままを強いた。理不尽への恐怖はいつまでも――。
「ナンデ……!」
父祖たるカツ・ワンソー……!混沌たる原初のヌンジャ――神よ!何故私はここにいる!?何故生きたいだけで不条理に苛まれる!?私からこの上何を奪う!?私が何をした!?生きることが罪だと言うか!?私はどうしたらいい!?答えろ!答えてみろ!何故……!何故――!
理不尽への恐怖はいつまでも――。
「ナンデ……!ナンデ……!ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ――」
理不尽への恐怖はいつまでも――いつしか――。
「――ナンデだと?」
贖罪。やがて心象の砂漠で花は咲いた。死の跡に、師の血濡れに赫々と咲き誇るそれは、神聖にして再生の象徴たる睡蓮――否。報復の権化たる孤高の棘花……薊。辺りを埋め尽くす、屍肉溢れる血溜まりから妖花が芽吹く原風景の中で、理不尽への恐怖はいつしか――止め処ない憤怒に塗り替わった。
何故踏みにじられねばならん?何故惨めな自己問答などせねばならん?何故だ?何故?何故?何故……!?何故……!何故……!何故――。
「――あぁ……そうか。全ては――」
これ以上失う物など何もなかった。全て奪われ失った――ただ一つを除いて。他者を否定し、客我を顧みず、世界を自我のままに書き換える為の確固たる内なる力。自らの生を、自己を貫き押し通す為の強烈なるエゴの表出――カラテあるのみ。
かくして一人の奪われし者がここに堕ちた。彼女は決めた。身を窶してでも、生まれの地を捨ててでも、如何な雌伏を経てでも、生き延びると。成ると誓った。全てを奪い返し奪い尽くす簒奪者に。あまねく理不尽を踏み敷く復讐者に。生死すら超越した久遠の絶対者にして――何もかもを支配する上位者に。
徒花だと?なれば挿してでも……接いででも――接がせてでも。
尽くす手は選ばなかった。父祖の最初の使徒たちの直系、まつろわぬハヤシの門弟に、魔女たる異端の源流クロヤギの系譜に、クランから袂分かつシの眷属にすら取り入った。そうして彼らから簒奪した秘術の一部をも苗床に、彼女のエゴの表れは――冒涜のシンフルスポイル・ジツは、悍ましき聖なる
「――アバババババーッ!」永い時が経ち、遂に彼女は奪うことを始めた。手始めは自らと何の因果も無き国だった。「アバ――AARGHHHHH!」「アイエエエエッ!」ヒトの内にある生を定義する何か――魂と肉体の接続を断ち切り抜き取ると、屍は独りでに歪んだ形になる。自らの茨はそれを使役し、宿る形失った魂すらも、更なる生を害する呪い振りまくものへと変質させることができる。やがて屍から屍へ、伝播する薊の力は全てを呑み込み、あまねく生命が冒涜の軍勢へ変わる。報復の生を歩む先で自らモノにした、貴き力だった。
「――グワーッ……!何故……」やがて相対した国統べるもの、蛇の眼宿すニンジャは、それを慕う配下は、散り際に滑稽なまでに、そして不快なまでに問うた。「何故貴様は斯様な真似が出来る……!?我等は只ここに生きるだけだ……!何故……!何故――!」「ナンデ?」虐げし者共の嘆きはかつての自らと重なり、「弱者ナンデ?」都度臓腑が煮え滾った。
「浅ましき駄蛇。力無き者共を囲いて何を為す?なればその腹の内で虫共と一つに……久遠に慰め合うがいい」「グワアアアAARGHHHHHH――GROWLLLLL……!」「我が君ッ!どうか――アバーッ!」「ROAAAAAAAARRRR!」「「「アイエエエエーーーッ!」」」
魂宿す生者である限り――ニンジャでさえ――薊の力には無力だった。定命の者のそれとは比べるべくもなく強き生……肉体を、ソウルを、冒し歪ませる度に腹の底から愉悦が湧いた。「ナンデ……」「ニンジャナンデ……」「ナンデ……」「アァ……アー……フォホ――フォホホホホホ……!」周囲の絶望も、最期の最期に見せた怨嗟も、また遥かに良かった。そうした原罪の味は、初めての蹂躙の悦楽は、恐ろしくも悍ましくも甘美で――忘れる事など出来なかった。
名など要らぬ。全て奪い嘲る我には、忌まわしき
かつての師より授かった名などとうに捨て、自らが為に他者を
――全ては弱きゆえ。あまねく罪の全ては弱きゆえ。弱きは罪。踏みにじられることは罪。弱者であることは罪。生まれ持っての罪。弱きが生きる、それこそ生きとし生けるものの大罪。この御業でもってその魂を解き放つこそが罪を贖う唯一つの道。
自らの正統性を欺瞞する自己陶酔のひとり問答の中で、やがて狂気は醸成されていく。それを咎め正す者は誰一人として存在しなかった。彼女は独り歩み続けたゆえに。立ち塞がる何もかもを独り冒涜し続けたゆえに。
ただ一つ冒涜者を苛むものがあるとすれば、己自身の力であった。異種のジツの要素を、歪な継ぎ接ぎめいて無理矢理に取り込んでいる身……悍ましい禁忌の力に、自らが次第に衰え朽ちていくのは確実だった。……だが、邪悪なる茨の芽はここで潰えなかった。
その後、彼女は師を、かつての教えを、最悪の形でなぞった。門下を設け、寄る辺無き者を甘言と共に拾い育て、そして受け継がせた――ただ自らを。彼らを自らへと変えた。他者など、肉体など、所詮は自らの永遠の為、体の良い器であり、あるいはひと時戯れる為の生き人形。そこに罪に塗れた弱き魂など不要なのだ。ドージョーも、他者も、何もかも、自らが自らであり続ける為の苗床でしかなかった。
極東の地で起きたムーホンの大イクサも、神殺しのその後、欺瞞に満ちた泰平も、彼女には些事だった。世がどうあろうと、他がどうなろうと、自らが自らであり続けること、それだけが彼女の意義にして本質だった。
幾星霜、幾度のノリウツリの繰り返し、ある時、特に有望な者を見出し、カラテとジツを授け、ヨウマの名を与えた。これまで通り、いつか自らの器とするために。そこに何の感慨も感傷も無かった。最早全ては、自ら以外の何もかもは些末事だった。
永遠であること、不滅こそが正にして聖、また生の在り方。滅べど受け継がれる意志……何たる惰弱……何たるくだらぬ感傷か。死ねば実際終わり。それを身をもって知らしめたのは……ウジャト……貴様ではないか……。
贖罪神女薊贖罪贖罪薊贖罪神女贖罪薊薊贖罪神女贖罪薊贖罪神女薊薊贖罪贖罪薊薊贖罪薊贖罪神女
「ドーモ――アザミ・ニンジャです」
神々しき冒涜の化身はついに真名をアイサツした。カイデン・ネームの開示、それすなわち偽り無き自己の表れ。たとえ相対する者が名うてのカイデン者であってもこの名に慄いただろう。アザミ、それは孤高にして不触。全てを拒み
(((ア……アァ……)))悪鬼が紅一点、ミアンダは天上の尊きもの、だが恐怖そのものに嗚咽しようとして、声が出せなかった。(((アタシいま体温何度あるのかな……?)))尋常ならざる存在格を間近に、彼女の身体は異様な寒気に震えていた。
(((ア……)))そして彼女は――彼女の身体は――祈った。床に這いつくばり、頭上で手を組み祈っていた。意思とは無関係に跪いていた。……彼女だけではない。病んだ聖光背負う神女を前に、ガボンガ除くゴブリン達が、各自のやり方で跪き、服従し、崇拝していた。
「オ、オイお前ら……!」「ボスゥー……ムリだ」ガボンガの狼狽えに、ダグは五体を戦慄かせながら床に擲ち、応えた。「オヤブン……俺らだってヤバイしおかしいと思ってますぜ……!」「でもどうしようもねぇんです……!こうしねぇとダメなんです……!」ブーンとクラッタもまた、畏怖に全身を引き攣らせて天上を仰ぎ見た。物理的・精神的ドゲザ。何者にも靡かぬはずの彼らが実際屈服するその様は、何よりもガボンガを揺さぶった。
「虫の心掛け、至極当然。なれど実に良き哉」定命者達を見下ろしながら、神女は慈しみの表情でいた。「――ッケンナ……」ガボンガの眼に映るソレは、先ほどまで相対していた者とは、悪辣極まる嘲笑浮かべていたアレとは、実際対極にいるかのような様相。……だがその内に宿る依然変わらぬ邪悪のあり様を、彼は否応にも感じ、「ザッケンナ……!」それにまた反逆の怒りを燃やした。
「また蘇ったら今度は神サマ気取りかオイッ!てめえもニンジャ……!所詮は俺と同じ!クソッタレた
「ボスゥーッ……!」「グワアァァァーーッ!ア……アグ……!」悪鬼の首領を貫いた棘星は着弾と共に芽吹き、茨蔦は貫きの軌跡を辿るように生長、その身を再度貫きながら磔刑めいて茂った。「だが弁えぬ獣にも祝福を与えるが慈悲よ」
(((クソ映画でも観てる気分だ)))朦朧とする意識の中でガボンガは毒づいた。どこで間違った?ワケの分からんアレに憑かれてケモノに、ニンジャになったあの日か?……いや、もっと前薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊生まれた時点で罪は薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊「――グワーッ!?」果て無き痛みと共に陥った、突如思考を塗り潰されるような感覚に、その身は激しく痙攣した。
「グワアアアアーーーッ!ア゛ア゛アアアアーーッ!」贖罪薊贖罪薊涜されるのは肉体だけでなく心すらも薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊。精神を、自我を、魂を、全てをあの贖罪神女の望むままに塗り潰され薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊薊贖罪薊贖罪薊謂れ無き罪の集合意識に贖罪薊贖罪薊薊贖罪薊取り込まれる。「アア゛アアア――AARGHHHHHH……!」やがてそれは唯一自らの罪を贖える存在への薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊絶対的な崇拝へと贖罪薊贖罪薊薊贖罪薊。
「しかし先の言は聞き捨てぬ」戒められし磔刑の獣を見下ろし、贖罪の化身は格の差を思い知らせる機微を暗に仄めかし、そして尊大に――だがその様に相応しく――物言った。
「我が身……
おお……おお……ALAS……ブッダ……ナムアミダブツ……!
「ア……アァ……」そしてリゼットはヒビ走る身体から最後の光を放とうと天へ腕かざし――しなだれた。アレを解き放ってしまった悔恨と、決して敵わぬことを本能的に理解させる畏怖に、そして肉体の限界に、遂に折れた。「愚かな娘御……委ねればその苦しみなど初めから無かったものを」アザミはその様に一瞥くれるも、無情だった。既にリゼットへの執着など超越しているようだった。
「罪は消えぬ。消せぬ。生くるモノの業とはあまねく全てに宿るもの。断てるものではない。しかして我が権能こそ、その贖罪を担うもの也」最早その手中に収めるは取るに足りぬ童ではない。地より崇める定命共、まつろわぬ獣、そして――この地の外に、世に生きる全て。全てが自らの永遠の生を飾る慰みものであり、永久の冒涜の中で寵愛せしものなのだ。
「この場の誰にも祝福を与えん。我が千年の始まり、その使徒として追随する栄誉を――」地に磔の獣を、ヒビ崩れゆく白魔女を覆う赤紫の――再定義の光。超越者はここでもうひとり取るに足りぬ者の、その不在に気付いた。無論、冒涜者の冒涜を咎められる者などこの場にいない――だが断罪者の断罪を、復讐者の復讐を咎める者も、また然り!
「――イヤァーッ……!」アザミのワンインチ距離、断罪の凶爪が空を裂く!「ドーモ……ディアベルスターです……!」超越の名乗りへ決断的アイサツ返す……すなわち未だ折れぬ意志の表れ……!
「……何が神だ……!何が贖罪だ……!ただ奪うだけのお前は……ただのニンジャだ……!」とうに限界迎えている黒魔女は、それでもエゴの中に満ちる怒りを燃料に爆ぜ飛び――アザミへ攻手が届いていない様を内心で訝しんだ。
「イヤァーッ……!」左爪!「イヤァーッ……!」右脚蹴撃!「イヤァーーッ……!」空中縦回転尾撃!……全て断てず――否、届かず!見えぬ壁が存在するかのように、その断罪の一撃の尽くがアザミの手前で弾かれ止まる!
「その無益な様も、今やいじらしきものよ」ディアベルスターの眼前、児戯見守るが如く、神女は緩やかに笑んだ。「貴様が継ぎし力……元を正せば我が物ぞ。かつての全盛すらも超えしこの身、受け売りの力如きで断てるものか」無情に幼子を諫めるような眼を浮かべ、アザミはその光背魔瞳の光強めた。「グ……グワーッ……!」抗う黒魔女は宙でその身痙攣させ、内側より金の茨生やしながら墜落していく……!何たる真なる力解き放ったリアルニンジャの不条理……!カラテ打ち合う土俵にすら立てぬとは……!
今やアザミに真の無欠齎すはディアベルの『森』に非ず……!後光の更に彼方より光差す、非現実領域に浮かぶ黄金の立方体……!大父祖の墓標より溢れ出る強大な理外の力が齎す不壊の身……神をも涜す罪の身……決して断てぬ!
「グ……ウゥ……!」地に墜ち伏せたディアベルスターは再度天を睨み、薊贖罪薊茨に自縄自縛され崩れゆく悪魔躯体をクッツキで繋ぎ贖罪薊贖罪薊薊身体動かそうと震わせた。(((動けッ……!まだ止めるな……!止まるな……!)))意志を薊贖罪保て。贖罪薊贖罪折れず立て。(((ナンデ……!)))電子コンマ000数秒の内で贖罪薊贖罪薊薊必死に己を強いるも薊贖罪意識ばかりが飛び出し贖罪薊薊そして不動の身体へ戻り続けた。
(((ナンデ私達は……!私は果たせない……!)))内で沸き上がり続けるは悔恨と憤怒のセンチメント薊贖罪薊贖罪贖罪薊贖罪薊そうしたニューロンを駆け巡る激情すらも薊贖罪薊薊贖罪謂れの無い罪悪の情と崇拝に薊贖罪薊贖罪薊贖罪薊上書き贖罪薊贖罪薊贖罪薊薊(((ナンデ……ナ……ンデ――)))そして黒魔女も沈黙薊贖罪薊薊贖罪薊薊。
……かくしてイクサはここに終結した。
「――これにて我が生阻む者無し……我こそ無欠也!」天より超越者を照らすは無限の力を、千年の栄光を、永遠の冒涜を齎す神の威光。その下に倒れ、あるいは跪く者がいるこの景色。我が身を崇める咎人共の様。それがいずれ万にも億にも倍化する様を、アザミは幻視していた。
この地にて為す事は最早無し。咎人共の肉体清め、魂無き聖徒へ変えた後、遂に拓かれし森の外へ、世界へ贖罪の版図を広げる。誰も罪に苛まれる事の無き永遠の繁栄へと、誰にも脅かされる事の無き千年支配へ。静寂に満ちるこの世ならざる風景の中、神女は狂気の栄光噛み締めるように冒涜の聖光を湛え続けていた。
嗚呼……!どこまでも神々しく……美しく――どこまでも恐ろしい……!今に欺瞞と邪悪に満ちた安寧が世界を覆い尽くす……!全ては止め処無き不条理のままに……!これぞ古事記に記されしマッポーカリプス、その一側面なのか……!
「――す……し……」
……だが待て!世よ、聞くがいい!
「――す……べし……」
突如森の静けさを切り裂くは、奈落の底より響き渡るような怨嗟の声!
「……滅……す……べし……」
果たして何から!?ゴブリン?否!
「「……滅ぼす……べし……!」」
白魔女から?否!
「「「……滅ぼすべし……!」」」
黒魔女から?否!
「何だ、これは」
アザミが無情を崩して見やる先、異様な光放つポプルスから!?否!
「「「「「「「罪……滅ぼすべし!」」」」」」」
その全てから!
「――貴様は……!」
その時、アザミは幻視を、だが確かに視た。倒れ伏す反逆者達の上で浮遊するポプルス――あの日原罪に涜した古のニンジャとその民、彼らの魂の成れの果て――それと共に並ぶ者の姿を。白く儚く、慈愛湛える異色の眼をした美しい女――かつて自らに最も近付きし門弟――ヨウマ・ニンジャを。彼女がその眼に決断的な悲哀と怒りを宿す様を!
011贖罪贖罪薊薊贖罪薊01010101001薊贖罪1010110011贖罪01010101101010100
(((――センセイ……貴女の力は……本当に斯様な救い齎すものなのですか……)))
(((――嘘を……!ならば何故……!何故貴女の周りの人々は……皆貴女を恨んでいるのですか……!)))
(((――我が師……貴女が世に齎すのは救いなどではなく……混沌と不条理です)))
『――師よ。どうぞ私を恨んでください。貴女の罪は私が継ぎ、共に背負います。……来たる日の贖罪を共に雪ぎましょう。……それまでどうか、暫く良く憩ってください。……その末に尚貴女が全てを涜すというのなら……きっと私が滅ぼします。それが我が宿命なれば』
011罪1010110101011罪01011001罪1010110011罪01010101011011罪101010100
冒涜の簒奪者よ!己を顧みよ!アザミはヨウマの力と旧世紀遺物をもって自らの肉体を取り戻し、その後、用済みとなった彼女の肉体と魂を捨てた――捨てた。捨ててしまった!自ら手放してしまった!白き森に満ちていた力の支配権を!だが捨てたその力……未だ消えず!
「……今更阻めるものか……!」アザミは自らの威光と拮抗するように光放つ、かつての弟子の意志を、今確かに感じていた。悪意すらも併せ呑む、慈悲に満ちたような白光――だが眼の前に映る光は、咎人達より立ち昇り燃え盛るは……それとは対極の……何たる破滅的な、赤紫の炎……!
解き放たれたディアベルの光は、原罪宝ポプルスの内で燻る原初の怨嗟と混ざり合い、反逆の魂達を再起させんと彼女らへ燃え移る!眼に見えぬ薊の権能のみを燃やすかのように煌々と爆ぜるそれは、やがて火の渦巻く中心――黒魔女へと集束!白き森の力は、今ここに、再びディアベルを継ぐ者へと渡ったのだ!
「「「「「「「罪滅ぼすべし!」」」」」」」
「……終わらせてやる」ジゴクめいた叫びとは裏腹に、再起したディアベルスターはゼンめいて揺るぎ無い精神の果て、最上の澄んだ明鏡止水の境地にいた。「お前の罪も……何もかも」神を僭称する憐れな復讐者を見据える彼女の眼にはどこか慈悲が――そして決断的感情の輝きがあった。
罪が消せぬというのなら……断てぬというのなら――滅ぼすまで!
「ヨウマの童……!今や我が聖行の
「そうだ……!全て終わるまで……!」果たしてディアベルの子は、邪悪の神聖に抗う全ての魂は、不撓!「グワーッ!?」神女を怯ませる程に眩く爆ぜる光は、邪悪極まる聖なる薊を、冒涜のジツを、全て超自然の火の内に燃やし尽くす……!燃え盛る赤紫炎の隣で白極光迸らせるは、白き森の化身と化したポプルス――リゼットと共にあったモータルの、そして古来よりの魂達!
「……もう何が何だか分かんねぇ……」「……イピーッ……これで負けたら本当に終わりだってことだろ……」「……バカ……アイツは絶対にやるわ……やってくれなきゃ……」「……おうよォー……信じてるぜェー……そうだろボスゥー……」「……ヘッ……見届けるって……話だったからな……まだ……くたばってられるか……!」彼らを守る様に燃ゆるホログラムめいた炎の内で、悪鬼達は祈りを最後の希望へと捧げた。「「「「「……ブチアタレーッ!」」」」」
「――アハ……私……お姉ちゃん失格ね……」リゼットもまた息も絶え絶えに、最愛の妹の最後のイクサ見送らんと、自らの内に宿っていた全ての光を彼女の下へ飛ばした。「……でも……これでいいのよ……。勝ってアステーリャ……貴女は生きるの……生き延びるの……センセイ達の為に……」
(((――私の怒りは私のものだ)))果たして罪滅ぼさんとする光の中心、ディアベルスターは厖大な意思と繋がっていた。少しでも気を抜けば自己が融け消えてしまいそうな魂の奔流の中、それでも己を律していた。覚悟と怒りをもって宿敵を打ち倒す為に。(((それでもリゼットの……ゴブリン達の……そして貴方達の……ここにいる皆の想いは否定しない)))だが自らは怨嗟の依り代ではない!憎悪に身を任せ喰らわせるのではない!だが服従を強いるのではない!(((だから私と――私達と共に……!)))理不尽を討たんとする全ての意志と合一し!自らが確固たる
0101110罪101滅010罪101110罪10101罪0101滅001罪010101罪0111010滅101罪01
ZANK!ZANK!ZANKZANKZANK!……ZGTOOOOOOOOOOOM!「アアアアアアア――AARGHHHHHHH!」業火立ち昇る中で白き森の幻妖――ディアベル達の魂介する古来連綿のオヒガンと01電脳の神秘は!断罪の黒魔女と
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無限の地平より集いし悲願よ!彼岸の果てから来たる怨嗟よ!あまねく意志よ!神聖なる邪悪の闇をも光と貫き!罪の夜明けを星と導け!断てぬ罪をも滅ぼせ――!
「――ROAAAARRRRRRRRRRRRR!」
――蛇眼の断罪龍!
「
盤石たる支配が為、取り合わずこの場を去る選択肢もあろう――だが完全たるを取り戻した末の矜持が許さなかった。「よかろう……貴様等を完膚無きまでに我が手に堕とし……憂いを断つ……!」独り冒涜の覇道生きてきた超越者の、ニンジャの矜持が!
かくして草木も眠るウシミツ・アワー!荘厳なる白き森は凄絶なイクサの――決戦の
「
「――ROARRRRRRRRRRR!」断罪龍は大顎開き咆哮と共に超自然炎を放射!さながら旧世紀戦略衛星兵器めいた超高出力の熱線で前方空中を薙ぎ払う!「……ヌゥーッ!」神懸かりの邪悪は、自らの聖体を多次元へ同時転移・再構築し、これを瞬間回避した。不壊の身で回避!?避けねばならなかった故だ!アザミは感じ取っていた。相対する黒魔女だったものは今や、仮初でも自らに匹敵する存在へ進化遂げたことを!
「GROOOOOOOWLLLLLL!」断罪龍は依然吶喊!「イヤーッ!」アザミは失われて久しい古代のカラテ構えにて真正面より迎撃!空に単打打つと、虚空より金の茨が寄り集まって幻影めいた巨腕を形成、自らの動きとリンクするように巨拳放つ!
「YEEEEEEEEEEART!」断罪龍もまた前脚握り固めて赤紫炎纏うストレート突き!KRAAAAAASH!「グワーッ!」「AARGHHHHHH!」相殺!「「「「「――アイエエエエーッ!」」」」」決戦見守りし地上の面々にも余波が届く!尋常ならざる力の、カラテの衝突は、地上にすらその圧力を轟かす!そしてもうひとりの観戦者、天にて輝く黄金立方体は、亜神達のイクサをその輝きでもって煌々と飾る!
「イヤーッ!」打つ!「YEART!」打ち返す!「イヤーッ!」打つ!「YEART!」打ち返す!「イヤーッ!」打!「YEART!」打!「イヤーッ!」打!「YEART!」打!打!打!
「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」「イヤーッ!」「YEART!」
打打打打打打打打打!あまりにも原始的、純粋なる暴の応酬!拮抗する両者のぶつかり合う様は、互いの高位にして異質な姿に似合わぬ程に単純化していた!だが畢竟、ニンジャのイクサの行く末とはカラテに収束する!両者が超越の力持つ者であればあるほど!更に言えば、単純化はその思惑故に!
「イヤーッ!」「AARGGHHHHHH!」神速の応酬を制したのは……アザミ・ニンジャ!巨龍を打ち怯ませた隙に、巨腕が、金の茨が、その躯体を決して離さぬように拘束!「我が悲願は阻ませぬ……!」彼女に慢心も驕りも無かった。ただ眼の前の過去よりの因果の化身を、自らの明確な障害となるかの者を、短期決戦にて、単純で確実な方法にて葬る!
「イヤアアアアアアアアAAARGHHHHHHHHHHHHHH!」断罪龍を薊の業にて封じたまま、アザミは邪なる聖光を極限まで発した!「AARGHHHHHHHHHH!」龍の内に燃える全ての魂を引きずり出し、諸共自らの物に奪い去らんために!決して離さぬ!抜け殻と化すまで!尋常ならざる力には如何な存在も屈する他なし――!
「――
「――グワーッ!?グワAAAAAAAAARGHHHHHHHHHHHHHHHH!」瞬間、龍体縛る茨が!それと繋がるアザミ本体が!激しく発火炎上!罪を齎す無欠の茨は決して枯れぬ!決して断てぬ!……それでは何故!?何故この御身は燃える!?
「YEEAAAAAAAAAAARRRRRT!」断罪龍は躰決死に震わせながら、その腕でアザミをガッキと掴んだ!内に蔓延る罪の茨に魂搾取されながら、その身燃やし続けた!決して離さぬ!決して止めぬ!アザミの全てを滅ぼすまで!
それはアザミの冒涜、罪つくりの薊の力へのみ働くアンタイの光……ディアベルの秘めし力と原罪の怨嗟の炎が織り成す――罪滅の光!罪が消せぬというのなら……断てぬというのなら――滅ぼすまで!「YEEEEEEEEEEART!」「グワAARGHHHHHHHH!」ザイメツ!
「AARGHHHHHHH……!」「AARGHHHHHHHH……!」劫罰の茨に蝕まれながら、罪滅の劫火に包まれながら、ふたつの異形は遂に失速、地上へ向けて異常軌道で落下!KRAAAAAAAASH!KRATOOOOOOOOOOM!「「「「「グワーッ!」」」」」隕石衝突めいた閃光が森満たす!目視困難!だが刮目せよ!この光晴れた先に決闘の行く末がある!果たして――!
「――YEEAAAAAAAAAAARRRRRT!」――果たして制するは……ディアベルスター!「――AAARGHHHHHHHHHHH!」「「「「「トドメヲサセエエェェェーーーッ!」」」」」全てを擲つ彼女は、燃え盛る龍腕にて満身創痍のアザミを掴み掲げ!額の蛇眼赫々と輝かせ!終局のヒサツカトンを迸らせた!
「YEEAAAAAAAAAAARRRRRT!」遂に真芯を火種に、アザミの本質を捉えた炎は内より燃え爆ぜ、神女の身を焼却す……!「AAAARGHHHHHHHHHHHH……!」決して離れられぬ……!決して避けられぬ……!遂に無欠が、アザミの全てが01に――null。
燃え爆ぜる赤紫の炎から、01はおろか、煤も、煙さえも昇らない。null。仇なす薊の物理・論理全てを燃やす滅びの光からは無だけが生まれ、その無すらもまた消える。null。これぞ断罪の龍がヒサツの業――カース・オブ・ディアベル。
それはヨウマ・ニンジャ――ディアベルの呪い、彼女の最初で最後の怒りにして彼女の娘達の裁き。罪滅の炎は薊のソウルをも焼滅する。無欠すらも無に帰す。如何な次元に逃れようと決して消えぬ炎は、その存在の残滓すら決して赦さぬ。罪の化身を電子最小単位01ですらない、真の
「AARGHHHHH……!栄えある我が千年……!我が悲願……!……父祖よ――!」焼失しゆく罪の神女が縋るように両手を掲げた先、オヒガンと01の多層レイヤーは既に消失し……黄金の墓標無き空に浮かぶは――割れた月。「――ア……アア――」赤紫に輝く視界の先、物言わぬはずの髑髏めいた破砕星は、だが確かに、万物を恨み呪わんとした憐れな冒涜者の最期を冷ややかに告げた。それすなわち――。
――インガオホー!
「――AAAARGHHHHHHHHHHHHH!」
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「――それが本当のお前か」
砂漠を埋め尽くす仄暗く血腥い景色の中、ディアベルスターは立っていた。
「――そうだ……イクサ……そうか負けたのだ……お前達に……過去に……私はここに消えるのか……」
魔女の視線の先で俯き座り込むは、他者を寄り付かせぬような佇まいの、だが孤高なる美しさ秘めたひとりの女。超自然の力で互いを縛り燃やしていた故か、黒魔女はアザミの原風景を、そしてその過去を電子速度で知った。
「……ナンデお前はこんな……ずっと生きたかったのか」
知った上で、幾星霜に渡って理不尽の禍振りまいた咎人へ、何故を問うた。
「……死が怖かった。……死にたくなかった。何も持たず生まれて……何も出来ず生き……何も遺せずに終わる……。後には何も残らない……それが何よりも恐ろしい……」
乾いた風景の中で、始まりの罪人の最期の開陳が、静けさに呑み込まれる事なく、ディアベルスターへ届く。幾千の月日を、狂気で塗り固め欺瞞してきた無情の想いが。
「……死にたくなかったのは私達もだ。自分を貫いて生きるには誰かを蹴落とすしかない……この世は理不尽で残酷だ」
黒魔女に同情の感傷は無かった。ただ、今の彼女の中に宿る、仇敵へ向けた感情が、単なる憎しみだけではないのは事実だった。
「……でも、何も残らないなんて私は思わない。センセイ達が遺したものを私達が継いで……私はここにいる」
「……わたしには分からなかった」
罪つくりの神女だったひとりの少女は、ただ自嘲した。
「……全て消える。他の生き方を知らないために……。わたしの全てが……すべてが無に……。受け継がれることなど永遠ではない……。他ならぬわたしだけが……。わたしを……わたしだけが継ぎ続けなくては――」
「ああ。だから継いでやる」
復讐終えし少女はまた、揺るがぬ眼で毅然と応えた。
「二度と忘れないように……忘れられないように……私が……私達が――生き延びた奴らが受け継ぐ。語り継ぐ。全部継ぐ。センセイが護りたかったものも、お前が壊したものも、全部。その先はまた次に継がせる。きっと現れる。継がせてみせる」
「……それが生きる強さか――」
暗澹の砂漠に夜明けが――終わりの光が差し込んだ。
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「YEEEEEEEAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRT!」
「AARGHHHHH……!サヨ……ナ……ラ……!」
その躯体は爆発四散し、その魂は燃え尽き――遂に贖罪神女は罪滅の光に朽ち果て、消えた。ダムナティオ・メモリアエめいて、彼女の存在示す全てがこの世より無に消えた。……かくして終局のイクサは、過去よりの運命に終止符打つ
「……」やがて燃え尽きた断罪の龍は、炎立ち消えるようにその躯体を昇華させ、その内からひとりの女が力なく転び出て、膝ついた。「「「「「……」」」」」想像絶するイクサ見届けた悪鬼達も、勝利の勝鬨上げることを忘れ、ただ静かに森に満ちるアトモスフィアを享受していた。
オヒガンなる異次元は、そして電脳的論理空間は先ほどより遠ざかれど、白き森は未だこの世ならざる神秘を色濃く残していた。燃え尽きた龍の残滓から、あまねく周囲から、数多の本質情報が昇り行き、白き木々のあわいに、天へ立ち消える。無辜なる者・覇道行く者問わず、罪に戒められし全ての魂が、ようやく解放される時が来たのだ。
……無論、彼らが冒涜の薊の軛から解き放たれたとて、その全てが世に留まる報復の念を捨てられるわけではない。(((――グググ……グハハハハ……)))未だ恨み晴らし切れぬ者達は、その定義をニンジャ存在そのものへの憤怒へと転じ、森を外れた無限遠の遥か彼方に聳える銀の墓標――赤黒の怨嗟犇めく忍殺の根源に集束し、融けていった……。例えそれを悟った者がこの場に居たとて、咎める権利は無い。その選択もまたエゴのままに……自由意志に……全てコトダマに包まれてあれ……。
ともあれ遂に終わった。すべてが終わったのだ。……清算の時だ。
「――やったわね……」
膝つきくずおれる黒魔女を支えようと駆け寄った白魔女もまた、妹にしなだれかかった。
「……リゼット……」「アハ……私……酷い顔でしょう……?もう……あまり前も見えないの……」ジツの致命的過剰行使による反動に蝕まれながら、リゼットは力なく笑った。モーリアンの黒紫に侵蝕された右眼は、最早光を感じていないようだった。ヒビは取繕うことすら叶わぬほど全身に広がり、手足は末端から黒々とした結晶に置換され始めていた。オヒガンを物質化させたようなその様は、世に言うエメツの重暗い輝きのそれだった。
「……私、これで死んじゃうの……黙っててゴメンね……」成し遂げた末の心は晴れやかだった。愛に未来を繋いで……憂いなど無い。「……分かってる――」そうして暖かく寄り添い、抱きしめた妹の――アステーリャの身体は、果たして異様に冷たかった。「――わたしも一緒だよ……」
超越者討たんとする彼女達は、尋常ならざる奇跡の策でもってこれに抗した。奇跡――ヒトの身に余る断罪の力を、そしてヒトを超越する罪滅の力をもって、自らの魂すらも燃やして悪魔を誅した奇跡。……だが奇跡には……代償が必要だ。
「……!ウゥ……バカ……!ナンデ……!どうしてアンタまで……!」「……わたし……あの時言ったんだ……ふたりで背負うって……」「だからって……!アンタまで死んじゃったら……!」「……大丈夫……わたしが……わたし達がこうして生きた事は……無駄じゃないんだ……」「でも……!アァ……もう……!最期くらいお姉ちゃんらしいことさせてよ……!」「……ずっと一緒だよ……リゼ……」
ああ……世のあまねく慈悲よ……寝ておられるのだ……。何たる悲哀極まる……それでも、少なくとも彼女達にとって、この結末は悲劇ではないのだ。自らの引き起こした惨劇の清算を、贖罪のおわりを、共に幕引けるのだ。……最早悔いは無い。
『――終わらせはしない』
だが……時として代償故に奇跡は、一握りの慈悲は世に起き得るのだ。果たして慈悲は――彼女達を最も慈しんだ者達の愛は、彼女達の犠牲を、それを良しとしなかった……!
『ここで去るべきは……私達だ』
「……ア」「……ア、アァ」共に旅立たんとしていた刹那の狭間、ふたりのウィッチは柔らかな光の中に居た。確かに感じていた。かつての『森』の中に満ちていた暖かみに。確かに包まれていた。「シルヴィ……!」「ルシア……!」笑みこぼすふたりの姉に……!そして――。
「「――ディアベル=センセイ……!」」
愛する母に!
『……お前達に非は無い、そう言っただろう。……だが……よく果たしてくれた』これはただの奇跡にあらず……!オヒガンとコトダマの領域繋いだ強大なる力の名残が満ちる森に、アザミのジツによる支配から魂の自我取り戻した3人の遺志が仮初ながらトラップされたことによる――理屈など構うものか!ただ愛故の奇跡!
「姉さん……ウ、ウゥ……ッ!」『アステーリャ……ずっと泣き虫なんだから』「もう……!私……ずっとカッコ付かないじゃないの……!」『リゼット……アンタにお姉ちゃん役なんて千年早いわ!』泣き咽ぶアステーリャへ、泣き笑うリゼットへ、ふたりの姉はあの日と変わらぬ友愛で迎えた。
『……お前達はいつも騒がしいな』最愛の師は、母は、相変わらずの超然とした、だが慈愛をその眼に浮かべていた。「だって……!だってセンセイ……!」「センセイ……!」「ウ、ウゥ……フエエエエエエ……!」『……思えばいつも揃って泣いていた……いつも互いを尊んでいたな』
ああ世の慈悲よ!願わくば彼女らに永遠の祝福を……!いつまでも安らかな生の憩いを――だが世に永遠など無く、泡沫に過ぎ行く儚さゆえに、奇跡は奇跡で、生とは尊ぶべきものなのだ。……再びの別れの時だ。
『……心から名残惜しい……それでも私達は行かなくては』「……もうずっと、サヨナラ……」『……私にも実際、オヒガンがどういうものかは完全には分からない……。だが本来、死者との別れは永遠であるべきだろう。……だからこれはヨウマ・ニンジャでない、ただ
『生きろ。未来を……誰の為でもなく、お前達の生を……自分の為の明日を生きなさい』『これでずっとメソメソしてみなさい!お姉ちゃん達がアノヨから化けてやるんだから!』『そうよ!難しい顔してカラテばかり鍛えちゃダメ!ふたりともカワイイなんだから!ムキムキイヤーッ!』
「――アタシら生きてる……?」「あァー……」「アタシら生きてる……」「どうにかですぜ!」「アタシら生きてる」「イピピーッ!」「アタシら生きてる!」「ああ……誇りある悪党は簡単に死なねえんだ……!」次第に元の生気取り戻したゴブリン達は、互いを抱き合う魔女達を遠巻きに、ようやくの勝利を噛み締めていた。「だからアイツらも生き延びた……ハッハァー……!」我らがオヤブンは、未だ痛みはするものの、超自然炎に傷焼き塞がれた身体で快哉に声上げた。
「ゲー……」「ア、アンタいたの」「イピッ!三傑の亀、今頃来た!」「ア……?」「どうしたクラッタァー……」「アー……笑わねえでくだせえよ?なんか、その……黒魔女達の周りに誰かいたような……」「……お笑い種だぜ……」「アッ、やっぱり!だから言いたくなかったんですぜ!」「笑えるんじゃねえか」コブンの言に、ガボンガはどこかしみじみと彼女らを見ていた。
「アイツら、よく泣いて笑ってやがる」
気付けば現実は現実の景色のみを映し、地下施設跡地に聳えていた木々も、初めから幻だったかのように立ち消えた。決闘の後、『白き森』を優しく照らす月明かりの下、あとに残されたのは、傷付いたふたりの魔女だけだった。
「シンフルスポイル・サンクティフィケイション」終わり
エピローグへ続く