忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ   作:亜面瞳頭

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ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ

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「――あ、ドーモ、ゴブサタしています、イータ=サン。……ハイ……ハイ、そうです、ASAPで現場入りで。ウチが一番乗りです。……絶対今バカにしてたでしょ。元を正せばメガトリイ、つまるとこウチの資産なワケで……減価償却済みでも接収するのは当然の権利……って上は言いたいから急かしたんでしょうね。あとはエネアドにもうるさ方がいたとか――まあいきさつはいいでしょ」

 

 月が沈み地平から陽光が昇り行く刻。暁光差す『白き森』跡地の無人廃墟にて、空中待機するエアクラフトの駆動音と共に騒ぎ立てるは先進的文明の表れ、IRC通話の声。何事か通信する男に加えて辺りを精査する集団は、皆一様に身体に「」の字が意匠された出で立ちをしていた。

 

「……で、まあ大方の予想通り無残です。ハイ、件の『魔女』はおろかサーバーも何も残らず全壊。何一つロクに残っちゃいません。施設端末のログもパーですよ。イントラネットって素晴らしいですね。おかげで何があったかは外から永久に分かりませんから。上もあんなバカでかい光見えたら最初から諦めて欲しいですよね。……送った写真届きました?こんな変なのも生えてるし、絶対さっきまでいたでしょ。『魔女』――というかニンジャ」

 

 冒涜の樹――かつて基幹サーバーが置かれていた麓、今や白き大木聳える下で男は通話続ける。

 

「そういうわけで、せいぜい分かったのは施設内回線に加えてVPNらしき通信の痕跡があった事で……ああ、それからそこそこの純度のエメツがありました。回収できた量は……ヒト一人分ってとこですかね。アナタんとこの管轄で試験中の……オマークでしたっけ?あれくらいです。……ええ、とんだ空振りです。もう帰っていいですかね。……ハイ……ハイ、それではまた。あ、そういえばイータ=サン、今度の出向はシトカでしたっけ?……いえね、お土産が欲しくって。……ハイ、それじゃ何にせよオタッシャデー」

 

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 時はA.D.2049。世界全土を電子ネットワークが覆い、サイバネティック技術が一般化した未来。宇宙殖民など夢のまた夢、人々は灰色のメガロシティで生き、サイバースペースへ日々逃避する。崩壊した国家に代わって全てを支配するのは強大なメガコーポ群。重金属酸性雨降りしきる空は、あらゆる罪と欲望渦巻く世界は、果てしなく重暗い闇の中にある。

 

 そうした世界の片隅で、不条理な呪いの業に、理不尽なる『罪』に、耐え忍び抗う者達がいた。誰にも顧みられず、歴史の果てに忘れ去られるだろう一条の光たる彼女達は――ニンジャにして、魔女だった。

 

           ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ

 

「――十人十色!十人十色!」「5万円~」「ワースゴイ、ナンカスゴーイ」「強靭!無敵!最強!」合成音声の広告、アイドルユニットの新譜宣伝や飲料CM、新興カチグミ企業の社長出演PV……多種多様な賑わいが、道行く雑踏と共に、珍しく晴れ間の街中をどよもし満たす。

 

 世界の喧騒はどこに行こうと不変だ。胡乱な広告音声が騒がしく飾り、人々は周囲、あるいはサイバネ・インプラントが齎す電子の情報洪水、欲望のケオスの中で生きる。それはここ――時代のあらゆる最先端を行く現代文明社会の埼たるこの地――ネオサイタマともなれば、その潮流は昼なお不夜城めいてギラつく熱が止め処なく流れ続ける。

 

「――ヨッテラッシャイ・ミテラッシャイ……」そうした街の一角、市民憩いの多目的広場に古いチャントを唱えながら佇むは、ステレオタイプな魔法使いめいた格好をした黒装束の女性。尖り帽の下の灰白の長髪は艶やかで、右眼の非サイバネモノクルと相まって彼女の優美を引き立てる。淡い灰色の眼も超然とした、だが慈愛の光を湛えていた。傍らには著大で瀟洒な装丁の革留めの書物めいた何か。「ミャオーウー」その足元では黒紫交じりの金毛の猫が一匹、気ままに鳴いて伸びをした。

 

「どこの企業宣伝かな?」「サービスあるといいな」「ジプシー・ウィッチ?」「デジ・プラーグから来たとか?」「クールじゃん」物珍しさから道行く市民の多くが足を止めて観衆となる。やがて女性がその巨大な本めいたものを広げれば、そこから形ある光が飛び立ち、幻想的な風景の一枚絵が人々の目を留めた。「ワオ……ゼン……!」「すごく面妖だわ!」「ネコカワイイ!」好奇!

 

「……さあオタチアイ……本日お目に掛けますは『白き森の魔女』のおはなし……」十分に広場に興味と奥ゆかしさが満ちたのち、その不思議なアトモスフィア醸す語り部はしめやかに始めた。紙芝居なのだ。人だかりの最後に、トレンチコートに身を包んだハンチング帽の偉丈夫が加わった。開演時間だ。

 

「……その昔、人里離れた場所に『白き森』と呼ばれる不思議な森がありました――」

 

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 某国某所!裏ペットショップやケモノ頽廃バーが所狭しと立ち並ぶ夜の路地!DOOM!DOOM!「ヘェーハハァー!」「ウイイーッ!」ネオン彩る猥雑の街路を揺るがすはアンタイセイ的BGMと明日なきケモノ・パンクス共の悪逆の叫びと略奪破壊の爆走音!

 

「――オヤブン!ブーンの偵察隊から連絡……」「イピピーッ!来るぞ来るぞ!さあ来るぞ!」「アイエッ!お前もう戻ってきたのか!」「俺が最速ッ!」「コブンほっぽり出して来てんじゃないよイディオット!」「お前は変わんねぇなァー……なあボスゥー……」「……」「……ガボンガ?」「……ア?……ああ、悪いな。少しな……」

 

 頽廃的暴走行為の陣頭指揮取るパンクス首領――我らがオヤブン――ビッグヘッド・ガボンガは、裏IRCチャネル上の手配書リストをしみじみ眺めた。「ヤバイ」「大大悪党」「スゴイ・バカ」「大天災」「デッド・オア・スレイン」リスト上段、大仰な曰くの数々が付くは彼自身のモンタージュ画像。あの日から幾らか月日が経ち、今や人気者だ。……どこか渇いていた。

 

「また魔女共のことでも考えてたかァー……?」猥雑ビル屋上よりサンシタ達の無軌道指令実行を眼下に、ケモノ副官は隣り合う首魁に問うた。「……奴らの戦いときたらまるで神話でよ」あの日見届けしイクサは鮮烈な追憶となって、あの場の全員のニューロンに焼き付いていた。

 

 なかんずく、黒魔女を超えるべき壁と一方的に認めていたガボンガには、あの光景は自身の内に秘める力への渇望と共に、自身が彼女らと同等の存在であるがゆえの隔絶をすら齎した。比べるべくもない強さの隔絶。独り全てを呪いに呑まんとした冒涜者の強さ。人智超越せし冒涜に打ち克った魔女達の強さ。彼女らの強さ――貫き通す意志の、エゴの強さ――カラテの強さ。

 

 果たして自分にあれ程のことが出来るか?初めから彼女には敵とも思われていなかったか?……復讐終えた彼女らはその力でどう生きる?自らの世界とは幾段レイヤーが違うような感覚に、どこか虚無めいた儚さを「――アンタにそういうセンチメントは似合わないぜェー」「――ダグ……」

 

「俺も、当然コイツらも、アンタがアンタだから任せてんだァー、ついてきてんだァー……。ノンケモ魔女の真似事じゃダメなんだァー……。ケモノにはケモノの、悪党には悪党の生き方が、死に方があんだろォー……?」ガボンガをこの世界に迎え入れてくれた悪鬼達は、出会ったあの日と変わらぬデスペラードな眼で彼を真っ直ぐ見た。

 

「連れて行ってくだせえ。俺らをもっと高いとこに!」「アタシはまだ満足してないからねッ!」「俺もまだ限界走ってねえんで!」彼を慕う者達の眼に欺瞞は無かった。彼がいくら弱小を自嘲せど、いくら未だカラテ至らぬとしても、それでも彼は、ソンケイ確かなオヤブンなのだ。「こういうわけだァー……アンタがアタマと命張り続けてくれる限り……俺らはずっと応えるぜェー、ボスゥー……!」

 

「……ハッハハハハァーーーッ!」やがて己を強いる快哉の哄笑が夜をつんざいた。「……俺ァつくづく果報者だぜ」力弱くとも昇り行くべき場所があるのだ。「オヤブンヤッター!」独りではないのだ。「シマッテコーゼ!」やがて悪党らしく死に、それまでに生きるべき道があるのだ。今はそれで十分だ。

 

「……それはそれとしていつかリベンジ!魔女共キッチリヤッツケヨーゼ!」「そうですぜ!まだアイツらに完全ゲコクジョ果たせてないんですぜ!」「アタシもナメられっぱなしじゃムカつくんだから――」「イヤーッ!」KRAAAASH!「「「グワーッ!」」」眼下路地で激震!吹き飛ぶサンシタ!

 

「――K9-17現着しました!」

 

「……お出ましだぜボスゥー……!」「イピピイピピーッ!さあ来たぞ!」「ウフフ、まずはこの場ものし上がらなきゃね」「いいBGMを用意してますぜ!」「……お前らに見せてやる」親愛なるコブン達との未来を背に、オヤブンは不敵に屋上より跳び、夜光の中へと身を躍らせた。「百鬼羅刹の行き着くとこをな!」

 

「集団の継続的強度反抗重点!拘束解除!K9、対象を鎮圧します。ドーモ、イヅナです!」

 

「ハッハァー!ドーモ!俺達バッド・アス!」

 

「「「「「ゴブリンライダーズ!」」」」」」

 

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「――かくして悪魔は敗れ去り、白き森はむかしのような平和で不思議な森に戻りました。かつて住んでいた魔女達は姿を消しましたが、どこからともなく聞こえる少女の声に、人々は今も噂をするのです。「白き森には小さな魔女がいる」と……。以上、これにておしまい『白き森の魔女』のおはなし……ドット・ハライ」

 

 古式ゆかしい結びの言葉と共に女性が紙芝居の最後の一枚を展開すると、白く美しい荘厳な森の情景が、赤紫のネオンアートめいた鳥の羽ばたきと共に紙面一杯に広がり、そして3次元的に飛び出した。「「「ワオオーッ!」」」たちまち広場は歓声に満ち、オヒネリの電子決済が飛び交った。キャバァーン!キャバァーン!

 

「スゴイでした!途中の戦いも手に汗握る旧世紀フィルムのようで!どうやって飛び出してるんですか?」最前列、劇の始まりから齧り付きで観ていたオレンジ髪の娘の質問から始まり、次々と観衆が女性へ詰め寄った。「仕掛けはホロUNIXの類と見ました。是非とも我が社と広告事業で独占特許契約をですね……」「マブなオネエサン!ネンゴロの人はいるノ?」「LAN直結していいですか?」「ネコカワイイ!」ただ華美なだけでない、実際寓話めいている物語に、観客の興味関心は尽きなかった。

 

「すげえもの見たぜ」「よく分からんがとにかく感動した」只今の劇の美しさに涙ぐむ者もいれば、「これはハイテク依存社会警鐘啓示……」「実際神話……インターネットな……」物語に隠された真の意図を読み解こうとする者もいた。話の内容を踏まえれば、これが電子的契約やデバイス脆弱性の危険から身を守るという旨の啓蒙的アート活動と捉えることも出来よう。実際、旅する女性が路銀を稼ぐ上での表向きの仕事としては、それは事実であった。……真に意図するところは、彼女だけが忘れなければそれでよい。

 

 子ども……大人……無軌道学生……サラリマン……パンクス……自我獲得ドロイド……。未来ある者も、ノーフューチャーなヨタモノも、ここにはあらゆる生が息づいている。ともすれば人知れず自らが守った、暖かな営み、世の景色。……誰に顧みられずとも、確かに念願を果たしたのだ。

 

「――お姉さん、『悪魔』って結局どういう意味なの?」終劇後、次第に客足まばらに捌ける中でひとりの子どもが問うた。「……それは――」「わたしワカル!『ランサムウェアには実際気を付けましょう』!」博識な少女が答えた。「ダヨネー!」「ミャオーウー」「ネコカワイイ!」広場に喜色が広がった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「――フー……」それから数刻のち、女性――紙芝居屋はひとり路地裏を――否、ふたり、隣行く猫と共に歩んでいた。「ミャオーウー」「……ハ、やっぱり私は……静かな方が性に合うよ」独り言と思しき台詞は、だが猫と会話しているようだった。

 

「ミャオーウー」「その身体も慣れたんじゃないか」「……ミャオーウー」「な……あの時の蒸し返しはやめろ」「ミャーオーウー」「そうか、今日はサシミ抜きがいいか」「フーッ!」「ハ、あのまま身体が壊れて終わらなかっただけ奇跡だ」「……ミャオーウー……」「……きっとまた、現実でも戻れるよ――ん……」軽口の応酬の後、寂し気に鳴いた猫へ、紙芝居屋が言葉掛けたその時だった。

 

「――ソマシャッテコラー!」「――グワーッ!ザッケンナザッケンナー!」紙芝居屋が歩み止めた視線の先、取っ組み合う少年少女が小路より転がり出た。「ザッケンナだァ!?ヘマしたのお前じゃねェか!」「だってあんなン無理じゃンかよォ――グワーッ!」「テメーガイモヒイテッカラコラーッ!」口汚く罵りながらマウントポジションで殴りつける少女の髪は荒れ、ばさついていた。ふたりとも年端ゆかぬ様子で、身なりはこの路地相応に薄汚れていた。

 

 察するに孤児同士、生き抜く為にケチな盗みでも働こうとして失敗したか。……いつかの記憶が、泥めいて進退窮まる世界の中で、独り足掻いてきた頃がありありと浮かんだ。

 

「……ウオォーッ!」「ンアーッ!」少女を跳ね上げた少年は反攻、そのまま弱々しくもチョーチョー・ハッシの攻勢膠着に陥る。「こんなんで生きてけるかよォーッ!」「ンアーッ!……るせェ!アタシらには他に無ェんだよーッ!」「グワーッ!」「……」傍観する紙芝居屋を蚊帳の外、彼らは傷付き合い、互いに抗っていた。その眼には紛れもなく怒りが、自らを取り巻く世の理不尽への憤りが、生への渇望の輝きがあった。……泥濘の中でなお、前向きで好ましい光だった。

 

「この畜生がッ!」そうしたやり場無き憤怒と望みに振り回されるまま、少女の手にはスイッチブレード!キケン!だがその時、彼女のナイフ持つ手は止まり……踏み込む足は地面にクッツいた。「――ア?」「……そこまでだ」一瞬の静寂を、凛とした声が、紙芝居屋が制した。

 

「ナンオラー!?」「誰だアンタ!?助けなんて要るかよ!」動き止めた少女に、少年はすかさず反撃「――やめろと言ったんだ」彼もまた静止!「アイエッ!?」

 

「誰だテメェって聞いてんだよーッ!」少女は固着された靴脱ぎ、素足で紙芝居屋に肉薄!固まった手には未だ刃!剥き出しの渇望的生にして暴力性!「……私は紙芝居屋だ」事も無げに少女の得物弾き落とし、地面に尻餅つかせて固着!「ンアーッ!」

 

「……怪我は無――もうしてるか」紙芝居屋は気遣う眼で、少年の足を再び利くようにするも、彼は思い出したように畏怖を顔に浮かべた。「ヤバイ……!」「……どうした」「ヤバイんだッ……!」それは紙芝居屋に向けたものではなかった。「どのみち稼ぎゼロじゃヤバイんだよッ……!」

 

「――おうガキ共ォ、首尾はジョージョーかァ?」やがて4人目の、小汚い路地相応に荒くれた男の声が届いた。「ア?テメエら何やってんの?俺とのビズは?ア?」現れたのはあからさまなヨタモノだった。「……コイツがトチった」少女は隣の少年を一瞥して、忌々し気にヨタモノに返した。

 

「ホー?するとアレか?利益ゼロ?ホー、ホー、ホーゥ?」「そもそもが無理なんだよ!」少年はヤバレ・カバレの叫びを漏らした。「ナンデこんなことしなきゃいけないんだよ!ナンデ――」「ナマッコラーッ!」「「アイエエエエッ!」」少年は頬を張られながら、男の恫喝に失禁しながら閉口した。ただのヨタモノではないのだ。

 

「……俺達家族、ワカルよな?」紙芝居屋を蚊帳の外に、ヨタモノは押し黙らせたふたりを眺め回した。「テメエらがネズミみてえにクンクン嗅ぎ回ってなけなし盗って来る。俺が小遣いに貰う。ついでに憂さ晴らす。生き甲斐貰ってテメエらもwin-win。そういう完全ビジネス、家族稼業だろが、ア?」狂気的!

 

「テメエら最初ッから詰んでんだからよォ、何も持ってねェくせに一丁前に生きようとしやがって。俺が有効活用してやってンのによォ……。アー……飽きたわ。クズ虫が飼い主の言う事聞けねえんじゃ処分だよな、エ?」何たる近年稀に見る短絡的無軌道暴虐悪徳者……!だが然り……持たざる彼らに、抗するために挙げられる声も手も無いのだ……!

 

「所詮テメエらは死ぬ為に生まれてきたようなモンだろうがよォ。何も出来ねえ惨めにくたばるだけのクズ肉共!なら俺のタノシイの為におっ死ぬ方が有意義よなァ!?」「「……!」」おお……最早筆舌に尽くし難い非論理的理不尽……!彼らは打ち震え――だがその眼に光消さずにいた。「ンだその顔はァ?」

 

「「――ナンデ……」」彼らの眼には未だ輝き、生の渇望が――自らを取り巻く世界への不条理に何故を問う反逆の情念が、「「ナンデ……!」」理不尽への怒りがあった。「ア、何が。知るか。もう死――」そしてその輝き持つは「――おい」先ほどより静観していた紙芝居屋も同様であった!

 

「……ア?おう、そこな女、待ってろや。ガキ共を肉にした後はネンゴロな」ヨタモノは背中越しに下卑た笑みで、誰何されるまでもなく悪辣さの裏打ちを自ら曝け出す。「ドーモ、エクスプロイトです。大人な時間といこうじゃねえの。逃げられるとか無ェから。こいつら以外にも遊び壊してッから。何せ俺ニンジャ」得たばかりの力に溺れているサンシタの典型的言動だった。

 

「……悪党にも矜持、だったか」「アァ?」そうした男と少年少女の間を、色付きの風が駆けた。「――ひとつ言っておく」気付けば紙芝居屋は男に背を向けてふたりを道脇へ抱え下ろし、慈悲の眼で彼らを諭していた。「「アイエッ……!?」」「その怒りを押し留めるな。力に晒されても自分を貫け」ハヤイ。少なくとも男は今の行動を認識できなかった。「……ッ!やっぱテメエも肉にするわ。肉にしてからネンゴロ――いや前後なッ!」言い知れぬ危機感に逸るヨタモノが拳振るう!アブナイ!……紙芝居屋が?否!

 

「――ドーモ」果たして紙芝居屋が空中にて身を翻す一刹那、古典的魔女めいた尖り帽は溶けるように形を変えてフードとなり、身に纏う衣装は流動変形し、ヨタモノの後ろに降り立つ彼女の、もうひとつの側面体現する装束へと変わっていた。「ディアベルスターです」

 

『――もっと離れてたほうがいいわよ』「エッ?」同タイミング、へたり込む少年の足元で突如聞こえてきた声は、猫がタイプするハンドヘルドUNIXより出力されていた。『アハ、まだ動けないかしら』無限の猿めいて適当なタイピングが偶然意味持つ文字列になったか?『とにかくじっとしてなさい。あの子キレてるから』だが打鍵する猫の眼には明らかな知性があった。

 

「……そのまま振り向かず、何もせずに行け」紙芝居屋は――黒魔女はヨタモノの背後から無慈悲の眼で、だが最後通告めいて告げた。「そうすれば、これ以上誰も何も失わない」「……!」男は内心で打ち震えていた。アイサツと共に自身の暴力跳び避けながら後ろに回り込んだ女の実力に。その間にいくらでも自身を手に掛けられただろう女の手加減にも等しい慈悲に。

 

 打ち震えていた。蔑むような眼で自身を見るモータルふたりを。打ち震えていた――怒りに!「ザッケンナコラーッ!」振り向きざまの裏拳を背後の紙芝居屋目掛け「――私は」急速に体感時間が鈍化する中、ヨタモノは漸く全てを察した。赤紫の光に不動の足元を、鎖に縛られ止まる腕を。「振り向かず何もするなと言ったんだ」自身を見る黒魔女の眼に浮かぶ怒りを。――終わりを。

 

「アバッ」全てほんの一瞬だった。彼女が無を握るようにして腕を横一文字に振ると、速度纏う腕の薙ぎ――カラテは黒鋼を生み、黒鋼は大振りの逆手ダガーとなり……与太極まる邪悪の首を刎ねていた。「サヨナラ!」

 

「「ア……アァ……!」」幼いふたりは目の前の超自然へただ茫然としていた。「何なんだよッ……!」「……私は紙芝居屋だ――」猫が人語を解し、自らを虐げていた者が爆発四散し、そして目の前に――。「――ニンジャのな」

 

「……エ……?ニンジャ……?」少年は目の前の女性の言に目をしばたたかせた後、改めて先ほどまで固着されていた足と女性の恰好を交互に見た。「ニンポ……魔法……?……魔女?」「ハ……そう呼んでも構わない」少年の純真なまでの様子に、紙芝居屋は苦笑混じりに言葉返した。

 

「……一応聞いておく。お前達、親は」「いない」「アタシらに親なんていねェんだよ!」「……わかった」「ミャオーウー」紙芝居屋は猫と共に、懐かしむような眼で彼らを見渡し、そして言った。「……ふたりが望むのなら、私の――私達のカバルに来い。寝床も食べる物もある」

 

「……アンタ俺らを食う気だろ」果たして少年は、魔女とニンジャへの古典的な謂れを警戒した。今しがたの光景と、そしてフィクションの悪影響だ。「食わない」「テメエで殺すか、適当なクソ共に売り飛ばすんだろ!」少女もまた擦れた様子で警戒した。「そこで死んだカスみてェによ!騙されッか!」「殺さない。売らない」紙芝居屋は毅然と返した。「……!」真正面に自分を見る嘘偽り無い眼に、少女は居た堪れなく顔俯かせた。

 

「……じゃあナンデ?ナンデそんな無意味なことすんだ」やがて少年は心底理解できない様子で訊いた。「俺らみたいなクズを拾って……アンタに何の得があるんだ」「……私がそうしたいだけだな」「……エ?」果たして紙芝居屋は、何の他意も無い様子でそう答えた。

 

「……お前達はお前達で、私は私だ。本当の意味では、誰かの代わりには誰も成れない。……それでも私は、私以外の誰かに継いで欲しいものがあって……旅をしている」「……ヘ、ザッケンナ……」顔上げた少女は跳ね返りの笑みながら返した。

 

「結局アタシらはテメエのUNIX代わりかよ。メモ代わりにメシの都合?割に合わねえ」「……UNIXも打てるようになる。望むのなら……カラテも」「エ?カラテ?」少年が顔輝かせた。「アッ、テメッ!何興味持ってんだ!どうせ搾取されるだけだ!」「こんな生き方まっぴらだろ!俺だってもっと強く生きたい!……それにお前もIRCしたいって言ってたじゃんか!ネットの可能性は無限で自由なんだろ!」「……セッゾ」少女も内なる自己の叫びを、望みを、否定したくはないようだった。

 

「……決めるのは勿論お前達だ。その意思は誰にも縛られない」姉達の、センセイの、家族達の遺志を、自らを自らたらしめたものを継ぎ、そして次代へ。それが彼女――ディアベルスターの選択であった。

 

 世に永遠など無い。万物はいずれ死に絶え、朽ち果て、滅び消える。……それでは全ては本当に無益か?例えそれでも、去ったものから受け継ぎ、自らのいた証を遺し、受け継がれる事に生きる意味があるのではないのか?彼女の旅路は、生は――自由意志は、それを探る事を選んだ。

 

「……魔女の姉ちゃん」やがて少年が言った。「強くなれンのかな……あんたみたいに」「してやるさ」「……アンタとんだお人好しか……それか狂人だ」少女も手を伸ばしながら口を開いた。「ミャオーウー」「……狂人じゃない……坊主が言った通りさ」ふたりの手を取りながら、紙芝居屋は帽子の下で穏やかに微笑んだ。

 

「――私は魔女(ウィッチ)『白き森』『黒魔女』だ」

 

 

         ◆◆◆◆◆ ブラッドレー・ボンドと ◆◆◆◆◆

       ◆◆◆◆◆ フィリップ・ニンジャ・モーゼズの ◆◆◆◆◆

           ◆◆◆◆◆ 創作物に基づく。 ◆◆◆◆◆

          ◆◆◆◆◆ ニンジャスレイヤー ◆◆◆◆◆

                    ✖ 

            ◆◆◆◆◆ 高橋和希と ◆◆◆◆◆

       ◆◆◆◆◆ コナミデジタルエンタテインメントの ◆◆◆◆◆

           ◆◆◆◆◆ 創作物に基づく。 ◆◆◆◆◆

      ◆◆◆◆◆ 遊戯王OCGデュエルモンスターズYuGiOh ◆◆◆◆◆

            

 

           ◆◆◆◆◆ 猥褻が一切無い。 ◆◆◆◆◆

 

 

 

       ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ ここに終わる

 

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