忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ   作:亜面瞳頭

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これまでのあらすじ

 『罪宝』と呼ばれる呪物を求めるニンジャ『罪宝狩り』、またの名をディアベルスター。次なる罪宝と思しき物が眠る遺跡を目指す途中でアイトーンと名乗るニンジャが彼女を襲撃した。ニンジャ同士が出会えば必然起こるもの――イクサの幕開けだ。


ディアベルスター・ザ・ローグ・ウィッチ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……ドーモ、アイトーン=サン、ディアベルスターです」オメーンの奥の片眼を光らせながら彼女がアイサツを返した。ニンジャ同士が出会い、一方がアイサツすればもう一方は返さねばならない。古事記にも記されしニンジャの儀礼である!

 

 そして敵対するニンジャ同士の暴力――すなわちカラテ――のぶつけ合い――すなわちイクサ――は互いがアイサツを終えてから始まる。だが、ここで前回アイトーンがアイサツ前にディアベルスターをアンブッシュ(奇襲)したことに疑問を覚えている読者もおられよう。アイサツ前のアンブッシュは1度までなら実際不問なのだ!

 

「派手に暴れておるようだな『罪宝狩り』。それとも『黒魔女』と呼んだ方が通りが良いか?」甲冑オバケめいたニンジャが尊大に物を言う。「貴様があちこちで騒ぎを起こしたおかげで遂にIRCネット上でその面が割れ、こうして俺が貴様を捉えた形だ」アイトーンが斧槍の切っ先をディアベルスターに向ける。対する『黒魔女』は眉根一つ動かさず言葉を返した。

 

「……報酬が目当てか……確か生死問わずだったか?だが私を殺しては証明は出来ないだろう」「……フン、ニンジャを殺しても死体が残らぬとは、我が身もさることながら面妖なものよ」読者諸氏からすれば今の二人のやり取りは珍妙なものに聞こえたかもしれない。だがじきに意味が分かることだろう。

 

「元より俺はあのようなはしたインセンティブに興味などないわ。貴様を生かして引き渡す。それが俺の重点ミッションなのでな」「……何?」「知る必要はない。貴様はブザマに負けを晒した後の心配だけをしていればよい」アイトーンの兜の隙間が光り、歪な斧槍を天井に向けて掲げる。それを合図に黒衣の集団が走り寄り、ディアベルスターの周囲を取り囲んだ。

 

「「「ザッケンナコラー!」」」全員が黒スーツにサングラス、角刈りの出で立ちのヤクザだ!それが一糸乱れぬ動きで12人現れ「「「ザッケンナコラー!」」」いや24人「「「ザッケンナコラー!」」」「「「ザッケンナコラー!」」」4ダースである!おお、世にも奇妙な48人兄弟か!?事実は更に奇妙だ。これぞとあるバイオ系暗黒メガコーポの主力商品、クローンヤクザである!

 

「……数ばかりよく揃える」「手近なヤクザクランから拝借したのだ。俺の元手は0だがこうして兵力は48倍、つまり貴様を100倍容易く追い詰められるということだ」このアイトーンは一般社会において搾取する側たるヤクザから一方的に兵力を強奪、それを自身の配下に置いたというのだ。何たる無謀なまでの暴虐とそれを可能にせしめるニンジャの力か!

 

「さて、これ以上無駄話をする必要も無いのでな、始めさせてもらおう」ヨロイ姿のニンジャがメンポを光らせ、再度得物の切っ先をディアベルスターに向ける。それがイクサ開始の合図だった。「「「ザッケンナコラー!」」」BLAM!BLAM!BLAM!包囲の外周、ビル廃墟や高台に陣取るクローンヤクザが発砲!彼女の四方八方から銃弾が浴びせられる!「イヤーッ!」ディアベルスターは跳躍!ニンジャの動体視力をもってすれば非ニンジャが放つ攻撃など――例え音速に達する銃弾であっても――容易く見切れるのだ!

 

「イヤーッ!」空中で身を翻しつつダガーを振る!放たれた銃弾は明後日の方向に消えるか弾き落とされ無傷!タツジン!「「スッゾコラー!」」だが内周のクローンヤクザが着地狩りめいてカタナとドス・ダガーで肉薄!「イヤーッ!」ディアベルスターは着地と同時に身を地面スレスレまで屈め、回避と同時に水面蹴りを一回転!

 

「「グワーッ!」」軸足を刈り取られ浮き上がったクローンヤクザを1体掴むと「イヤーッ!」万力の如き力で薙ぎ払った!「「グワーッ!」」巻き込まれたクローンヤクザは纏めて再起不能!「「ナマッコラー!」」さらに回転の勢いで反対側に方向転換!「イヤーッ!」返す刀でダガーを振るう!「「グワーッ!」」

 

 既に包囲網の内周は崩壊していた。包囲円の半分は両断されたクローン特有の緑色の鮮血が辺りに飛び散り、もう半分にはあらぬ方向にひしゃげた団子めいて一塊に纏まったクローン死体群があった。イクサの幕開けからここまで僅か5秒足らず。だが既に1ダース壊滅!これがニンジャのイクサなのだ!

 

「片割れが妙な死に方をしておるわ。それが貴様のジツか。だが何であろうと関係は無い」ニンジャと言う存在は常人を超えた身体能力に加え超自然の力――ジツを行使できる者が多い。彼女が先ほどクローンヤクザを一塊に薙いだ様など、何も知らない者からすれば実際魔法めいていることだろう。

 

「「「ワドルナッケングラー!」」」BLAM!BLAM!BLAM!リロードを終えた外周のクローンヤクザが再び発砲!乱れ飛ぶ銃弾の嵐!「イヤーッ!」ディアベルスターは高速側転回避で瓦礫に身を隠す!ワザマエ確かな彼女と言えど、円形の包囲の中心にいつまでも居ては実際アブナイだ!

 

「隠れ回るか黒ネズミが。除去しろ」「ザッケンナコラー!」RPGが飛来!KABOOM!「チィッ……!」ダメージには至らなかったが壁が崩壊!「「ダッテメコラー!」」BLAM!BLAM!「イヤーッ!」さらに側転して別の瓦礫へ移動!

 

 「「「ナンオラー!」」」別方向から迫る銃弾が足元を掠める!さらにRPG飛来!「イヤーッ!」黒魔女が飛び上がり電柱の残骸に残る「考えます」の看板を蹴りトライアングルリープ!KABOOM!爆発を尻目に再度瓦礫に退避!「フゥーッ……!」イクサの高揚感と間近な死の実感が彼女の額から汗を滴らせる。

 

 もはや外周を切り崩す以外に道は無し。「フゥーッ……!」呼吸を吐き出したディアベルスターは瓦礫から飛び出しジグザグ走行!BLAM!BLAM!BLAM!後ろ左右から飛び交う弾丸を避け、正面からの攻撃はダガーで弾く!リロードの合間に距離を詰め、外周クローンヤクザ集団に肉薄!「イヤーッ!」だがそこにアイトーンが頭上から強襲!

 

「イヤーッ!」真上からの突きをディアベルスターは寸前でバックフリップ回避!再び元いた瓦礫の陰へ戻る!「クローン共に最初から接近戦の期待などしておらぬ。外周から撃たせ、俺が貴様に直に畳みかける。これが俺のフーリンカザンだ!イヤーッ!」アイトーンが接近しつつ斧槍を薙ぐ!「「ザッケンナコラー!」」BRATATATATA!死角からは銃弾が飛ぶ!前門のタイガー、後門のバッファローの形だ!

 

「イヤーッ!」ディアベルスターは斧槍の間合いの斜め下に飛び込むように前傾姿勢で地面に手をつき回避!勢いそのままに両手を軸に回転蹴りを叩きこむ!暗黒カラテ蹴り、メイアルーア・ジ・コンパッソ!さらにその足先には彼女の得物である巨大ダガーの刃!器用さだけでは説明のつかない芸当を如何にして!?ともかく彼女は間合いの伸びた蹴り足で後方から飛び来る弾丸を切り弾きつつ、アイトーンへ大鎌めいた薙ぎ払いのカウンターを放った!

 

「グワーッ!?」黒魔女の予想外の逆襲にアイトーンはついに被弾!だが甲冑に斬撃ではダメージ軽微!「コシャクな小細工を!だが俺の優位は変わらぬわ!」飛び退いたアイトーンがヤクザ包囲の向こうへ退避!「「ザッケンナコラー!」」入れ替わるようにクローンヤクザの一糸乱れぬ射撃!「イヤーッ!」ディアベルスターはジグザグ走行で別の瓦礫に回避!

 

「フゥーッ……!」再び呼吸を吐き出したディアベルスターは瓦礫から飛び出しジグザグ走行!BLAM!BLAM!BLAM!後ろ左右から飛び交う弾丸を避け、正面からの攻撃はダガーで弾く!「イヤーッ!」だがそこにアイトーンが強襲!「イヤーッ!」右方向からの突きを寸前でバックフリップ回避!再び元いた瓦礫の陰へ戻る!「ザッケンナコラー!」だがRPG!KABOOM!瓦礫飛散!

 

「フゥーッ……!」三度呼吸を吐き出したディアベルスターは爆風から飛び出しジグザグ走行!BLAM!BLAM!BLAM!後ろ左右から飛び交う弾丸を避け、正面からの攻撃はダガーで弾く!「イヤーッ!」だがそこにアイトーンが強襲!「イヤーッ!」左斜め前方からの突きを寸前で前転回避!最後に残った瓦礫の陰へ飛ぶ!

 

「ハァーッ………!ハァーッ……!」一糸乱れぬクローンの射撃が浴びせられる中でその隙間を縫うようにアイトーンが近接攻撃を仕掛ける。その戦術の有効性は既に消耗しつつあるディアベルスターを見れば明らか。このままでは実際ジリー・プアー(注:徐々に不利)。

 

「俺としてはいい加減貴様のサレンダーを認めてもらいたいのだがな」アイトーンが斧槍を再度掲げる。西洋戦士兜めいたフルフェイスメンポが微かに光ると、クローン達は射撃中止命令を受けた軍隊めいて静止した。

 

「『罪宝狩りの悪魔』など所詮はモータル共の大仰な畏れ。同じ土俵に上がれば貴様はニンジャの中でも弱敵よ」「……ッ!」苦虫を噛み潰した顔でディアベルスターは甲冑を睨んだ。この戦況をすぐにでも一変できるだけの方法はあった。だがそれは、本来この先の遺跡で必要になるであろう力を解放することであり、本懐を遂げる前に消耗しきるのは何より避けたいことだった。

 

「諦めろ『黒魔女』。貴様を殺せぬ以上、これ以上はその手足をケジメしてでも大人しくなってもらう」冷たい声が兜メンポの奥から響く。「ニンジャとて多勢には勝てぬ。圧倒的個には勝てぬ。ジツに頼ったところで奇跡など起こせぬ。不可抗力というものがあろう。誰あろうと力には屈するほか無いのだ。……貴様がトゥーンめいて荒唐無稽なマジックでも使える真の魔女ならば話は別だが」

 

「……違う」「何?」「……魔女じゃない……私はローグ・ウィッチだ……!」憔悴した眼に再び光が灯る。「……フン、何を言うかと思えば、『罪宝狩り』の正体は旧世紀のUNIX漁りに溺れる浅ましい簒奪者だったというわけか」

 

 かつてこの世界はY2Kなるインターネット事象により世界的な大打撃を受けた。結果としてそれ以前の時代で使われていたハードウェアやソフトウェアプログラム――かつてのインターネット技術の大半は動作原理や使用方法が失われてしまった。コードロジスト、あるいはローグ・ウィッチと呼ばれる人々はそうした旧時代の技術――特にウィルスプログラムを扱える数少ない存在である。

 

 かつてはディアベルスターも、あるセンセイの下で教えを受けるコードロジストであった。だがある一件――彼女が『罪宝狩り』と呼ばれるに至る事変――で全てを奪われ、孤独に過去の遺物を追い求めるコードロジスト――ローグ・ウィッチに、そしてニンジャになった。『罪宝』を追い求めるのも全ては過去の清算、そして復讐の為。ここでアイトーンのカラテに屈し、サレンダーなど許されない。

 

 如何に人知を超えたニンジャとて、銃で撃たれればダメージとなり、そして時に致命傷となる。ディアベルスターが先ほどから弾幕を回避し続けているのもひとえにそれが理由。だが、それは目の前のアイトーンとて同じ。それにも関わらず、このニンジャの戦術は十字砲火のただ中に自ら吶喊しているような形であるというのに、被弾の恐れを気にする素振りすらないのだ。ならば勝機は必ずそこにある。

 

「……お前を斃す算段ならある……イヤーッ!」ディアベルスターは肺の空気を吐き出し、またも駆け出す!「面白い……!では無駄な足掻きを見せるがいい!」兜メンポの隙間から光!射撃再開命令が下る!「「「ザッケンナコラー!」」」BRATATATATATATATATATATA!これまで以上に濃密な弾幕!常人であれば銃弾ネギトロ殺必至!だが、もはや今の彼女にとってはアイトーン以外の全てはただの賑やかしに過ぎない!

 

「イヤーッ!」黒色の風となって銃弾の雨を駆け抜けた先、ディアベルスターが伸ばした左手の先からマゼンタの謎めいた物体を放つ!これが彼女のジツなのだ!だがアイトーン、最小限のスウェーでこれを回避!ジツは後方の石壁に吸い込まれる!「ヤバレ・カバレのジツなど通るか!ここで終わりにしてくれる――ヌゥーッ!?」アイトーンの眼前からディアベルスターが消失!何処に!?足元だ!

 

「イヤーッ!」鋭いシャウトと共にディアベルスターが地面スレスレの前傾姿勢で下から強襲する!ジツを放った視線誘導とアイトーンのフルフェイスメンポの視認性に賭けた渾身のアンブッシュ!「「「ザッケンナコラー!」」」止まぬヤクザスラング!鳴り止まぬ銃弾の発射合図!だがそれに怯まず彼女は蛇めいて滑らかにアイトーンに組み付くと「イヤーッ!」甲冑と兜の継ぎ目、首元に手を掛け再度飛び退いた!「グワーッ!?」アイトーンのフルフェイスメンポの奥が電子機器エラーコードめいて異常色点灯!

 

「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」「「「グワーッ!」」」

 

 突如アイトーンが怯んだのを皮切りに、クローンヤクザ達が絶叫の大合唱!そのままあらぬ方向に射撃!BLAM!BLAM!BLAM!「「グワーッ!」」フレンドリーファイア!1ダース壊滅!BRATATATATATATATATA!またもフレンドリーファイア!残り1ダース!KABOOOOM!「「「グワーッ!」」」フレンドリーファイア!クローンヤクザついに全滅!フシギ!

 

 これは如何なるマジックだろうか?すわディアベルスターの折れぬ心が奇跡を生んだとでも言うのだろうか?「……貴様……何をした」人数的有利が一瞬で無に帰した状況下、アイトーンは動揺を隠せないでいた。クローン死体から茨のケーブルめいたオーラが甲冑に収束していく。彼もまた何らかのジツを行使し、クローンヤクザを使役していたのだ。

 

「……私はローグ・ウィッチだ」罪宝狩りの黒魔女は静かにダガーを逆手に構えた。「……周りの黒いのを統率していたのはお前のジツだろう。お前が私に近付く時には撃たないように……だがその指令自体はUNIXコードを介して……お前の頭のサイバネから送っていた……違うか?」「……俺の脳内UNIXに論理ウィルスを仕込んだか。ハッカーもどきの浅ましい真似事よ!」

 

 先のアイトーンに肉薄した刹那、ディアベルスターは彼の首元の生体端子にフラッシュメモリを挿入、ローグ・ウィッチ謹製のウィルスソフトウェアを強制インストールさせ、クローンヤクザに送る連携指示を書き換えたのだ!何たる彼女のニンジャ洞察力とUNIX知識、そして不退転の覚悟が生んだ逆転の捲り札が如き攻勢か!

 

「……その浅ましい真似事でお前の勝ち筋は消えたんだ」「……これで勝ったつもりか。所詮は小細工が無くなっただけのこと。俺一人で貴様の四肢をもぎ、もって戦闘不能とすれば良いだけの話だ」尊大な言動を変えることなく、アイトーンも斧槍を真正面に構えた。だが半分は虚勢だった。

 

 既に先ほど撃ち込まれた論理ウィルスは彼そのものにも影響を与えている。カラテは十分に漲れど、身体に指令が正確に行くかは怪しい。背後には遺跡由来だろう石壁が近い。対する魔女の後ろに壁は無く、地の利すら向こうにあった。もはやカラテ。カラテだけが全て。ニンジャのイクサは最終的にはそこに行き着く。どんな有利な状況でも、どんな強者であっても、僅かな読みの違いで格下相手にブザマに負け死ぬことは往々にして存在する。

 

「「……」」両者がにらみ合い、加速したニューロンの中で時間が泥めいて低速化する。実際にはコンマ数秒の膠着状態の中で、互いの繰り出すであろう手を幾筋ものコンボルートめいてシミュレートする。魔女も甲冑も、これで決める算段なのだ。二人が睨み合う最中、これまでの戦闘の余波にぐらついていた「電話ファラオ」ネオン看板がついに自重に負けて倒壊、一瞬の静寂が広がる地下にグワンと重低音が響いた。

 

「「イヤーッ!」」それを皮切りに両者が同時に動く!右手にダガーを逆手に構え突撃するディアベルスター!それを待ち構えるは同じく右手に斧槍を握るアイトーン!得物のリーチの有利はアイトーンにある!あと10歩!そこが両者の決定的な射程距離の限界!アイトーンの斧槍が一方的に黒魔女に届く限界!「「イィィィィ……」」あと5歩!3歩!2!1!

 

「イヤァァーッ!」魔女の五体を切り裂かんばかりの斧槍の強烈な薙ぎ!「イイィヤーッ!」だがディアベルスター加速!加速!更に加速!センコめいて光る右目が黄緑の残光を伴ったまま、黒い風は薙ぎ払いをすり抜けるように、アイトーンの間合いの内側に入る!だが既にワン・インチ距離!彼女のダガーの間合いでもない!「イィィ……」しかして彼女は地面をひび割るほどに踏み込み!柄を握る拳にカラテを込め――!「イヤーーッ!」ガラ空きのアイトーンの胴鎧へ渾身の右ストレートを叩きこんだ!

 

「グワーーッ!」ワイヤーアクションめいて後方の壁に叩きつけられるアイトーン!「ゴボボーッ!」メンポの隙間から吐血!確かなダメージの蓄積!だが致命傷には至らず。「イィィ……」対してディアベルスター!拳を振り抜いた慣性を維持したまま、カイシャクの一撃を見舞わんと迫る!回避。回避を。避けなくては。アイトーンは衝撃に歪む視界の中で、べったりと壁に貼り付いた身体を引き剥がさんと身じろいだ――貼り付いた?

 

「バカナーッ!?」ゴウランガ!先のディアベルスターが放ち壁に撃たれたジツ、それが吹き飛ばされたアイトーンをトリモチめいて石壁に固着させ、磔刑のように身を封じているではないか!これぞディアベルスターに憑依するニンジャソウル――人間がニンジャとなる際に肉体に宿るモノ――が彼女に齎した力、あらゆる物を接着させるクッツキ・ジツである!

 

「イィィ……」尚も迫る罪宝狩りは遂にダガーの射程にアイトーンを捉え――。「イヤァァーーッ!」兜と甲冑の継ぎ目、首元を寸分違わず両断!「アバーッ!」炭酸飲料ボトルキャップめいて兜の首が上方に飛び――!「サヨナラ!」アイトーン爆発四散!ニンジャの死は行き場を失ったソウルのエネルギー暴走が爆発を引き起こすのだ!

 

「ハァーッ……ハァーッ……」イクサの終結、アイトーンの亡骸が爆発消失するのをディアベルスターは息を整えザンシン交じりに見届ける。やがて完全な静寂が地下空洞に満ちると、彼女は踵を返し、遂に罪宝らしき物の曰くが眠る遺跡を目指して、石積みの増えてきた地下を奥へ奥へ歩んでいった。

 

「ディアベルスター・ザ・ローグ・ウィッチ」終わり

「ディバインテンプル・オブ・ザ・スネークアイ」に続く

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ディセプション・オブ・ザ・シンフルスポイル」

 

 ディアベルスターが去り数刻が経った頃、イクサの痕跡が痛々しく残る廃墟の中。残されたアイトーンの黒々とした爆発四散跡に変化が生じていた。鎧甲冑が先ほどまで磔になっていた壁、そこから刺々しい茨が生じ人の体を成していく!ALAS!

 

 やがて茨は明確な輪郭を形作り、輪郭は鎧となり、首元切断面から延びる蔦は転がる兜首と繋がり引き寄せ――。「――ああ、やはり俺は死ねぬのか」――アイトーン健在!だがこれはありえぬ事態である!いかなニンジャといえど爆発四散してソウルが去ったのちにその場で復活した例は無し!それでは何が!?

 

「俺の意志は……俺の自由は……」((サンシタのジョルリ如きが思い上がるな。誰の何だと?))突如辺りに響くは、鬱蒼とした森の奥深くから聞こえてくるような、ジゴクめいた声。「待……待てアザ――アバッ!?そも奴を殺さず捕らえる必要がどこに――アバッアバババババーッ!?」

 

((やはり只のジョルリに意思などいらん。自我あるソウルを残すなど余計であったわ。貴様など……従順な肉体さえあればよい))「アバババババーッ!アババババババババーッ!」壁にもたれるアイトーンがストップモーションめいて激しく痙攣!((フォホホホホホホホ!))超越者にのみ許されたような邪悪な嘲笑が響き渡る!コワイ!

 

 やがて甲冑の内から何かが抽出され切れ……。「――AARGHHHHH……」アイトーンだった鎧甲冑は、その中身を棘の生えた蔦で置換した異形に成り果てた……!((ここで為すことはもう無い。去るがいいアイトーン――否、エリュシクトーンよ))

 

「AARGHHHHH……」アイトーンだったはずのソレはゆらり起き上がると、その蔦で出来た五体を鎧に詰めながらどこかへと、地下の暗がりへと去っていく。やがて謎の声の気配も消えれば、あとにはクローンヤクザの死体と瓦礫の山に、歪な形状のフラッシュメモリが転がっているばかりだった。

 

 

「ディセプション・オブ・ザ・シンフルスポイル」終わり




読んでいただきアリガトゴザイマスドスエ!

 ようやくイクサ描写に踏み込めました。今更ですがめちゃくちゃ設定画とかカードイラストからの妄想で書いてます。この回から独自解釈が加速していきます。現状、忍殺:罪宝の比率が9:1くらいになってる気がする……。
 アイトーンとエリュシクトーンについても元ネタのストーリー更新でも結局詳細が明かされなかったのでかなり勝手に使ってしまいました。モルガナみたいに今後のカードで登場したらどうしよう?
 色々不安でありますがダイジョブダッテと勝手に自己鼓舞して続けていきたいです。
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