忍殺×遊☆戯☆王 ディアベルスター・ザ・ブラックウィッチ 作:亜面瞳頭
呪いの遺物『罪宝』の探索者にして復讐者、ディアベルスター。過酷な探索行の束の間、憩おうとする彼女を因縁あるアウトロー集団『ゴブリンライダーズ』が襲撃。イクサの末、彼らは黒魔女から謎めいた『罪宝』の化身ポプルスを奪取し、逃走に成功する。だが、それはジゴクの追走劇の始まりであった!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
DOOM!DOOM!DOOM!DOOM!
「イピピー!」「ヘーハハハー!」「イィーハハー!」けたたましい退廃パンクをBGMに、貪婪の地下街を集団爆走する愚連隊の一団、ゴブリンライダーズ。勝利の凱旋めいて激走する彼らの積年の宿願、それは悪名高き『罪宝狩り』相手にキンボシを挙げること、それに今宵、ついにオーテが掛かっているのだ!
「いや実際よくやったぜお前!今度好みのカスタムを作ってやるよ!」「いいんですかい!アリガタキシアワセー!」集団の先頭を走るは頭目ガボンガのサイバネチューン獅子。その背に乗るもう一人は先のイクサの功労者、ポプルス略奪に成功したサンシタだ。今も運転するオヤブンに代わって戦利品を持つ大役を担っている。
「ついにやりましたぜオヤブン!」彼らの少し後ろを走るのは今宵の凱旋BGM担当のクラッタ。「ブーンのバカも一緒にいりゃいいのにさ」「アイツは一人で突っ走るからなァー……」クラッタの後ろにダグとミアンダが続く。ブーンはひとり先に勝利の凱旋走行を最速で独走中だ。
「しかしこれ何なんスかねぇ……?『罪宝』の割には生きてますよねぇ……?」「あの黒魔女が連れてたんだ、相当にヤバイ何かさ」ここまでの騒動も露知らず、ゴブリンの手の内で、ポプルスは主と遠く離れてなお熟睡中である。アカチャンソダッテネ!
「……で、この後はどうすんだボスゥー……?」「……」「……ガボンガ?」「……ア?……ああ、悪いな。少しな……」仲間と栄誉を分かち合う裏で、ガボンガのニューロンをよぎる、猛烈に良からぬ予感。確かにこれでは真の勝利とは呼べない。だが、協力者の情報から立てた戦略で、此度は憎き『罪宝狩り』を初めてフーリンカザンで圧倒したはず。それも策をいくつか残した上でだ。ここは素直に喜ぶべきなのだ。だが、何かがいつまでも引っ掛かる。
DOOM!DOOM!DOOM!DOOM!
イ……ーッ!ヤ……グ……ワ…………ッ……!
「……何か聞こえませんかい?」「アー?聞こえないよ。幻聴だろ、ソレ。そんなデカイ音いっつも聞いててさ、アンタ耳がオタッシャしてんだよ」
DOOM!DOOM!DOOM!DOOM!
イ……グワーッ!ヤ……グワ……ー……ッ……!
「いやクラッタの言う通りだ。後ろがやけに騒がしいぜェー……!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」
突如後方から聞こえるサンシタ共の大絶叫!クラッタのBGMを掻き消さんばかりに増大していく!それだけではない!後方の絶叫が増す毎に、旅団陣形めいた後続の走行集団が、その数を減らしていく!
「何だ!何が起きてる!」「オヤブン、それが俺らにも――」KA-DOOM!「ゲェーッ!」「グワーッ!」「クラッタ!?」突如後方から飛来した何かがクラッタの駆る怪鳥に着弾!跳ね飛ばされた爆音担当は相対的に後ろへ吹き飛んでいく!
DOOM!DOOM!D……O……O……M……!……!
騒音BGM沈黙!荒くれ達のパーティーは一転、オツヤめいたアトモスフィアに変わる!「……オイオイ!」乗り手を振り落とし倒れ伏した怪鳥とすれ違う刹那、その近くの地面に、ダグは後方にいるはずの配下のゴブリンがのびているのを見た。
「ありゃマッポの仕業じゃねぇよなァー……!」「……ア」「ミアンダ、何か見えたかァー……?」「アァ……!」「おいミアンダ――」「ニンジャナンデ――?」後方から迫る何かを見た紅一点が突如沈黙。三つ眼サイバー蛇の上で静かにショック症状を起こして失神したのだ。「……クソッ!」「ダグ!今度は何だ!」「ミアンダがやられたァー……!」
「ミアンダをお前のに乗せ換えろ!」「アイアイ……!」実際エマージェントな状況下、だがチーム随一の胆力誇る切り込み隊長はボスの支持を的確にこなした。乗り手不在の大蛇は所在無さげな様子で、猪の背で揺れる乗り手に寄り添うように並走蛇行する。
「オイ!お前!後ろを見てくれ!何が起きてる!」「アイエッ!……ハイヨロコンデー!」スケープゴートめいて状況確認に駆り出されるはポプルス確保ゴブリン。彼には想像もつかぬ何かが起きているが、先のイサオシによる気の高まりと、何よりオヤブン直々の指令の前に断る理由は無かった。だが……シー・ノー・イーヴル!
「……アイエエエエエ!アイエーーエエエエエエ!」振り向き恐慌する功労サンシタ!重点ミッション成功の精神高揚から幸い失神には至らず!果たして後ろに何が――ああ……!読者諸氏はどうか各自で精神安定手段を用意した上で続きをご覧いただきたい!
「ドーモ……!」
サンシタの一人を掴み片手に掲げたまま、その脚で走り迫るは、我らが『罪宝狩り』の黒魔女!だがそのオメーン下の眼は……!見開かれてセンコめいた残像描く点となった瞳孔は……!
ああ……ブッダ!『罪宝狩りの悪魔』の異名に違わぬ恐ろしき形相である!悪党共の最初の名乗りにようやく応えるように、シリアス以外の存在を決して許さぬアトモスフィアの中で、ジゴクめいたキリングオーラ纏う復讐鬼は遂にアイサツした。
「ディアベルスターです……!」
「お出ましだぜボスゥー……!」「……来たか」「ミアンダそっちに乗せてくれェー……守る余裕が無い」「……ブーンにも知らせろ」「IRC打っといたぜェー……」「よし……むしろここまでは想定通りだ!」ノー・フューチャーなアウトロー達にもシリアスな空気がにわかに立ち込める。尤も、元を正せばこの言葉に尽きる。インガオホー!
「オ……オヤブン!俺どうすれば!」「そいつ絶対離すな。あとミアンダも見とけ。後ろは……なるべく見るな!」栄光から一転、現世発アノヨ行きデスツアーに巻き込まれた功労サンシタ!平時の彼であれば失禁しかねない異様な雰囲気が背後から迫る!「アイエエエ……」カラダニキヲツケテネ!
かくして始まった蛇眼の追走劇!恐怖する悪鬼共を薙ぎ倒し、投げ倒し、先頭集団目掛けて狂走するは怒れる黒魔女!最高速の獣にすら追いすがる尋常ならざる脚力だ!その眼に浮かぶは、最早殺意すら含む断罪の心!彼女の異様なまでの昂りに、身に纏う『罪宝』すらも決死のイクサと感じたのか使用を促す!「……こんな奴らに使ってられるか!」傍目には虚空へ返答!コワイ!
「イヤァーッ!」黒魔女がその手に掴んでいたゴブリンを投擲!「グワァァアーッ!」「オイオイオイ……!」ミサイルめいた速度で高速カタパルト射出されたサンシタがダグの乗る獣へ飛来!「ダグ=サァン……!」「悪ィなァー……!」見事な操獣で回避!「アァァァアーーーッ!」ドップラーめいて悲鳴上げるサンシタ弾が特攻隊長の側方通過!彼方へ消える!オタッシャデー!
「ウ……ウオオーッ!」「俺達バッド・アス!」「ヤテヤルゾ!」後方では追い詰められヤバレ・カバレを起こしたサンシタがディアベルスターに無謀にも挑みかかる!英雄譚に残るだろう勇敢!だが!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」蛮勇!
「イヤーッ!」左側方を走るゴブリンの顔面に無慈悲なストレート!「グワーッ!」続けて首元を掴み「イヤーッ!」周囲を薙ぎ払う!「「「グワーッ!」」」使用後は前方を走る先頭目掛けて投擲!「イヤァーッ!」「グワァアーッ!」KA-DOOM!「「「グワーッ!」」」ストライク!キャッチ&リリース&リサイクルで環境配慮重点!ポイント倍点!
「無茶苦茶やりやがるゥー……!」「ヤツとの距離はどのくらいだ!?」「ま……まだ5小隊分はありますぜ!」「イヤァーッ!」「「「グワァアーッ!」」」「今ので3小隊だァー……!」「アイエエエエ……!」鬼気迫る黒魔女の猛攻を前に、守備表示めいて先頭を守る配下の壁は減る一方!だが更に受難は続く!「オヤブン!前を!」「……もう来たか!」
逃走続けた彼らの眼前には地下排水路を利用した違法取引埠頭の倉庫群!そしてこれ以上先に道は無い。文字通りのデッドエンドだ!「停止!停止―ッ!」追い立てられジゴクの門めいた倉庫の扉前に集結する生き残り共はラット・イナ・バッグ!ゴブリンライダーズ遂にオタッシャ重点か!
「トロイカ・グリアーレ=サン達は!?」「まだだ!こっちに来るにはまだ掛かる!」「協力者のセンセイはどこで何してるんだよ!?」「モウダメダー!」恐慌するサンシタの中にサレンダーを仄めかす者も現れる!だが!「落ち着け!」リーダー不屈!「三傑とセンセイが来るまで耐える必要はねぇ!俺たちはここまで追い込まれたんじゃねえ!逆にヤツを追い込んだんだ!」
カツリ、カツリ、断罪の執行者めいてゆらり歩み寄る黒魔女の足音が、埠頭の冷たいコンクリートに響く。「返せ……!」「アア……アア……!」鬼面が距離を詰める毎に、その足音が終点に向かって大きくなる度にサンシタの悲鳴がシンクロする。彼らとて、ミアンダのようにいつNRS(ニンジャリアリティ・ショック)を起こしても不思議は無い。オヤブンの激励でどうにか正気を踏み留めているだけなのだ。それでもリーダーが折れぬうちは彼らも折れぬ。「お前ら……ここからは半分賭けだ……!」
WHAM!WHAM!「ルオオオオオオ!」「アイエッ!」「何だ!?」ゴブリン背後の倉庫扉から聞こえる激しい衝突音と咆哮!一体内部に何が潜んでいるのか!?「こいつはとっておきだぜ黒魔女……!」荒くれの首領が額に汗を浮かべ、後ろ手に倉庫扉のパネルを操作する。「……イヤーッ!」ディアベルスター、一瞬の状況判断!良からぬケオスの予感を察知した黒魔女はこれを阻止すべく急加速し跳躍、サンシタ守備を跳び越えガボンガへのダイレクトアタックを試みる!そこに来たる……最速!「イピピピーーッ!」
ダグからのエマージェンシーIRC連絡を受けたブーンが遂に合流、神速の獣が倉庫屋根の向こうから飛び出した!更にその後背にタンデム騎乗するは……爆音担当クラッタ!「全員耳塞げ!」宙の黒魔女目掛けて再度ばら撒かれる……スタングレネード!「……邪魔だ!」だが同じ手は通じない!「イヤーッ!」ディアベルスター、首魁への直接攻撃を取り止め、空中でブーンの獣を足掛かりにトライアングルリープ!跳び下がりつつダガーを一閃して着地!少し遅れて閃光弾は全て切断不発!タツジン!しかして彼らのインターラプトは成功した!
ガゴンプシュー。ジゴク門めいた倉庫隔壁扉がゆっくりと開き、内に封じられていたモノが解き放たれる。そこにいたのは……ALAS!双角を持つ異形の爬虫類と形容すべきか、黙示録の獣と見紛うばかりの巨獣である!「ルオオオオオオ!」これぞガボンガの切り札!制御困難につき埠頭に封印していたコーポ試作の決戦バイオ兵器、大饕獣クレイジー・ビースト!
「ルウウウウウウウウ……!」 山のような巨体が眼前のガボンガに睨みを向ける。目元を覆う拘束具を兼ねたヘッドギアから覗く四つ眼が、レッドシグナルめいて妖しく発光している。この獣もまた、サイバネによる各種カスタムが施されているが、未だ誰も乗りこなせた例はない。「オットット……なあ落ち着け……落ち着けよ」サーカス調教師めいて眼前に両手かざし、獣をなだめようとするガボンガ。その手には……先日の黒魔女捜索行で回収した歪なフラッシュメモリ――『罪宝』!「……ッ!」思惑に気付いたディアベルスターは阻止に動く!だが!
「邪魔はさせねェー……!」「イピピーッ!シマッテコーゼ!」「全員で足止めしろ!オヤブンの為に!」「「「ウオオーーッ!」」」ゴブリン、土壇場で士気昂揚!「バカ共が……!」ここを勝利の分水嶺と見た無法者達が決死の突撃!語り継がれるべき勇断!
「イピピピーッ!」「クラエ!」「ゴアーッ!」「イヤーッ!」「「グワーッ!」」「オラァー……!」「ブモーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「オニイサン達に続け―ッ!」「イィーハハーッ!」「イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」蛮勇!
大挙する悪鬼共は最早眼中に無く!黒魔女は半ば反射でカラテを振るいながら巨獣を目指す!「イヤーッ!イヤーッ!イヤァーッ!」煩わしきは睡眠不足!ここまで無法なまでの暴れを見せる彼女だが、それでもなお普段通りのカラテ出力には至らず。尤も、それはゴブリン達からすれば僥倖だったと言えよう。本来であれば、モータルの身で怒れるニンジャの一撃を喰らえば即死は必至だからだ!
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」ベルトスクロールアクションめいてMOBラッシュを抜けたディアベルスターの眼前、遂に見えるガボンガの背中!「させるか……!」思惑阻止に向け更に疾走強化!だが!「よし……グッボーイ……グッボーイ……!」一手及ばず!黒魔女の接近に脇目も振らず、無法者の頭目は巨獣の注意を自身に向けさせたまま、巨獣の首元に備え付けた制御装置、その接続端子に『罪宝』――彼は与り知らぬがアイトーンというニンジャだったもの――を直結した!
KBAM!KBAM!KA-ZOOM!「グワーッ!」獣を中心に発せられる不快な圧力に、後方に弾き飛ぶディアベルスター!瞬間、彼女のニューロンによぎるモージョーめいた謎の羅列!それは自身が持つ『罪宝』を解放した時や悪夢に見るものと同様であった!
贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪
……あ……ざ……アザ……
贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪贖罪
「チィッ……!」忌々しい感覚を振り払うように飛び退る黒魔女。そんな彼女を睨むは封印の獣!「ルオオオオ……」先ほどまでとは違い、その巨体からはどこか理性を感じる。そして獣の制御装置から複数伸びるLANケーブルめいた茨のオーラが収束する先には……ビッグヘッド・ガボンガ!「……これで形勢逆転だぜ!」オヤブンゴウランガ!『罪宝』の力を用い、土壇場で巨獣を従える事に成功したのだ!「ルオオオオオオ……」主の命ずるままに!眼につく外敵は……破壊!「行け―ッ!」
「ルオオオオオオ……AARRRRRRRGHHHHH!」クレイジー・ビースト遂に疾駆!外付け増設されたマフラーが火を噴く!ZOOM!ZOOM!KA-ZOOM!その鈍重な巨体でコンテナを薙ぎ倒し!アスファルトを抉り巻き上げ!仮初の主の命令のままに敵に迫る!「イヤーッ!」ディアベルスターたまらず後方の倉庫上に跳躍退避!獣の進路上に居続ければバッファロー殺戮武装鉄道めいて轢殺は確実!
「AARRRRRGHHHHHHHHH!」だが巨獣は意に介さず!標的が屋根に立つ倉庫へ臆せず突進!KRAAAASH!違法物品収蔵倉庫無残倒壊!「イヤーッ!」ディアベルスターは倒壊寸前で斜向かいの倉庫上に跳躍移動!
「イーッピピピーーッ!」「オヤブンヤッター!」「ビッグヘッド・イチバン!」リーダーの華麗な逆転に配下が歓声を上げる!追い詰めているのだ!あの黒魔女を!彼らが宿敵を打ち倒す事を半ば諦め、彼女の蒐集物を略奪することに舵を切ったのも、ひとえに力量差からだ。それが今や、追う者と追われる者の立場が逆転しているのだ!
「まだまだァーーッ!」「AARRRRRGHHHHHHH!」ガボンガの意のままに、倉庫を全壊させながら巨獣がドリフトターン突進!大質量に物を言わせた疾走で黒魔女が新たに立つ倉庫に突撃!KRAAAAAASH!暗黒メガコーポ重役横領資産庫無残!「イヤーッ!」ディアベルスターは倒壊寸前で前方の倉庫上に跳躍移動!
「まだまだァーーッ!」「AARRRRRGHHHHHHH!」ガボンガの意のままに、倉庫を全壊させながら巨獣がドリフトターン突進!大質量に物を言わせた疾走で黒魔女が新たに立つ倉庫に突撃!KRAAAAAASH!「略奪者を容赦しない」の威圧ショドーが屋根にペイントされたヤクザクラン献上品収蔵庫無残!「イヤーッ!」ディアベルスターは倒壊寸前で隣の倉庫上に跳躍移動!
「まだまだァーーッ!」「AARRRRRGHHHHHHH!」ガボンガの意のままに、倉庫を全壊させながら巨獣がドリフトターン突進!大質量に物を言わせた疾走で黒魔女が新たに立つ倉庫に突撃!KRAAAAAASH!青眼の白いドラゴンがペイントされたカチグミ企業偽装製品保管庫無残!「イヤーッ!」ディアベルスターは倒壊寸前で跳躍移動!広場と化した倉庫群無残跡へと降り立つ!
「ハハァーッ!おかげで随分動きやすくなったぜ……!」「AARRRRGHHHHHHH……!」粉塵の中から現れ、前方の黒魔女を威嚇するように唸る大饕獣。その隣で不敵な笑みを浮かべ、巨獣を愛犬家めいて従えるガボンガ。一方的なまでに宿敵を追い立てられていることが愉悦なのだ!「オヤブンカッキェー!」その周囲では集まった取り巻き達が囃し立てる!
「フゥゥゥ……!」悪魔めいた形相を崩さず、『罪宝狩り』は呼吸を吐き出す。ポプルス奪還の為にはこの巨獣は何としても撃破せねばならぬ。あるいは奴らの制御から――。「……イヤーッ!」ディアベルスター、カイジュウめいた獣へ決断的加速疾走!その眼が捉えているのはある一点のみ。
「ヤケ起こしたワケじゃねえよなぁ!」対するガボンガ、弱者強者の逆転状況に半ば陶酔しながら再度巨獣をけしかける!「AARRRRRRGHHHHHH!」ビーストの愚直なまでの突進!大質量の巨体が速度を誤認させる突撃は、場所が開け回避が容易になってなお脅威!危うしディアベルスター!真正面はアブナイだ!「イヤーッ!」轢殺寸前で右方へ鋭角回避!そのまま疾走!
「ハハァーッ!追え追え!トッテコーイ!」ドッグラン満喫愛犬家めいてビーストに黒魔女追跡指示を掛けるガボンガ!「AARRRRRRGHHHHHH!」主の命ずるまま、巨獣は目と鼻の先の獲物を追いかける!「イヤーッ!」右手を地面に着けながら、ディアベルスターはスライディングを交えて鋭角ターン!「AARRRRRRGHHHHHH!」獣は数呼吸遅れて進路変更!執拗追跡続行!
「イヤーッ!」左手を地面に着けながら、ディアベルスターはスライディングを交えて鋭角ターン!「AARRRRRRGHHHHHH!」獣は数呼吸遅れて進路変更!執拗追跡続行!
「イヤーッ!」右手を地面に着けながら、ディアベルスターはスライディングを交えて鋭角ターン!「AARRRRRRGHHHHHH!」獣は順応し即座に進路変更!すぐに背後を追う!
「イヤーッ!」「AARRRRRRGHHHHHH!」「イヤーッ!」「AARRRRRRGHHHHHH!」ターン!追跡!ターン!追跡!「イーハハハー!」「見せろ!ブザマをもっと見せろ!」配下ゴブリン達もこのドッグファイトめいた追走劇を余興じみて観戦する!
「フゥーッ……!フゥーッ……!」「しんどそうだな黒魔女!だがこれで終わりだぜ……!」呼吸を断続的に吐き出すディアベルスターがにわかに減速を始める!彼女のニンジャ持久力もいよいよ限界か!「AARRRRRRGHHHHHH!」背後から依然としてクレイジー・ビースト迫る!開けた埠頭のあちこちに爪痕と破壊跡を残しながらついに彼女に追い付かんとする!「オヤブンヤッター!」「俺たちでキンボシ・オオキイだ!」「ウォォォオオン!」勝ちを確信したサンシタの中には感極まり咽び泣く者すらいた。むべなるかな、彼らの悲願が達成されようとしているのだ!
「トドメヲサセー!」誰もがこの後に見えるであろう黒魔女敗北情景をニューロンに思い描いた。巨獣がその前肢でディアベルスターを叩き潰すまであと10歩分!7歩分!4歩!1歩――!5歩!10歩!10歩!10歩!10歩――!?距離が縮まらない。ディアベルスター、カジバヂカラめいて加速か!?否!彼女は既に――停止している!
「AARRRRRRGHHHHHH!?」眼前の標的が直立している様を、巨獣は訝しんだ。いくら肢を動かそうとも距離が縮まらないのだ。地面に貼りついた四肢がいくら力をこめようと――貼りついた?
「バカナーッ!?」オヤブン驚愕!おお……!ゴウランガ!埠頭のコンクリート床にビーストの四つ足を瞬間接着剤めいて固着させる超自然の力を見よ!最早お馴染み、黒魔女のクッツキ・ジツだ!先の熾烈なチェイスの最中、ディアベルスターはジツを地面に放ちながらコース誘導、四肢をジツに吸着させることで巨獣を次第に減速させ、地面に繋ぎ停めたのである!
「いい加減にしろ……!」未だ眼を見開いたまま、不動のビーストへ向かってツカツカと歩み寄る黒魔女。その眼が視界に捉え続けていたのは――首元の制御装置!「ヤメロー!ヤメロー!」彼女の思惑に気付いた首領が無意味に制止する!だが!「イヤァァーッ!」無慈悲!
THRAAASH!KBAM!KBAM!KA-DOOM!制御装置無残破壊!「イヤーッ!」破壊済み装置を二度と使えぬよう、忌々しく獣の口内に蹴り込む!トリックシュートにつきポイント3倍点!「AARRRRGHHHHHHHH!?」激しく痙攣する巨獣!その首元からガボンガに伸びていた茨ケーブルめいたオーラが……散逸していく!「オイオイオイ……!」「ア……アア……!」
「AARRRGHHHHH……ルウウウ……!」仮初の支配から抜け出した巨獣の眼前には、狼狽するゴブリン達。先ほどまで眼下にいたはずの黒魔女はすでに視界外!そして眼についたものは……破壊!「ルオオオオオオ!」クッツキ拘束解放!原始的衝動に駆られた獣が狂気突撃開始!ヤバイッテ!
「「「アイエエエエエエーーッ!」」」見苦しく右往左往するサンシタ共!解き放たれた巨獣のスタンピードが間近に迫る!物事の吉凶は目まぐるしく流転する。全てはサイオー・ホース、それを彼らの間近に迫っていた勝利の予感が忘却させていたのだ。
「……ア……?ア……」そして最悪のタイミングでミアンダがNRSより復帰!「ア……?アンタそれ――」「オネエサン!すぐにここから――」状況理解が出来ていないであろう彼女にポプルス確保サンシタが退避を促す!だが――。「――あのチビチャンはどうしたのさ!」「エッ?」自身の腕の中、先ほどまでの耳を覆いたくなるような喧騒の最中でも眠っていたポプルスが――いない。
「ルオオオオオオ!」前方集団を破壊せんと疾駆するクレイジー・ビースト!その眼前にフヨフヨと飛び来たるは蛇眼の化身!圧倒的体格差!アブナイ!このままではモンスタートラックの進行方向に飛び込む小動物めいて悲惨死――「ルオオオオオオーッ!?」巨獣が悲鳴を上げる!何が起きているのか!?
「何だありゃ……!?」巨獣の真正面からその眼を見開き、裂けんばかりに大口開けるポプルス!その口から01の風が吹き込み、業務用クリーナーめいた強烈な吸引力でビーストを引き寄せ始めているではないか!そして引き寄せるだけに留まらず!次第に巨獣の輪郭が揺らぎ、その身体が01の流れとなってポプルスの中に吸い込まれていく!フシギ!
「ルオオオオオオーッ!」抵抗空しく01分解消失し、ポプルスの内に格納されていく巨獣!重量差、体格差、容積差、互いの物理肉体が持つはずの差を一切無視した、超自然の捕食!やがて01吸引が獣の全てを呑み込むと、蛇眼の化身は01を纏ってIRCアバター変更めいて自らの物理肉体を再定義し――大饕獣のテクスチャを描き替えたような、赤紫の巨獣へと変貌した。
「GOAAAAARRRRRRRRR!」「「「アイエーーーエエエエエエエエ!」」」蛇眼の大炎魔と化したポプルスのジゴクめいた咆哮!悪党共また恐慌!「オ……オヤブン!」「モウダメダー!」度重なる手札事故めいた不条理の連続にサンシタの士気激減!サレンダーマッタナシか!「……!待……待て!あれを見ろ!」
「GOAAAARRRRRR!」ゴブリン達を背に、大炎魔が猛突進!その先には……ディアベルスター!元より得体が知れない『罪宝』由来の何かだったが、今の姿になった蛇眼の素体はあのクレイジー・ビースト。であれば眼についたものは……破壊か!
「ヤッター!サイオー・ホースだ!あのチビチャン、自分の飼い主のことを忘れてますぜ!今のうちに撤退――」「イヤァアアアーーッ!」「GOAAAAAARRRRR!」「……ナンデ?」咆哮上げてゴブリンライダーズ目掛け飛び来る大炎魔。その首元に先の制御装置よろしく枷めいて嵌められている赤紫の鎖は……万物を繋ぎ止めるクッツキの力!
自らに突っ込む蛇眼の巨獣を、ディアベルスターはジツの鎖に繋ぎ、突進を闘牛士めいていなすとそのまま振り絞らんばかりの膂力で振り回し!自身を中心に円弧描くように炎魔を旋回させ!反動と慣性を利用して投げ飛ばしたのである!
「形勢逆転だ……!」「ア……アァ……!」ここまで積もり積もった怒りを、鬱憤を、全てぶつけるが如く!黒魔女は冷ややかに、だが晴れやかにフィニッシャーを叩きつけた!
「三傑が/来てさえいれば/お前なんか」
アウトロー達を影が覆う刹那、誰かがハイクめいた恨み言を詠んだ。
「……イヤァァアーーッ!」KRAAAAAASH!
「「「「「グワーーッ!」」」」」
かくして唐突に始まった不毛なイクサは、ようやくここに終結した。「……」厄介事を引き起こした無法者共はと言えば、投げられた巨体の下でのびていた。暫くは再起不能であろうが全員が生存。呆れるほどの悪運と生命力である。カラダニキヲツケテネ……。
「…………ファァ……」数瞬前までの喧騒が、憤怒が幻だったかのように、埠頭は静まりかえっていた。周囲には瓦礫と倉庫収蔵品の数々が散逸し、その只中で、サイバネ獣共が巨獣の下敷きで失神している主達を心配そうに覗き込んでいる。胡乱ここに極まれり。
「……眠い」嵐の如く過ぎ去ったケオスの跡地で、黒魔女はここまでの動乱など最早無関心かのように、だが切実にこぼした。
「ドラマティック・スネークアイ・チェイス」終わり
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「シンフルスポイル・オブ・スランバー・モーリアン」
「次はこうはいかねえぞォー……!」「クビヲアラッテマッテロヨー!」実際熾烈なイクサから数刻後、サンシタめいた――そのものな捨て台詞と共に敗走するゴブリンライダーズを侮蔑的な眼で、気怠く見送るディアベルスター。奴らはまた性懲りも無く挑んでくるだろうか。追う気にすらなれなかった。
「……整理しよう」この数時間で増えた情報が多すぎる。無法者共に情報提供をし、自らの動向を探っていたと思しき、ついぞイクサには現れなかった何者かの存在。頭目ガボンガが手に入れたという『罪宝』が刹那に見せた、ニューロンに焼け付くあの景色。そして――ポプルス。
「GOARRR」UNIXとは無縁の『罪宝』から産まれ、フラッシュメモリと化した『罪宝』宿した大饕獣を喰らった謎めいた存在。頭頂に蛇眼戴く巨獣の姿に、妖精めいた以前の面影は微塵もない。先ほどは自身の変化に戸惑っていただけなのか、今はただ大人しく黒魔女の近くで佇んでいる。
伝承やカトゥーンのフェアリーと呼ばれるものは夢や神秘領域――俗にオヒガン――と関り深いことが多いが、この奇妙な元小動物が見せた01の力の片鱗は、むしろそれとは対極の電子の世界――ハッカー達の言説を借りればコトダマ空間――を想起させる。あるいは両方か。
対極にあると思われている2つの概念は実は非常に近しいのではないか?この超自然存在はその証左なのでは?仮にもローグ・ウィッチ、ソフトウェアをはじめとした電子の遺産――科学文明の賜物を扱っているはずの人種にあるまじき狂人めいた考察が、ディアベルスターのニューロンを駆け巡る。
「ハ……悪い夢を見過ぎてるな」首をかしげる巨獣を前に自嘲する。「あらそう。それならいいものあげる」「……ッ!」突如背後から聞こえる声!「GOAAARRRR!?」そして瞬間、炎魔の身体の輪郭がグリッチノイズめいて01散逸し、依り代の巨獣とポプルスに分離していく!疲労蓄積しているディアベルスターとは言え、そこらのヨタモノに接近を許すほど警戒を怠りはしない!つまり後ろに立つ存在は……今の彼女を容易に出し抜ける野伏力の持ち主!
「イヤーッ!」決断的に叫び振り向きざま、ダガーを横に薙ぐ!刃が止まる!「アハ!危ない!」振り向いた黒魔女の至近で揶揄うような笑みを浮かべるのは、真白い装束に身を包んだ、ステレオタイプな魔法使いめいた尖り帽の女!
「……リゼット!」「その名前で呼ばないでくれる?」声色に合わせて彼女の表情が冷たく豹変する。二面性!「ドーモ、ゴブサタしています。ディアベルゼです」見た目麗しく、実際可憐!だが、手に持つマジシャンズ・ロッドめいたボーで黒魔女のダガーを抑え込める膂力からして、彼女もまたニンジャ!
「……ディアベルスターです……!」儀礼に則った黒魔女の返答は、絞り出すようなアイサツだった。「あのケモノ達を仕向けて正解だったわ。なかなかのタノシイが観れたもの」「お前が奴らを……!」突如現れた闖入者にしてゴブリン達の協力者、それは黒魔女が幼少を共にした、かつての家族。
「何が目的だ……!」「ンー、別に貴女に用は無いのよね。でも、実際邪魔だから」「何……あ……」刹那、霞掛かる黒魔女のニューロン。視界がぼやけ、その意識が深みに沈んでいく。ジツか――否。至近距離で眼前にかざすように広げられた『白魔女』の右手。それは彼女の眼と同様に、UNIXLEDめいて黒紫に妖しく光る、この世ならざる異形。相対するものを昏倒させる呪いの遺物――微睡の罪宝『モーリアン』。彼女もまた『罪宝』を求め、また行使出来る存在なのだ。
「このチビチャン貰ってくわね。貴女なんかには過ぎたオモチャよ」冷ややかに微笑む『白魔女』ディアベルゼ。埠頭の冷たい床に倒れ伏すディアベルスターの視界には、白魔女の腕の中で元の姿に戻り、再びの眠りに落ちた桃紫の幻妖の姿があった。「……リゼッ……ト――」黒魔女は沈黙した。
「……さて――」「ヒャッキ!」白魔女へ突然のアンブッシュ!「イヤーッ!」「グワーッ!」だが乱入者が被弾!「……あら、貴方まだいたの」「グッ……胸騒ぎがしたんでな……!」ボーで地面に伏せられているのは、我らがオヤブン、ビッグヘッド・ガボンガ!先の戦略的撤退の後、第六感めいた直感に従い、一人埠頭に戻ってきたのだ!
「アンタが直接手を下すって話じゃなかったろセンセイ……!コイツは俺たちがずっと追ってる獲物だ……!」「イヤーッ!」打擲!「グワーッ!」「まだそんな事信じてたの?貴方達、都合が良さそうだから使わせてもらっただけよ」「悪党にもルールや矜持ってモンがあるんだぜセンセイ――グワーッ!」
「ンー、もう用済みだから貴方も邪魔ね。ア、そういえば貴方達2人ともお尋ね者なのよね?」「だったら……どう……した――」オヤブン昏倒!「ついでに社会貢献させてもらうわね。私、親切な白魔女で通ってるから」悪意に満ちた微笑と共に、携帯UNIX端末からセキュリティ緊急発信シグナルを掛け、白魔女は眠れる01の化身片手に埠頭を去っていく。「それじゃ貴方達、カラダニキヲツケテネ!」
真の静寂満ちるケオスの跡地。その中心で倒れる二人の罪人を照らす白熱照明が、地上の月に代わって「ショッギョ・ムッジョ」と呟いた。
「シンフルスポイル・オブ・スランバー・モーリアン」終わり
「テイルズ・オブ・ザ・ホワイトフォレスト」に続く
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◆罪◆
罪宝ニンジャ名鑑#XXXXXX【ビッグヘッド・ガボンガ】
サイバー獣を従えるアウトロー集団『ゴブリンライダーズ』の頭目。
人獣一体の『エクシーズ・タクティクス』を得意とするほか、時にヘンゲヨーカイ・ジツによる荒々しいカラテを振るう。
憑依ソウルによる不可逆の永続的異形化から居場所を失った彼を受け入れてくれたのは、同様に社会から排斥されてきたケモノ・パンクス達のコミュニティであった。
◆宝◆
読んでいただきアリガトゴザイマスドスエ!
サンシタ飛び交うタノシイ祭り、もといスネークアイ追走劇回です。言うまでも無く今回の黒魔女は終始追走劇イラストの顔してると思います。何事も暴力で解決するのが一番だ!でも……アイエエエ……次回はだいぶ空気が左から右寄りになるよぉ……。重いシリアスになりすぎないよう、自我研修しつつハゲミナサイヨ!
◆寝不足◆本話は青少年の健全な睡眠・安眠奨励のなんかに貢献しています◆解消◆