変態美少女の脳内にすんでます。怨霊じゃありません   作:昇竜ケンシロウ

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3話目


失職した原因が教え子に手を出したからというのが良い

――あいつが良さそうだな

 

 

 夕日に照らされた公園の中。隅の方に作られた手作り感あふれる住居の住民を眺めながら、居並ぶホームレスたちの詳細情報を見る。

 

 一人目は、駄目。借金で身を崩した典型例。二人目は前科持ち。こいつもペケだな。

 

 金を稼ぐという目的がある以上、一番に優先するべきはそいつの人間性だ。能力やらは二の次三の次で良い。

 

 こんな所に落ちぶれている人間に求めるものではないかもしれないが、そこはそれ。せっかく便利なものがあるんだから納得がいく人材を引き当てるまでそこらの公園を回る事も出来るし、ちょっと時間差は出来てしまうが他にも金稼ぎの手段はある。

 

 求めるのは大人しい性格で、適度に現状に絶望している奴。飴を与えれば深く考えずにこちらの言う通り行動する従順さがあればなお良し。

 

 そう思ってホームレスを眺めていたのだが、運のいい事に最初の場所でこれならと妥協できる人材を引き当てることが出来たらしい。

 

 

――野茂武夫、28歳。犬耳の成人男性だ。うん。前職は小学校教諭、うん。うんうん

 

 

 他のホームレスよりも若干身ぎれいなその男は作りが荒い自身の住処を改善しようと四苦八苦しているようだった。いきなり多量の情報が流れてこないよう慎重に情報を見ていくと、1年ほど前に失職した後なんとか仕事を見つけようとして失敗。家族からも縁を切られたため縋るものもなくこの公園へと流れついたと書かれている。

 

 いいね。

 

 なによりもその経歴が実にいい。非常に自分好みだ。

 

 

「お、当たり引いた?」

 

――ああ。前職が教職である程度のモラルを期待できるし、ホームレス落ちしてからそれほど時間も経ってない。なによりも

 

「なにより?」

 

――失職した原因が教え子に手を出したからというのが良い

 

「一番ダメじゃねーか」

 

 

 珍しく、至極真っ当なりんねの言い分に肯定の意思を伝える。が、今回に限って言えばこれが良いのだ。

 

 まず、野茂の失職理由である教え子への性的なイタズラだが、これは冤罪だ。自分の眼で直接見て、野茂は他者の罪を被せられたというのが見て取れる。そもそも経歴と過去の行動を見る限り、犯罪を自主的に犯すほどの衝動性を有している男とは思えないのが野茂武夫という人間だ。

 

 良く言えば真面目な優等生。悪く言えば自主性のない従順な小市民。間違っても上司にしてはいけないタイプの人間だが、指示を出す人間が居れば歯車としてきちんと機能する。前世の日本人のような特徴は扱う側の視点から見ると非常に使いやすいものだ。

 

 そしてなによりも野茂武夫という男は、りんね位の年頃の少女に極端に弱いというのが大きい。

 

 

――一度人生をめちゃくちゃにされてる男だからね。りんねくらいの年頃の女の子がトラウマになってるみたいだ

 

「それ、私ちゃん様ほどの美少女が話しかけても大丈夫か? いきなり発狂したらか弱い私ちゃん様の身の安全はどーすんだよ」

 

――そこはまぁうまく調整すれば大丈夫かな。あまり接触を多くしないで利益を与えてやれば上手く転がせると思う

 

 

 野茂はこちらに対してただ少女であるというだけで常に引け目を感じる精神状態だ。基本的にこちら側が主導権を握れると考えれば非常にやりやすいといえるだろう。

 

 まぁ、まずは利益を与えるのが最初か。こちらとの繋がりが利益になると分かれば手綱も掴みやすい。

 

 相手の事情を一方的に知ることが出来るのは大きなアドバンテージだが、自分はそれほど頭の回転が良いわけではない。この能力も使いこなせたとは言いづらい現状、慎重に慎重を期してちょうどいいくらいだろう。

 

 

――そうだな。まずは彼にこちらの話を聞くメリットを感じさせよう。りんね、なにかそこらの自販機で飲み物でも

 

「分かった。おっさん、ちょっと話があるんだが」

 

「……うん?」

 

 

 自分が話を終える前にりんねが野茂に話しかける。その言葉に野茂もこちらに気付いたらしく、視線を向けてきた。

 

 おっと、少し先走ってるかな。いや、まだ中学生の少女に求めすぎるのも問題か。そう思い、重ねて言葉をりんねにかけようと思念を飛ばし――

 

 

「これやっからちょっと話しようぜ!」

 

 

 いきなり片方の靴下を脱ぎ、それを野茂に差し出したりんねの姿に思考を吹き飛ばされた。

 

 

「……………………は?」

 

「好きなんやろ? 私ちゃん様成分が半日分染み渡った極上品やぞ」

 

 

 何が起きたか分からず完全に硬直した野茂さんに、一点の曇りもない笑顔でりんねはそう言い放った。

 

 

――染み渡ってるのは君の頭の方じゃないかな? 頭カビてらっしゃる???

 

「はぁ? 私ちゃん様の脱ぎたて靴下とかおまっ! ブルセラ持ってったら天元突破で青天井な値段になるに決まってんだろうが!?」

 

――いきなり靴下渡されたら普通キ〇ガイかなんかだと思われるに決まってんだろうがいい加減にしろ頭どピンク!

 

 

 フリーズしている野茂さんの目の前であるが、我慢できなかった自分がりんねを悪し様に罵るとりんねも負けじと口角泡を飛ばす勢いで反論をし始める。

 

 全くついていけてない野茂さんの目の前で。

 

 恐らく時間にして5分ほどだろうか。激しい言い争いを終え、互いに手が出せないという事実に今更ながらに思い当たった辺りでポン、と誰かがりんねの肩を叩いた。

 

 誰かというか、野茂さんである。

 

 

「……あー、嬢ちゃん。なんだか分からんが、悩み事なら話くらい、聴いてやれるぞ?」

 

 

 おそらくなけなしの小銭で買ってきたのだろう、自販機で売っている暖かいココア缶を差し出す野茂さんの姿に自分は激高していた感情がスンっと落ち込むのを感じる。

 

 こんだけ有利な条件で主導権あっちに渡しちまったよ。

 

 ま、まぁ心情的な面でなんか予想よりも好意的な印象だし結果オーライ。オーライだな。ヨシ!




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