気ままに穹キャス   作:ヒアンシー親衛隊

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 前回のあとがき(今は消しました)に書いたのとまったく違うモノですけれど、ちょっと書いてて辛くなって息抜きに書いてたら先に出来ました。
 いまさらですが穹くんがちょっとまともなのはご容赦ください。今後もこんな感じです。


家事をして一緒にお風呂に入るだけの穹キャス

「穹……そこの卵を割って貰えますか?」

「卵だな」

 

 卵はスープの中に入れるらしい。

 仙舟の料理にも似たようなものがあったが、オンパロスにも存在するようだ。

 

 キャストリスは料理が苦手だと言っていたのだが、こうして二人で過ごすうちにだんだんと上達していた。

 キャストリス曰く、穹に食べてもらいたいと言う気持ちであったり、単純に一緒に料理をしているうちに上達したり。楽しそうに上達した理由を語ってくれて、穹も嬉しく感じた。

 

「昼食を終えたら、掃除しようと思うんだ」

「あ、私にも手伝わせてください」

「もちろん。助かる」

 

 穹がまたオンパロスを離れるまであと数日。

 その前になるべく家を綺麗にしておきたいと思った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「よし……!」

 

 まずは食器類を洗って、その流れのままにキッチン周りを片付けることにした。

 とはいえ普段から綺麗に使っているので、目立つ汚れはない。それでも使い古した布で拭くと油汚れが取れていく。

 

「そういえば……」

 

 以前トパーズから洗剤類を贈られたのを思い出した。

 アベンチュリンからは、目も眩むような高級品が送られて却って困ってしまったのに対し、トパーズから送られてきたものは日用品の数々だった。

 アベンチュリンもトパーズも、それぞれいかにもな品で祝ってくれたのだ。アベンチュリンに関しては、あえてやっているのだろう。

 

 奥の収納にしまっていた洗剤を引っ張り出してきて、早速使ってみる。

 

 キャストリスも天外の掃除用品に興味があるらしく、どこか楽しそうに穹の手元を見つめていた。

 

「おぉ! すごく落ちる」

 

 角の油汚れはどれだけやっても落とせないと思っていたのだが、洗剤を使ってみると魔法のように一瞬で綺麗になった。

 キャストリスも目を輝かせつつ、穹が使った洗剤を手に取る。

 

「すごいですね。まさかここまで簡単に綺麗になるなんて…………おや?」

「なんだかやけにヌルヌルするけど。それ以外は文句がないな」

「あの、穹? 大きな赤文字で、必ず手袋をするようにと記載されているのですが……」

「…………」

 

 

 ものすごく手が荒れたこと以外は、完璧な洗剤であった。

 

 

 

 ☆

 

 

 キッチン周りの後は、それぞれの部屋の掃除。

 寝室は一緒だけれど、二人とも物が多いこともあってそれぞれ自分の部屋を持っているのだ。

 

 例えば穹の部屋はオンパロス内で集めた収集品。トロフィーや、大きなアザラシ。それから贈り物なんかも押し込まれていて。半ば展示場のような部屋となっていた。

 くつろぐためのリクライニングチェアはあるけれど、あまり使っていない。

 

 穹の部屋は軽く掃除するだけで、次はキャストリスの部屋。

 キャストリスの持っていた本や、蝶の標本。ドライフラワーや、手芸の道具。

 穹の贈ったローズマリーのアロマが、きっと長い時間を過ごすであろう窓際の椅子の近くに置かれていたことに、どうしようもない喜びを感じた。

 キャストリスと愛し合って初めて知ったことだけれど、幸福とは状態と言うよりも感情で、淡いものであったり激しいものであったりする。激しい感情に襲われたらつい行動に出てしまいがちなもので、キャストリスをぎゅってしたくなった。

 

 とはいえまじめにキャストリスは掃除をしているので、穹もその気持ちを抑えて高い位置から埃を落としていく。

 

 キャストリスの蔵書に、以前よりも恋愛に関するものが増えていることに、一層先ほどの気持ちが増してきて。

 

「キャス……」

「? どうかしましたか?」

「ぎゅってしたい」

「え? ど、どうぞ」

 

 と、手にしていた布巾を横において、腕を広げてくれた。

 

 柔らかい感触に加えて、甘い香り。古い本の匂いと、掃除で落ちて来た埃のにおい。抱きしめている間キャストリスをしっかりと見ることはできないけれど、その代わりにいつもよりも彼女の声がずっと近くで、深く響くように聞こえる。

 抱きしめた時に小さく零れた音。僅かな呼吸にすら、幸福を感じているのが分かる。その事実にさらに幸福感が増した。

 

「急に悪かった」

「い、いえ。私も嬉しかったですから」

 

 恥ずかしそうに言うキャストリスに、穹はもう一度強くキャストリスを抱きしめてから、また掃除を再開した。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 バスタブタイプのバルネア。ここも当然普段から清潔に使っているのだが、やはり見逃していた場所もあって。

 掃除が終わった後に入ることを考えると、強力な洗剤は使いたくない。

 ブラシやスポンジで擦るだけで汚れが落ちていくので、その辺は心配ないな。

 

 掃除をしていくうちに穹は、だんだん楽しくなってきていた。汚れが落ちるのなら、もっともっとと。

 

 勢いよくバシャバシャと掃除を続けていたものだから、服がびしょ濡れになってしまった。

 

 キャストリスも他の掃除を終えて、バルネアの方に顔を出してきた。

 

「もうこのままお湯に入ってしまいましょう」

 

 と言われて、キャストリスと二人で湯に浸かる。以前はどぎまぎしてしまっていたけれど、言ってしまえば慣れた。

 

 近くに寄り添って、お互いの体温を感じる。

 少し温度の高いお湯に、体温も少し高くなっていた。潤って、しっとりとした肌は張り付くようで、いつもよりずっと深く触れ合えているように思える。

 やはり以前の別れの時の影響もあって、穹自身キャストリスとハグするのが好きだし、キャストリスはそれ以上。

 湯船につかりながらもさり気なく触れ合い、ついには抱擁を交わし、啄むようなキスを重ねる。

 

 お互いに耐えられなくなって、代わりに強く抱きしめた。

 

 穹はまたそう遠くないうちに星穹列車でまた旅に出る。キャストリスはオンパロスに残るので、無責任なことはできないのだ。

 代わりに、お互いが痛みを感じるほどに力強く抱きしめて、首筋にキスをして、時には噛む。

 

 たとえお互いを傷つけても構わないほどに愛情が深く、だからと言って無責任になれる程浅くない。

 

「キャス。もうちょっと……そう遠くないうちに一緒に……ずっと一緒にいたいんだ」

「はい……っ」

 

 のぼせるまで湯に入っていて──あるいはずっとのぼせていたのか、ふらふらとバルネアを出て。水を飲み、二人で飼っているキメラと、ポポンに餌をあげて。

 沈み込むように深く、溶けあうように抱きしめあいながら、眠りについた。




オンパロスが仮想世界なのではないかと言う考察を見ましたし、筆者も考えていたことではあるのですが、万が一そうならそれ前提で一から書き直します。
ピノコニーの最終章(?)がオンパロスの後というのが、全員そっちに移住するからだとしたら、仮想世界説の後押しですが。

キャストリスと穹はそれでも愛を育めるからまだいいのですが、個人的にはポポンが存在しないとか耐えられないので、何とかそれ以外で許してください。私のポポン……
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