多分遊戯王世界に転生したんだけど事件にも巻き込まれずアラサーになってしまった 作:道長(最近灯に目覚めた)
正直迷走気味なので、気に入らなければ容赦なく0評価でもぶち込んでやってください。反応求めておいてこれはな……て感じです。多分年度末年度始めは投稿出来ないので、生存報告を兼ねてのレベルとなっております。
ちなみに個人的なお題は『刻印を持つもの』誕生秘話です。
なんやかんやあったが真月とイクスが正社員になった。そして羽の生えた大男が社員見習いとして自分の所に来た。裏取引はあったのだろうが、下手にツッコむとやぶ蛇になりそうだから黙っておく。報告さえしておけば間違いないでしょう。
本来なら真月とイクスは正式な部署に配属予定、特にイクスはほぼ研究部に決まっているそうだが、3日後のイベントまでは自分の部下だ。
「改めまして、遠路はるばるようこそお越しくださいました。リシド様」
「失礼する。以前も言ったが自分に敬称は不要だ」
「そういう訳にはまいりませんよ。リシド様。貴方様は海馬社長の対等な協力者なのですから、ご理解ください。ではマリク様の最終打合せが終わるまで、こちらでおくつろぎください」
「どうにもむず痒いな……」
褐色の肌にスキンヘッドの屈強な大男、ただし恰好はあの如何にもな衣装ではなく、紺のスーツに黒のネクタイという出で立ち。漫画遊戯王で主要敵キャラとして登場したリシドの案内役が今日の自分の仕事だった。
イシュタール家の家族として迎えられた今でも、使用人時代の習慣が抜けきらず、元々の面倒見の良さもあって、墓守にして考古学研究者になったマリクの秘書官として付き添っていることが多い。
今回は以前企画したイベントの打ち合わせと、千年アイテムの研究進捗状況について話し合っているようだ。最初はリシドも入るのだが、機密度の高い話になると、気配を察していつも席を外す。流石出来る男は違う。
「しかし、最近はマリク様も千年アイテムだけでなく、世界各地の遺跡を調査されているんですよね。最近は南米に行かれたとか。正直大変なのでは?」
「確かにな。だがKCのバックアップと技術開発で随分快適に活動させてもらっている。これで文句を言ったら、太陽神でなくとも罰を当てるだろう」
「反応に困るんですが……。ジョークでしょうか、本気で言っているのでしょうか」
「ジョークだ。仮にも三幻神でも最高位にあたる太陽神だ。本来は懐の広い神だよ」
口許が薄く笑っている。実際に神に焼かれている人間に言われると、本気でも冗談でも笑えないから困る。
そこから2,3世間話をしたところで、本題を話すことにした。リシドとは数えるほどしか話したことはないが、本来悪事をするような人ではないと思う。だから恨みを買っていることを理解してるし、口さがない連中の発言も、真摯に受け止めつつ、贖罪として今回のようなイベントにも協力してくれるのだ。
だがそこまでやっても、未だに被害者や仄暗い連中に狙われている。それほどDMの存在は大きいのだ。色々工作して、消えた闇マリクを双子の兄のナムという存在に仕立て上げて、大体の罪は押し付けたが、それでも実行役のリーダーとしてリシドの名前を出さずには収拾が付かなかったし。
いくら本人の腕が良いとはいえ、未だに危険は多い。マリクも神のカードがない以上、デッキはパワーダウンしているだろう。イシズ姉さま? 直接グールズに関与していた訳では無いし、あの人が負けるのはよっぽどだろうから、私の力じゃフォローしようがないと思う。
「ところでリシド様、最近DMの方は?」
「発掘作業と書類整理に追われていてしばらく、だな。プレイしたとしてもマリク様やイシズ様との手遊びだ」
「なるほど。となるとデッキはほとんど更新していないということでしょうか」
「そうだな。細かな所の入れ替えはあるが、基本はバトルシティの頃と変わらない。なに、もう現役ではない。今回のイベントなら、むしろ当時のままの方が観客受けが良いだろう?」
「イベント的にはそちらの方がありがたいです。ただ、受け取っていただきたいものがありまして」
「気持ちは嬉しいが、こういうものは受け取らないようにしているのだ」
「賄賂っぽく見えますが、どちらかと言えば警備周りの問題ですよ。社長と副社長には了承を得ております」
なにより社長たちにも報告したが、今回のイベントの企画が始まった時から少しずつ集まってきたんだよね。この子達。リシドがパックを買っていたら、自然にそっちに行ったのだろうが、気配がないから自分の所に来たに違いない。気になって10パック買ったら、その全部に入り込んでいた。何かしら意図があるのは間違いない。
渡したカードを何枚か確認すると、最初は訝し気だったが徐々に真顔になっていた。
「これが今のDMの普通なのか?」
「普通ではありませんよ。かなりの上澄みではあります。方向性はリシド様の元々のデッキと沿う形になっていると思うのですが」
「確かに合ってはいるが……、いや。ありがたく受け取らせていただく。つまらない意地で有事の際、足を引っ張るのは避けたい」
「……恐らく精霊憑きなんですよ。このカード達。貴方のような方に託せるのは、こちらとしてもありがたい限りです」
精霊憑きと聞くと凄そうに聞こえるが、爆弾でもあるからな。怒りを買うと、露骨に引きが悪くなる。やきもち焼きも多いから、複数抱えるのも難しい。基本的に多頭飼い出来ないペットみたいなものだ。カテゴリー内だけなら余り影響はないし、例外はいるけど。
それを聞いたリシドは丁度1番上にあったカードをしばらく見つめると、神妙な表情で自分に向き直った。
「……分かった。大切にさせてもらう。この礼はいずれ必ず返す」
「そんな大層なことではありませんよ。私個人としては肩の荷が一つ降りた心地です」
「そうはいくまい。海馬瀬人と対等の立場だからこそ……っ!?」
驚きで目が見開かれた。はて、特に変な仕掛けはしていなかったはずだが。もしや精霊のイタズラか?
「何かありましたか?」
「一瞬カードの表情が変わった気がしてな……。気のせいか」
自分もそのカードを覗きこむが、特に変化は見受けられない。君もそういうことするのね。カテゴリー内では比較的真面目なタイプだと思っていたけど。
「見間違い、ではないと思います。コミュニケーションを取りたがっているのかと。機会があるなら、何か話しかけるといいかもしれません」
「そういうものなのか? では、これからよろしく頼む」
心なしかカードが光った気がする。丁寧にカードケースに仕舞われると、その後は特に変なことはなかった。
しばらくするとマリクと社長が来て、実際に会場に入っての段取りの確認ということで自分はお役御免に。
……まぁ、社長に呼び止められて、より正確な報告書を書けと言われたんですけどね。どうやら『青き眼の精霊』を相手に送りつけるロックコンボが気になったらしい。メイン一発勝負が多いこの世界では、知識がないと詰むロックコンボは凶悪だからね。実際MDでもその手のロックが流行った時期があった。興味を持つのも当たり前のことか。
一番は冥界にいるライバルに対して通用するかどうかなんだろうけど。
そして大きな問題も起きずに迎えたイベント当日。ギラグと真月、イクスは揃ってグールズ役として参加することになっていた。ギラグがレベル1、残り2人はレベル2の役で参加している。ギラグはひたすら手に関するカードで構築したネタデッキだが、真月とイクスはレベル2におけるブービートラップ枠、容赦なく挑戦者を倒す役を与えられている。デッキに関しては以前作ったものの発展版だ。真月の方はガチ時代の『反転除去』*1がベースで、イクスの方は除去こそ薄めだが、『アトランティス』*2を使った水属性レベル5モンスター軸のハイビートダウンデッキだとなっている。
真月のは一度回り始めるとどうしようもなくなるし、イクスのデッキは一定以上のカードパワーが無いと簡単に詰む。ネオグールズ役におけるネオ部分担当である。
自分? 裏方ですよ。副社長に言われてオーディションは試しに受けたのだが落選した。最初は良かったが、途中で丁寧語と処理時の解説で冷めたという批評を頂いた。ヤッた後にオッサンから説教される風〇嬢ってこんな気持ちなのかと思った。
散々笑った後、冷静に感想を述べるのはやめてもらえませんかね。ドクダミ味の歯磨き粉で、歯を磨かれる気分になるんですよ。
それに、その後すぐに解説役の補助が割り当てられたから、はじめから落とす気で受けさせたよね? モクバ副社長。
そして何より
「今日は解説役としてよろしく頼むよ。遊守くん、真遊理さん」
「よろしく、オッサン。正直解説なんて何喋ればいいのか分かんねえけど」
「よ、よろしくお願いします! オジサン!」
関係者控え室にはわざわざアカデミアからKCのヘリで来てくれた2人がいる。
去年のユース部門の全国大会優勝、準優勝者がゲスト解説として呼ばれたのだ。学校生活もあるだろうに、よく引き受けてくれたと思う。
「忙しいのに引き受けてくれてありがとう。2人とも」
「まぁ。暇じゃないけど、磯野さんに「次の世代のデュエリスト達の目標として、この役を一番任せたいのが君達なんだ」って言われたら、な。オレもオッサンのおかげでこういう立場になったんだし、後輩達の何かきっかけになれたらな。って」
「わ、わたしも、です。喋れるかどうかすら怪しいですけど……」
凄いな。自分がこの年代の頃は、周りのことに気を遣う神経なんてなかった。トップ取れる人間っていうのは、自覚するのも早いよね。だから自分は普通のサラリーマンになってるんだけど。
「ははっ。お世辞にしても嬉しいことを言ってくれるね。君達なら私がいなくてもその立場になったさ。一応カンペは頑張って出すつもりだから。質問コーナーは……気合で頑張ってくれ」
真遊理さんが、「うっ」と露骨に嫌そうな顔をした。君にとっては鬼門だろうね。でも折角引き受けたんだし、出来るだけ人と話して欲しいのだが……。
「な、なんとか質問コーナーだけでも回避出来ませんか……?」とうろたえる真遊理さんを遊守くんと2人でなだめていると、突然、関係者控え室の扉が開いた。
「遊守!」
「うおっ! なんだアイか。ノックぐらいしろよ……。抱き着くな抱き着くな! 目の前にオッサンいるだろ! 流石にハズい。ってか何でここに来れるんだ。」
「磯野さんに話したら通してくれたの」
「マジかよ磯野さん。いやでも、あの人結構甘いからな……」
入ってきたのは、日乃森家のニューカマー、養子に入った青生さんだった。何というか、私と話す時とは別人だな。メス顔とは言わんが、ギャップが酷すぎて笑いがこみ上げてくる。
背中から遊守くんに抱き着く彼女と目が合った。顔に「余計なことを言ったら〇す」と書いてあった。個人的には邪魔する理由は無いし、面白そうだからそのままでも良いけどね。隣の真遊理さんが、どことなく羨ましそうに見ている。姉妹として仲良くしたいのだろう。青生さんが遊守くんに向けているのは家族愛というよりもっと別なものだと思うけどね。
チラチラ真遊理さんがこっちを見るので、そろそろ止めるべきかと、でも面白そうだしなと悩んでいると、再びドアが開いた。
「アイ? 特別に入れさせてもらったんだから、あんまり失礼なことするのは良くないんじゃ……あ」
見覚えのある帽子と、特徴的な高めの声。青生さんがいるなら、君も来るか。
「こんにちは。君も参加してくれるんだね。ユタカくん」
「こ、こんにちは。先生。はい。一応参加する気できました」
「せ、先生……?」
慌てて頭を下げるユタカくん。オッサンとかオジサンで良いって言ったのに、頑なに先生呼びから変えないのよね。律儀な子だ。
「多分知っているだろうけど、この2人が青生さんのお義姉さんとお義弟さんである真遊理さんと遊守くん」
「は、はじめまして! 静機ユタカです。よろしくお願いします」
「日乃森真遊理です……」
「遊守だ。よろしく。しまらないカッコで悪いな」
未だに青生さんに抱き着かれている遊守くんが、手を引きはがそうとしつつ答えた。女の子とは言えデュエリストだ。簡単には引きはがせまい。
四苦八苦している弟と義妹のじゃれ合いをスルーしつつ、真遊理さんがおずおずと切り出す。
「あの、おじさんとは一体どういうご関係で……? 『リゼット』、『アーリャ』、この子どっちだと思う?」
「はい。ボクはDMの実習でアイさんとペア組ませてもらってるんですけど、あまりにも不甲斐ないから、先生から個人的に教えてもらっているんです」
「先生呼びは勘弁してくれ。ユタカくん。しかし不甲斐ないってねぇ……。初めての時も知識もマナーも十分合格点だったよ。今だって別に私に教わる必要なんてないだろうに」
今でも県クラスなら十分やれるだろうに――
わたし。なにも聞いてないなぁ。
「ん?」
背中が急に寒くなった。あれ? 空調の調整ミスったか?
「すまない。エアコンを確認させてくれ」
設定は26℃。子どもにとっては物足りない位だろうし、自分にとっても湿度次第といった所か。カレンダー上は秋だが、まだまだ残暑は厳しい。
「とんでもない。ボクなんてまだまだ知らないことばかりで……ひゃっ!?」
「ちょ、ちょっと!? 判別付かないからってがっつりイキ過ぎじゃ……」
ユタカくんの身体が不自然に硬直した。目を白黒させながら自分の周りを見回す。
「大丈夫か?」
「は、はい。何かに触られたような気がして……。気のせいだと思います」
「み、見えてはいないけど、素質はある子なのかな……? ちなみにどっち……そう」
ユタカくんを心配しつつ、真遊理さんの方にも意識を裂くと、何事かがぶつぶつ呟いている。精霊と話しているのか? 全部は聞き取れないが、雰囲気はあまり良いように思えない。
やだなぁ。
「……ヒエッ」
顔が勝手に真遊理さんの方を見た。目から光が消えている。何もかもを飲み込む艶消しブラックだ。
強烈な重力に耐え切れず、何かないかと首だけ回すと、遊守くんと目が合う。
(君のお姉さん最近ヤ〇ヤ〇の実でも食べた!? それともカードの力を現実に使えるようになったとか!? 具体的に言えば『グラビティ・バインド』*3とか『ブラックホール』*4とか!)
(なぁアイ。もしかしてあの子って……? なるほど。いや、釣った魚に餌やらないからこうなってんだよ! あんたの嫁なんだから面倒見ろ!)
最近、ついに遊守くんと唇の動きだけで会話できるようになった。危ない場面を潜り抜けている内に、お互い自然と身についていたのである。チラッと周りを見ると青生さんは笑ってるし、ユタカくんはキョトンとしている。
この地獄は15歳以上対象? R-15というと親子で見ると気まずくなるヤツか。
いや、遊守くんのせいで居たたまれないどころか、急に社会的地位が危なくなっているのだが。
(何を言ってるんだい遊守くん!? そもそもそれ以前に君のお姉さんだろう!?)
(良いから気の利いたこと言ってくれ! なんなら愛してるの響きだけで何とかなる気がするから!)
(コストが私の社会的生命なんだが!?)
(君を忘れない~♪)
(秒で忘れるやつだろう。それ)
チェ〇ーみたいなこと言いやがって。君が〇ェリーでいられるのも時間の問題だろうけど。
えっ。これどうする? 下手な事言ったら捕まるよな。なんで修羅場みたいなことになってんの。
このまま放っておくと裸の特異点が生成されそうだが、生憎、気の利いたことなんて言うセンスなんてないぞ。……先生か。うん。そっちから攻めてみるか。
「あー。実は真遊理さんもそういう意味なら生徒みたいなものでね。ユタカくんの先輩にあたるのかな?」
「えっ。そうなんですか? よろしくお願いします。先輩!」
「えっ、あっセン……パイ……?」
想像以上の援護が来た。若干重力が落ち着き、微かに光が戻る。
後輩キャラの無垢な先輩呼びは、自己評価の低い陰キャコミュ障には良く効く。それは軽めの頭痛へのバフ〇リンとよく似ている。半分を占めるという優しさ*5が特に。
まだクレヨンでがちゃがちゃに塗りつぶしたような目をしているが。このまま押し切れるか?
「初めての生徒だったから私も不慣れをよく晒してね。よく付いて来てくれたよ」
「そ、そんなこと! わたしも出来の悪い生徒で……」
「いや。今思えばもっといい教え方があったよ。それでもアカデミアに入学出来たんだから……、そういう意味では1番の生徒かな(現状3人しかいないけど)。ホント、迷惑をかけてしまったね。忘れようがないくらい」
どうやらうまく意識を誘導できたらしい。真遊理さんは「はじめて」、「一番」、「後輩」としばらく反復すると、
「……えへっ、えへへへへへ……」
頬がだらしなく緩んでがへにゃへにゃの笑顔になった。
目に光が戻り、重力場も消えた。数秒前とは別人である。
ロキ〇ニンSプレ〇アムでもこんな早く効かないよ? あれですら、最近は薬剤師の許可がないと買えないんだから。
「そ、それほどでもありませんよう……! ユタカさん、何かあったら相談してくださいね。一応先輩なんで……!」
「……? え、えーと? 何かあったら頼りにしてますね。先輩」
「はいっ。先輩ですから!」
真遊理さんが握手をもとめ、ユタカくんは戸惑いつつも握手に応じる。普段は絶対にありえない光景である。
えっ。向精神薬でも飲んだ? ちょっと心配になるくらい情緒不安定なんだけど。
「わが姉ながらチョロ過ぎない? マジでオッサンに貰ってもらわないとマズくないかコレ……」
「急激な脳破壊と回復のせいで完全にキマッてるわね……。もはやアッパー系薬物の症状よ。アレ」
2人が軽く引きながら小声で何か言っている。とりあえずこの場は収まったから良しとしよう。……そういえば
(ユタカ……さん?)
引っ掛かるものを感じつつも、世にも珍しいテンション高めの真遊理さんと、イベント前のあわただしさで、しばらくすると違和感なんて忘れ去っていた。
後日
「あれ? これはリシドさんからの手紙?」
『白き森』と『エルフェンノーツ』の面々への差し入れを作っていると、郵便が来たので受け取れば、どうでもいい広告に混じって見知った名前があるではないか。
今時珍しいなーと、キリのいい所までは終えたいので、レアチーズケーキの生地をビスケットとバターの土台に流し込む。
一度あちらで、こちらの材料を使って簡単な料理を作って以降、毎回楽しみにされているので、ちょっとずつ変わり種を準備している。特に『エルフェンノーツ』の方は、炊事を一手に引き受けていた一番下の子が家出気味に留学したせいで、現在食事事情が壊滅的になっている。事務系をやっている『フォルトゥナ』が一応作れるのだが、上2人が芸能関係以外てんでダメということで、スケジュール管理や会計、各種申請や確定申告まで行っているため、流石に家事までは手が回らない。
どれくらい酷いかというと焼き魚と称して、捌くどころかうろこ取りすらされていない魚だった炭が竈に置いてあったそうな。皿は一日で全て燃えないゴミになったとのこと。
『フォルトゥナ』と自分が『白き森』で会った時は、あまりの空腹で森の前に倒れ、不審者だと思った『ディアベル』に拾われるというあり様だった。前日の夕飯はレモン1個だったらしい。
夕飯って?
その後、私の作った夕飯の残りを泣きながら掻っ込んだ。明日食べるからと念押ししていた『アステーリャ』は、それを恨みがましそうに見つめていた。
自分の作り置きが割りと彼女たちの生命線になっているので手は抜けない。
人気者だし、結構もらってるんじゃないかと聞いたことがあるが、衣装や化粧品、レッスン料と出費が馬鹿にならないため、財布を任されている身としては、外食は極力避けたいと言われた。どうしても栄養が偏るし続くと飽きるとも。
真面目な子ほど苦労するのは精霊界も同じらしい。上2人が不真面目という訳では無いのだが。芸能関係に関してはもの凄くストイックなのは、自分も目の当たりにしている。どれだけ体調が悪かろうと、自分が決めたことは絶対やるから。だから『フォルトゥナ』も「ムーリー!」と言いながら事務仕事を引き受けるのだろう。
まぁ私自身包丁を握るのは嫌いではないし、自分の素人料理を美味しいと言ってくれるのは嬉しいので苦ではなかったりする。
生地の表面を軽く整えてから、封筒を開ける。中身は便せんではなく、ポストカード位の厚紙だった。一番上にはこう書いてある。
私達、結婚しました♡
黙って封筒に押し戻した。
……っフーー……。
疲れてるのかな。軽く目元をマッサージしてからもう一度厚紙を取り出す。
私達、結婚しました♡
見間違いようがなく、デカデカと、それはプリントされている。
写真には、満面の笑みの
その目に光はない。
これがリシドがカード化した理由だと思ってます。
そっか。今はこの子なんだ。初めて会った時のオジサン、格好良かったなぁ……。襲われて声も出せなかった自分を見て、携帯で警察を呼びながら駆け寄ってきてくれて。
携帯が通じなくて逃げられないと悟った時の覚悟を決めた表情は、一生忘れないだろうなぁ。白馬の王子様っていうには随分草臥れていたけど、自分の前でデュエルディスクを構えてくれたのはすごく頼もしくて。
そしてチラッとわたしに目配せして「逃げられそうにないね。自分のデッキはあるかい?」って聞いてくれたんだ。
わたしが首を振ると、黙って自分のデッキを渡してくれて「一緒に戦おうか。自分の事を他人にゆだねるのは嫌だろう?」今思うと家族以外から一緒にやろうとか、自分の意思をちゃんと確認してくれたのはオジサンだけだった。
最後は後ろに居た『リゼット』達に押し切られる形になったけど、例え選択肢がほとんどなかったにしても、誰かに立ち向かう選択肢を選んだのは人生で初めてで。
そういえばあの時『シルヴィ』が一瞬だけ何か言いたげな顔してたけど、多分羨ましかったんだろうなって。うん。絶対そう。『いいつたえ』コストの『リゼット』特殊召喚、『シルヴィ』サーチ後に飛んでくる『ドロバ』くらい。
その場は何とかなって、自衛を兼ねてオジサンからDMを教わることになって、自分の考えやプレイ方針を言葉にするのは大変だったけど、オジサンは言葉にするのを根気強く待ってくれたなぁ……。当時のわたしは今以上に何も話せなかったし。イライラしてもしょうがなかったと思うんだけど。家族ですら痺れを切らせて、結局言いなりになるしかなかった、けれど少なくともオジサンは、そういうのを全く表に出さないから落ち着いて自分の考えを整理できて。
確かに事件には巻き込まれて怖い思いもしたけど、間違いなく楽しかったんだ。あの時間は。だって今まで言葉にすら出来ていなかった自分の思いと、やってみたいことが初めて一致したから。
今はそれをこの子がやってるんだよね。わたしが見てきたオジサンの人の良さそうな笑みも、どう教えようか悩んで、困った時の半笑いも。初めてアドバイス抜きで勝った時に見せてくれた、悔しさと心からの喜びが混ざったあの笑顔も、この子は知ってる。
やだなぁ。
こんなことを考えちゃう自分が1番。
ここからあの程度の言葉で復帰する位のチョロインです。
筆者に国語力を求めないでください。塩味が1番美味しいと思っているんです。自分。
需要調べ(反映出来るかは別)
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どうでもいい話(思いついたら)
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シリアス込み長編系(恐らくは飽きる)
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恋愛系(別に書いてもろてええですよ)
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R-18(言い出しっぺの法則はご存知?)
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その他(その時はメッセージや活動報告で)