皆さん。おひさしぶりです。アーサー・ペンドラゴンに憑依してから2年がたってもう9歳です。
この2年。言葉にしてみればすぐに終わるが実際のところ、長く険しい道だった。
憑依したての時は父と母が俺が急に活発になったことに驚いていたがすぐに喜んだ。どうやらアーサー、病弱な身体だったらしい。俺が憑依したからか? と思った時期もあったがそんなのは忘れていろいろな事をした。初めてルフェイ(現在6歳)と会った時こそ冷たく当たっていたが、今になっては年がら年中俺の後ろにひっついている。可愛い妹を持って幸せだと、痛感したのが何度あった事か……。
俺は8歳の時から剣術を先生から教えてもらっている。
剣に関しては憑依する前、高校総体で個人で優勝。団体で準優勝した俺からしたらさほど苦でもないように思えたがここはどうやら西洋。しかも世界地図で言うと大体イギリスあたりみたいだ。
それ故、剣術が根本から違う為に苦労したよ。持ち方はしかり、足運び、攻撃法が完全に日本の剣道の癖がついているので逆に先生の方が苦労していたのかもしれない。
おかげで今になっては日本式剣術とイギリス式剣術のハイブリッド剣術が出来たわけだ。
ちなみにルフェイに関してはあの年でもう魔術の事を学び始めた。幾何学文様が浮かぶ魔法陣を見た時は度肝を抜いたけどな。
説明はこのくらいにして、現在はというと……。
「あ、アーサー様ぁぁあああ!! そんな高い木に登られて落ちたらどうするんですかぁぁああ!!??」
この言葉通り現在俺は屋敷の庭に生えている小さな森の中から一際高い木での枝通して作ったハンモックで昼寝中だ。
え? 落ちないかって? 大丈夫、問題ない。これは憑依する前からやってたことだし高いところは嫌いじゃないしな。
因みに、さっき怒鳴った人は12歳にして俺の専属の先生。白髪と緑眼とまるで芸術品のような顔立ちをしている美少女?マーリン。
俺がアーサーに憑依したときからこいつが俺の先生という関係でいろんな事を教えてもらっている。
マーリンは頭がいい。あの年で超難関大学入試問題をあっという間に解いてしまうほど。それに、こいつは魔術に関することはこの国で右に出る者はいないと言われるほどの魔術師だそうだ。マーリン曰く「世界一の魔術師」らしいがいつも変な実験しては漫画のような爆発を起こしてるのにな。そのへんは俺疎いから知らないけど。
それにしても、そろそろ時間だよな。
俺はポケットから懐中時計を取りだして時刻を確認する。
現在時刻。PM2:30。
……降りるか。
俺は猿の如く枝から枝へ飛び移り見事に着地する。
「相変わらず冷や汗ばかりかかせますね。アーサー様。少しは自重なって下さい。貴方の身に何かあったら……」
「あーはいはい。その言葉は聞きあきた。さっさと行こう。マーリン」
「聞きあきたとはなんですか! 私はアーサー様の身を案じて言っているんですよ!?」
「俺の身は自分で守るよ」
「守れないときがあるかもしれないですよ!? その時は……!?」
「そん時はそん時だ」
「アーサー様ぁぁあああああ!?」
静かにしてれば可愛いのに、もったいない。あ、でもルフェイには負けるか。
うん。ルフェイの可愛さに勝てるものなんてこの世に存在しない。
これだけは断言できる。
「アーサー様? 何か失礼なこと言いませんでした? それに、何やらシスコン発言が……」
「……気のせいだ。行こうマーリン。それで、今日は何をするつもりで?」
何やら聞き逃せない言葉が聞こえたがこのまま続けば面倒なので話を切り替える。
「今日はとりあえず、課外授業という事でこのキャメロットの中心街へ行くつもりです」
「課外授業ねぇ……」
俺は手を頭の後ろで組んで考え事をする。
これじゃあ、何時もみたいに抜け出せないな。
それに、ルフェイ居ないと何するにしても寂しいしな。
あ、今の言葉はだな。あれだ。
妹と一緒に居ないとと寂しいのだ。いつも一緒に居たから……。
「(駄目だ……この年で早くもシスコンに目覚めたアーサー様をどうにかまともな思考に戻さねば。王様達に何と言われるか……)」
マーリンの思考を余所にアーサーはどうやってこの課外授業を抜け出すかを考えていた。
└('ω')┘ 2 └('ω')┘
この都会のようで都会でない微妙な王国。キャメロット。
たしかに微妙な所ではあるがある分野に置いては何処の国、神話体形、三大勢力の中でも群を抜いているのが……
魔術である。
初代アーサー王が国を治めていた時は国民の9割が魔法、魔術が使える程である。
それは現在も言えることで、初代の時から見れば少なくはなったが今でも簡単な魔法を使う住民は少なくない。
しかし魔術だけでは国は繁栄しない。
何故ここまで国が繁栄したのか。
理由はこれだ。
湖のど真ん中にある巨大な岩の中心に突き刺さっている錆つき、ボロボロになっている一振りの剣がある。
何千、何万の者がこの剣を抜こうとしますが抜くに抜けなかったそうな。
そして。今に至っても抜ける事もなく岩に深々と突き刺さったまま。
その岩を中心に繁栄していったのが今のキャメロットなのだ。
「なぁ、マーリン」
馬車に乗りながら外を見つめいている俺。
「なんですか? アーサー様」
「この街の中央の岩に刺さってる剣ってさ、俺の爺ちゃんの爺ちゃんのその又爺ちゃんの爺ちゃんが刺したんだろ?」
「正確に言いますと初代アーサー・ペンドラゴンの遺言で湖の中央にある大岩に突き刺してほしい。とのことで私の先祖の初代マーリンが突き刺しました」
おい、お前との付き合いは
「わざわざ突き刺ささなくてもいいのになぁ……」
俺は馬車の窓から顔だしタメ聞き交じりに呟く。
「何故です? あの剣が無ければ今のキャメロットは無いと言っても過言ではありませんが……?」
「それは分かるけどさ。俺からしたらあの剣。ムッチャクチャ親近感湧くんだけど。なんでだろうな?」
「おそらくそれは初代が王の象徴として帯剣しておられたからでは?」
マーリンが窓の縁に手を掛けて言う。
「いや……そういうもんじゃない。何て言うか……あれだよ。あれ」
手をあやふやと忙しく回転させマーリンに理解してもらおうとするが
「アーサー様。何を仰っているか全く分かりません」
マーリンの鋭い一言が身体を見事に貫いた。
あぁ、俺の心に傷……いやがヒビが入ったよ。
とマーリンと雑談を交わしているとキャメロットの中心。
つまりあの初代アーサー王の遺言で突き刺さっている錆ついた剣が突き刺さっている大岩の所である。
俺は大岩の剣を見たと同時に。
「なぁ、マーリン」
「ダメです」
「まだ何も言ってないよ!? 俺のガラスのハートもそろそろ限界かもしれない!」
「最初にアーサー様のハートは強化ガラスほどの耐久性を持っているので大丈夫です。それと、あの大岩には近づいてはいけません。いえ
「何でだよ」
俺はブスっとした顔で言う。
こうなったマーリンは頑として信念を曲げない。
なんか隠し事でもあんのかよ。
「それは……」
マーリンが顔を背け俺に言えないようなほどの隠し事らしい。
「なんだよ……言えねぇならそんなこと言うなよ」
俺は覚悟を決め馬車の扉を強引に開け馬車から飛び降りる。
「あ、アーサー様!? ちょ、なにをなさせるんですか!?」
マーリンも俺と同様馬車から飛び降り運転手に「アーサー様を追います! 貴方達はここで待機!」と命じたと後に俺を追いかけはじめる。
俺は振り返り叫ぶ。
「俺はぁぁあ! あの剣を抜く! いや抜かなきゃならない!」
「貴方では無理です!」
「んなもんやってみなきゃ分かんねーだろ!」
走りながら口論を続けていると剣が刺さっている大岩に辿り着く。
俺はそこから幼いながらも鍛え上げられた筋力と簡易の魔法を使いクライミングを行い大岩の頂点まで登った。
そして完全に登りきると俺の眼前に現れた大岩に深々と突き刺さる剣。
俺は知っている。マーリンが何故、この剣を抜かせようとしないのか。
それは古くからこのキャメロットに伝わる言い伝えの一説に由来する。
『王の力を表す剣を抜きし者。その者必ず滅びを招かん』
俺は剣に語りかける。
「でも俺の先祖の初代アーサー王はその言い伝えを無視してお前を抜いた。一時は安寧を保ったがそれは運命なのかそれとも神のいたずらなのか、はたまたお前の呪いなのかそれは知らないが信頼していた騎士に裏切られ妻にも裏切られ挙げ句親友にも裏切られ最終的にはその親友を殺す始末となり親友の最後の一撃が元で死んだ」
剣は何も答えない。
一陣の風が俺の金色の髪を撫でる。
視界が髪で遮られようと剣から目を離さない。
そして俺はゆっくりと剣へと歩み寄る。
「そんなことを知っててもお前を抜こうとする俺が馬鹿なのかそれともこれもまた神のいたずらかはたまたお前の意思か。んなもんは知らねぇけどよ」
剣の前で立ち止まりあの時マーリンに出てこなかった言葉を剣に言い放つ。
「先祖の尻ぬぐいは俺がやらなきゃな、未来の俺はきっと許さなねぇと思うからよ」
ゆっくりと剣に手を添える。
「もし、もしお前が俺に抜かれるのであれば……そん時は見せてくれよ。お前が示す滅びって奴を。そん時は見せてやるよ。俺が示す滅びよりも強い
剣の柄を握り締め引き抜かんと力を入れた時だ。
「なりません!」
俺の耳に響く我が師。マーリンの声。
その声のしたところは俺の後ろだ。
俺は背中越しに話しかける。
「随分と遅かったじゃねぇか。何してたんだよ」
「この人だかりを抜けるのに苦労したのですよ」
疲労感あふれる声で言うマーリンに思わず疑問符を浮かべる。
「人だかり……?」
俺は剣の柄を握ったまま辺りを見回すとそこには人がこの岩の周りに群がってる。
全然気付かなかった。マジで。
野次馬か。まぁ、どうでもいいけどさ。
「アーサー様。その剣から手を離して下さい。いえ。離せ。さもないと……」
途中から怒りを込めた言葉と共に魔法陣を展開するマーリン。
「殺すのか? 俺を」
「いえ、しばらく身体の自由が利かないような魔術を施します。それだけで十分なので」
「そうか……」
相手は俺と同じ子供。だが格が違う。
ここで逆らえば本当に重力魔法かなんかで拘束される。
だけど……
「マーリン。悪いけど俺はお前の言葉には従えない」
マーリンの言葉をきっぱりと拒絶する。
「そうですか……では」
マーリンの背後に待機していた幾何学文様の魔法陣が回転し始める。
すると。
バツッ!
マーリンの身体を縛るように光り輝く鎖が大量に出現する。
「なっ……!? ど、何処から!?」
マーリンは一瞬俺を見たが俺は魔法陣を展開していない。
それを確認すると同時にマーリンは理解した。
これは俺がいたものじゃない。と。
こいつを発動させたのは……この大岩に群がる野次馬どもだ。
この剣を抜こうとする奴はそうそうにいない。抜けないと分かっていても暇つぶしにはなると思っている。
その暇つぶしをあんな子供に邪魔されてはあれだと思った野次馬のささやかな抵抗だ。
俺は小さく微笑み呟く。
「サンキューな。お前ら」
俺は再び剣の柄を握りしめ力を入れる。
ズズッ
ゆっくりとだが確実に動いている。
今までミリ単位で動くことのなかった剣が動いている。
「ぬぁぁぁあああああ!」
声を張り上げ手に入れる力を強める。
ズズズ!
もはや刀身が半分ほど抜けてきている。
あと少し……!
「抜けろぉぉぉおおおおおおおおおおッッッ!」
俺の意思をこいつにぶつける。
そして……
キィン!
小気味の言い音を上げ大岩から抜ける剣。
盛大に沸き起こる歓声。
絶望の色に染まるマーリンの顔。
俺はこの瞬間の事を
一生忘れない。
この国に伝わるもう言い伝えは剣の事だけではない。
まだ
『夜空に無数の流星が駆ける時。全てに終焉を告げる覇王があらわれん。それは