ノルンエースは眩しくて   作:kanaumi

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ノルンエースは拒みたくて

 

 今年、あーしは幼稚園から小学校に進学した。お父さんとお母さんに買ってもらったランドセルを背に、るんるんと学校に向かう。途中で、入学式の時に仲良くなったルディレモーノとミニーザレディも合流して、あーし達は上機嫌で登校するのだった。クラスは30人位でルディレモーノとミニーザレディとは一緒のクラスとなっている。その他にも幼稚園の時からの知り合いもちらほら見える。あーしはクラスガチャ当たりを引けた様で一安心だった。

 

 1年生となったあーしらは日々、勉強遊び走り勉強走りの繰り返しで、クラス仲を深めていった。ルディレモーノとミニーザレディもルディとミニーと呼ぶようになり、クラスでは一番の友達となった。一緒に遊び、勉強に躓き、校庭を駆け回った。互いの家にも遊びに行き、はしゃぎまわった。ルディは割と常識的な所があり、ミニーはイタズラ好きな性格をしていて、あーしが中間位なのでバランスが良かったとも考えられる。そんなあーしらは早いもので2年生になろうとしていた。教室が変わる事位の変化だけど、それがとてもワクワクするのだった。更に、2年生になると言う事は先輩になると言う事だ。特別に意識する事はないと思うけどワクワクと逸る気持ちが鼓動を早めるのを感じている。ルディもミニーもそれは変わらない様で、尻尾がいつもよりも揺れている。そんなあーしらは教室に早足で向かった。

 

 クラス替えもないので人は一緒、かしこまる必要も無く普通に挨拶をして教室に入る。朝礼まではまだ時間があるからかまばらな様子。席は黒板張り出されていたので鞄をそこに置き、少し離れてしまったルディ達元に向かった。何故か隣の席が空欄だったのを見逃しながら。

 

 朝礼の時間、1年からの繰り上がりの担任の挨拶を聞き流しながらあーしは放課後の予定を考えていた。河川敷に向かうか、家で遊ぶか、それとも校庭で走ろうか?案は浮かんでは飛んでいく。そんなあーしはガラガラと言う音によって、思考は中断させられた。

 

 「あー、2年生から他所の学校から転校してきたオグリキャップくんだ。みんな、仲良くするようにな。えーと、席はノルンエースの隣だな。オグリキャップくん、分からない事は彼女に聞くと良い。ノルンエースも教えてあげなさい」

「えー、先生ー急すぎんだけど」

「あたりまえだ、今言ったんだからな。まあ、ノルンエース以外も教えてあげてくれ」

「ていうか、転校生の案内って先生の仕事じゃないのー」

「そうだそうだー」

「生徒にばっかり働かせるなー」

「あーあーうるさいうるさい、俺も暇では無いし、交流の機会えおやってんだから有効に使うんだよ」

「ぶーぶー」

「はいはい、とりあえずオグリキャップくんはノルンエースの隣に行ってくれ」

「………はい」

 

 そうして、オグリキャップと呼ばれた彼女は、あーしの隣の席に座るのだった。そして、朝礼は終了とそそくさと担任は出ていった、以前から面倒臭い事を人に押し付けるのがとくいな奴なので、今回も問い詰める前に出ていった。…さて、それは良いとしてこの視線をどうしようか。席に座ってからずっと感じてる。無視を決め込むのもはばかられる何かがあった。

 

「…………」

「………ねえ、オグリキャップだったっけ?」

「──!?あ、ああ!オ、オグリキャップ……です」

 

 呼ばれた事に驚きつつも立ち上がり頭を下げるオグリキャップ。おどおどしていてなんかこうイジメてみたくなる様なそんな事をあーしは感じていた。……ウサギ、そう、ウサギみたいな。別にウサギをイジメたいと言う訳じゃないけど、あーしの感性がそう言っていた。なら、実際にやってみる行動力があーしにはあった。反応を返さずノートの切れ端に文字を書く。

 

「…次、移動教室だけどあーしらちょっと用事があるからさ、この紙に書いた場所が教室だから、あんた一人で行ってくれない?」

「…ん、ノルン?」

「ほーほー」

「……?よく分からないが、ここに行けば良いんだな。ありがとう、えっと…」

「ノルンエースよ」

「ノルンエース、ありがとう」

 

 オグリキャップはそう言うと、紙片手に教室から出ていった。

 

「なんだったんだ?」

「ノルンもなかなか悪いねぇ」

「別にちょっと遠回りな地図を渡しただけ。アンタ達に用事があったのも本当、…何となくやってみたくなっただけよ」

「なんだそれ?まわりくどくないか?」

「ヒヒッ、そうだねー。でも、それならもうちょっとやってみても良かったかもね」

「…いや、そんなにやる気無いから」

「それは残念」

「お前、それで去年叱られただろ」

「聞こえなーい」

「さて、移動教室だし行きましょうか」

 

 授業の時間になった。クラスメイトは殆どが座っている。いないのはオグリキャップただ一人だった。…遠回りするだけできちんと辿り着く様に書いたはずだけど。ルディとミニーがこちらを見てどうすると言うかのような表情をしている。…私としても先生に叱られるのは本意じゃない。今からでも探すか?……はぁ、身から出たサビだっけ?お母さんがお父さんに言ってたのは、仕方ない行くか。

 

 教科担当の先生が来る前に私は教室を抜け出した。オグリキャップが向かうルートを考える。…逆走するのが早いだろうか、地図を見てそれ以外を歩く可能性も有るか、…面倒臭い、何で辿り着かないの。

 

 ルートを逆走してクラスルームに戻ってきた。それまでにオグリキャップは見えなかった。…迷子かぁ。ハァと荒いため息が出る。あーしの脳内はやった後悔とオグリキャップへの不満でいっぱいだった。もう一度ルート通りに歩く。授業開始チャイムは疾うの昔になっている。オグリキャップが教室に辿り着いている場合も有る。だけど、何故かそれを否定する心、否定したい心があった。こんなに困らせたのだ文句の一つも言ってやろう、そう決めた私は心に決めた。

 

 階段を降りる、ルートではここからもう1階降りるが、もしかしたらと私は一つ上の階を歩くのだった。この学校は5階建てで横にも広い創りとなっているから歩くのには時間がかかる。それに今は授業中だ、静かに歩き見つからない様に気をつけていた。そうして歩いていると今朝見た芦毛が揺れていた。

 

「…オグリキャップ、アンタ何でこんな所にいるのよ」

「──!ノルンエース!よ、良かった。君に貰った地図を見て歩いていたんだが、よく分からなくて気付いたらここにいて…」

「はぁ、アンタとんでもない方向音痴だわ」

「そう、だな。ノルンエースは何でここいるんだ?」

「アンタがいつまで経っても来ないからよ!…もう、最悪よ」

「それは、申し訳ない、せっかく地図まで用意してくれたのに」

「……はぁ、良いから行くわよ」

「ああ、よろしく頼む」

 

 教室に着いた私達は一緒に先生に叱られた。

 

 

 昼休憩の時間、ルディとミニーと給食をつついていた。オグリキャップにはあれから特にイタズラをしていない。少し分かったがオグリキャップはあんまり考えて行動していない。迷子は知らないがルートが長い事に気が付かないのは鈍感か考えてない位じゃなかろうか。…まあ、そんなオグリキャップに何かしてもつまらないからやってないが正しい。

 

 昼からは体育で校庭に集まっていた。何人かに分かれて競争するからと先生に組分けがされていった。そこであーしはオグリキャップと一緒になった。これは世話係だからだろうか、隣のオグリキャップを見る。謎にキラキラした目でこちらを見ていた。なに、その目。意味がわからなくて頭が痛い。

 

「ノルンエース、走れるんだな!」

「…………そうね」

「そうか、走るのが好きなんだ!」

「……あっそ、それは良かったわね」

「ああ!」

 

 あーしらの順番、早く来ないだろうか?隣のモンスターがなんかうるさいんだけど。あ、ルディとミニー一緒の組だ。うらやましい。

 

 あーしらの番になった。1列に並んだあーしらは先生の合図を待つ。あーしにオグリキャップ、それから元気が取り柄のうるさい子に逆に静かすぎて影の薄い子の4人だ。

 

 教師がピストルを頭上に構え、パンとスタートの合図が響く。それを聞いた3人がほぼ同時に飛び出した。それに遅れて1人が走り出す。先頭はノルンエースだ。それを追う2人、更にそれから大きく遅れてオグリキャップが走っていた。

 

 あーしはチラリと後ろを確認する。そして、オグリキャップが随分後ろにいるのが見えた。あいつあんなに楽しみにしていたのに出遅れたのか。迷子だったりとあいつの私生活は大丈夫だろうか?…いや、どうでもいい事だ。それよりもあーしは勝ちをいただこう。脚には自信も有る。1年の頃から負け無しのあーしがこんな所で負けてられないんだ。だから、あーしはあいつ、オグリキャップへの視線(マーク)を外したんだ。今の自分なら薄くでも気にしていたのだと思う。でも、あの時の自分には無理だっただろうと今でも思う。あんな───

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 ───最後方からかっ飛んで来る怪物の衝撃波(オグリキャップ)を想像しろだなんて…。

 

 

 

 一着オグリキャップ、三着ノルンエース。

 あーしはゴール後、その場に崩れ落ちた。目の前にはこちらを不思議そうに見つめる怪物がいた。怖かった?恐ろしかった?今、どんな顔しているか分からなかった。わかった事があったのならば、それはオグリキャップとの力の差だろうか。

 

 

 

 

 

 出遅れ、最後方を走っていたオグリキャップは、出遅れた事にしまったと思い、どうにかしようと頭を捻っていた。

 

 しかし、思いつかなった。

 

 そこで、お母さんからはあまり強く脚を踏み込むなと言われていた事を思い出す。それは、走れなかったオグリキャップが走れるようになった時に、力を入れすぎて怪我をしない様にと言い聞かせた事であった。オグリキャップはそれをあまり理解していなかったが、お母さんの言う事だからと守っていた。

 

 しかし、前の組の子達はゴール手前で強く踏み込んでいたのを見ていた。こんなに遅れてしまっている今、それをするべきなのではとオグリキャップは考えた。走りながら自らの脚を見る。

 

 いける、オグリキャップはそう判断した。

 

 ならば、オグリキャップに迷いは無かった。次の一歩を深く沈み込むように踏み込んだ。そして、出来上がる溝をスターティングブロックにし、オグリキャップは蹴る様に前に飛んだ。そのスピードは同年代が駆けるそれとは離れたものだった。

 

 瞬く間に先頭に躍り出たオグリキャップはそのままゴールに突っ込んだ。そして、走れたうれしさをノルンエースと共有したかったオグリキャップはゴール後に崩れ落ちたノルンエースに微笑むのだった。

 

 しかし、ノルンエースの表情は笑顔よりも強ばったものだった。

 

 

 オグリキャップにはそれが不思議であった。

 






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