ノルンエースは眩しくて   作:kanaumi

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ノルンエースは仕方なくて

 

 泥ウサギ、いやオグリキャップに謝罪を行った次の朝、あーしは泥だらけになって朝練から帰って来たオグリキャップを見て、少し後悔した。なんでこんなに汚れているの?それこそ泥に潜ったのか?疑問は尽きない。けれど、オグリキャップをそのままにも出来ず、寮長にお風呂を借りにいけと告げてオグリキャップを部屋から追い出した。素直に歩いて行く背中を見届け、オグリキャップの荷物から使われた形跡が少なく綺麗に畳まれた制服を取り出した。あれ、綺麗てか殆ど着てな…そういえば、オグリキャップが制服で学校に来たことがあっただろうか?一番着てきそうな初日はジャージだった。それからあーしが物置に追いやった次の日もジャージか。ミニーがイタズラしに行くとか言ってたっけ?…もしかして、トレセン来てから着てないの!?いや、2日目はあーしも悪いかもしれないけれど!!ベルノライトもなんで言ってないのよ!?もう入学して2ヶ月よ!?オグリキャップが朝練毎日やってるのは知ってるし、雨の日に寮の入り口で佇んでるのは見ていたけれど!…とりあえず、これを着せよう。うん、そうしましよう。

 

 そうこうして、お風呂から帰って来たオグリキャップに制服を渡す。オグリキャップは少し驚いた様な、思い出した様な表情で受け取った。…わかりやすいな、存在を忘れられていたな。可哀想に、オグリキャップの親も制服をこんな扱いされているとは思わなかった事だろう。モゾモゾと制服へ着替えるオグリキャップを見つめつつあーしは思っていた。

 

 食堂ではルディとミニーに合流して向かう。オグリキャップと行っても変わりはしないが、オグリキャップはベルノライトと食べるだろうし、何よりもあの食事量を見てはご飯が美味しく感じなくなる。遠くから見ていても胃もたれしそうな量を間近で見ていたくない。オグリキャップのここに来る前の食費はどうなっていたんだか。

 

 食事を終えればトレセン学園に向かうが、ここもオグリキャップとは別行動だ。そもそも今まで別に通っていた所をいきなり一緒と言うのも、何だか変な気持ちだからなのだけど…。オグリキャップはベルノライトと来るだろう。

 

 授業は正直緩い雰囲気なのであーしみたいにウマホを構っていても何も言われる事はない。ルディやベルノライトそれにフジマサマーチみたいにノートを取るやつもいればあーしやミニーみたいに別の事をしているのもいる。それで、あーしの目の前で机に突っ伏して寝ているオグリキャップみたいなタイプもいた。あーしやミニーは別に座学が悪い訳ではないので良いけど、オグリキャップは先月のテストでなかなかな点を取っていた記憶があるけど大丈夫なんだろうか?まあ、ベルノライトもいるから大丈夫か。

 

 退屈な授業が終わって、放課後になるとオグリキャップやマーチなんかのトレーナー持ちはトレーナー室に向かう。あーしらはトレーナーの川村が探しに来るのでそれまで自由に駄弁っている事や他の練習を観てたりしていた。最近勝ちが無いけれど、それとこれは別であるし、今はオグリキャップやマーチの練習を観ていた方が良いと思っている。ミニーやルディはどう思っているかは分からないけど。──川村降臨っと、休憩はここまでかぁ。

 

 練習後、あーしはオグリキャップを寮前で待っていた。昼の時にダンス教室の件で話があったから来るように言っておいていた。オグリキャップ個人の練習時間は兎も角、チームとしての時間は17時くらいだった筈だから、もうすぐだ。──噂をすれば帰ってきた。

「ん、ノルンエースか。寮前でどうしたんだ?…もしかして入り方を忘れたのか?寮の入り方はそこの───」

「──そんな訳ないでしょうが!?……はぁ、どうしたって昼間話したでしょう。ダンス教室の件よ」

「………ああ、そうだった」

「……はぁ、そんな気はしてたわ、とりあえず時間は大丈夫ね?」

「ああ、行こう」

「……」

 あーしはオグリキャップを連れて実家近くのスタジオに向かうのだった。…が、オグリキャップが飯屋に釣られ、いつの間にか迷子になり、着く頃には夕陽が沈みかけていた。幸いな事にスタジオを閉める時間にはまだ余裕があった。お母さんには事前に話していたから早速始める事にした。オグリキャップの実力はあのステージで嫌って程解っているけど、一応もう一度踊って貰った。………。あーしはお母さんとルディとミニーに応援を頼んだ。これはあーし一人では無理だと判断した。こうして、オグリキャップレベルアップ作戦は3人+お母さん体制で始まった。ガッチガチだったオグリも回数をこなすに連れて段々と踊れる様になり、作戦当初はお母さんですら匙を投げ掛けたって言うのにコツを掴めばすぐだった。これも一瞬の才能なんだろうか?…それにしては最初が酷すぎたか。そうしたオグリの向上に合わせて、お母さんがあーしらにも指導しだしたのは誤算だった。オグリの休憩時にルディ達と一緒に踊らされ、オグリの練習時にも踊らされ、終了時にはオグリ以上にヘトヘトだった。ミニーなんて一人で逃げようとしていたから、ルディと協力して道連れで踊らせた。お母さん的には最近怠けてた娘が友人連れてやる気だしたから張り切ったとかだろうか。それにしてはスパルタだったけど。

 

 そんな感じでオグリのダンス力は以前とは格段に上がっている。オグリに次のレースの日程を聞き、それに合わせて急ピッチで曲に合わせて振り付けの微調整を行っていく。あーしらもそれに付き合ったので完璧に踊れるようになっていた。…レースに関してはあーしらの管轄外だしオグリは負けないでしょ。だから、あーしらはレース後のウイニングライブのみに注力した。途中、オグリの髪を弄ってみたり、マッサージをしたりと息抜きしつつ、あーしらはレース当日を迎えた。

 

 ウイニングライブ前、オグリは奥にスタンバイしていて見えないが、あーしらは最前列を確保してスケッチブックに書き込んだ物を片手にその時を待っている。

 

 

「………大丈夫、大丈夫」

「なんでノルンが緊張してんのさ」

「そうだぞ、オグリの奴のが緊張してしかるべきだろ」

「うっさい、あーしだって昨日の調子ならいけるのはわかってんの」

「なら、堂々としてろよ。オグリが逆に緊張しちまうぞ?」

「そうだよ、ノルンはオグリに関して心配しすぎ。ノルンの母さんも太鼓判を押してただろ」

「…わかってる。…解っているから、心配なのよ」

「……はぁ、重症だなこりゃ」

「シシ、すっかりオグリのママみたいになっちゃってねぇ」

「…だな」

「あんた達、ブックに書いたので大丈夫よね!?」

「ああ、大丈夫だよ…ノルン、そんなに心配ならオグリの前で踊ってやれよ」

「…?」

「おお、いい案じゃん!振りを完璧に覚えたノルンが前で踊ればオグリの奴も間違えないな!」

「…なるほど、良いね」

「適当に言ったら納得しちゃったよ」

「何はともあれ、解決だね」

 

 そして、ウイニングライブの時間になった。出てきたオグリに笑顔と書かれたブックを掲げ、曲を待つ。しんと静まった会場に音楽が流れ始めた。オグリとあーしはそれに合わせて踊り出した。踊っている最中もあーしはオグリを見つめる。今の所大きなミスは無い。オグリからはあーしに目線はあまり向かない。これはオグリ自身が振り付けを覚え、踊れている証拠だろう。前回とは違う会場の雰囲気に、前回よりも盛り上がっている会場。盛り上がったまま、ダンスは最終パートまで来ている。もう、あーしの手助けは要らないだろう。立派に踊るオグリに感情が上がってきた。あーしは別に泣き虫って訳じゃないけど、瞳に汗が流れる。踊りきったオグリ歓声をあげる観客。あーしらも声をあげる。良いライブだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、お母さんににライブの様子を見せたら、出来を褒められたけど細かいミスを指摘が飛び、あーしらはもう少し指導を受けるのだった。

 

 

 

 

 




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