ノルンエースは眩しくて   作:kanaumi

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ノルンエースは並びたくて

 

 早朝の何もかもがいまだ眠りに付いて、しーんと静まりかえった時間、あーしは1人でに寮の部屋を出た。いつもはうるさい廊下もこの時間なら静かなものだ。落ち着くからいつもこうであって欲しいとも思う。

 

 あーしは外に向かう為、ゆっくりと音を立てないように歩く。ギシギシと小さく足元から聞こえる。この寮は金がないのか古い建物使用しているからか、こう言う音だって聞こえる。仕方ないかっていう気持ちと、怖いから何とかしての心がせめぎ合っている。トレーナーなんかもそれに付いては愚痴をこぼしてるから民意だろ。

 

 靴を履き、外に出る。外は少し涼しいかなと感じる季節で、木枯らしが髪を撫でる。トレーナーは上着がいるって、いつもよりも厚い服を着てたっけ?あんまりわかんないけど。…そういえば北原や柴崎も上着を着てた、か。まあ、だからって何もないけど。

 

 どうでもいい事を考えながら、あーしは簡単な準備運動を行う。朝から走るのも、この時間にこうやって身体をほぐすのも、トレセンに来るまでは考えなかった事だと思う。ここに来てから実感しにくいけど、あーしだってここらじゃ有名だった。簡単と言い切らないけど、勝つことは難しくなかった。それに──だから、こうやって走る事は習慣じゃなかった。じゃあ、なんでするのかは上手く言えない。ただ、したい気持ちが増えただけだ。

 

 最初は軽めに足を動かす。何百何万とは走らない。けど、何十は走る気持ちで足を動かす。今日の調子は、うん、変わらない。特に痛みも無ければ羽みたいに軽い事もない。足はあーしにとっても大事なもの、それに異常がないのは良いことだし、最近は薄れてたけど走る事は気持ちいい。下がアスファルトなのが少しのマイナス、プラスは朝の冷たい風が気持ちいいことだろう。

 

 カサマツトレセンを出て、公道を走る。このまま河川敷を南西に進んで市街に入って行くルートにしようか。穏やかな気持ちのままあーしは走り続け、V字カーブを曲がって田んぼを横目に走る。朝早いの住民がぽつり、ぽつりと姿が見えた。

 

 20キロは走ったのか少し息が出てきた。結構走ったなーと思う。ルディやミニーが聞いたら驚くかもしれないし、あきれるかもしれない。…いや、あきれるか。そんな事を思いながらも走り続けて市街に入って行った。

 

 市街には人がまばらに歩いていたりと、静けさは過ぎてしまっていた。スマホを確認すると、走り出した時間から結構経っていて、遠くでは日も昇り始めていた。住宅街を通り抜けて、再び河川敷へと足を運ぶ。何故かって?それは走りやすいのもあるけど、何よりもこの時間はいつも走っているから。

 

 河川敷に向けて走る私の頭上には夜明けの空が広がっている。今日はいい天気だから、暗い空が明るくなるのがはっきりと見えている。

 

 ハッハと息を吐きながら走っていた。空は夜明けから日の出に差し掛かり、朝が夜空を焼いていく。そして、朝焼け空の下には彼女はいた。今日もボロボロで泥まみれの彼女は今日も絶えず走り続けていた。毎日、毎日、この空を背に浴びて走り続けていた。彼女が駆けた後を追う風は足元の花種を弾き舞わせる。

 

 それを追う私が更に高く遠くに飛ばせる。寒さはどこ吹く風の私達は熱を持ってここを行く。見学者はただの1人、厚いコートを着て、寒そうにホットコーヒーを啜る。その目には焼けた空を横切る白い流星が4つ。

 

 意味は知らない。ただ、綺麗だった。

 

 

「…オグリ、そろそろ朝練でドロドロなのどうにかしない?毎日、毎日、洗うの大変でしょ」

「そうだろうか、ノルンやベルノが手伝ってくれるから気にしていないが」

「あーしらが手伝ってる時点で駄目だろ」

「ううむ、そうだったのか」

「…ベルノが甘やかしすぎなのをどうにかしないとか」

「うん、何か言ったのか、ノルン?」

「何でもない、北原呼んで帰りましょ?そろそろ朝食に間に合わないから」

「ああ!戻ろう!北原北原、帰ろう!」

「──おう、わかったー!」

 遠くにいる北原がオグリの呼びかけに応え、ストップウォッチやボードを片付け始めた。だけど、もうオグリは立ち上がって走り出しそうだった。北原が来るまで待っていられるだろうか。…間に合った。

 

 

「なあおい、ノルン、こいつを止めてくんねーか?」

「あんたで止まらないのに、あーしで止まる訳ないじゃん」

「フンフン、朝ごはん、朝ごはん」

 足の遅い北原をオグリが背負い河川敷を走る。綺麗だった朝焼けも晴天に変わっていた。

「今日の朝ごはんはなんだろうか?」

「あー、何だって美味しいだろ、お前は」

「ミニーは何か言ってたか、…忘れた」

 北原を背負って、やっと同じくらい。強くて速くて遠い存在。横目で見て、その姿に実感する。彼女と私の距離を。朝練したくらいじゃ追いつけないその差は私の心を足踏みさせる。けど、この時間だけは並んでいた。それは嘘だけど、私は嬉しく思っていた。

 

 

 




短いですが、おしまいです。
ノルンエースが可愛くて、魅力的だったから始めたものですが、これ以上は焼き回しになりそうですし、それで書くのは辛いので一区切りとします。もし、良いのが浮かんだら書くかもですが、基本は他の人のを読み漁りたいです。不格好な文章でしたが、呼んでいただきありがとうございました。
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