Re:Born・Build─生まれ変わりのビルド─   作:LEIKUN0227

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第31話 バッタのスマッシュ 前編

 

 

 

 

─────

 

──少し赤みを帯びた光が家と家の隙間から差し込んでいた。

路地裏のコンクリートはまだ温かく、

そこに倒れていた俺はゆっくりと目を覚ました。

 

「……ん、あれ……? ここ、どこだ……?」

 

体を起こそうとした瞬間。

手──いや、手らしきものが視界に入る。

 

黒と緑が混ざったような硬質の殻。

細長く、節のある腕。

そして指の先は金属質の鉤爪のように尖っていた。

 

「は……?え、なにこれ……?」

 

混乱しながら立ち上がった瞬間、

さらに違和感が走る。

足元を見ると──

 

胴から下だけが、妙に太い金属パーツで構成されていた。

灰色の重厚感のある金属パーツ、

それと、金属パーツの前面のみに装着された"シアンブルー"の装甲。

 

この姿には少し見覚えがある。

最近ニュースで取り上げられている怪人。

仮面ライダービルドと戦っている、あの──

 

「……スマッシュ……?」

 

スマッシュ、最近世間を賑わせているあの怪人の様な姿。

頭に手をやると、触れた形状はどう考えても人のものじゃない。

額から後ろになだらかに伸びる外骨格。

左右に広がる、バッタのような複眼の出っ張り。

 

「俺……バッタのスマッシュ、になってるのか……?」

 

呼吸が荒くなる感覚はあるのに、肺が動いているかすら分からない。

心臓が早鐘を打っている気もするが、肉体のどこに鼓動があるのか判断できない。

 

不安と恐怖が一気に押し寄せて、しばらく動けなかった。

だが、路地裏にいても何も分からない。

 

「……落ち着け……とにかく、誰もいないところで状況を……」

 

壁に手をつきながら路地の奥へと歩き出す。

歩くたびに脚部の金属がかすかに軋み、

わずかに跳ねるような歩行になる。

 

人間じゃなくなっているという事実が、

嫌でも実感として積み重なっていくのだった。

 

─────

 

路地裏を抜け、さらに人目を避けるように進む。

表通りに出ないよう、ビルの裏手や住宅の間を縫う細い道を選んだ。

 

着いた先はシャッター街。

今は使われなくなった土地だ。

すぐ近くに今も使われている大通りがありはするが、

余程もの好きでも無い限り、ここを通る人は居ない。

 

「……やっぱり、目立ちすぎるよな……」

 

ガラスに映った自分の姿を見て、思わず足を止める。

 

人型ではあるが、どう見ても怪人だ。

この姿で人前に出れば、

悲鳴を上げられるのは間違いない。

 

改めて自分の姿を見てみれば、

 

腕を振ってみる。

思った以上に軽く、そして強い。

軽く壁に触れただけなのに、コンクリートが僅かに欠けた。

 

「……力も強くなってる……」

 

怖さと同時に、得体の知れない感覚が胸に広がる。

これがスマッシュの身体能力なのか。

 

なるべく人のいない方向へ、

そう思ってそこから更に奥に歩き続けていた─その時だった。

 

「──きゃあああああっ!!」

 

遠くから、はっきりと聞こえた。

短く、切羽詰まった悲鳴。

 

「……っ!」

 

反射的に顔を上げる。

音は、こっちだ。

建物の隙間を抜けた先、少し開けた先にある大通りから聞こえてくる。

 

「やめろ……! 来るなっ……!」

 

今度は男の声。

明らかに"何か"から逃げている。

 

一瞬、足が止まる。

この姿で行けば、助けるどころか、

さらに恐怖を与えるだけかもしれない。

それに──自分がスマッシュになっているという事実。

 

「……でも……」

 

あの叫び声は、聞かなかったことにできない。

拳を握りしめる。

金属質の指が擦れ、乾いた音が鳴った。

 

「……逃げたら、きっと後悔する。」

 

自分に言い聞かせるように呟き、俺は走り出した。

脚部のバネのような構造が地面を蹴り砕き、

想像以上の速さで前に進む。

 

建物を抜けた先。

夕暮れに染まり始めた街の一角で──

何かの影が、ゆっくりと動いているのが見えた。

 

「……あれは……」

 

頭部はサンドウィッチのように顔らしきパーツを挟むかのように装着された装甲。

片腕はクワガタやハサミ、ニッパーの様に鋭く、切る事が出来そうな右腕。

もう片方はレンチやペンチ、クランプの様に挟む事自体に特化した様な見た目の左腕だ。

全体的に赤黒い装甲をしていて、

下半身はゴテゴテしていてメカメカしい。

 

「あいつも……スマッシュか……」

 

自分と同じスマッシュ。

見た目からして"サンドウィッチスマッシュ"という名前が妥当だろう。

何かしら挟む、掴む動作のある物がモチーフになっていそうだからそう名付けたが、

わりとその通りの行動をサンドウィッチスマッシュは始める。

 

交差点付近という事もあり、幾つか標識や電柱等が周りにはあったのだが、その内の1つ─標識─を切断に向いてそうな右腕で掴むと、容易く真っ二つにしてしまった。

 

鈍い音が鳴ると共にその標識が落ち、

その切断力に周りにいた人々が驚いたり悲鳴をあげていた。

 

その切り取られた標識を特化したような左腕で挟むとそれを無造作に振り回し始めるサンドウィッチスマッシュ。

スマッシュが一振するだけでブォンと重い風切り音が聞こえ、それが地面や電柱、建物の壁を掠る旅に破壊が起きた。

 

「ひっ…ひぃぃ…!!」

 

バッタスマッシュ「!」

 

その短い叫び声を上げるまで気が付かなかったが、

すぐ近くには倒壊した建物の瓦礫によって塞がれている場所に逃げてしまい、袋小路になってしまっている何人かの人がいた。

 

遠くにいる俺ですら聞こえたその悲鳴を、

すぐ近くにいたサンドウィッチスマッシュが聞き逃さない筈もなく、サンドウィッチスマッシュがゆっくりとその声のした方を振り向いた。

 

その様子はまるでゾンビ映画のようで、これから起こる事が容易に想像する事が出来る。

あのままではあの場所にいる人が襲われると。

 

バッタスマッシュ「仮面ライダーはなんで来ない…!?もうそろそろ来てもおかしくないのに!!」

 

俺はその光景を遠目から見ていた。

助けに行けない。行けるはずがない。

自分も、今彼処を襲っている奴と同じスマッシュなのだ。

 

だと言うのに、隣町にいる筈の仮面ライダービルド、

それと仮面ライダークローズは一向に顔を出さない。

目の前で失われようとしている命があるというのに!

 

「おいどうすんだよ!こっち来てんぞ!?」

 

「そ、そんにゃ事言ったってぇ〜〜〜!!!?」

 

「もうダメだァおしまいだァ…」

 

「オォン!!」

 

「終わったぁ…終わったぁあ!」

 

「どうしようおばあちゃん!」

 

「しょうちゃん!うちの背中に隠れ!」

 

先程の悲鳴によりターゲットに定められた人達から次々と悲鳴があがる。

 

中には懸命に壁となっている建物の壁を登ろうとしたり、

砕こうとした人もいたが、

それよりも早いペースでスマッシュが近付いてきてるが故、

最早諦めに近い感じで手を止めてスマッシュの方を見ていた。

 

─────

 

私はサラリーマンをしている33歳独身の男です。

 

今日の私は今月に入って100回目となる取引先に出掛けていました。

手提げ鞄を持ち、

昨今の暑さに耐えかねて購入した黒の日傘をさしながら取引先に向かっていました。

 

何時もの通りに大通りを歩き、

人混みの中を通って取引先に向かっていた私は、

ふと喉が乾きました。

 

「時間も余裕がありますし、何か飲みましょうか。」

 

そう思いたち、

人混みから離れてすぐ近くにあった自販機の前へと歩いていった私は、自販機の近くの窓ガラス…の奥に設置されているテレビの映像が目に入りました。

すぐ目の前の店が昭和の時代によく見られたガラス越しにテレビが見える電気店だと気付き、

何気なくそのテレビから流れる番組を見ていたら、

最近現れるようになった怪人…スマッシュと言うらしいですね。

そのスマッシュにまつわるニュースが流れてきました。

 

『〇〇街の〇〇大通りに、たった今スマッシュの目撃情報が入りました。周囲にいる方々は速やかに避難を─』

 

「…え」

 

〇〇大通りって…ここじゃないですか?

そう思ったその時、すぐ後ろから叫び声があがりました。

私も、その悲鳴を聞いて後ろを振り向きます。

 

大通りがパニックに変わる。

ひと昔に見たそのような曲のフレーズが頭をよぎりました。

その曲のフレーズ通りの様な光景が目の前に広がりました。

 

…悪い意味で。

 

そこに立っていたのは、

つい先程テレビにてニュースになっていたスマッシュと呼ばれる怪人でした。

 

両手が某光の巨人に出てくる両手がハサミの怪獣の様に両手がハサミみたいになっているスマッシュ。

名前は…カニっぽいからカニスマッシュとでも言いましょうか。

 

カニスマッシュはすぐ近くにあった止まれと書かれた標識を右手で掴むと、なんと軽々しく切り落としたではありませんか。

更にその標識を、今度は左手で掴んだカニスマッシュはその標識を使い、手当り次第に標識を振り始めました。

 

カニスマッシュが振り回す標識により周囲の物は破壊されていきました。幸い、カニスマッシュの攻撃は今の所人には当たっておらず、周りにいた沢山の人が一目散に逃げていきます。私もその人達に着いていったのですが…それは誤りでした。

いや、正確には、途中までは良かったのです。

建物が崩れてこなければ。

 

「っ!」

 

「倒れるぞ!急げ!!」

 

「落ちてくるぅ!?」

 

「下敷きになります!早く走ってください!」

 

そして建物が崩れ落ちました。

幸い、前を走っていた人達はギリギリ建物の下敷きにならずに逃げる事が出来たようですが、

私を含め、後ろにいた方々は目の前で逃げ道を失う事になりました。

 

そして…

 

今、この状況です。

数メートル先には先程まで破壊活動をしていたカニスマッシュがゆっくりとこちらに向かって来ています。

武器の様に振り回していた標識は大きくひしゃげてはいますが、それで殴られでもしたら大怪我は不可避でしょう。

 

後ろには先程後ろを走っていた人達…私よりも若い少年少女と、老人がいました。

皆ゆっくりと近付いてくるスマッシュに怯え、

倒れてきた建物の壁だった瓦礫に身を寄せていました。

 

このままでは、全員が怪我をしてしまう。

そう考えた私は震える足を抑え、

その場にいた誰よりも前に立っていました。

 

「怖い。逃げ出したい。」その言葉が頭の中を駆け巡っていました。

今すぐにでも逃げ出したかった。

そんな私を引き留めたのは後ろの人達。

 

「おいどうすんだよ!こっち来てんぞ!?」

 

「そ、そんにゃ事言ったってぇ〜〜〜!!!?」

 

「もうダメだァおしまいだァ…」

 

「オォン!!」

 

「終わったぁ…終わったぁあ!」

「どうしようおばあちゃん!」

 

「しょうちゃん!うちの背中に隠れ!」

 

皆、私と同じくらいの恐怖を感じでいました。

中にはこの子だけでも助けようとするお婆さんもいました。

自分よりも守るべき存在。

そう思ったのです。

 

「こ…来い!スマッシュ!」

 

折り畳んでいた日傘を開いて構える。

心もとないし、すぐに折られるのがオチでしょうが…

それでも、一瞬一瞬が大事です。

 

「や、やぁあ!」

 

腑抜けた様な声が漏れる。普段こういう事はしないですから声はひょろひょろで力もありません。

ですが

 

カニスマッシュ「ガ?グガァ!」

 

注意を引く事は出来ました。

カニスマッシュが手にしていた標識を振りかぶってきたので自然と立ち止まりました。

 

眼前を横切る標識。

そのまま行っていたら今ので退場してましたね。

距離を見誤ってました。

 

まぁそれを受けていたかもしれないって思ったらですね、

自然と身体が硬直してしまうんですよ。

 

「ひぃ」

 

カニスマッシュ「がァァ!」

 

そんなチャンスをスマッシュが放っておく訳もなく、

再度標識が振りかぶられました。

 

あぁ。終わりか。

 

そう思い、私は目を閉じました。

 

…もう少し、長生きして、私が憧れた本物の"仮面ライダー"を見てみたかったですね。

 

ガキンッ!

 

「…え?」

 

カニスマッシュ「グガ!?」

 

???「かっこよかったぜ、おっさん─後は任せろ。」

 

振りかぶられた標識は途中で止められ、

私の前に、誰かが立っていました。

 

「貴方…は。」

 

「俺?俺は…何故かスマッシュ?になったから秘密で。」

 

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