目覚めたら、亡国の王子でした   作:チョモン=ブランマ

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第12話:Attack

「エイミーはどうした?」

「馬車の箱の中だ。向こう側の味方に届ける必要がある」

「わかった。血路を開こう」

「うん!」

 

トーマスとソーマは向こう側の味方軍勢と合流するため、強行突破で敵に斬りかかる。敵も反撃するが、軽装兵では2人に歯が立たなかった。

トーマスは素早い剣捌きで相手が斬りかかるよりも速く胴を斬る。相手の突きには切り上げで弾き一部は鎖帷子を着込んでいたが、そのような敵は蹴飛ばし、倒れこんだ隙を見逃さず、顔に向けて剣を投げつけ、倒した兵士から剣を奪い取った。

一方のソーマは圧倒的な怪力で敵兵を投げ飛ばしてはいるが、偽装のため普段持っている大槌を置いてきたため、慣れてない剣で戦っている。

 

「クソッ、剣ではやりづらい!」

 

ふと、1人の重装歩兵が小型のメイスを持っているのを見かけた。ソーマはその兵士の方に向かって突進する。

途中で斬りかかってくる兵士がいたが、振り下ろされる前に顔面をストレートで殴り飛ばし、その後ろにいた鎖帷子の兵士には頭に向けて思い切り剣を叩きつける。衝撃はそのまま伝わり、兵士は昏倒した。

そして重装歩兵にはまず剣を投げつける。重装歩兵は剣を弾くが、視界がふさがっている間にソーマは助走をつけ前転飛びで勢いをつけて蹴り飛ばした。そしてメイスを力ずくで奪い取る。その間に近づいてきた兵士が斬りかかるが、ソーマはそれをメイスで弾く。兵士は大きくよろめき、その隙にソーマは体勢を立て直して、胴にメイスの一撃を浴びせた。

 

「やっぱこういうのがいいね」

 

ソーマはそう呟き、トーマスと味方との合流を図る。

トーマスは走りつつ敵を斬り続けていたが、突然横からタックルを掛けられる。

 

「ぐあっ!」

 

トーマスは大きくよろめき、倒れこむ。

 

「いつつつ……」

 

トーマスは起き上がろうとするが、すでに目の前に剣が突きつけられていた。

剣を突きつけた兵士は、トーマスを袈裟斬りに斬りかかる、その時。トーマスから見て左の方向から爆発音がした。続いて兵士がなだれ込み、次には魔法で攻撃を仕掛けるアンナの姿があった。

 

「アンナ!?」

「お兄様!お怪我はありませんか!?」

「ああ、大丈夫……危ない!」

 

アンナの後ろには、矢を番えている敵兵がいた。矢をいろうとしたその瞬間、敵兵にメイスが投げつけられ、アンナの横から何者かが横切り、アンナを掴み倒し、覆いかぶさった。メイスは弓兵に命中し、はずみで放った矢はどこかの方向へ飛んで行った。

 

「大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます……」

「ソーマ!アンナ!」

 

トーマスが2人のもとに駆け寄る。

 

「アンナ!どうしてここに来たんだ!」

「私だけ見ているなんてことできません!それに、ソーマさんに武器を届けなくてはいけないのです!」

「その武器は?」

「ソーマ!」

 

声のする方向に振り向くと、ジェフが大槌を引きずりつつこちらに向かっていた。

 

「お前の武器だ!受け取れ!」

「ああ!」

 

ソーマは走ってジェフのもとに行って大槌を手に掴む。そしてその勢いのまま振り回し、向かってきた兵士3人を一気に薙ぎ払った。

 

「荷物はどうした!?」

「あっちの方向だ!取りに行かないと!」

「わかった!」

「ソーマ、行くよ!」

「ああ!」

 

こうしてソーマとトーマスが前衛となって道を切り開き、その後ろにジェフとアンナ、味方軍勢がついていく形となった。

そして2人は、荷馬車を見つける。

 

「ああ、アレだ!」

「無事でいてくれ、エイミー!」

 

トーマスは急いで荷台に駆け寄り、箱をノックする。すぐにノックで返されたことでトーマスは安堵する。

 

「エイミー、今開ける!」

 

トーマスは箱の蓋を開けてエイミーを出す。

 

「外はどうなってるの?」

「味方の援軍が来ている!君はそれで陣に帰るんだ!」

「貴方は?」

「僕はまだやることがある。投石機を壊さないと」

「……絶対生きて帰ってくるのよ」

「わかってる。陣地でまた会おう」

 

トーマスはエイミーを連れて外に連れ出し、ジェフに引き渡す。

 

「ジェフ!帰り道までは僕たちが道を切り開く」

「王子はどうするんだ?」

「投石機を壊しに行くんだ。大丈夫、ソーマも一緒だよ」

「よし、今度は陣地に向けて突破するぞ!」

「走って!」

 

トーマスはソーマとともに再び前衛を務める。

ソーマは大槌で向かってくる前方の敵兵を、その怪力でまとめて殴り飛ばしていく。

いくら鎧を着こんでいても、その打撃力の前では人の形をとどめることで精いっぱいであった。

トーマスはジェフたちの周りにつき、狙ってくる敵兵がいないか警戒をしていた。時折、敵兵が襲い掛かってくるが、素早く斬りつける、剣を弾いて蹴飛ばすなどして撃退していった。

 

「トム、ジェフたちはきちんとついてこれてるか?」

「大丈夫だよソーマ」

「よーし、突破まであと少しだ!」

 

ソーマは踏み込んで回転しつつ飛び上がり、大槌を振り回した。

そして自陣を遮る敵兵はいなくなり、一行はついに包囲を突破する。

 

「ジェフ、アンナ。エイミーを頼んだ!」

「わかった!死ぬなよ、王子!」

「ほかの兵たちもジェフたちについていって!」

「しかし王子は――」

「僕とソーマ2人だけで十分、早く行って!あの3人を守るんだ!」

「……わかりました。幸運を」

 

味方軍勢は2人と別れ、ジェフたち3人の護衛をしながら陣地に帰っていく。

 

「ソーマ、投石機はどこにあるか知ってる?」

「ああ、投石機は森に隠している。移動してなければ覚えがあるよ。3台ここに来たんだよね?」

「うん。数えた限りはそうだった」

「じゃあぶっ壊しに行くか」

「行こう、ソーマ!」

 

2人は敵兵を倒しつつ森の方へ走り出す。

あちこちに篝火台が置いてあり、暗い森の中を照らしていた。

ソーマはその台を大槌で壊し、火のついた松明をあたりにまき散らした。

 

「何をしてるの、ソーマ?」

「これであいつらは火の対処に追われることになる。先を急ぐぞ」

「わかった」

 

ソーマの目論見通り、後ろから迫ってくる敵が見えなくなり、2人は前に集中することができた。

そして1台目の投石機を見つけた。

 

「あった、これが1台目!」

「僕が壊す。トムは周りを警戒して」

「わかった」

 

ソーマは力任せに大槌で投石機を壊して回る。

トーマスは敵兵がソーマへ近づかせまいと、敵兵を斬り続けていた。

 

(それにしても思ったよりも敵が来ない……そんなに兵が少ないなんてことは無いはずなのに)

「トム、終わったよ!」

 

トーマスがソーマの方を向くと、すでに投石機は壊され、火をつけられていた。

 

「あと2台、行こう!」

「ああ!」

 

2人はあと2台の投石機の破壊に向かう。

 

「気のせいかな、さっきより敵が増えてきた」

「もう気づかれてるんだと思うよ、本当の狙いは投石機だって」

「じゃあ次の投石機には護衛がいるかもしれないってことか」

「そう考えた方が……トム、アレ!」

 

ソーマの顔の向いた先には投石機があり、その周りに重装歩兵4人、軽装歩兵10人の護衛が付いていた。

 

「鎧付きは任せた、ソーマ!」

「ああ!」

 

トーマスは軽装歩兵に、ソーマは重装歩兵にそれぞれ飛び掛かる。

ソーマはまず大槌を1人に振り下ろす。鎧は大きく変形し、そのまま倒される。

 

「何だおまえたがぁ!?」

 

続いて右薙ぎでもう1人、すかさず左薙ぎでもう1人と叩き飛ばし、あっという間に3人を倒していった。

一方のトーマスは軽装歩兵を相手しているが、全員が鎖帷子を着ているので斬撃がなかなか通らない。どうにかして1人の首に剣を当て頸椎を折ることで倒したものの、この調子で残りを倒すには時間がかかる。

ソーマが投石機を壊したら助けに来るかもしれないが、そうなるまでもたつくと、3台目の投石機の破壊に影響が出るかもしれない。

何かないかとトーマスが探していたが、投石機の近くに、さまざまな大きさの石を見つけた。トーマスはすぐにこの石置き場に駆け込み、石を取り出して1人に投げつける。石は1人の頭に当たり、そのまま倒れた。

すかさずもう1個投げてもう1人を倒すが、残りは盾を前に構えて頭部への直撃を防ごうとした。しかし、今度はむこうずねに石が直撃。装甲の無い場所であったため、痛みに耐えられずそのまま倒れてしまう。

焦った敵兵は盾を少し下げ、石置き場をチラ見するが、さっきまでいたはずのトーマスの姿はない。どこに行ったのかと防御を解いた途端、一番前の敵兵の目の前の下あたりにいたことに気づくが、その途端にトーマスの右薙ぎが頭部に直撃する。

敵兵は昏倒し、倒れていた敵兵にもとどめを刺す。これで敵兵は残り5人となった。ちょうどその時、トーマスの後ろからソーマの声がした。

 

「トム、こっちは片付いた!あとはコレを壊すからトムはそいつらを頼んだ!」

「わかった!」

(そうだ、ここは森なんだ。この木を活用すれば……!)

 

トーマスは自分から見て左前の方に樹木があるよう立ち回った。こうすることでトーマス側は剣を振るえても、敵側が右手で剣を振ることは厳しくなる。

トーマスはこうすることで敵の動きを制限し、対するトーマスは、足を中心に狙った。

こうすることで1人の脚を斬り、その場で転倒させ、とどめを刺した。

すかさずトーマスの頭に向けて敵の突きがやってくるが、体を後ろにそらしてこれを回避。左手で突き出した右腕を掴み、引き倒して喉に剣を突き刺した。

左から斬りかかってくる敵に対しては、右前に体を転がし、その勢いのまま立ち上がって体勢を立て直す。敵の斬りかかりを弾き、よろけた隙を見逃さず左足で蹴飛ばした。

続いて右から斬りかかる敵にも剣で弾き、すぐに剣を頭に振り下す。鎖帷子をしているので斬られることはなかったが、衝撃が直接脳に届いたため昏倒した。

 

(あと1人は……真後ろ!?)

 

トーマスは真後ろの敵を察知し、前に駆け出す。目の前に木があることに気づき、反時計回りで木を一回転して敵兵に相対する。袈裟斬りで斬りかかってくる敵兵に対し、トーマスは剣で弾き、左足で相手の左足を思い切り蹴りつける。重心を寄らせていた左足を蹴飛ばされたことによって、敵兵は転んでしまう。トーマスはすかさずとどめを刺す。

 

(あとはさっき転ばせた1人だけ!)

 

トーマスはあと1人の敵兵を見つけ、走って間合いを詰める。敵兵が斬りかかろうとするも間に合わず、トーマスの斬撃は敵の右腕を切り離すに至った。そして間髪入れず左ストレートを入れて敵兵を倒す。

 

「ソーマ、こっちは終わったよ!」

「こっちもだ。これであと1台、あっちだ!」

 

2人は最後の投石機があるだろう方向に駆け出す。

 

「もしかしたら3台目は動かしてるかもしれない。でもそこまで遠くには行っていないはずだ」

 

ソーマの言葉通り、3台目のあった場所に行っても、そこに投石機はもう置いていなかった。周りを見ると、数人が集まっている様子が見えた。

 

「ソーマ、あれか?」

「多分あれだ、行こう!」

 

2人は人が集まっているところに向けて走り出した。

 

「クソ、もうここまで来たか。全力で投石機を守れ!」

 

投石機を運ぶことを中断し、武器を持って護衛につく。

しかし、ソーマの大槌によって一気に3人が叩き飛ばされ、続いて2人、また2人とどんどん数を減らしていく。

トーマスは松明を持っていた敵兵を蹴飛ばし、松明を強奪する。そしてその火を投石機にかける。

投石機についた日はどんどん大きくなる。敵兵はそれを消火しようとするが、2人に阻まれてできない状態であった。やがてその火は、投石機が修復不可能になるまでに燃え上がるのだった。

 

「これで全部片づけた。戻るよ、ソーマ!」

「ああ!」

 

2人はやるべきことを終え、全速力で自陣に向かった。敵兵が追いかけてくるが、速力は2人の方が速く、どんどん引き離されていくばかりだった。

途中にソーマがまき散らした火が一面に広がっていたが、燃え移らないよう火を避けつつ走り抜けた。

森を抜け、開けた場所に出た2人は、まだ味方の軍勢が敵と戦っている光景を目にした。

 

「何やってるんだ……!?」

 

トーマスは驚きつつも全速力で味方軍勢に向かう。ソーマもトーマスのすぐ後ろについていった

途中、敵兵の妨害に遭うもトーマスは難なく跳ね返し、味方軍勢と合流した。

 

「王子、お待ちしておりました!」

「何やってるんだ、さっさと退け!」

「はっ、陣まで撤退だ!」

「後ろは任せて、全力で逃げて!」

 

トーマスとソーマは撤退する味方の殿を務めることになった。

 

「多分、彼らは相手の気をそらしてたんだと思うよ」

「僕たちがやりやすいように?」

「ああ。多分ね」

 

2人は構えるが、敵兵がやってくる気配がない。

 

「あいつら……来ないのか?」

「僕たちを恐れているらしい。このまま下がろう」

「うん」

 

2人は味方の撤退ペースに合わせつつ下がっていった。やがて、味方兵の最後の1人が自陣に入るのを確認すると、2人も自陣に戻っていった。

 

--------

 

「王子、作戦は?」

 

ジェフがトーマスに作戦の成否を尋ねた。

 

「大丈夫、すべて壊したよ」

「本当か!」

 

トーマスの言葉を聞いた群衆は歓声を上げた。

 

「すぐに生存者の数の確認を行って。けが人には早急な治療を」

「トム!」

 

トーマスが呼びかけられた方向に振り向くと、エイミーがそこにいた。

 

「エイミー!」

 

トーマスはエイミーの方に駆け寄り、手を取り合った。

 

「怪我はない?」

「ああ、どこも痛くないさ」

「よかったぁ……」

 

エイミーの安堵の表情を見て、トーマスも自然と微笑んだ。

 

「ジェフ、あっちの準備は大丈夫?」

「ああ、手はずは整ってる。あとはいつやるかだが……」

「実行して。今こそ反撃の時だ」

「了解した、王子」

 

ジェフはそう言って、自陣の奥に消えていった。

 

「トム、準備って?」

「今度はこっちが攻める番。エイミー、もう少しでこの戦いも終わる」

「何をするつもりです?」

「もう少しで僕たち以前に帝国によって占領させられた土地の人が反乱を起こす。その時が帝国を打ち倒すチャンスなんだ」

「また、戦いに行くことになるのね……」

 

エイミーの表情が少し暗くなる。

 

「絶対帰ってくる。まってて、エイミー。やるべきことを終わらせて、ロスク村に戻ろう」

「……うん!」

 

それを聞いたエイミーは、トーマスとしばらくの間、抱き合っていた。




次回で最終回です。
ここまで読んでくださった方、どうぞ最後まで読んでいただければ幸いです。
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