「ソーマ……!?どうしてここに……」
トーマスの問いかけに対し、ソーマは何も答えない。
「もしかしてソーマも王妃を探しに?その部屋にいるのかい?」
ソーマは黙ったままだ。トーマスはソーマに近寄る。
「なあ、どうしたんだ?ソーマ、なんか変だぞ?」
ソーマは無言で大槌を両手に持つ。トーマスの足が止まる。ソーマの持つ大槌は直径50cm、反対側の長さまで70cmくらいはあり、その反対側は若干尖っている。
「なにしてるんだ、ソーマ?」
突如、ソーマが右足を蹴り上げ、王子に向かってくるとともに大槌を振り上げる。
「ソーマ!!」
ドォン!!
ソーマの大槌は振り下ろされ、さっきまでトーマスのいたところは床にひびが入っていた。
トーマスはとっさに後ろにステップして下がることで回避した。
「ソーマ!今は手合わせの時間じゃない!」
ソーマは大槌でトーマスの上半身めがけて横薙ぎをした。トーマスは上体を後ろにそらすことで避ける。続いてソーマは再び大槌を振り下ろすが、これは前に飛び込んで前転することで回避した。
「トーマス!僕は王妃に会いたいんだ!ここで君の手合わせを受けている時間はないんだよ!」
ソーマは何も言わず、トーマスの方を見る。しばらく見た後、アンナの方を振り向く。
「ひっ……!」
「ソーマ!まさかアンナを……」
ソーマは大槌を構える。
そしてアンナに向かって駆け出し、大槌を振り上げる。
瞬間、ソーマから何かが来ることを察し、大槌を後ろに振り回す。
キィン!
大槌はトーマスの投げたナイフに当たった。ナイフは弾き飛ばされ、壁に当たる。床に落ちたそのナイフは歪んでいて、もう使い物にならない。
「はあっ!」
続いてトーマスは横薙ぎでソーマに斬りかかる。ソーマは前に大きく飛び、ハンマーを縦に振り回す。トーマスは身をひるがえして何とか避けるが、バランスを崩してよろけ、転んでしまう。着地したソーマは大槌の柄を短く持ち、再びトーマスに突進してきた。トーマスは後転して足をつけ。立ち上がりつつ剣を構える。
ソーマのの左薙ぎをトーマスは切り上げで弾く。トーマスはそのまま斬りかかるが、ソーマは弾かれた勢いそのまま右足でトーマスを蹴り飛ばす。
「ぐっ!」
トーマスは1mほど後ろに飛ばされるが、うまく受け身を取り、片膝立ちの体勢で止まる。
ソーマは追撃をせず、構えている。
(くそっ、僕一人ならソーマを走ってやり過ごせるけど、アンナを置いていくことはできない!)
「お兄様!」
「アンナ……」
「ソーマさん、なぜこんなことをするんですの!?」
アンナはソーマに問いかけるが、ソーマは何も答えない。
(僕は一度もソーマに勝ったことがない。これじゃ先に進むどころじゃない。どうすれば……)
ふと、目線を下に向けたことで、ソーマの足元の床にひびが入っていることに気づく。
「お兄様、お怪我は?」
「……アンナ、よく聞いて」
トーマスは小声でアンナに話しかける。
「床にひびが入っている。このままソーマを暴れさせて、ある程度床の日々を広げさせたら、合図とともにアンナがその床に向けてさっきの魔法を放つんだ」
「ソーマさんはどうするんですの?」
「今はあいつにかまっている暇はない。頼んだよ」
トーマスはアンナに作戦を伝えると、立ち上がる。
「なあ、ソーマ。なんで邪魔するんだい?僕は早く王妃に……母さんに会いたいんだ。そこをどいてくれよ。」
トーマスは剣と盾を構える。ソーマも大槌を、柄を短く持って構えた。
「僕はただ母さんに会いたいだけなんだ。ここにいるアンナもそう。ソーマ、わかってくれるよね?だから、そこをどいてくれよ。」
ソーマは何も言わない。
「ソーマ……そこを……どけって言ってんだろおおおぉぉぉっ!!!」
「お兄様!」
「はああああっ!!」
トーマスはソーマに突進し、横薙ぎで剣をふるうが、ソーマは後ろに富んで回避し、着地した直後、前にステップしトーマスに対し大槌を振り上げる。トーマスはそれを右にステップすることで回避し、大槌はそのまま床にぶつかる。衝撃で床のひびはどんどん広がっていく。
トーマスは剣を振り下ろすが、ソーマは柄の下部分で受け流す。するとトーマスはシールドバッシュでソーマを押し出した。ソーマはよろけるが、すぐに体勢を立て直し、大槌を前に突き出して突進した。壁際に立っていたソーマは右に避け、ソーマはそのまま大槌を壁にぶつける。
トーマスは剣を右薙ぎしたが、ソーマは上体を倒すことで回避、その姿勢から大槌を下から上に振り上げる。トーマスは後ろに飛び、大槌を躱す。トーマスは大槌をぶつけた壁にもひびが入っていることを確認した。
(よし、この調子だ!)
トーマスは再びソーマに斬りかかる。
左斬上を掛けるが、ソーマの大槌に阻まれ、逆に大槌で小突かれる。そしてよろけたトーマスに対し、大槌を振り下ろす。トーマスは右に飛んで大槌を躱し、またも床に大槌がぶつかる。床にできたひびは、ソーマが大槌で攻撃するたびに大きくなっていった。
(…もう少し!)
トーマスはソーマに向かって走り出す。ソーマは大槌を横に構える。
大槌が振り回されるその瞬間、トーマスは思いっきり床を蹴り上げ、跳ぶ。大槌は空を切り、トーマスはソーマを飛び越える。ソーマの背後についたトーマスは、左袈裟斬りで斬りつけようとするが、ソーマは後ろ蹴りでトーマスに反撃した。
とっさに体を右にのけぞらせたが、間髪入れずに大槌が横薙ぎで振り回されてくる。盾を構え、後ろに跳んだトーマスだったが、大槌が盾をかすったことでトーマスはバランスを崩してしまう。
「ぐあっ!」
トーマスは2mほど飛ばされ、、壁にぶつかる。
激突というほどではないものの、ぶつかったトーマスは、腕が脱臼していないか気にしていた。
「いってぇ……」
ソーマは大槌を構え、トーマスに向かって振り下ろす。トーマスは左に飛び込んで回避しつつ体勢を立て直した。続いてソーマは大槌を右上に振り上げるが、トーマスはこれを後ろに跳ぶことで回避する。そしてトーマスは袈裟斬りに斬りつけようとするが、ソーマは振り上げた勢いのまま体を1回転し、そして大槌を前に突いた。
「がぁっ!!」
大槌はトーマスに命中し、トーマスは3mほど吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……」
「お兄様!」
「アンナ……そろそろお願い」
「お兄様……」
しばらく動けなかったトーマスだが、アンナの声を聞いて立ち上がり、剣を構える。
アンナはトーマスの言われた通り、魔法をチャージしている。
(やみくもに剣をふるおうとしてもソーマには通じない。ならば……)
ソーマは大槌を構え、トーマスに向けて突進してくる。
「こうだ!」
トーマスは同じく突進しつつ、剣をソーマに向けて投げた。ソーマは剣を弾く。しかし、剣を弾いた直後、トーマスの拳が飛んできた。ソーマは避けることができず、トーマスの拳が顔面に命中し、2mほど飛ばされた。
「今だ、アンナ!」
「ソーマさん、ごめんなさい!」
アンナはソーマに謝りつつ光の弾を放つ。アンナの放った光の弾は、ひび割れた床に命中する。すると光の弾が当たった地点を起点に爆発が起き、その衝撃で周囲の床がガラガラと崩れ落ちる。床の崩落が落ち着いたころには、ひび割れた床は大きな穴となっていた。
トーマスは急いで崩落する床から逃れる。
「……」
倒れたソーマは体勢を立て直すこと叶わず、叫ぶことなくそのまま崩落に巻き込まれていく。
「ソーマ、今は君に付き合っている場合じゃない。僕は一刻も早く母さんに会いたいんだ。」
「お兄様……大丈夫ですか?」
「ああ……体は問題なく動かせる。ちょっと痛むけどね」
「でもソーマさんはなぜこんなことを……」
「わからない。でも今僕たちがやるべきことは、母さんに会うことだ」
「はい……行きましょう」
「うん、行こう」
トーマスは立ち上がり、崩れてできた穴を見る。向こうまで2mありそうだ。
(少し大きいな。僕は余裕で飛び越えられるけど、アンナはきつそうだ)
「アンナ、僕の背中に乗って」
アンナは少し躊躇するが、トーマスが頷くと、アンナは意を決したのかトーマスの背におぶさった。
「行くよ。しっかり捕まってて」
「はい!」
トーマスはアンナを背負った体勢で、助走をつけ大穴を飛び越える。大穴の下にはソーマが上を見ている様子が見えた。
大穴の向こう側に着くと、トーマスはアンナを降ろし、大きな扉の前に立つ。
(この中に……母さんが?)
トーマスは大きな扉を勢いよく開ける。
「母さん!」
扉の先にある部屋は、寝室だった。豪華な装飾を見るに、王妃の部屋であることは確信したが、部屋に人がいる気配はない。
(どこにもいない?まさかもう……)
トーマスは部屋を飛び出し、城の窓から外を見る。奥の方から明かりが、そして下を見ると、メアリーが兵士に連れられ、籠に入れられようとしている様子が見えた。
「お母様!お母様!!」
トーマスに追いついたアンナは、連れ去られていくメアリーに対して叫ぶ。
「アンナ、伏せろ!」
トーマスはアンナにとびかかり、床に伏せさせた。直後、アンナのいた窓に対して矢が撃ち込まれる。
「くそっ!長居はできない……帰るぞ、アンナ!!」
トーマスはアンナを連れ、来た道を戻っていった。
大穴を覗いてみたが、ソーマの姿はない。下の階を覗いてみたが、兵士は見当たらなかった。
(なんでいないのかはわからないけど、降りるなら今だ)
トーマスは先に降り、アンナを受け止める構えをした。トーマスが頷くと、アンナも頷き、飛び降りる。アンナはトーマスに覆いかぶさるようにして受け止められた。
トーマスは衝撃を逃そうと1回転、2回転して止まり、アンナを降ろした。
2人は1階から地下につなぐ階段に向かった。
階段には兵士が3人待ち構えていた。
(くっ、ここにも敵が!?)
トーマスは走りつつ剣を構えるが、
「待て!もしかしてトーマス王子か!?」
「何!?」
トーマスは剣を兵士の喉元に突き付けたところで止める。
「なぜ僕の名前を?」
「我々は王妃の兵です。私はルーカスと申します。王子、抜け道を使うのですね?」
「……そうだ」
「わかりました。ジョニー、君は見張りをしていて。ゴードン、君は私と一緒に来るんだ」
「「はっ」」
「では、ついてきてください」
トーマスはルーカスについていき、階段を降りていく。
「王妃の兵といったよね?いったいここに何があったんだい?」
「反乱です。この城兵の一部は王妃に忠誠を誓った兵士であり、その者たちが今現在、反乱を起こしている最中なのです」
「貴方たちは?反乱に加わらないの?」
「我々は王子を見つけたら護衛せよと王妃からの命令を賜っています」
ルーカスは廊下に出る。敵兵がいないことを確認すると、トーマスとアンナを呼び、食糧庫まで連れていく。
「ここは我々が何とかします。王子は今はお逃げください」
「わかった。ありがとう」
トーマスはそう言って、アンナとともに食糧庫の抜け道に入り、内向きの扉を閉めた。
ルーカスとゴードンは、閉めた扉が見えないよう、近くの箱で塞ぐ。
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ジェフの倉庫についた2人を、ジェフたちは待っていた。
「王子、姫!戻ってきたか!」
2人が戻ってきたことに喜ぶジェフだったが、ロバートがいないことにすぐ気づいた。
「ロバートはどうした?姫と一緒だったはずでは……」
トーマスは何も答えられなかった。ジェフも、トーマスが答えられない意図を察したのか、暗い表情をする。
「そうか……だがまずは俺の家まで戻ろう」
トーマスとアンナは頷き、ジェフの家まで戻った。
呼んでくださりありがとうございました!
今回は短めですが、この後で切るべきところがちょっと見当たらず、ここで一旦切ることとなりました。
また次回、お会いしましょう!