目覚めたら、亡国の王子でした   作:チョモン=ブランマ

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第9話:Abrogation

「さて、まとめると話はこうだ。まず俺の倉庫からの抜け道から場内に親友する。少人数しか一気に通れない以上、まず先導するのはトーマスとソーマの2人、そして2人が暴れまわり、頃合いを見て後続が侵入。まずはさらわれた女性たちの救出。次に城門の確保、そして将軍グラニアの確保。最後に城内を掃討して腫れて制圧完了、と言ったところか。そして帝国から援軍が来ていることも考えると、これらを一夜で終わらせなければならない。何か質問は?」

「その後続の兵士って、今どこにいるんですか?」

「俺しか知らない場所だ。だから気にせず作戦に集中してくれていい。トーマス、ソーマ。存分に暴れてくれ」

「わかった」

「ああ」

 

2人はお互いの顔を少し見つめた後、頷いてそれぞれが支度を始めた。

ソーマが止血用の布を探している最中、トーマスはふと口を開く。

 

「そういえば気になってたんだけど」

「何だい?」

「君のその力って、どうやって手に入れたの?」

「どうやってって……多分これは僕が王族の血を引いているからだと思う」

「どういうこと?」

 

トーマスは首をかしげながらソーマの方を向く。

 

「どうやらソルトラ王国の王というのは、代々特別な力を持っていると言われているみたいで、僕は生まれながらにして怪力の能力があるみたいだった。」

「じゃあ僕にも、その特別な力があるってこと?」

「そうなるだろうね」

「でも僕にその力があると感じたことはないかな……」

 

ソーマは顔を上げる。

 

「……昔さ、トムを鍛えるために色々やったけどさ。弓矢と投擲はすごかったよな。狙ったところに当てられて」

「そういえば……」

「思うに、トムの能力は『狙った箇所へ正確に当てられる』じゃないかなって思うんだ」

「狙った箇所に、か……」

 

トーマスは装備するつもりのナイフを見る。

 

「もう一つ質問いいかな」

「何だ?」

「手合わせの時、手加減してたの?」

「力の加減はできるから、それでトムに大怪我を負わせる、なんてことは起こりえない。ただ、自分は力で何とかする戦い方で、トムのような細かいことはできない。だから腕力は手加減していても、それ以外のテクニックとかは素のままだ」

「そっか……じゃあ僕もまだまだってことか」

 

2人の支度が整う。トーマスは剣と盾、弓矢とナイフを携えて。ソーマは大斧を携えて。

 

「いつかタイマンで君に勝ってやる」

「はは、楽しみにしてるよ」

 

2人は支度を終え、部屋を出る。リビングにはジェフやアンナが待っていた。

 

「準備はできたか?」

「うん」

「気を付けてください、お兄様、ソーマさん」

「アンナも気を付けて」

「よし、じゃあ俺の倉庫まで行くぞ。」

 

ジェフは2人を連れ、家を出た。

 

--------

 

2人は秘密のルートを通り、城の食糧庫に出る。

 

「君は表で暴れてて。僕はまず、さらわれた女性たちを助けに行ってくる」

「わかった」

 

2人は食糧庫から出ようとする、が、食糧庫から出るだろう廊下で、騒ぎが聞こえた。

 

「ここでも戦ってるのか……」

「用意はいい?」

「ああ」

「じゃあ、行くよ!」

 

トーマスは食糧庫の扉を蹴り開ける。

食糧庫の周囲にいた兵士は驚き、食糧庫から出た2人に注目した。

 

「誰だ、お前たちは!」

「僕を知らない……じゃあ敵でいいね」

「じゃ、いっちょ暴れますか」

「うん!」

 

2人はそれぞれの兵士に向かって突進した。

トーマスは剣でまず1人の首を突き刺す。すぐに引き抜き、別の敵兵士の振り下ろしを弾き、装甲の無い脚を斬る。倒れこんだ兵士は一度無視し、また別の兵士の斬りかかりを剣で弾き、もう片方の手に持っている盾で敵兵士の頭を思いきり殴りつける。

ソーマは突進して敵兵士を殴り飛ばす。殴った箇所には装甲が施されているにもかかわらず、かなりへこんでおり、殴られた兵士は、他の兵士を巻き込みつつ倒れる。そして大斧を取り出し、柄を短く持って、斬りかかってきた兵士の腕を斬り落とす。そしてもう一人の兵士の頭を、斧の柄で突く。柄の先端部分はとがってはいないものの、怪力であるソーマの突きは、敵兵士の頭蓋骨をたやすく粉砕した。

 

「んじゃ、外で暴れてくるわ」

「気を付けて。僕はさらわれた女性たちを探すよ」

 

ソーマは屍を縦にしつつ、上に続く階段に突進していった。

トーマスはソーマとは反対方向に進む。

 

「でも、なんでここに人が集まってたんだろ」

 

そう思ってるのも束の間、奥の階段から兵士が3人上がってきた。

トーマスは剣を構える。

 

「もしやトーマス王子でいらっしゃいますか?」

「その声はルーカス?」

「その通りでございます。上の方で騒ぎがあったから何かと思えば、貴方たちでしたか」

「さらわれた女性たちを取り戻しに来たんだ。どこにいるか知ってるかな」

「でしたらちょうどいい。王子、ついてきてくだされ」

 

トーマスはルーカスに誘われるまま、下に通じる階段を下った。

下った先には地下牢が存在し、そこに女性たちが捕らえられていた。

 

「これは一体……?」

「先の広場での反乱がおこったとき、我々3人は地下に立てこもったのです。ここだけは何としても死守しなくてはと思いましてな……いえ、ここは長話をする場所ではございませぬ。ここにいる女性たちを外に連れ出すべきでしょう。」

「……わかった。鍵はあるのかな?」

「鍵なら食糧庫近くにある詰所だと思われます。この階段を上がって、突き当りまで行ったら、上に続く階段とは反対方向に、その詰所があるはずです」

「それは気づかなかったな。じゃあ行ってみよう。ソーマがその方向に言った。もしかしたらもうすでに倒してるかもしれない」

「わかりました。ジョニー。君は食糧庫の見張りを。食糧庫から誰かが来たら、地下牢に案内して。ゴードン、君はここに残るんだ。王子とは私が行く。」

「はっ。お気をつけて」

「では、行きましょう、王子」

 

トーマスはルーカスを連れて上の階に移動した。

上の階の廊下に上がると、すでに兵士の何人かが食糧庫までたどり着いていた。

 

「まずいですね…あの兵士を倒さなきゃ出待ちされます。」

「僕が行く」

「危険です、王子!ここは私が――」

「大丈夫。任せて」

 

そう言ってトーマスは食糧庫に向けて走り出す。

まず食糧庫前にいる兵士を走ったままシールドバッシュで吹き飛ばした。

兵士は直前で気づいたものの、防ぐ行動までとることはできず、5mほど飛ばされた。

続いて食糧庫から出てこようとした兵士の左足を切りつけ、転ばしたところで喉を突き、とどめを刺した。

トーマスは食糧庫に入り、中に誰かいないか確認する。食糧庫は限られた明かりしかなく、死角ができやすかった。

トーマスはあることに気づく。

食糧庫の通路は、上から見ると漢字の「目」のような形をしている。ここに入ってきたばかりにはついていた明かりが、消えている箇所があった。それはトーマスの今いる場所から見て、完全に死角になる場所である。

トーマスは注意して進むことにした。が、トーマスの目の前に移る影が、突然大きくなる。

トーマスは反射的に体を左に避け、そして剣を逆手に持ち、振り向きざまに突く。

剣は相手の頭に命中し、兵士はそのまま倒れこむ。

 

「でやあああああ!!」

 

すぐに死角にいただろう兵士が出てきてトーマスに斬りかかるが、盾でそれを弾き、剣を引き抜きざまに、そのまま斬りつけ、右足で蹴飛ばした。

そしてそのまま倒れ伏した兵士の喉を剣で突き、とどめを刺す。

ようやく一息つけると判断したのも束の間、さらなる物音がした。

トーマスはすぐさま剣を構えるが――

 

「おい、トーマス!俺だ俺!」

「ジェフ?」

 

トーマスは構えを解く。

 

「お兄様!」

「アンナまで……ちょっと来るの早くない?」

「城壁の向こうがなんか騒がしくなったから、これ暴れてんなーって思って」

「暴れてるのはソーマだよ。もうちょっと早かったら危なかったぞ、本当に」

「悪い悪い。それで、進捗はどうだ?」

「さらわれた女性が閉じ込められてる場所を見つけた。鍵は今から奪いに行くところ」

「何?それはどこだ?」

「廊下にいる兵士さんに案内してもらって」

「兵士?味方の兵士もいるのか」

「うん、この前城に潜入したとき、脱出を手伝ってもらったんだ」

「王子、大丈夫ですか!?」

「あ、ちょうどよく来た」

 

ルーカスが食糧庫に入り、トーマスのもとまでやってきた。

 

「む、何奴!」

 

ルーカスはジェフの姿を見て剣を構えるが、トーマスが制止する。

 

「ルーカス、この人たちは味方だよ」

「味方、ですか?」

「貴方は私のことをよくご存じないようですね。ジェフと申します。以前はこの王室御用達の商人でした」

「あ……これはとんでもないご無礼を!」

「いや、気にしてないよ。それより、囚われている女性たちの案内をしてくれないかな?」

「はっ!ゴードン。この方たちの案内を。我々は、詰所で鍵を取ってきます。行きましょう、王子」

「うん」

 

トーマスとルーカスは、食糧庫を出て詰所へ向かった。

 

「しかし、見事な腕前で。どなたかに鍛えられましたかな?」

「まあ、子供の時から一緒にいた友達と、長い間ね」

「それはそれは、いい友を持ちましたな」

 

トーマスとルーカスは詰所に到着した。

詰所の扉を蹴り開けると、中には2人ほど残っていた。

 

「ルーカス、この人たちを知ってる?」

「いいえ、存じ上げませんな。なぜその質問を?」

「そりゃ、敵か味方かを判断するためだよ」

 

トーマスはそう言うなり剣を構える。

2人の兵士はトーマスに向けて襲い掛かってくる。トーマスは盾を手から離し、ナイフを取り出して投げつける。ナイフは片方の兵士の頭に命中、そのまま兵士は倒れる。

もう片方の兵士も斬りかかるが、トーマスはそれを難なく弾き、右腕を斬り落とす。そして左手で兵士の頭を掴み、勢いよく壁に叩きつけた。

 

「さて、鍵はどこかな?ルーカス、知ってる?」

「確かここら辺に……ああ、ありました」

 

ルーカスは敵兵の屍から鍵を取り出す。トーマスは兵士の頭に刺さったナイフを回収した。

 

「じゃあ、ルーカスはそのカギで女性たちの救出を。そのあとはソーマの援護をお願い」

「王子はどうなさるのです?」

「僕は、将軍グラニアのいるだろう玉座に行く」

 

トーマスの言葉を聞いたルーカスは驚愕する。

 

「あなた一人では危険です。貴方が腕の立つ戦士とはいえ、相手も名の知られた将軍。せめて援軍を待つことはできないのですか?」

「もしかしたら将軍だけでも逃げてしまうかもしれない。それは何としても阻止したいんだ。頼んだよ、ルーカス」

「あ、王子、お待ちください!」

 

トーマスはルーカスの制止も聞かず、詰所を出て階段を昇って行く。

道中に出会う敵はそこまで多くはなかった。外でソーマが暴れているおかげで、内部の探索がしやすくなっていたからだ。何度も敵兵がトーマスに襲い掛かったが、軽くあしらい、生き残った何名かには尋問を行うが……

 

「グラニア将軍、どこにいるのか知らない?」

「お前みたいなガキが将軍相手に何ができぐあっ!!」

 

トーマスはナイフを相手の腿に突き刺す。

 

「くっ……そこまでして会いたいなら教えてやる、将軍は玉座にいる」

「それはどこにある?」

「この階を探し回ったら、ひときわ大きな扉があるはずだ。そこをくぐれば、玉座の間だ。だがお前に将軍が倒せるかな?」

「……やってみるさ」

 

トーマスは倒れて動けない兵士を置いて、玉座の間のつながるドアを探し回った。

途中、外から轟音が聞こえてくる。あの音が続く限り、ソーマと敵兵士の双方は生きている、ということをトーマスは感じ取った。

そして、ついに敵兵士が言っていた、ひときわ大きな扉を見つけた。

 

(ついに見つけた……!ここの奥に、おそらくグラニア将軍が……)

 

「入ってこい、侵入者よ」

 

突然、扉の向こう側から声がした。

 

(今の声……まさか、グラニア将軍!?)

 

トーマスはドアの片面を蹴り開け、もう片面に素早く身を隠す。

しかし、しばらく待っても、何も飛んでこない。

 

「そのような無粋な真似はせん。入れ」

 

トーマスは本当に従うべきか少し躊躇したが、意を決し、もう片面のドアを開け、姿を見せた。

玉座には、全身を黒みがかった灰色の鎧で覆った大きい人間の姿があった。

 

「お前が、長い間、姿をくらましていた、メアリー王妃の息子か?」

「……そうだ。お前がここを支配しているシュルス帝国の将軍、グラニアだな?」

「如何にも。ここに来た目的は、私を倒すことなのだろう?」

「その通り。将軍グラニア、お覚悟を」

「ふむ、まず貴様の腕を試させてもらうとしよう。近衛兵、前へ!」

 

グラニアがそう叫ぶと、重装備を施した兵士、総勢5人が両脇の柱と玉座の裏から出てきた。

 

「まずは小手調べってことか……」

「行け!」

 

近衛兵が一斉にトーマスに襲い掛かる。

トーマスはまず弓矢を装備して、文字通り矢継ぎ早に矢を放つ。矢は兜の隙間を縫って命中し、近衛兵2名が倒れこんだ。

残る3名は盾を構えつつ接近してくる。トーマスは1人に突進し、シールドバッシュで転倒させた。そしてすかさず兜の隙間にナイフを突き立てる。

別の兵士がトーマスに向けて剣を振りかぶったところを、トーマスは蹴りでバランスを崩させた。そして矢を取り出し、同じく鎧の隙間に突き刺す。

 

(あと1人……!)

 

ふと、目を落とすと、大きな盾が見えた。

トーマスは今つけている盾を外し、大きな盾を装備した。

兵士が剣を突き出して突進してくる。トーマスは盾で受け流し、足を引っかけて転ばせた。

そしてうつぶせになって倒れているところに、盾の重みを利用して勢いよく打ち付け、鎧が歪んでできた隙間をナイフで突き刺した。

 

「これで全員、次はグラニア!お前の番だ!」

「……なるほど、それが貴様の力か」

 

トーマスがナイフを抜き、グラニアの方を見ると、グラニアは全身を覆っていた鎧を半分以上脱ぎ捨て、籠手と足と膝と胸と首回りを防護し、盾を装備した状態で姿を見せた。

 

「……鎧はどうしたの?」

「そんなもの、貴様には無駄なのだろう。これで十分だ」

「なるほど……」

 

トーマスが剣を構えると、グラニアも同様に構える。

 

「では、お覚悟を!」

 

トーマスがそう叫ぶと、走ってグラニアのもとに近づいた。対するグラニアはあまり動かずにトーマスの様子を見ている。

トーマスはまず顔にナイフを投げると、グラニアはそれを籠手で払い、続けてトーマスの振り下ろしを剣で払う。グラニアは続いて剣で突く。トーマスのよりもリーチの長いグラニアの剣を後ろに下がって避けるには、ギリギリの間合いであった。

 

(後ろに避けるのは危険だ。横に避けなきゃ)

 

トーマスは、ソーマとはまた違った強敵に、どう攻めるべきか考えていた。

 

--------

 

一方、ソーマはトーマスの予想通り、外で大人数の兵士相手に大暴れをしていた。

怪力を持つ彼には鎧など何の意味もなく、遠くの敵には兵士や樹木を投げつけられる、近づく兵士には大斧で鎧ごと潰され、吹き飛ばされるなど、まさに「無双」ともいうべき有様であった。

あらかた片付けた後今度は城壁に矢を射かけてくる誰かがいることに気がついた。投げつけるものがないか探してたソーマだったが、突如、光の弾が城壁に直撃する。

ソーマが振り返ると、魔法を出したアンナ、そしてジェフの姿があった。

 

「アンナ、ジェフ!?」

「ソーマか?こんな滅茶苦茶にしたのは」

「う……」

「まあいい。今、後続の兵も着て、城門をこじ開けようとしている最中だ。ここまで片付けているのなら、開けるのはそう難しいことではないだろう。君は早くトーマス王子のところに行った方がいい」

「トムは今どこに?」

「おそらく、グラニア将軍のところだ」

「な!?」

「いくら腕の立つ彼でも将軍相手は危険だ。ここは俺たちに任せて、早いところ向かってくれ。」

「……わかった」

 

ソーマは一目散にトーマスと将軍のいる玉座に向かった。

 

--------

 

トーマスは未だにグラニアに対して有効打を与えられないでいた。

 

(やっぱりリーチの違いもあるから、このままだとじわじわと追い込まれる。何か手はないか……)

 

ふと、トーマスはグラニアの持つ盾に注目する。盾はとても大きく、下端は地面に掴んとするくらいの大きさであった。

 

(アレを利用すれば……!)

 

トーマスは一気にグラニア向けて走った

 

「血迷ったか!」

 

グラニアは袈裟斬りでトーマスを斬りつけようとした。

 

(……行ける!)

 

トーマスは勢いよく飛びあがり、斬撃を避ける。そして盾の上端に足を乗せ、一気に踏み込んだ。トーマスの身体は盾回転しつつ宙を舞い、グラニアの上についた。

グラニアは上方向に斬りつけようとするが、予測していたトーマスはそれを弾く。そしてトーマスの身体はもう半回転し――

 

「喰らえっ!!」

 

右足で思いっきり、グラニアの頭を蹴りつけた。

屈強な体を持つ将軍と言えども、さすがに頭に直接衝撃を与えられ、昏倒することは避けられなかった。

トーマスは着地し、剣を構える。しばらくして、グラニアが動かないことを確認したトーマスは構えを解き、大きなため息をついた。

 

「トム!!」

 

直後、扉の方から声がした。トーマスが振り返ると、ソーマがそこにいた。

 

「ソーマ?」

「そいつは……もしかしてグラニア将軍か?」

「そうだよ。倒したの。凄いでしょ」

 

それを聞いたソーマは呆れたようなため息をついた。

 

「とりあえず将軍の武装を解くぞ。」

「わかった」

 

2人は将軍の鎧や武器を1つ1つ剝がしていく。

 

「外の敵はほとんど倒した。後続の兵も次々城門に向かってる。開かれるのも時間の問題だろう」

「それで、君は一足早くここに来たんだ」

「ああ。ジェフやアンナは城門にいる。こいつを縛り上げたら、僕たちも城門に向かおう」

「わかった」

 

2人はグラニアを縛り上げ、一緒に持ち上げ、外に運び出すことになった。

 

「しかし、これで終わりではないことはわかってるよな?」

「うん。この後来るだろう帝国の軍勢にも立ち向かわなきゃいけない」

「絶対に失敗できないぞ」

「成し遂げられるさ。ソーマやアンナ、それに王妃に協力してくれる民たちさえいれば」

「……まあ、やってみるしかないか」

 

2人が外に出かけたところで、ジェフを見かける。ジェフも2人に気づき、近寄ってきた。

 

「そいつはまさかグラニア将軍か?」

「うん。城門の方はどう?」

「たった今、制圧したから、それを王子に報告に行くところだった。将軍も捕らえたとなれば、この城の制圧ももうすぐ成し遂げられるだろう」

「トーマス王子!」

「ルーカス!」

「王子は早く城門の方へ行ってくだされ。将軍の身柄はこちらで引き継ぎます。」

「わかった。頼むね」

 

トーマスとソーマは、グラニアの身柄をルーカスに付いていた兵士たちにに引き継ぎ、城門へ急いだ。

城門には王国派の兵士が集結しており、トーマスの到着を待ちわびていたようだった。

 

「トーマス王子、ご覧の通り、城門は開け放たれ、続々と兵士が入って、王子を待っておりました。何か声をかけてくだされ」

「声と言ったって……」

「労いの言葉でもいいんじゃない?」

 

トーマスは何を話せばいいか困惑していたが、ソーマのアドバイスにより、少し考えたのち、深呼吸した。

 

「皆の者、城門の制圧、ご苦労であった。城の制圧も間もなく成し遂げられると思う。でもこれで終わりではない。次なる脅威はすぐそこまで迫っている。それを跳ね除けてこそ、ソルトラ王国を取り戻すことができる。帝国がくじけるその日まで、民と共に抗おう。ソルトラ王国、万歳!!」

 

「「「ソルトラ王国、万歳!!」」」

 

兵士たちは勝鬨を上げた。

 

「これでよかったのかな?」

「いいと思うよ」

「そっか」

「お兄様!」

 

アンナの声が聞こえた。

 

「アンナ!」

「お兄様、どうしましたの?そのような大声をお出しになって」

「まあ、うん。王子としての務めというか、なんというか……」

「ふーん……。ソーマさんも、お疲れさまでした」

「いや、こっちも援護助かったよ、ありがとう」

「アンナ、城は制圧した、母さんも取り戻した。でも、これで終わりじゃないのは、わかってるよね?」

「はい、あとはここを守り抜くことです」

「うん、頼りにしてるよ」

「はい、お兄様!」

 

トーマス、ソーマ、そしてアンナの3人は、兵士たちが喜び合う城門の方を眺めていた。

 

--------

 

朝になる頃には城の制圧が完了した。

敵兵のほとんどが死に、捕虜になったのはわずかであった。

その中には、将軍の子供と思われる人物が4人いた。

 

「どうしますか?この4人は」

「まずは地下牢に入れよう。今はほかにやるべきことがいっぱいある」

「承知しました」

「トーマス!」

 

トーマスが声のする方に振り向くと、メアリーの姿があった。

 

「母さん!もう歩けるようになったのですか?」

「ええ、なんとかね。それに、これからまた戦いが始まるのだから、いつまでも寝込んではいられないもの」

「はい。そのためには、民も一緒になって戦う必要がある。そうおっしゃいましたね」

「ええ。だから今日の昼頃に演説ができるよう、準備しなくてはならないの」

「ああ……わかりました」

 

トーマスはまた演説しなければならないことに嫌そうな顔をしながらも、受け入れざるを得なかった。

 

「トーマス。私たちが不甲斐ないせいで、王政を辞めることになってしまったこと、許してほしい」

「言ったはずだよ、母さん。僕は母さんがいてくれればそれでいいって」

 

メアリーとトーマスは、互いに抱擁しあった。

その様子をアンナに見られて、アンナもそこに加わることになるのだった。




今回も読んでくださり、ありがとうございます!
この話もあと4話です。
ここまで読んでくださった方はこのまま最後まで見ていただければ嬉しいです!
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