グレートジャーニー   作:照喜名 是空

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白銀の雪山へ

 

「あら、お姉さまの髪紐切れてる」

「マジ!?……そっかー……ついにやったんだなあいつ」

 

朝起きたらミスラは割とケロッとしてた。

お前が俗物でよかったよ。

 

「なに?これ何かあるの?」

「あーこれな。『双子の組み紐』つって、二つ一セットで片方切れたらもう片方も切れんの。ほんで、私が姉妹(シスター)と呼び合ってるダチが持ってて、お互い夢が上手くいったら切ろうぜっていってた」

 

露骨にいやそうな顔しやがった。うーん、彼女面してくる~。

 

「へー、よかったわねー」

「まあその夢ってわかるだろ?私も姉妹(シスター)も途中で国を盗るからさ。ダメだったらダメだったでお互いかくまおうぜとか色々あったわけよ」

「あらそう」

 

面倒くさそうに私の髪を編み込んでいくミスラ。拗ねてる~!めんどくせえ~!

切れた髪紐を見たら何本かの紐は切れていない。なるほどね。

 

「ほんでこの切れ方は……『うまくいったからいつでも来ていい』でさ。ほんで、お前がお望みの『タリスマン』な?魔力貯めるやつ。たぶん姉妹(きょうでぇ)は作れるんだよ」

「今すぐ行きましょう!今!ほらせっかくお招きいただいたんだから!早く!」

 

秒で支度を終えて私を叩き起こして来るじゃん……?

 

「うんだから、ここを留守にしても大丈夫なように巻きで準備しような」

「ユノ!さあ働くわよ!」

 

今までにないやる気に満ち溢れた顔すんじゃん……

金でこいつのやる気は買えるタイプなのかよ……現金なやつめ。扱いやすいわ。

 

「とりま、最低限ステイツと連絡取れてー。他の街もキッチリ体制つくってー。あとはお土産もってく用の飛行船いるね」

「飛行船ならもうあるわよ!人類圏侵攻用のやつ!早く!お金は待ってくれないのよ!」

 

借金奴隷買ってたお前が言うと重みが違うよ。

まあこいつの場合は貯金残高=魔力だから破産したら命に直結するしね。

 

そんなわけでまたイシュトアン様に土下座したりラジオで公募したりして通信機と出先でのラジオ放送局は三日で出来たし、お土産もあんがい気の利いたやつをミスラがダッシュで買ってきて……4日目の昼にはステイツを出航できたかな。

 

「おー、初めて乗るけど気分いいね飛行船」

「楽しいのは最初の一日だけだと思うわよ……忘れてたわ、空の船旅ってすごくつまんないのよ……」

 

雲の海を船が行く。

飛行船は帆船とほぼ同じっていうか、交代制で木造船を魔法で無理やり浮かせてるだけに近い。

まあ、ある程度は魔道具で自動化できてはいるんだけど。

いやー、空も海も青いなあ。陸地が遠いよ……風が気持ちいいね。

 

「おまけにヨドゥンスト山脈のやたらある山の一つをピンポイントで探すんでしょう?一週間はかかるわよ。何にもない空で一週間……ああ、一週間……」

 

ヨドゥンスト山脈は8の字の形の西方大陸の下半分、左側だ。

すんげえ高い山脈が延々と南北に続いている。霜と氷しかねえような山ん中で、まあこの後すごい退屈するんだろうなってのはわかる。

密入国だから海と人里のない山を経由するしかねえんだ。見るものがねえ。

 

「あー、まあ。そんなこったろうと思ってゲーム作ったよ。カードゲーム『魔法集め』ってやつでな……」

「雑に魔法の名前と大雑把なイラストが描いてあるじゃない」

「えーっとね、魔法の組み合わせでより強いコンボを考えて相手を倒す、みたいなやつかな」

 

ママがそういうゲームをうっすら言ってた記憶をかき集めてなんとかそれっぽいルールを再現した。

ちなみにカードの魔法やモンスターはすべて実在のものを参考にしている。

 

「へえ、面白そうですね」

「でしょ!?」

 

ユノは若いせいかこういうのはわりと飛びついてくるね。

 

「まあどうせ暇だしやりましょうか」

「テストプレイも兼ねてなー。うまくすればステイツで儲かるぞ」

「いいわねそれは。やりましょうやりましょう」

 

ユノがめちゃくちゃ害悪みたいなコンボデッキを構築して誰も勝てねえ。なんで開発者の私ですらこてんぱんに負けるんだよ……

 

「あはは、これ面白いですね」

「だ、だろ~?ちなみにその魔法全部実在するやつで、今書いたデッキは頑張れば誰でも習得できる魔法しかないから……お前なら現実であの凶悪コンボ再現できるよ」

「えっ!」

「本来こうやって戦術を考える役にも立つように設計したからな。知育玩具なんだよ」

「私が……現実でこれを。私もっと強くなれますかね?」

「なれるよ。お前の魔法はコピー魔法だから手数増やすか、シナジー考えるしかないからね」

「あはは……もうちょっと私も頑張ってみようかなー?」

「おー、お前は子供なんだから夢はいっぱい持っとけ。あきらめるのは早すぎるよ」

 

実際こいつ、ミスラや私にドン引きして自分の限界決めてた感あったからね。

これで立ち直ってくれたらうれしいよ。

できれば大量印刷して国内に配りたいね。現段階では娯楽がもっと必要だし。

 

 

ヨドゥンスト山脈についた。

雪山が延々と続いてるね。

さて、この中にドワーフの国『ダイカサド地下帝国』への入口がある。

山の中で洞穴一つを探す作業だ。

だが私には考えがある。

 

「ほんじゃ、一曲やるからバックバンドお願いね」

「はい!」

「ようやくついたわね」

 

『拡声』で適度な音量を遠くまで飛ばしながらギターをつま弾く。

今回はフォークソングだ。ドワーフにはそういうのが効く。

 

『流れ者が山を渡る。いつかここに帰ってくると約束した私を見なよ。

船にどっさり宝物と土産話を乗せてきた。

お前らの王を祝いに私は帰ってきた!』

 

上空から山々に歌うと空気がいいから気持ちいいね。

歌がこだますると、ちょっとした城くらいある毛むくじゃらの巨人が山の中腹からこっちに手を振る。

 

「おお!おお!イブキ!友よ!魔族のたった一人の例外!おおいドワーフ共よ!お前たちの友が帰ってきたぞ!」

「声でけえよボルソン」

 

こいつは霜の巨人(フロストジャイアント)で、ドワーフの国にいたときに仲良くなったんだよね。

昔に流れ者やってた時にこの国でも歌いまくってそこそこ人気でたんだよ。

まあその後、魔族バレして逃げ出したわけだ。

 

「も、ものすごく大きいのね。霜の巨人って……昔のツテってこれ?」

「その一人だな。まあそのうちシスターを呼んでくれるよ」

 

まあ引くほどでかい毛皮の服着たおっさんだからな巨人って。

こいつらはこいつらでデカすぎるから山の中くらいしか住処がねえんだ。

 

「友よ!小さき友よ!そいつらはだれだ」

「私の舎弟だよ。私と『同じ』にしてやったから安心しなって」

 

10階建ての城くらいあるひげもじゃのおっさんがうれしそうに船に近寄る。

デカいから普通に話してても声すごいんだよね。

こいつらと声量でタメ張れたの私しか知らん。

 

「そうか!小さき友は魔族に心を教えられたのか!」

「教えたっていうか改造ったっていうか……まあそう」

「そうか!ならば飲もう友よ!」

 

タルごと酒を『錬金』して巨人に渡す。魔力増えたからこういうの楽だなあ。

まあそれでも巨人からしたら一杯にもならねえんだが。

 

「うまい!やはり友の酒は格別だ!」

「おうよかったよ」

 

空飛ぶ船の船主に座って私も酒を飲む。大自然に囲まれて飲むから気分がいいね。

呑んでるうちに、そのへんのほら穴からドワーフたちがわらわら出てきてた。

染料で着艦用の図を描いて、松明で誘導してくれる。

 

「おー!早かったな姉妹(きょうだい)!後ろのは舎弟でええん?」

「よう姉妹(きょうだい)!元気してたか!タッパちょっと伸びた?そうそう舎弟だよ」

 

船が地面につくと、私は作業着に王冠姿のドワーフ女とハグしあった。

こいつがドワーフの王女、今は女王かな?名前はマーニー。

髪は銀色で目が青いチビ女だ。まあ私も同じくらいだけど。

 

「わかるか~?ジブンはかわらんなあ。ちょっと痩せたんちゃう?」

「忙しいんだよ~国造りでな。はっはっは」

 

いや~やっぱドワーフは陽気で楽しいな!

後ろからミスラがひきつった笑顔で肩をつついてきた。

 

「テンションが高すぎて引くわよ……ドワーフってこういう感じなの?」

「こういう感じだよ!楽しいところだろ?」

「今から疲れてきたわ……」

 

魔族は基本的にテンション低い『うらなり』ばかりだからな……

まだ入国してねえのにこれだから先が思いやられるよ。

 

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