スターステイツの首都『ガッデム』まで飛行船で順調に空の旅をして帰り着いた。
神への反逆心に満ちたいい名前だと思う。
ちなみにこの街はあの伝説のライブをしてそのまま首都になった感じだ。
この辺は砂漠に近い気候で赤茶けた荒野がどこまでも広がっているんだけど……
うん、もう二つ北のロスト・ベガスのあたりが最終防衛線になったらしい。
ひでえな……建物は遠目からもボロボロだし、通りに死体があふれている……
気は重いけどとにかく話を聞くしかない。
「帰りましたよ。とりあえずどうなってます?イシュトアン様。っていうかお疲れ様でした……こんな時に留守を任せてすいません」
「良いのだ。解っていたことであろう。いずれ他国との交渉が必要なことも、その時に空ければ攻め入られることも」
「ウス……」
なんか、会議室にはとりあえずの幹部や各都市の名代が勢ぞろいしてた。
七十人くらいかな。ウワーッ空気が重い!
「とりま、新顔多いな。私がスターステイツ大統領山田イブキだ。よろしくな。まず、この国のために戦ってくれてありがとう。大変だったな……どのくらい大変だったかはこれから報告してくれ。とにかくよくやったよ」
それから幹部たちの話を聞くとまあひどかったらしい。
こっちは装甲も火力も段違いで、普通に突っ込んでくる敵兵力はあっという間にバタバタ死んだそうだ。
あまりに一方的でそれは戦いではなくグロテスクな作業だったと。
流れが変わったのは敵軍が毒ガスを使用してからで、それでこっちもバタバタ死んだ。
しょうがねえから大量の爆薬を投げ込んで敵軍のいる街ごとぶっ飛ばして勝ったそうだ。
「……以上が軍務としての報告だ。ここからは個人的な愚痴だが……イブキ大統領。やはり俺は戦いが面白いとは思えないよ。特にこんなものは戦いであるはずがない。気分の悪い『作業』だった……」
アダマスがまた落ち込んでるよ……こいつも戦略兵器として街をまるごと宝石に変えてきたらしいからな。
「いずれにせよ、我が国はまだ人口が少ない。兵力の損耗は避けるべきであろう。早急に策を練るべきだ。手間がかかるようであればわしに一言命じればよい『最終的解決』をな」
イシュトアン様は私の切り札が『核』であるのはおおよそ察しているらしい。
か、覚悟が決まりすぎている……!
何も言ってないんだけど。察しが良すぎるのも困りものだよ……
『その時』は私がやるよ……それが責任ってもんだろ。
「それは……それは待ってほしいな……悪いんだけど、本当に悪いんだけど……一回だけ、一回だけ私にチャンスをください……!」
「ではいかにする?」
「懐柔だよ……!賄賂と脅しで寝返りを呼びかけるんだ。大々的に。一度勝った今ならいける。とにかく美味いもんや私の薬や歌を贈ろう。それだけで寝返りたいと思うようなやつを」
議場が沈黙に包まれる。まあ……すでに仲間を毒ガスで失った後だとさ……思う所あるよね……
「あの~、発言よろしいですかァ?」
「お前誰だっけ。悪いけど名乗り頼むわ」
「お初にお目にかかります。イシュトアン様より『食糧省』大臣として指名を受けましたバアルと申します。ワタクシ、以前から食に興味がありましてねぇ!裏切りたくなるほどの美食……ぜひともワタクシにお任せください!」
なんか……私のフォロワーなのか知らねえけど真っ赤な服着てやたら陽気っていうかお調子な感じじゃん……?嫌いじゃないけど、信用できるのかコイツ?
「あ~、ほんじゃあオメーは頑張れば私やイシュトアン様よりうめえ飯が作れるってわけなんだな?」
「僭越ではありますがァ……とはいえ、いきなり信用していただきたいと言うのも無理ですよねえ!ごもっとも!そこで一週間後に試食会を行いましょう!必ずご満足いただける物をご用意いたしますよォ!」
立て板に水ですげえ話すじゃん。普段ならおもしれーやつでいいんだけどさ。
「悪い、一週間も待てねえわ。三日でなんとかならねえ?」
勝ってる間に賄賂届けなきゃだしよ……
「ふーむ、確かに……できます!できますとも!ぜひ!その代わりできれば大勢集めてくださいねえ!今の暗い世相をおいしい料理で明るくしたいのですよ!」
イシュトアン様を見る。自信ありげだな……信じよう。
「わかった。悪いけど、一服盛らねえって誓約書かいてもらえる?お前がどうこうじゃなく万が一ってあるからさ……あと警備によそから間者に盛られないように頼むわ……」
「もちろん!機会をあたえていただいたこと、何よりの喜びです!」
「うん、頼むわ。おめーのその胡散臭いけど明るいキャラは好きだよ」
「料理の腕前も好いていただけるように努めますとも!」
まあこういう暗い時に盛り上げようってヤツはうれしいね。
「発言いいかい?」
「おめーは?つか言う前に自己紹介しよう。な?」
なんか……ダウナーな感じのお姉さんってやつが出てきた。人間の真似か白衣着てる。
「『魔法省技術局』のバーゲンティだね。兵力不足を補ういい案があるんだ。私の作った自動迎撃魔砲台を配置すれば誰も操作しなくても近寄った敵は『ピースメーカー』の魔法で粉砕さ!」
たぶんちゃんと止まる仕組みはあるんだよな……?止まんないと誰も近寄れねえぞ。
「それちゃんと止まる仕組みある?」
「安心してほしい大統領!前方にしか魔法は行かないよ!砲台の後ろに行って止めればいいし、最悪後ろからなら簡単に破壊できるさ!」
悪くないな……最小限の人数で回せるからな。
「とりま後で性能試験しようか。いけそうなら前線に配備しよう」
「感謝するよ大統領」
「とりあえず……兵士は交代制にしてできるだけ前線の人数を減らそう……うちの国は人口少ねえし、今産まれてる子供だって兵役に出すまで最低5年はかかんだろ。できるだけ多く寝返らせるしかねえんだ」
それから……まあうちの方針と被害は良いよ。そんな感じだ。
「軍務省『諜報部』ベイラムだ。魔王国内の諜報をしている。それによると……あのクソ女セレナは大統領の真似をして『魔王教』や『聖歌隊』を作って士気向上をしているらしい。忌々しいことに『レコード』まで真似ている。早急に我が国もわかりやすい道徳規範の作成を。士気向上のためにさらなる大統領によるライブを開催すべきと陸軍としては提案する」
あ、あの女~!泥沼の思想戦に引きずり込もうとしている……!
やることなすこと最悪だよあいつ!人間の悪意を早速実践しやがって……!
これは早めに裏切り作戦をやる必要があるな……セレナの地位が確固たるものになる前にできるだけ多く寝返らせるんだ。
「わーった……今日中にライブやるわ」
「ありがたい。ご理解に感謝する」
とにかく……とにかくやっていくしかねえんだ。走りだした以上止まっていられねえ!
「いや……フェスやろうフェス!三日目に試食会と同時に!そのまま私が直で『交渉』に行く!私についてこい!」
どこに行くか?知らねえよそんなもん!わかんねえけど走っていくしかねえんだ!
それがロックだ!そうだろ?ママ……